日本ペインクリニック学会誌
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22 巻, 2 号
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原著
  • 石井 正和, 加藤 大貴, 山田 智波, 高木 麻帆, 市川 瑞季, 栗原 竜也, 河村 満
    2015 年 22 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    【目的】片頭痛患者の,震災時におけるお薬手帳の有用性に関する認知度,および災害への備えに関する現状を明らかにする.【方法】片頭痛患者を対象にアンケート調査を実施した.【結果】回収率は67.5%(77/114名)であった.東日本大震災時に,処方や代替薬の選択などに際しお薬手帳が役立ったことを61.0%の患者は知らなかった.震災に備えて,66.2%の患者は常に予備の内服薬を持ち歩いていたが,お薬手帳を常に携帯している,あるいは緊急時すぐに持ち出せる場所に保管しているとの回答は,それぞれ20.8%,16.9%であった.【結論】平常時から,患者に薬剤の管理方法と災害時の対応を十分に指導し,患者個人の危機管理意識を高める必要があることが明らかとなった.
症例
  • 本山 泰士, 佐藤 仁昭, 高雄 由美子, 溝渕 知司
    2015 年 22 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,血液凝固能に問題がなく抗凝固薬の投与も行われていない患者で,超音波ガイド下胸部傍脊椎ブロック(thoracic paravertebral block:TPVB)施行後に胸壁血腫をきたした症例を経験した.症例は85歳,女性.初診の2カ月前に発症した右胸部の帯状疱疹後の痛みで当科紹介受診となった.特記すべき既往はなかった.胸部硬膜外ブロックでの治療を計画し試みたが,強い脊椎の変形のため穿刺が困難であり,以降はTPVBで治療を行い,痛みは改善傾向であった.7回目のTPVBでの治療を終え,安静ののちに帰宅を許可したが,TPVB施行3時間後に胸部痛が出現し増悪したために外来へ再診した.胸部X線写真と造影CTで右胸部背側に巨大な血腫を認め,緊急血腫除去術を行うこととなった.術中所見では胸膜に損傷はなく,出血点もはっきりしたものはわからなかったが,穿刺時の肋間動脈の損傷によるものと推測された.術後経過は順調で,術後5日目に退院となった.TPVBの合併症で出血に関する報告は少ないが,超音波ガイド下でも起こり得ることを念頭に置き,痛みの改善とともに速やかに適応を再評価する必要がある.
  • 秋山 絢子, 田辺 瀬良美, 肥川 義雄
    2015 年 22 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    単回の神経ブロックにより三叉神経痛が軽快した患者がその後のCTで髄膜腫と診断され,ブロックの施行によって結果として診断が遅れた症候性三叉神経痛の症例を経験したので報告する.患者は78歳,男性.右鼻腔内の痛みを主訴に耳鼻科を受診した.耳鼻科領域のCT,診察で異常は指摘されず,特発性三叉神経痛の診断でカルバマゼピン(CBZ)内服が開始された.痛みは軽減するも消失せず当科紹介され,当科では症状から特発性三叉神経痛と診断し,高濃度テトラカインによる右眼窩下神経ブロックを施行した.痛みは消失し,当科は終診とした.その後CBZを中止したにもかかわらず,ふらつきが続き,近医で頭部の画像検査を施行したところ小脳橋角部に髄膜腫を認め,脳外科で手術を施行した.腫瘍は3カ月後に同じ大きさまで増大し,悪性髄膜腫と診断され,再手術を行った.終診後1年が経過したが,痛みの再発なく経過している.三叉神経痛患者では常に症候性を念頭に置いて随伴症状や神経学的所見を確認し,まずは可能なかぎりMRI画像検査を考慮すべきであると痛感した.
