土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
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海洋開発論文集 Vol.38
  • 原 弘行, 池田 賢史, 弘中 稔基, 吉本 憲正
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_601-I_606
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     海水に曝露されたセメント処理土は,海水に含まれるMg塩によってCaが溶出し,土質特性が変化することが指摘されている.本研究では,Mg水溶液への浸漬によって劣化させた固化材添加量と養生時間が異なるセメント処理土に対して一軸圧縮試験と含有量分析を実施し,強度特性の変化とそのメカニズムについて考察した.その結果,初期条件によらず浸漬後のセメント処理土の強度は著しく低下することが示された.また,その強度は添加した固化材量や養生時間によって異なり,浸漬前の強度が高いときほど劣化後の強度も大きくなることが明らかになった.この強度低下現象は,主要なセメント水和物であるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)が比較的結合力の小さいケイ酸マグネシウム水和物(M-S-H)に転移することによって生じたものと推定された.

  • 高田 明旺, 柿原 結香, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 二口 夏帆, 幸坂 泰輔, 三枝 亮介
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_607-I_612
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     カルシア改質土や製鋼スラグ混合粘性土は,固化に時間がかかる場合,上載圧が作用すると圧密しながら固化すると考えられる.本研究では,段階施工による打設を想定し,製鋼スラグ混合粘性土の養生時の上載圧載荷条件が乾燥密度とせん断強度発現に及ぼす影響を検討した.その結果,最終的な上載圧が作用するのが遅くなるほど,圧密沈下量が小さくなり,乾燥密度も小さくなった.ところが,材齢28日になると,乾燥密度の大きさによらず,最終的な上載圧に依存したせん断強度を発現することがわかった.ただし,早く最終的な上載圧に到達する方が,せん断強度の増加は早く生じていたことがわかった.

  • 宮本 順司, 伊藤 輝, 白庄司 健之, 鈴木 達典, 牧野 凌弥, 水谷 崇亮
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_613-I_618
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,浮体式洋上風力発電施設のTLP形式に適用する杭式係留基礎の安定性に着目している.具体的には,波による張力変動が係留杭に繰返し作用することを想定し,軸方向の繰返し引抜き荷重作用下の砂地盤中の杭の安定性を一連の遠心模型実験により調べている.実験は遠心力場50gで行った.実験の中で,繰返し荷重に対して,杭が安定を保つ場合,半安定の場合,不安定の場合のそれぞれについて杭変位が増加する過程を観察した.実験を通じて,TLP基礎を想定した本研究の杭の安定性評価は,着底式洋上風力施設の杭基礎を想定した既往研究の安定性評価と整合することが得られた.また,繰返し荷重作用下で杭が安定を保つ場合は極限耐力の低下は見られないが,半安定をもたらすレベルの繰返し荷重をうけた場合には耐力が15%程度低下することが得られた.

  • 古川 全太郎, 笠間 清伸, 杉村 佳寿, 林 和司, 西野 智之, 春日井 康夫, 片桐 雅明, 髙田 義人
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_619-I_624
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     著者らは放射状排水機構を有する高圧脱水固化処理装置を開発し,高強度な構造体ブロックを作成する技術の開発に取り組んでいる.本論文では,新門司沖で採取した粘土に固化材として高炉スラグセメントB種を混合した固化材混合土の定ひずみ速度圧密試験から圧密圧力pと圧密係数cv・透水係数kの関係を求めた.加えて,圧密試験前後のイオン交換容量からkを推定した.また,放射状排水理論を用いて時間と沈下量に関するパラメトリックスタディを行い,ブロック作成中のcvを推定した.その結果,(1) イオン交換容量を用いてkを推定する場合,間隙構造と固化による比表面積の経時変化を考慮する必要があることが示唆された.(2) 圧密試験の結果からブロックのcvを推定するためには,1MPaより大きい作用圧力のときのcvを用いるとよいことが示唆された.

  • 坪野 考樹, 津旨 大輔, 三角 和弘, 芳村 毅
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_625-I_630
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     尾駮沼出口近傍の尾駮川のバンプ高さが潮汐による水輸送と尾駮沼の物質循環等に影響を与えると考えられることから,尾駮沼での塩分濃度について数値モデルの再現性に着目し,そのバンプと海洋側との水位の関係を検討した.モデル地形の海床を全体的に変化(zo m)させた感度解析を実施したのち,2016年~2020年までの観測結果を用いて最尤法を適用して,zoの最尤値0.17mと誤差偏差0.085mを推定した.この誤差偏差は,この海域の年周期の潮汐成分の振幅と同程度であり,年周期潮汐が尾駮沼の塩分に影響を及ぼす可能性が高いことを示した.また,このモデルの尾駮沼に仮想的なトレーサを一様に1unit m-3で満たして希釈過程を検討した結果,一定の半減期13.4(11.5~15.9)日が推定された.

  • 坂井 友亮, 田多 一史, 広兼 元, 日比野 忠史
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_631-I_636
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     沿岸域のブルーカーボン効果は,アマモ等の海性植物による炭素固定が研究の中心にある.一方で,定量的に炭素固定効果を推定するためには,底泥に蓄積される有機物の定量測定が必要となる.本研究では,過剰な有機物の流入する海底から堆積有機泥を採取し,石炭灰造粒物(GCA)による有機物の難分解化実験を現地で実施した.この実験において,GCA混合層内で生態系が再生された土壌の有機泥性状の分析により,有機泥の難分解化について検討を行った.検討の結果,GCAから溶出するイオンはCODの低減等を促進させると同時に,難分解性物質を形成することが示唆された.

