本研究では,レーザーの波長の違いが象牙質に与える影響について調べることを目的として,象牙質の赤外線の吸収波長特性から得られた吸収波長を選択し,照射エネルギー密度を一定にした各々の赤外自由電子レーザーを健全象牙質あるいは脱灰象牙質に照射して,その削除深さと各々の波長の違いが象牙質の構造変化に与える影響について調べた.
その結果,以下の結論が得られた.
健全象牙質では波長9.4μmは6.4μmの2倍以上の削除深さが得られたが,脱灰象牙質では9.4と6.4μmの波長で比較的近似した削除深さが得られた.
レーザー照射後の象牙質表面のSEM所見に関しては,波長6.4μmでは一部において,脱灰象牙質の表層が除去され,トームス線維様の構造物が顕在化する像が示された.波長9.4μmでは健全象牙質において脱灰象牙質よりも象牙質表面の凹凸が顕著に認められた.波長10.6μmでは健全,脱灰象牙質の両者において照射による構造変化は認められなかった.
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