  • 旭爪 章統, 中本 達夫, 堀江 里奈, 寺井 岳三
    2015 年 22 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    頸椎椎間板炎(CD)は膿瘍による炎症と痛みを伴い,治療には迅速な起因菌同定が重要である.頸椎ではCTや透視下での穿刺排膿はためらわれ,血液培養により同定することも多い.ペインクリニック領域では超音波ガイド下(USG)ブロックが普及し,頸部への穿刺手技は一般化してきた.今回CDに対してUSG穿刺排膿を行った症例を経験した.症例1は62歳,男性.高熱で救急搬送,検査で腹膜炎を疑われ抗菌薬加療をしたが症状の改善が乏しかった.C6/7にCDによる膿瘍を確認,マイクロコンベクスプローブを用いたUSG穿刺を行った.排膿により頸部~背部の痛みが改善,培養で起因菌を同定し抗菌薬変更にて症状の改善を得た.症例2は51歳,女性.頸部痛で整形外科外来通院中に高熱と痛みで救急搬送された.C5/6のCDによる椎間板全体~脊柱管に及ぶ膿瘍を確認,リニアプローブを用いたUSG穿刺を行った.培養で起因菌を同定し,抗菌薬変更にて症状の緩解を得た.USG法のメリットは構造の可視化とリアルタイム性である.現在神経ブロックで幅広く応用されているが,今回のような症例でのUSG穿刺排膿は診断・治療・鎮痛に有用と考える.
  • 久米 克介, 眞鍋 治彦, 武藤 官大, 武藤 佑理, 眞鍋 祐美子
    2015 年 22 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/05/13
    ジャーナル フリー
    悪性リンパ腫および骨髄異形成症治療のため造血幹細胞移植を受けた後に帯状疱疹(herpes zoster:HZ)を発症,その治療中に耐え難い電撃様痛発作を繰り返し,バルプロ酸で痛みが消失した3症例を経験した.症例1は,60歳,男性.悪性リンパ腫に対して臍帯血移植を受けた4カ月後に三叉神経第1枝のHZを発症,15日目より耐え難い電撃様痛発作を繰り返したためノルトリプチリン,ガバペンチンに加えてバルプロ酸(800 mg/日)を投与した.次第に電撃様痛は軽減,25日目には消失した.症例2は,50歳,女性.悪性リンパ腫に対して末梢血幹細胞移植を受けた7カ月後に胸神経領域のHZを発症し,54日目より不眠をきたす電撃様痛が出現した.ノルトリプチリン,プレガバリン投与後も続いたが,バルプロ酸(600 mg/日)の投与により64日目には消失した.症例3は,63歳,男性.骨髄異形成症に対して末梢血幹細胞移植を35カ月前に,また臍帯血移植を10カ月前に受け,頸神経領域のHZ発症を発症した.発症後20日目に電撃様痛発作を生じるようになったが,バルプロ酸400 mg/日投与で次第に消失した.
  • 塚田 妹子, 濱口 眞輔, 福田 澄子, 坂口 結夢, 長嶋 祥子, 山口 重樹
    2015 年 22 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/05/13
    ジャーナル フリー
    後頭神経痛の診断で紹介された,環軸椎化膿性椎体炎症例の治療を経験した.症例は61歳の男性で,右後頭部痛,右後頸部痛と頭部回旋困難を主訴に精査を受けたが異常所見はなく,各種鎮痛薬の内服でも痛みが軽減しないために紹介された.特発性後頭神経痛と考え,大後頭神経ブロックや浅頸神経叢ブロック,ペンタゾシン投与をしたが効果は得られず,微熱がみられた.このため,膠原病などの疾患の鑑別を目的にコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムの静脈内投与を行ったところ,痛みが劇的に消失した.本経過から感染性骨関節疾患を疑い,再度頸椎を精査した結果,C1-2の化膿性椎体炎と診断した.抗菌薬投与と頭部の外固定を行った結果,炎症所見は陰性化し,保存的加療で治療を終了しえた.本経験から,頭頸部痛に対して神経ブロックを行っても期待される鎮痛効果が得られない場合には,まれな疾患ではあるが,頸椎椎体炎の存在も考慮すべきであると結論した.