  • 川原 優紀, 栗本 有紀, TSAI Jeng-Wei, LIN Hao-Chi, 松本 大輝, 田多 一史, 中山 恵介
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_637-I_642
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     台湾南西部に位置するCigu Lagoonは,ブルーカーボンの主な対象となっている水草等の海生植物は多く繁茂せずカキ養殖主体のラグーンである.本研究では,Cigu Lagoonにおいて水中CO2分圧を決定づける溶存無機炭素(DIC)への影響要因を検討することを目的とした.始めに,DICに係る環境要因の影響度を把握するためにSEM解析を行った.その結果,DICは流入河川の流量により増加,植物プランクトンの光合成による減少,カキの殻形成・呼吸等による増加の影響を受けていることが示された.次にSEM解析結果を基にDICのa conceptual modelを作成し,Cigu Lagoonの年間炭素収支を推定した.その結果,カキ養殖は,ラグーン内の炭素の増加に寄与しているが,その影響は小さく,DICに影響を及ぼす主な要因は,植物プランクトンによる炭素吸収効果であると考えられた.

  • 鵜﨑 賢一, 山崎 文也, 阿部 優大
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_643-I_648
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     河川流域と沿岸域の広域土砂動態を解明することは,ダムや堰の排砂や海岸侵食対策において非常に重要であり,それには数値計算が有用である.沿岸域の広域土砂動態計算において,河川からの流入境界条件の取り扱いによって,土砂動態が大きく変化することが考えられる.本研究では,潮汐と風波を考慮した泥と砂による広域土砂動態・地形変化モデル:WDM-POMと,実測データと簡易モデルを用いた河川の土砂算定モデル:gRSMを用い,山国川と中津干潟における2017九州北部豪雨災害による泥質化の現地観測結果の再現計算を通じて,河川境界条件の取り扱いによる沿岸土砂動態の相違について検討を行った.その結果,ハイドログラフで流量・土砂量を与えないと観測結果の再現性は悪く,広域的にも土砂動態が大きく変化することがわかった.

  • 宇野 宏司, 齋藤 輝
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_649-I_654
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     大阪湾の漁獲量は1990年代後半から急減している.神戸市沖でも,春の風物詩“いかなご漁”や,“須磨のり”で有名な海苔養殖などは,近年不漁が続いている.これらを踏まえ,本研究では,地域の環境保全活動団体,水利権者,漁協,研究機関(高専)の4者の連携の下,水辺空間改善と水産資源の回復を目的とした社会実装を実施し,浮桟橋に設置した陸域負荷充填のコンテナ内での生物蝟集効果等を確認した.ただし,時間の経過によって栄養塩溶出の低下もあり,充填物の定期的な補充の必要性も示唆された.

  • 尾崎 竜也, 小森田 智大, 山田 勝雅, 田井 明
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_655-I_660
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     干潟域では底生微細藻類が主な基礎生産者であり,その光合成は光合成有効放射(PAR)の量で制限される.底生微細藻類の基礎生産量に関する研究の多くが,実環境で培養する現場法であり,誤差を含む可能性が高い.一方,人工光を照射した条件下で培養するタンク法は,物理現象に伴うPARの変動を再現できる. 本研究では,2021年10月を対象に,有明海に面する緑川河口干潟の2地点で, タンク法で基礎生産量を定量した.さらに,大潮に相当する現場法が実施可能な日の基礎生産量と基礎生産量の月間平均値を比較し,現場法の代表値としての妥当性の検証を目的とした.観測を実施した2地点において,全16ケース中2ケースを除いて誤差が10%を超えたことから,現場法による見積は月間の代表値として妥当ではない可能性が示唆された.

  • 朝野 直哉, 藤田 孝康, 濵田 智徳, 木村 和也, 落合 亮仁, 日向野 純也
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_661-I_666
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     長崎県島原半島東部沿岸域は,アサリ浮遊幼生の着底場として推定されているが,波浪等の影響により,着底したアサリは成長過程で消失している.当該沿岸域中央に位置する猛島海岸もアサリの漁獲資源が形成されない未利用漁場であり,アサリ生息調査も行われていなかった.そこで,本研究では,同海域での初期稚貝生息量を把握するとともに,アサリの漁獲資源形成を目的として砂利入り網袋を用いた実験を行い,網袋を継続的に設置することによる成貝の確保を試みた.その結果,当該海岸の初期稚貝生息を確認し,網袋を17ヶ月設置することで,成貝が200~600個体/m2程度確保できることを経年的に確認した.このことより,当該海岸を含めた島原半島東部沿岸域においてアサリ漁場形成のポテンシャルが確認され,網袋を用いたアサリ漁業の構築が期待される.

  • 弓岡 亮太, 西丸 剛史, 水野 博史, 徳丸 直輝, 井山 繁, 日比野 忠史
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_667-I_672
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     アサリの持続的な再生産と多様な干潟生物生息が可能な干潟環境の創造と管理,沿岸域でのブルーカーボン施策に資するアマモ場再生・拡大に向けた浅場造成が再注目されている.本研究は,浚渫泥を再利用して8年間かけて段階整備された造成干潟・浅場において,造成過程や造成後の地形変化特性とアサリ等干潟生物の生息・生育状況を既存資料と現地調査から把握した.浚渫泥と覆砂材投入による造成段階の地形変化量を評価した結果,覆砂開始までに浚渫泥面の低下はみられるが,覆砂完了後は干潟地形が概ね安定し,アサリ等の多様な干潟底生生物の生息場が維持できていた.また,浅場造成域ではアマモ場が早期に自然回復していた.一方,対象の造成干潟はアサリの成貝が少ないという問題も判明し,成長阻害要因の解明と予防的対策の検討が必要と考えられた.

