日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
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30 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 中村 好貴, 山口 道也, 寺本 由紀子, 一宮 誠, 武藤 正彦
    2009 年 30 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)および光線力学的診断(photodynamic diagnosis: PDD)は,皮膚悪性腫瘍の治療ならびに病巣範囲の決定に有効との報告がなされている.当科では過去5年間に光感作物質である5-aminolevulinic acid(ALA)を用いて,Bowen病,皮膚T細胞リンパ腫に対してPDTを,乳房外Paget病に対してPDDを施行した.PDTを試行したBowen病,皮膚T細胞リンパ腫の症例ではいずれも再発を認めたが,PDDは乳房外Paget病の病巣範囲の決定,腫瘍細胞の残存の確認に有用であった.PDT,PDDともに限界があることを認識し,慎重に適応症例を選択する必要があると考えられた.
  • 木暮 信一, 斎藤 伸明, 高塚 和也, 土屋 孔明, 阿部 拓也, 鈴木 義和
    2009 年 30 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    低出力レーザー照射(LLI)が末梢神経の伝導阻害を起こし鎮痛効果をもたらすことが報告されているが,その効果の神経線維特異性など不明な点が多い.そこで本研究では,皮膚に触刺激や痛刺激を与えたときの皮膚知覚神経応答を対象として,その応答に対するLLI効果を検討した.実験にはアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の背側皮膚-知覚神経標本を用いた.1標本において3-5本の知覚神経を分離した.皮膚をリンガー液に浸し,脊髄端を糸で結んだ知覚神経を記録電極に装着した.それぞれの神経の受容野を手動のピンセットで確認してから,マニピュレータに装着した外径1mmの針(痛刺激)とボールペン(触刺激)で5秒間の刺激を3回ずつ行い,刺激で誘発する知覚神経応答をマルチユニット活動として記録した.コントロールを記録してから,半導体固体レーザー(532nm, 808nm; 60mW, CW)を受容野に照射して(照射面積:28.3mm2)同様の刺激を繰り返した.分離した1本の知覚神経には数10本の神経が含まれているので,さまざまな振幅(100-1200μV)の,さまざまなパターン(tonic, phasic typeなど)の応答が混在して記録された.S/N比が高く明瞭にユニットとして分離できたものをスパイク・ヒストグラムを用いて200μV毎のユニットに分類した.さらに基準を設定して,各ユニットをtactile-specific(TS),tactile-dominant(TD),pain-specific(PS),pain-dominant(PD),othersに分類した.それらのユニット数はTSが8,TDが26,PSが17,PDが35個であった.532nmのレーザー照射はそれら分類されたユニットの感覚応答を照射前を100%とした場合6-55%のレベルに減弱するまで抑制した(いずれのタイプでも照射前の応答と比較して有意に抑制された:p<0.01).同様に,808nmのレーザー照射も分類されたユニットの感覚応答を23-50%のレベルまで抑制した(p<0.01).その抑制の程度において,波長間およびタイプ間での有意差は認められなかった.今回の結果から,532nmおよび808nmの低出力レーザーには皮膚知覚神経の痛覚および触覚刺激に対する応答を減弱させる効果があると結論される.しかし,その抑制効果には刺激選択性や波長依存性は認められなかった.
  • 三宅 清彦, 吉田 賢治, 岡本 三四郎, 秋谷 司, 中野 真, 坂本 優, 天神 美夫, 西村 隆一郎, 田中 忠夫
    2009 年 30 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    HPVは,そのDNAタイプにより,子宮頸部にコンジローマのような良性病変や,子宮頸癌のような悪性病変を引き起こすことが知られている.コンジローマの治療法は内科的治療・外科的治療であるが,光線力学療法(PDT)による治療効果については現在のところ明らかではない.今回,コンジローマ合併子宮頸部上皮内癌に対しPDTが著効した1例を経験したので報告する.34歳,子宮頸部病変にて精査・加療目的に受診.同部位にコンジローマおよび上皮内癌を認めコンジローマ合併上皮内癌と診断.HPVジェノタイピング(アンプリコア・リニアアレイ法®)にて6型と16型の重複感染を認めた.家族および本人から十分なインフォームドコンセントを得てPDTを施行した.
    治療6ヶ月後,組織診・HPV含め異常所見は消失した.本症例は,高リスクと低リスクHPVが子宮頸部に同時に感染したため,同部位にコンジローマおよび上皮内癌が生じたものと考えられた.PDTはコンジローマ合併症例に対しても有効な治療法であることが示唆された.