  • 佐々木 翼, 高橋 秀則, 南部 隆, 関山 裕詩, 福田 悟, 澤村 成史
    2015 年 22 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    [早期公開] 公開日: 2015/05/13
    ジャーナル フリー
    抗がん剤による末梢神経障害は,手足のしびれや痛みを伴い,著しい場合は手足が使いづらく日常生活動作に影響を及ぼすが,決定的な効果をもつ治療法がないのが現状である.今回われわれは,抗がん剤治療後に発症した手足のしびれを訴える9名に対し漢方薬や頭皮鍼治療を用い,そのうち7名に改善を認めた.改善しなかった2名は,しびれの原因となる化学療法を再開または継続していた.今回の症例では血虚証や血証と判断される場合が多く,補血剤や駆血剤が有効であった.また附子の追加や頭皮鍼治療が奏効する症例は,過去の研究などから推察して,中枢神経系への神経障害痛に対する効果によるものと思われた.抗がん剤による末梢神経障害に対しては,補血剤や駆血剤の使用に加えて附子内服や頭皮鍼治療など神経感作に影響を与える手段を用いることで,治療効果が高まる可能性がある.
  • 傳田 定平, 梅香 満, 大久保 涼子, 西塔 志乃, 小村 玲子, 西巻 浩伸
    2015 年 22 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    ジャーナル フリー
    下肢の幻肢痛患者に対して健常者の下肢の運動の動画をタブレット型端末装置(iPad®)に取り込み,患者の患側肢の上に保持して動画を再生し,その動きをイメージすることで除痛を得ている症例を報告する.症例は33歳の女性.X-14年1月交通事故が原因で左大腿部切断.幻肢痛に対してX-3年10月実際の鏡を用いての鏡療法を開始,X-2年7月iPad®を用いた鏡療法を開始した.従来の鏡療法導入後痛みは軽減したが,施行にあたっては大きな鏡を必要とする.一方,iPad®を用いた鏡療法は時と場所を選ばず簡便に実施可能である.また,非断端肢に運動障害があっても施行可能であり有用であった.
  • 田中 絵理子, 島本 葉子, 森本 康裕
    2015 年 22 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    ジャーナル フリー
    持続末梢神経ブロックは,関節手術や開腹・開胸手術など高侵襲手術の術後や,リハビリテーションなどで長期間の鎮痛を必要とする場合に行われる.長期間のカテーテル留置により,先端の位置異常や事故抜去による効果不良,刺入部からの薬液漏れなどの問題が起こってくる.われわれは,リハビリテーションを目的とした持続末梢神経ブロックを行い,先端の位置異常や事故抜去を経験した.カテーテルの固定方法を改良すること(刺入部の針糸固定と医療用接着剤,ドレッシング剤の併用)で,長期間のカテーテル留置が可能となった.リハビリテーションにおける持続末梢神経ブロックでは,カテーテルの挿入方法と挿入部位,さらに固定方法に工夫が必要である.
  • 松木 悠佳, 石本 雅幸, 塩浜 恭子, 溝上 真樹, 重見 研司
    2015 年 22 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/26
    ジャーナル フリー
    【目的】プレガバリンはさまざまな神経障害痛に対して有効であるが,眠気,めまい,末梢性浮腫などの副作用も多く報告されている.今回,プレガバリンを投与された神経障害痛患者で,副作用が認められた症例の危険因子を後ろ向きに検討した.【方法】当科でプレガバリンを処方された神経障害痛患者を,電子カルテ記録から後ろ向きに抽出した.プレガバリンによる副作用が出現した群(副作用群)と副作用が出現しなかった群(非副作用群)の2群に分類し,年齢,性別,BMI,プレガバリン投与量,副作用出現までの期間,プレガバリン投与前後におけるVAS,eGFR,血清アルブミン値,血清クレアチニン値,血清尿素窒素値,血清カリウム値を比較した.【結果】解析対象患者100名のうち副作用が出現した患者は28名であった.単変量解析では,eGFRが非副作用群に比べ副作用群で有意に低く,血清カリウム値が非副作用群に比べ副作用群で有意に高かった.多変量解析では,血清カリウム値が高値であることが独立した危険因子であった.【結論】プレガバリンを投与される神経障害痛患者において,副作用の発生には血清カリウム値も参考にするべきことが示唆された.
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