  • 東 和之, 大田 直友, 大谷 壮介, 橋本 温
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_673-I_678
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     徳島市沖洲地区にある人工海浜は,希少種ルイスハンミョウの生息地代償を目標の一つとして造成されたが,現状ルイスハンミョウはほとんど確認されていない.そこでルイスハンミョウの生息可能域拡大を目的とした覆砂が2021年7月に実施された.筆者らは,この覆砂が底生生物相に与える影響を明らかにするために調査を実施した.その結果,沖洲人工海浜ではニホンスナモグリが優占しており,2015年と比較してその生息範囲を拡大させていた.優占種は二枚貝であったが,アサリやソトオリガイの成体は確認されず,ニホンスナモグリによる負の影響が考えられた.覆砂域では周囲と比較し地盤高が高くなり底質粒径が大きくなっていた.加えて優占種であったニホンスナモグリが確認されず,コメツキガニが確認されるなど,他の調査地点とは異なる様相を呈していた.

  • 柴田 早苗, 伊藤 靖, 當舎 親典, 完山 暢, 末永 慶寛
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_679-I_684
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     サンゴ礁は,魚類の幼稚仔の育成場や餌場などとして水産増殖機能を有しており,水産上の観点からも重要な水域である.このうち餌場機能については,造礁サンゴが,サンゴ礁に生息する魚類にとって直接的または間接的に食物源となっていることが既往の研究から指摘されている.しかし,これらの知見は,個別の研究対象生物に関する観察や胃内容物の解析による断片的な情報が多く,実際にサンゴ起源の物質が高次消費者の魚類を支える食物源となっているのか,どのような食物網構造を形成しているのか調査した事例はほとんどなく,サンゴの餌場機能の詳しい評価ができない状態となっている.本研究では,サンゴ礁に生息する魚類の胃内容物の解析および,魚類とその餌料となっている可能性がある生物の炭素・窒素安定同位体比により,サンゴ礁の食物網の推定を試みた.

  • 大島 義徳, 石垣 衛, 金井 貴弘, 舩越 廣太郎
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_685-I_690
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     近年,大規模出水や高温化などにより夏季のアサリのへい死率が高まっているのを受け,アサリ稚貝を春に採捕し夏季を陸上飼育で避けた後で再放流する手法の有効性を検証した.陸上飼育に適した条件も検討した.広島県八幡川河口干潟を対象とし,6月に採捕したアサリの稚貝を陸上飼育施設で飼育し,10月に再放流した.アサリの稚貝は水温を15℃に保つことで生残率が高くなる一方,18℃に比べて成長速度も大きな差はなかった.また,特に給餌量を抑えて飼育する場合には,12時間と長く給餌し続けることで成長速度を向上させられることが示唆された.陸上養殖では年換算で80%が生残した.10月に再放流したアサリは,翌5月までに40~50%の生残率で再生産可能なサイズに成長可能であることが示された.当該技術によりアサリ資源の回復に向けて母貝の確保に貢献する可能性がある.

  • 梶原 瑠美子, 大橋 正臣, 的野 博行, 門谷 茂
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_691-I_696
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     寒冷海域漁港における水産生物の餌場機能強化技術として,底生基礎生産者に着目した,付着基質の単位体積当たりの表面積増加に関する基礎的知見を得るために,試験体(付着基質)を異なる条件(隙間,地点,材質)で港内に設置し,付着生物,動物プランクトン,魚類の調査を実施した.調査の結果,試験体表面に微細藻類や付着動物が出現し,全条件で同様な結果を示した.また,試験体周辺は水柱に比べ動物プランクトンが多く出現していた.付着動物や動物プランクトンの分類群は,魚類の餌料と考えられる底生性の環形動物や節足動物が優占していた.このように,付着基質を追加し表面積を増加させることで,水柱に単位体積当たりの基礎生産者が増加し,底生生態系による餌場機能を付加できることが示唆された.

  • 秋山 吉寛, 三戸 勇吾, 大西 晃輝, 柚原 剛, 内藤 了二, 岡田 知也
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_697-I_702
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     東京湾およびその近海の生息場におけるホソウミニナの繁殖場としての機能を評価するために必要な,本種個体群の成貝における繁殖可能な個体の割合(PFA)を予測するための手法を新規に開発した.二生吸虫の寄生によって繁殖能力を喪失しておらず生殖腺がよく発達し,繁殖可能と考えられる成貝を,簡易に得られる形態指標に基づき特定するため,成熟度・寄生予測モデルを構築した.このモデルによってPFAを予測できるようになった.本手法を活用した本種の繁殖場としての生息場の評価手法は,造成干潟等を繁殖場として評価する際の利用が期待される.

  • 森岡 知大, 山本 浩一, 神野 有生, 上原 正義, 関根 雅彦
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_703-I_708
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     カブトガニが生息する山口湾ではその生息密度の把握のため毎年生息数の調査が行われている.カブトガニ幼生の生息数調査にあたっては,干潟は歩行が困難であることや,多人数を必要とすること,調査者の練度による個体発見効率の差,目視調査範囲が不安定であるという問題がある.そこで本研究は低高度のUAV撮影による干潟面の映像からカブトガニ幼生を検出することにより客観性の高い生息密度調査方法を開発することを目的とした.干潟上のカブトガニの軌跡に他の底生生物の軌跡や干潟上の反射光と異なる特徴があることを利用して高度9mのUAVによって干潟面を撮影し,軌跡の特徴量を計算し,機械学習を行うことにより干潟上のカブトガニを検出する方法を検討した.干潟上のカブトガニ幼生が判別できる可能性はあるが,まだ成績は十分とはいえず,今後の識別能力の向上が課題である.