特集「特殊光を用いた内視鏡診断」
  • 荻原 達雄
    2009 年 30 巻 1 号 p. 30
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
  • 本多 英俊, 山口 学, 大谷 圭志, 臼田 実男, 池田 徳彦
    2009 年 30 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    1990年代に入って,腫瘍親和性物質の投与を行わずとも,内因性の蛍光物質による自家蛍光の強度差を利用して気管支を観察する自家蛍光気管支鏡が開発され,早期癌・異型扁平上皮の局在診断に有用と報告されている.上皮内癌および異型扁平上皮に対する感度は上昇し,従来の内視鏡診断では発見不可能な病巣も同定することができる.自家蛍光診断は癌病変の粘膜上の進展範囲を正確に把握できるため,内視鏡的レーザー治療の際の照射範囲や手術時の気管支切除線の決定に有用である.一方,早期癌と異型扁平上皮の鑑別,あるいはこれらの病変と炎症の鑑別には現在のシステムは不十分であり,今後の改良が期待される.
  • 上堂 文也, 石原 立, 飯石 浩康
    2009 年 30 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    自家蛍光内視鏡は,励起光を照射した際に消化管組織中の内因性の蛍光物質から生じる自家蛍光を内視鏡下にとらえ画像化する装置で,各種疾患において異なる蛍光特性の差を内視鏡画像上の色調差として描出することが可能である.Autofluorescence imaging videoendoscopy system(AFI)画像で咽頭,食道の腫瘍は自家蛍光の明るい緑色の背景粘膜内の蛍光の減弱した紫色の領域として描出される.胃では萎縮のない胃底腺粘膜が蛍光の減弱した赤紫~深緑色に,一方,幽門腺粘膜または萎縮粘膜が緑色に描出される.そのため,胃底腺内の早期胃癌は紫色内の緑色の領域として,また,幽門腺・萎縮粘膜内の早期胃癌は緑色内の紫色の領域として描出される.
  • 渋谷 潔, 藤原 大樹, 和田 啓伸, 長門 芳, 星野 英久, Mohamed Alaa, 田村 創, 芳野 充, 守屋 康充, 吉田 成 ...
    2009 年 30 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    Narrow Band Imaging(NBI)は,RGBの光学フィルターの帯域を制限することにより,粘膜表面の微細な構造をコントラスト良く画像化するシステムである.ヘモグロビンが,青色の光に対して強い吸収特性があることを利用し,青色の狭帯域の光を照射することにより,粘膜表面の微細構造,特に毛細血管を明瞭に描出することが可能になる.NBIを組み合わせた高解像度気管支ビデオスコープの観察では,気管支squamous dysplasiaにおける蛇行した血管網の増生,錯綜に加え,angiogenic squamous dysplasiaでは点状血管の描出および扁平上皮癌においては,腫瘍表層へ立ち上がってくる様々な太さの螺旋型あるいはスクリュー型の新生腫瘍血管を観察した.これらは癌の進展と関連して増大しており,気管支鏡下における扁平上皮癌の多段階発癌過程におけるangiogenesisを描出していると考えられる.
  • 丹羽 康正, 後藤 秀実
    2009 年 30 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2009/04/15
    公開日: 2010/08/13
    ジャーナル フリー
    共焦点内視鏡は検査中に細胞レベルの解像度をもって消化管粘膜を観察できる新しい手技である.最近拡大内視鏡が臨床レベルで拡がっており,共焦点内視鏡などの超拡大内視鏡は拡大内視鏡と病理組織をつなぐものと考えられている.表面から250μmまでの横断面像を475μm四方の大きさで見ることができる.共焦点内視鏡を使ってfluorescein sodiumの静脈注射することにより,腺管構造と微小血管構造を観察できる.悪性と良性病変を鑑別するために細胞の数,腺管の分布と不規則さ,微小血管の大きさと径,不規則さを評価する.潰瘍性大腸炎やバレット食道のように炎症を基盤にした悪性病変の診断も可能になる.共焦点内視鏡は細胞内の核を観察できないことやfluoresceinアレルギーのリスクはあるものの,来るべきNOTES(経管腔的内視鏡手術)や分子イメージングの時代にも悪性病変の診断や生理学的な分子レベルの流れを知るブレイクスルーになる可能性を秘めている.
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