日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
27 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
受賞論文
  • 中岸 義典, 守本 祐司, 川内 聡子, 張 祐銅, 西山 伸宏, 尾関 雄一, 前原 正明, 片岡 一則, 菊地 眞
    2006 年27 巻2 号 p. 71-76
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/26
    ジャーナル フリー
    光線力学的治療(PDT)は悪性腫瘍に対する有効な治療法として認められているが,治癒率向上に向けて,治療効果の高い光感受性物質の開発が進められている.光感受性物質は一般的に凝集性が強く,高濃度に集積した場合,PDT効果は著しく減弱する.そこで我々は,光感受性物質の凝集を大幅に抑制しエネルギー消光を抑えるためのデンドリマー構造と,腫瘍特異的な集積性を可能にするための高分子ミセル構造とが付加された新たな光感受性物質を開発し,悪性腫瘍に対する効果的なPDT薬剤として確立することを目指して研究を続けている.予備実験を通じて,優れた抗腫瘍効果を確認しており,本物質は新たな光感受性薬剤として大きく期待される.
原著
  • 内園 岳志, 粟津 邦男
    2006 年27 巻2 号 p. 77-82
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/26
    ジャーナル フリー
    薬物の経皮吸収促進手法の一つとして,パルスレーザー照射による,バリヤー機能を有している角質層の除去がある.しかしながら,角質除去は外界からの異物混入が危惧されることから,治療の低侵襲化を十分に満たしているとは言えない.そこで,我々はレーザー照射による角質層除去を起こさない低侵襲な経皮吸収促進手法の確立のため,皮膚中のアミド基の吸収ピークに着目したレーザー波長を選択し,その有効性を示した.ヘアレスマウススキンを照射対象に,鎮痛効果のあるリドカインを使用薬物とした.薬物促進評価法としてHPLCを用いた.光源は照射波長をそれぞれ6.1,6.3,6.45μmに設定された中赤外自由電子レーザー(MIR-FEL: Mid-infrared Free Electron Laser)であった.照射パラメーターは,各波長それぞれ,1パルスあたりの照射エネルギー密度が0.5J/cm2,照射時間が1スポットあたり5secであった.レーザー照射後リドカインを添加し,添加後30分,90分のリドカイン透過速度及び透過量をHPLCにて測定した.30分では,各照射波長で非照射に比べ約10倍の透過速度及び透過量を示し,90分では非照射にくらべ約2倍の値を示した.また,照射後の対象の切片画より,角質層の存在を確認した.このことから,生体組織中のアミド基の吸収ピーク波長である6.0μm帯の中赤外光パルスレーザーは,低侵襲な経皮吸収促進手法として期待できる.
  • 木村 誠, 徳岡 由一, 落合 晃, 森 和之, 森本 幸裕, 平本 立躬, 川島 徳道, 金子 貞男
    2006 年27 巻2 号 p. 83-89
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/26
    ジャーナル フリー
    光線力学的診断(PDD)用新規ランプ光源装置の開発を目的に,新たに水銀ランプおよびヨウ化ガリウム,ヨウ化カリウムあるいはヨウ化ルビジウムとを封入したメタルハライドランプを作製し,それらを備えたファイバ型ランプ光源装置(Hg光源装置,Ga光源装置,K光源装置およびRb光源装置)の光学的特性および蛍光発光能を測定するとともに,5-アミノレブリン酸(ALA)を用いた悪性脳腫瘍の摘出術中PDDにおける有用性を評価した.その結果,405±10nmにおける放射照度は,Rb光源装置<K光源装置<Ga光源装置<Hg光源装置であった.このとき,Hg光源装置(電気入力:150W)の放射照度は,既存のPDD用光源装置であるキセノンランプ光源装置(電気入力:300W)の放射照度より約10倍高かった.さらに,プロトポロフィリン IX(PpIX)溶液の蛍光強度を測定したところ,Hg光源装置が最も高い蛍光強度を示し,放射スペクトルとPpIX溶液の紫外‐可視吸収スペクトルとから得られる全光エネルギー吸収度から示唆される結果と一致した.また,Hg光源装置を,ヒト悪性脳腫瘍患者さんの悪性脳腫瘍2症例の摘出術中PDDに応用したところ,悪性脳腫瘍組織から赤色蛍光が観察され,悪性脳腫瘍組織と正常脳組織との肉眼による鑑別が可能であることがわかった.
特集:自由電子レーザーの生命医科学への展開
feedback
Top