  • 清野 聡子, 阿野 貴史, 長山 達哉, 杉村 佳寿, 會津 光博, 蔵森 光輝, 鵜木(加藤) 陽子
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_709-I_714
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     博多湾では沿岸開発時の土砂確保のために海底掘削が行われた.その跡が深掘のピット状に残り,貧酸素水塊の発生源になる問題が生じたため,埋め戻しによる環境修復事業が行われている.底生生物相の回復のモニタリングとして水質観測の他に底生生物採取が行われてきたが,直上の水塊も含む生態系の回復の評価が困難であった.環境DNAメタバーコーディング調査により,小型魚や遊泳性を含む魚類相の情報や,従来法よりも多い種数が得られた.種別のハビタット情報から,河口域の海底と水塊分布や,修復箇所周辺との連続性のより細かい情報が得られた.

  • 江幡 恵吾, 相山 凌大, 松岡 翠, 豊福 真也, 矢代 幸太郎, 税所 誠一, 前田 一己, 山﨑 力
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_715-I_720
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     イセエビ幼生の生息場造成を目的とした人工基質の付着生物相,流水中における形状,耐海水性を明らかにすることを目的とした.基質A(繊維幅0.2mm,ビニロン),B(1.0mm,ポリプロピレン),C(1.6mm,ナイロン),D(4.8mm,ポリプロピレン・ポリエチレン混合)を2021年6月10日に鹿児島市喜入沖に設置し,7月1日,7月28日,10月1日,10月27日に付着生物の種類と個体数を測定した.イセエビ幼生は基質B,C,Dで確認された.基質A~Dの付着生物はイセエビの餌料になる貝類,ヨコエビ類,ワレカラ類が多くを占めた.6月10日から10月27日までの海中浸漬によって繊維の切断張力は,基質A,B,C,Dで13.2%,19.4%,24.9%,6.7%減少した.回流水槽実験により,上流側からの投影面積の静水中に対する比は,流速0.1m/sで基質Dの0.97で最も大きかった.

  • 野志 保仁, 宇多 高明, 高橋 紘一朗, 中田 祐希
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_721-I_726
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火した.この噴火により発生した大量の軽石が2021年10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着し,漁業,海運,観光業に著しい影響をもたらした.そこで2021年10月28日には沖縄本島北部,本部半島の北側に位置する屋我地漁港周辺を対象として急遽現地調査を行った.UAVにより漁港周辺での軽石の漂着状況の映像を取得するとともに,漁港周辺海岸での漂着軽石の現地調査を行った.北側から運ばれてきた軽石は,漁港防波堤により移動が阻止されたため漁港の北側に大量に堆積したことが分かった.

  • 高橋 紘一朗, 宇多 高明, 野志 保仁, 中田 祐希
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_727-I_732
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火し,この噴火により発生した大量の軽石が2021年10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着した.沖縄本島北西部に位置する大宜味海岸でも大量の軽石が漂着し,サンゴ礁起源の白い砂浜を埋めた.そこで2021年10月28日に緊急調査を行い,UAVを用いて軽石の漂流・漂着状況を観測した.また,軽石の漂着した前浜で掘削調査を行った.これによれば,軽石は最大厚66cmをなして前浜に厚く堆積していた.この海岸の南部では突堤が設置されていたために,漂着した軽石は突堤の北側で一度トラップされた後,突堤先端で剥離した沿岸流に乗り突堤から離れた下手海岸へと運ばれたことが分かった.

  • 中田 祐希, 宇多 高明, 高橋 紘一朗, 野志 保仁
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_733-I_738
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火し,この噴火により発生した大量の軽石が10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着した.沖縄本島北西部に位置する大宜味海岸でも大量の軽石が漂着し,サンゴ礁起源の白い砂浜を埋めた.そこで2021年10月28日,UAVを用いて軽石の漂流・漂着状況を観測した.また軽石の漂着した前浜で掘削調査を行った.これによれば,軽石は厚さ約40cmをなして厚く堆積していた.大宜味海岸では離岸堤が設置されていたために,離岸堤間で浮遊軽石の集積が起きていた.

  • 三田 周平, 野志 保仁, 宇多 高明, 星上 幸良
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_739-I_744
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     UAVによる海浜地形と漂着ゴミ分布の同時観測法を開発し,大洗港の南側の大貫海岸において現地観測を行った.この方法では,海浜縦断形,ゴミ漂着範囲,漂着ゴミ個数の岸沖分布,海浜地盤高の変位の算出が可能である.観測は,2021年5月29日と11月18日に実施し,2時期の観測結果から地盤高の変位を算出した.漂着ゴミは浮遊状態で運ばれるために,高潮位・高波浪時に後浜とその背後の砂丘地の勾配変化点(遷急点)付近に集中的に堆積する特徴があることが分かった.また,漂着ゴミの標高は,波のうちあげ高に応じて増加したことも分かった.

  • 岩部 然育, 土井口 華絵, 加藤 英紀, 片山 美可, 下野 友裕, 清水 利浩, 千田 奈津子, 眞井 里菜
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_745-I_750
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     新潟港海岸(西海岸地区)では,潜堤,突堤,養浜を組み合わせた面的防護方式による侵食対策を行っている.養浜後の地形状況を合理的かつ適切に把握できる計測手法を検討するとともに,試験的に航空レーザ測深(ALB)で海岸地形を計測した.ALBでは当該海域の移動限界水深である8m程度まで測深できた.従来手法である深浅・汀線測量で求めた同一地点の水深の水深差(絶対値)の平均は0.14mであり,深浅・汀線測量と同程度の精度を確保した.このことより,大規模養浜を行う当該海岸の面的な地形変化を把握するモニタリング手法としてのALBの有効性が示された.また,ALBの計測結果を用いて,浜幅健全度評価を試験的に実施した結果,砂浜モニタリングに必要となる陸側,沖側不動点位置及び前浜,後浜勾配を単一手法で確認することが可能であった.

