日本クリニカルパス学会誌
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Print ISSN : 2187-6592
14 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第14巻 第1号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
実践報告
  • 岡本 真紀乃, 荒幡 昌久, 森河 尚江, 田中 正康, 南 眞司
    2012 年14 巻1 号 p. 5-10
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     高齢者誤嚥性肺炎は、多様な病態に起因する難治性疾患であり、肺炎治療のみでは不十分である。当院では、2007年に本症に対して「スクリーニングシート」を用いたチームによる包括的かつ個別化された介入を行い、その予後を改善し得た。検証の結果、①患者の問題点を多職種で綿密に把握する、②情報を共有して問題点を整理する、③重点化した対策を行う、というオーダーメイド的治療(個別化介入)が重要であることが判明した。そして、2009年にスクリーニングシートを改良し、これを中心とした誤嚥性肺炎パスを作成し、チームによる運用を行ってきた。

     今回、誤嚥性肺炎パスの効果を検証するため、DPC病名が誤嚥性肺炎である当院の入院例110件を対象に、パス使用群(55件)と非使用群(55件)の間で比較検討を行った。退院時転帰は両群間に有意差はなかったが、パス使用群で在院日数の短縮(25.5 ± 15.2日対37.2 ± 34.2日、P=0.045)と在宅復帰率の改善傾向(96.8% 対 80.8%、P=0.083)を認めた。また、入院14日目までの診療報酬点数の検討では、リハビリテーションに係る点数のみがパス使用群で有意に高かったが、総点数には差がなかった。この結果は、誤嚥性肺炎の診断直後からパスに従って各職種が効率的に介入し、リハビリテーションをはじめとする個別化介入が奏功したことを反映しており、パスの有効性が証明された。

  • 髙取 隆至, 田中 直次郎, 岡本 隆嗣, 藤井 靖晃, 林内 香織, 丸田 佳克, 永見 隆二, 沖田 啓子, 真鍋 武聰
    2012 年14 巻1 号 p. 11-15
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     当院の回復期リハビリテーション病棟では、2007年から脳卒中に対してクリニカルパスを導入している。当院のクリニカルパスは、歩行の予後予測に基づいて屋外歩行自立、屋内歩行自立、歩行・車いす併用、車いすの4コースで構成している。クリニカルパスのさらなる活用に向け、その導入効果を検証した。結果、クリニカルパス導入前に比べて導入後は患者のADL能力や麻痺の程度、年齢、認知能力に差はなかったが、在院日数のみが有意に短縮していた。また、バリアンス分析では、多くはコースごとの移動目標を達成していたが期間目標はほとんど達成されなかった。その原因の大半は患者の能力の改善の遅れであった。その分析結果を参考にしてクリニカルパスの改訂を行った。改訂では、クリニカルパスの使用期間の再設定や、コース分類のための予後予測の見直しを行った。今後の課題は、①予後予測について定期的にバリアンス分析をしながら予測の精度を確認すること、②適切な入院期間をどう設定するか、③現在はまだ初発患者に限られている院内クリニカルパスの適応をさらに広げることである。

  • -産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科の混合病棟の場合-
    堀内 賢一, 五味 知之, 依田 一美, 依田 尚美, 中島 浩美, 池井 肇, 西澤 延宏
    2012 年14 巻1 号 p. 16-21
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     DPC対象病院において持参薬の有効活用は必須であるが、持参薬使用に伴うトラブル発生が問題となるため、当院では持参薬管理センターを開設し、クリニカルパスの工程に面談を組み入れ、休薬ミス、重複投与等の防止を図った。今回は持参薬面談数の多い1病棟における持参薬使用による経済効果について報告する。平成22年6月当院産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科の混合病棟の入院患者163名を調査対象とした。持参薬鑑別報告書の薬剤情報を基に、持参薬のある患者の持ち込み平均金額および1日当たりの平均金額を調査し、当病棟の持参薬総額を算出した。薬品金額はすべて薬価を用いた。持参薬総額は105,888.8円で、持参薬総額を入院延べ日数1,494日で割った平均持参薬金額は持参薬ありの患者数では192.9円、持参薬管理センター面談患者では104.1円であった。6月の持参薬総額から年間の予想持参薬総額は1,288,313.1円と算出された。持参薬面談のなかった患者も持参薬を使用した場合の予想持参薬総額は1,892,567.6円であった。外来診察日に持参薬管理センターの面談をクリニカルパスの工程に組み入れ、標準化したこともあり、年間約130~190万円の経済効果が推計された。持参薬という医療資源を有効に活用することで、施設単位の経済性および社会全体の医療経済面に大きく貢献が期待される。

  • -前立腺全摘除術パスをモデルとして-
    川村 研二, 村守 隆史, 笹谷 忠志, 山崎 茂弥
    2012 年14 巻1 号 p. 22-25
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     医療の質を高め、ベストプラクティスに近づけるためにはバリアンス分析が必要である。DPCデータから診療情報を分析してバリアンス収集が可能かどうかを検討したので報告する。

    方法:前立腺癌に対する前立腺全摘術32例を対象とした。MEDI-ARROWSを用いてDPCデータのEファイル「診療明細情報」、Fファイル「行為明細情報」の情報を用いて検討した。行為回数分析でデータを収集した後に、基準症例と各症例を比較することにより、パスで示された診療行為以外に行った診療行為を収集した。次に症例毎に、時系列データを加えた詳細パス画面を作成し分析した。

    結果:これらの分析で診療行為の詳細な情報を時系列で把握することが可能であった。基準症例との比較により132回の診療行為バリアンスが収集された。さらに診療記録の内容を参考に、1. 術後膀胱内出血、2. 直腸損傷、3. 再縫合の3つの合併症が抽出可能であった。

    結論:DPCデータを用いることにより大量の医療行為に関わるデータを効率よく処理可能であり、クリニカルパスをDPCと組み合わせることで、個々の症例がパスで示されているプロセスで診療行為を受けたのかどうかを解析可能であった。

セミナー報告(2011年度教育セミナー)
学会報告(第12回学術集会)シンポジウム3 地域連携パスの分析と活用方法
学会報告(第12回学術集会)パネルディスカッション2 DPCとクリニカルパス
学会アンケート
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