  • 和田 健杜, 匂坂 量, 島田 良, 石川 仁憲, 小峯 力
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_751-I_756
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     全国約200ヶ所の主要な海水浴場には毎シーズン830万人~1,600万人が来場し,近年では700件~1,400件の迷子が発生している.海水浴場では,親と離れた子どもが水難事故にあうことも十分に考えられることから適切な対策が求められる.迷子の対策として,ランドマークを用いた経路誘導の検討などの先行研究はあるが,ランドマークが少ない海岸において,子供の視線の高さを考慮した検討は行われていない.本研究は,海水浴場における迷子対策を検討するための基礎研究として,VR実験により子供の視線の高さで目につきやすいモノや記憶に残るモノの特徴を調べた.その結果,子供と大人の視野の違いにより,視線の停留回数や停留時間に違いがみられ,子供は近距離や視線が低いオブジェクトに注目する一方で,大人は遠距離のオブジェクトを見つめる特徴がみられた.

  • 戸口 陽生, 島田 良, 匂坂 量, 石川 仁憲, 小峯 力
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_757-I_762
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     わが国の海水浴場では,毎シーズン2,000~3,000件の溺水事故が発生している.溺水事故防止には,海岸利用者自身が海の危険性を正しく認識し,危険回避することが求められ,この方法として海水浴場ではその日の遊泳に関する危険度を,遊泳条件フラッグを用いて三段階(三色)で海岸利用者に知らせている.しかし,遊泳条件は,気象海象状況からライフセーバーや海水浴場開設者が主観的,経験的に決定しており,過去の溺水事故の特徴が考慮されていないなど,決定方法に課題がある.そこで本研究では,遊泳条件をその日の溺水事故発生確率に基づいて客観的に判断する手法を検討した.溺水事故発生確率を高い精度で予測できるAIモデルを構築したことで,適切に遊泳条件を判断でき,多くの溺水事故を未然に防ぐことが可能であると考えられた.

  • 佐藤 新, 谷 和夫, 池谷 毅, 野村 瞬
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_763-I_768
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     洋上風力発電の基礎設計のための簡便かつ経済性の優れた海底地盤調査として,サンプリング兼サウンディングの技術開発を目指している.この調査方法の特徴は,地盤の力学特性を推定するサウンディングと連続した土質試料の採取を同時に行うことである.しかし,過去に試作したサンプラーでは,先端の閉塞によって試料採取率が低い,試料の乱れが著しい,作業性が低いという問題があった.そこで,サンプリング装置の形状と構造を改良し,軟弱な粘性土地盤で実証実験を行った.その結果,乱れが比較的に少なく深度7mまで連続した試料の採取に成功した.コーン貫入試験のデータと採取した試料の目視観察と土質試験の結果を併せることにより,品質の高い地盤情報が簡易に取得できるようになった.

  • 作野 裕司, 川村 雅之, 川崎 浩司, 渡辺 啓生, 後藤 綾児
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_769-I_774
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究は,複数衛星データを使って,赤潮被害が深刻な八代海において高解像度,高観測頻度,高波長分解能の赤潮観測の実現可能性について検討することを目的とした.この目的を実現するために,大規模なシャトネラ赤潮の発生日である2021年7月15日に同期して観測された3つの衛星データの分析が行われた.その結果,高解像度のSentinel-2データでは,青と緑の2バンドモデルと赤潮細胞密度には高い相関(R=0.84,p<0.001)が得られた.また,波長分解能の高いGCOM-Cデータを使った場合,535nmから565nm付近への長波長ピークシフトからシャトネラ種が検出された.さらに,Himawari-8のクロロフィルa濃度データと赤潮細胞密度は正の相関があり,高頻度の赤潮観測が可能となった.

  • 望月 航, 池谷 毅, 吴 連慧, 稲津 大祐, 岡安 章夫
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_775-I_780
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,水中構造物の3次元形状を写真測量を用いて把握する場合に必用となる水面屈折補正法として,画像幾何変換を用いる方法を提案した.水上のカメラから撮影した水中構造物の画像を光線追跡により算出された見かけのカメラ位置から撮影した気中画像に変換する3種の画像幾何変換(水深依存アフィン変換、水深非依存アフィン変換、水深非依存透視変換)を提案した.チェスボードを用いた精度検証実験の結果,水深依存アフィン変換および水深非依存透視変換が高精度であり,θ≦10°のケースではu, v方向格子間隔誤差が1%程度に抑えられた.また,水深非依存透視変換では台形状の歪みを補正できることが分かった.水深非依存透視変換は水深情報を必要としないため,水中構造物の写真測量に有効な屈折補正法だと考えられる.

  • 高野 大樹, 杉山 友理, 新部 貴理, 長谷川 信介, 櫻井 健, 竹花 和浩
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_781-I_786
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     薬液による地盤改良において,地盤中の薬液の広がりをリアルタイムに把握することができれば地盤改良の品質向上や施工監理の効率化が期待できる.薬液は極めて低比抵抗であることから,リアルタイムモニタリング手法として比抵抗トモグラフィが有効と考えられる.本論文では,比抵抗トモグラフィの適用性を検討するため,注入過程を目視で確認するための透明の模型地盤を構築し,2つの注入孔から着色した低比抵抗の浸透液を注入しながら2次元比抵抗トモグラフィの計測を行った.その結果,それぞれの注入孔から注入した薬液が球状に広がる様子を比抵抗により捉えられた.なお,2つの改良体が連結する瞬間を比抵抗トモグラフィにより判別することは難しいものの,両者が十分に連結すれば,その状況を捉えることができることがわかった.

  • 山本 浩一, 村井 大介
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_787-I_792
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では簡易型の3次元地下水流向計を開発し,砂浜に流入する海水の直接的な計測を行い,上げ潮時の鉛直浸透の発生状況,下げ潮時の海水の湧出を明らかにすることを目的とした.ペーパーシリンダー型地下水流向流速計を新規に考案,室内実験の検定を経て山口湾において海岸の地下水浸透の観測を行った.その結果,海岸に浸透する地下水の3次元地下水流向流速を15分間で測定することが可能になり,現地における砂浜の地下水涵養,流出の様子が明らかになった.

  • 横田 雅紀, 中角 航大, 山城 賢, 上久保 祐志
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_793-I_798
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,越波を撮影した動画から越波打上げ高を自動で解析する手法について,飛沫抽出のために二値化処理をした後,オープニング処理を追加することで,誤検知を大幅に減少させることが可能であることを明らかにした.これにより,二値化処理の閾値を小さく設定することが可能となり,明るさによらず飛沫の検知漏れが防止できるものと考えられる,また,異なる二つの角度から同時に撮影した越波動画に本手法を適用した結果,同程度の打上げ高が算出されたことから,本手法で得られる打上げ高の妥当性,他地点の動画への適用性についても検証することができたといえる.

  • Mya MYO MYINT NWE, Lianhui WU, Tsuyoshi IKEYA, Akio OKAYASU
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_799-I_804
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     This study employs the satellite optical and SAR data to investigate the shoreline change at Tanintharyi coast, Myanmar, which is a typical fast-developing region in Southeast Asia. Successful extraction of the shoreline position indicates that satellite remote sensing is a powerful tool to monitor the coastal area, especially in data-insufficient regions. Long-term shoreline change analyzed from the optical satellite data shows that large evolution occurs at the river mouth. Annual shoreline change derived from the Sentinel-1 SAR data shows that the shoreline at the river mouther moves forth and back repeatedly after the construction of the small seaport. Quantitive evaluation of the impact due to the construction of the seaport needs more data such as rainfall and river discharge.

  • 堤 彩人, 山本 敦, 甲斐 雅比呂, 高野 大樹, 高橋 英紀, 榊原 淳一
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_805-I_810
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     地盤改良工事では,地中埋設物位置の不整合や地盤条件の不一致等の問題で,施工時に設計を変更せざるを得ないケースが間々ある.このような場合には,地盤改良の効果を適切に評価するための出来形管理手法が必要になると考え,本研究では,薬液改良地盤を対象に,改良効果の可視化手法としての物理探査の適用性について検討した.P波減衰トモグラフィ探査法に着目し,室内模型実験と現地実験を実施した結果,P波の減衰率により薬液改良前後の地盤の状態変化を把握できることを明らかにした.さらに,施工管理情報と物理探査結果をBIM/CIM により統合管理する方法を提案した.

  • 井上 雄太, 菊 雅美, 中村 友昭, 水谷 法美
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_811-I_816
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,礫浜の構成物を自動判別・分類する機械学習モデルを再構築するとともに,再構築した学習済みモデルを用いて機械学習の分類特性と有用性について検討した.さらに,現地海岸の構成物の時空間変化特性について,再構築したモデルを用いて考究した.その結果,再構築した機械学習モデルによって,オルソモザイク画像から礫浜の構成物を良好に判別・分類できることがわかった.さらに,機械学習によって作成された構成物分布図から,概ね時空間変化特性を読み取れることがわかった.不明瞭な画像に対して判別精度が低下する課題が残されたものの,データセットや画像条件についてさらなる改善を図ることで,多大な労力を必要とする目視分類に代わり,本モデルによって礫浜構成物の空間分布図を容易に作成可能となることが期待できる.

  • 中村 倫明, 木村 悠二, 有山 尚吾, 鷲見 浩一, 小田 晃, 武村 武, 箕輪 響, 落合 実
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_817-I_822
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     近年,マイクロプラスチック(5mm未満のプラスチック,以下:MPs)の海洋汚染に世界中で注目が集まっている.海洋へ流出したMPsは毒性の強い化学物質を吸着しやすい特性や難溶解性が強いものが多いことから中長期的な問題として懸念されている.

     本研究では,海底土表層におけるMPsの個数密度は最大97.2個/kg-dryであった.個数密度の空間分布は,河口に近く滞留性の強い地点で高く,沖合では低くなっていることが分かった.ポリマーの分布は空間的に違いが見られた.いずれの調査点においてもMPsの個数密度とポリマー比率は時間変化があることが確認できた.このことから,この海域では堆積プロセスが複数存在している可能性が示唆された.

  • 田窪 亮介, 米山 望, 東海 明宏, 伊藤 理彩
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_823-I_828
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     南海トラフ地震発生時には,淀川付近の事業所から化学物質が漏出し,淀川に流出する可能性がある.その化学物質が津波の河川遡上に伴って拡散し,浄水場に流入することによる取水障害が問題として挙げられる.また,淀川のように大堰が存在する河川では上流側と下流側で河川水塩分が異なるため,それが化学物質移流拡散挙動に影響を及ぼす可能性がある.そこで本研究では,河川水塩分を考慮した上で,津波来襲時に淀川を遡上する化学物質の挙動解析を行い,取水への影響を検討した.

     解析の結果,化学物質が津波遡上に伴って拡散することで取水影響を及ぼす可能性があることを示した.また,大堰上流側と下流側の河川水塩分差が大きい場合に化学物質が長い距離を遡上し,取水影響が大きくなったことから,塩分挙動の考慮と適切な河川水塩分の設定が重要であることが分かった.

  • 古川 大登, 高橋 巧, 弓岡 亮太, 日比野 忠史
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_829-I_834
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     ブルーカーボン効果を定量化するために現地でのCO2の連続測定が望まれている.海水中の酸化還元電位(ORP)はCO2の溶解による変化が大きいが,酸素消費によっても大きく変動する.本研究ではCO2の溶解に伴う電極反応および,DOの消費(還元物質の低電位場における酸化反応のORPへの影響)について検討した.海水へのCO2の溶解,沈殿とpHとの関係,海水中でのCO2の炭化濃度,実験結果と理論値の比較によりCO2の沈殿機構,およびCO2濃度と電位が競合するDOの酸化還元反応と反応電位の関係を明らかにした.さらに,現地において電極によるCO2濃度測定の可能性を確認した.

  • 納庄 一希, 山崎 智弘, 勝見 武
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_835-I_840
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究は管理型海面処分場の早期安定化と地球温暖化対策のため,アルカリ化した処分場の保有水をウルトラファインバブル(UFB)化したCO2を含む気体で飽和させたUFB水により中和することを目的とする.本実験では,高さ3mの鉛直カラムを用いて模擬保有水にUFB水を注水した際の中和反応の拡散挙動を把握した.その結果,UFB水と模擬保有水の温度差や密度差が僅かな場合,UFB水は上方に拡散し中和することが確認できた.アルカリ化した実際の管理型海面処分場に適用する際には,対象とする保有水とUFB水の水温や密度を事前計測し,UFB水の注水水深を決定することで,効率よくpH低減できる可能性を示唆した.

  • 青木 健太, 小林 誠, 佐貫 宏, 片山 裕之, 井手 陽一, 茅根 創, 田島 芳満
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_841-I_846
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     サンゴ礫州島の形成・維持機構については,これまで現地観測や移動床実験,数値解析により検討されてきており,特定の自然条件下において集積されたサンゴ礫が干出し,サンゴ礫州島が形成されうるということが定性的に把握されている.しかし,実際のサンゴ礁海域においてこれらの条件に一致する場所は限られる.著者らは,サンゴ礫州島形成促進のための透過型礫捕捉工を提案し,2次元断面水槽を用いた移動床実験によりその効果を定性的に検証したが,現地実証には至っていない.

     本研究では,西表島北方に位置するバラス島を対象に同捕捉工を試験設置し,現地実証実験を行った.その結果,透過型礫捕捉工の効果を確認するとともに,捕捉工形状を改良することにより,異なる方向に移動するサンゴ礫の捕捉効果を向上させることに成功した.また,数値計算モデルにより観測期間中の高波浪の検証解析を行い,サンゴ礫を移動させる主な外力について再現することができた.

  • 大谷 壮介, 上村 健太, 德田 邦洋, 藤嶋 康平, 東 和之, 上月 康則
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_847-I_852
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では大阪湾沿岸部の13地点の干潟を対象に水質項目,底質環境,水面と堆積物のCO2フラックスを定量化し,その関係性を明らかにすることを目的に調査を行った.大阪湾の干潟は全体的に砂質で構成されており,化学的性状から好気的な環境であった.水面におけるCO2フラックスは13地点中8地点で放出を示し,湾奥の河川の影響が強い地点でCO2は放出傾向にあった.堆積物における1日当たりのCO2フラックスは矢倉海岸と男里川を除いてCO2は放出であり,1日当たりのCO2フラックスは水面より高いことから,堆積物では有機物の分解の場としてCO2は放出されていることが推察された.以上のことから,干潟では水面からCO2は放出傾向であり,堆積物は干出することで,有機物の分解が促進されてCO2は放出していることが考えられた.

  • 松村 啓太, 松本 大輝, 中山 恵介, 田多 一史, 新谷 哲也, 吉村 英人
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_853-I_858
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     気候変動の緩和策として,水圏における生態系の光合成活動によって吸収される炭素である“ブルーカーボン”が注目されている.ブルーカーボンを形成している水草は浅水域全体に均一に存在するだけでなく,パッチ状に存在することも多く,流れとの相互干渉で複雑な流況を作り出す可能性が高い.その結果,水域における炭素吸収量も大きく影響を受け,その吸収量の正確な見積もりを困難にしている.そのような問題に対して,流れ場との相互作用を詳細に再現できる水草モデル(Submerged Aquatic Vegetation model:SAV model)が最近の研究で提案されている.しかしながら実際の環境に近い状態である水草群落が一部空間を専有する場合はこれまで検証されてこなかった.そこで本研究では,室内実験との比較を行いSAV modelの再現性を検証するとともに,流動場の解析を行った.その結果,SAV modelの高い再現性が確かめられ,水草群落周辺の流れ場において水草のたわみが流れ場を支配している可能性が示された.

  • 高山 百合子, 大野 剛, 織田 幸伸
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_859-I_864
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     埋立て等の濁りが発生する海洋工事においては,翌日の濁り拡散を予測し,工事を進める方法が有効である.実工事においては,計算の初期値となる濁りの平面分布を計測する手法が無いために濁り拡散予測の導入が進んでいない.本研究では,工事に活用可能な濁り拡散予測の精度を確保するために,濁りの平面分布を解析初期値に取り入れる手法の開発を目的とする.本論文では,濁り拡散を捉えた衛星画像を用いて推定濁度分布図を作成し,これを初期値に設定した濁りの拡散計算を実施した.その結果,衛星データ解析から濁度が低下する過程では沈降が大きく影響していることが推測された.平面分布を初期値に取り入れた拡散予測計算では,沈降の影響を取り入れることによって平面分布が再現できることを示し,手法の妥当性が示唆された.

  • 長山 昭夫, 井﨑 丈
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_865-I_870
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     2021年8月の東京都小笠原諸島の大規模噴火起因の軽石群が約1,400km離れた沖縄・奄美地方の沿岸域に漂着し,観光業や漁業に甚大な被害を与えた.しかしながら,多量の軽石群が沿岸域に漂着した後の港湾施設内の滞留過程について検討した例はほとんどない.そのため本報では港湾施設内での軽石の埋没現象を解明するために,風洞水槽内に狭窄部を設け狭窄部内での軽石群の移動特性につい検討した.その結果,狭窄部内での軽石の移動速度は風速が支配的であり,軽石の通過流量については狭窄部幅が影響し,これらの軽石群の堆積と流下過程が異なることがわかった.また風による軽石に作用するせん断力を推算し,その推算値から軽石の移動速度が推算可能であることがわかった.

  • 白木 喜章, 片山 理恵, 凌 千恵, 小野 信幸
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_871-I_876
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     2021年10月以降,奄美・沖縄地方に大量の軽石が漂着し,漁業や観光業等が深刻なダメージを受けた.この軽石は,小笠原諸島南部に位置する海底火山「福徳岡ノ場」の噴火に伴い発生したものであり,海洋の流れや風により漂流してきたとされている.火山地帯に位置する我が国では,今後も大規模な軽石災害が起こり得ることから,漂流経路や漂流時期を予測できる手段の整備が課題となる.本研究は,沖縄沿岸域を対象として軽石漂流を想定した粒子追跡シミュレーションを実施し,とくに大浦湾における軽石の接岸・離岸の再現性を検証した.また,潮汐・海流による流動シミュレーションを事前に実施しておき,予報する際に風圧流を考慮した粒子追跡シミュレーションのみを実行することで実用的な予報ツールになることを提示した.

  • 遠藤 徹, 済木 智貴, 増田 和輝, 酒井 大樹
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_877-I_882
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     港湾海域は浮遊ごみが漂流しやすく,ごみの漂流状況を把握することは港湾管理上,重要な課題である.本研究では,漂流ごみの簡易モニタリング手法の構築を目的として,海面画像からディープラーニングによる漂流ごみの自動検出モデルの構築を試み,港湾海域で長期間撮影した海面画像に適用して漂流ごみのモニタリングを実施した.海面画像は大阪湾奥部の鳴尾浜の泊地に定点カメラを設置して取得した.海面画像から漂流ごみの教師画像を作成し,教師画像の種類と学習モデルの組み合わせが異なる複数の学習済モデルの検出精度を検証して海面画像から木材とその他ごみが検出可能なモデルを構築した.また,2020年7月から12月に撮影した海面画像に適用して漂流ごみの流入・流出状況について検討した結果,漂流ごみのうち大部分が木材であることを明らかにした.

  • 片山 裕之, 谷上 可野, 鵜飼 亮行, 三浦 成久
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_883-I_888
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     着底式洋上風力基礎の設計では,外力として波と流れを考慮するが,外洋の海流は観測データが少なく,推算値を参考にせざるを得ない.JCOPE2Mは日本沿岸の推算値で扱いやすいが日平均流速であるため,解析の格子間隔や時間間隔がより細かく潮流も考慮されるJCOPE-Tの利用が推奨されている.

     本研究では,JCOPE2MとJCOPE-Tの関係を整理し,洋上風力基礎外力の海流としてのJCOPE2Mの利用可能性について検討した.更にJCOPE2Mの表層推算海流を用い,洋上風力検討サイトを中心に日本沿岸の海流特性を整理した.その結果,適切な補正によりJCOPE2Mの利用可能性が確認された.また流れの鉛直分布は,水平・時間解像度の高いJCOPE-Tを使った方が良いが,表層では吹送流の影響が現れるため,単純にJCOPE-Tの表層流速からの1/7乗則では過大評価になる可能性が高い.

  • 伊藤 輝, 竹山 智英, 大谷 英之
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_889-I_894
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,記述形式の異なる様々なデータを自動で変換・統合する技術(DPP)を用いて設計実務で使用する地震・津波シミュレーション技術の合理化を図った.具体的には,国土交通データプラットフォームで入手できるボーリングデータや数値標高モデルを用いて汎用地盤モデルGridModelを作成し,自動で節点や境界条件を設定して3次元有限要素モデルに変換し,FLIP等の地震応答解析ソフトの入力ファイルとして出力する.また,「内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会」データから自動でT-STOC用の入力ファイルを作成するプログラムを開発した.さらに,これらの入力データ自動作成プログラムを連携させ,地震応答解析による地表面の沈下等の結果を津波シミュレーションで考慮する方法を試行した.

  • 大矢 陽介
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_895-I_900
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     洋上風力発電設備の耐震設計においては,風および波については空力弾性解析コードを利用し,地震については耐震設計で実績がある汎用解析コードを利用し,それぞれの解析で求めた断面力を重ね合わせて性能を評価する場合がある.しかし,この方法では地震時においても風を受ける洋上風力発電設備の挙動を精緻に評価できず,経済面で不利な設計となっている可能性がある.そこで,本研究ではモノパイル式洋上風力発電設備を対象に,風と地震が風車に同時に作用する連成解析を用いて,地震時における風の影響を評価した.また,沿岸域で懸念される地盤の液状化を考慮するため,多入力解析における相互作用ばねのモデル化法を検討した.

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