日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
43 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
会告
第40回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
総説
  • 瀧端 康博
    原稿種別: 第40回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
    2022 年 43 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    [早期公開] 公開日: 2022/06/07
    ジャーナル フリー HTML

    近年,本邦では非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)が増加している.NASHは肝関連死や心血管イベント,さらに肝癌発生のリスクを上昇させる.その診断には肝生検が必要であるが,侵襲的な処置であり,新たな診断方法の開発が求められている.本稿では,光計測による脂肪肝組織診断の研究例についてまとめるとともに,当施設で取り組んでいるマウス生体肝臓に対する拡散反射スペクトル分光法の応用研究について紹介する.

第42回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
総説
  • 秋元 治朗, 田倉 智之
    原稿種別: 第42回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
    2022 年 43 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/07/15
    [早期公開] 公開日: 2022/06/16
    ジャーナル フリー HTML

    緒言:限られた医療財源の中で,国民にlow cost-high qualityな医療を提供すべく,国は各種医療行為の費用対効果の評価を始めた.本論文では成人悪性脳腫瘍の代表である膠芽腫に対する各種治療行為の費用対効果の比較を,質調整生存年(quality adjusted life years: QALY)と,標準治療に対する増分費用対効果比(incremental cost-effective ratio: ICER)という二つの尺度にて行なった.対象・方法:成人膠芽腫に対して,可及的摘出に引き続き,放射線療法,Temozolomide併用,維持療法(初回再発まで)を行なった標準治療群に対して,局所療法であるCarmustine wafer留置群,術中PDT施行群,術後にBevacizumab療法を追加した群,術後にTumor-Treating Field(TTF)による電場治療を追加した群を想定した.各種治療のQALYを既報をもとに算出し,標準治療に対する増分QALYを算出,治療を行う上での増分費用も算出した.QALYの算出においては,再発時までKPS80を維持,再発後はKPS 50でbest supportive careとし,死戦期2ヶ月はKPS 20という症例をシミュレートした.PDTの費用に関しては,術前に投与するTalaporfin sodiumの薬剤費,PDT技術料,DPC I,II期の入院加算費,半導体レーザーの減価償却費などを加算している.結果:各治療群のQALY/ICERは,Carmustine wafer留置群0.952(QALY)/468万3258(円/QALY),PDT施行群1.283(QALY)/219万6178(円/QALY),Bevacizumab投与群0.871(QALY)/3371万3971(円/QALY),TTF施行群 0.988(QALY)/3501万9455(円/QALY)などと算出された.結論:中央社会保険医療協議会における費用対効果の分析ガイドラインでは,各種医療行為のICERの閾値として500万円/QALYを提示しており,閾値を下回る治療行為は費用対効果が高い治療として推奨している.今回の分析では各治療における有害事象による増分費用を算出しきれていないが,悪性脳腫瘍に対するPDTは他治療選択肢に比して,費用対効果が高い治療として評価されるべきと思われた.今後,肺癌,再発食道癌などに対しても費用対効果の面からPDTの優位性を検討する報告がなされることを期待する.

歯と歯髄領域におけるレーザー・LED応用の特色ある研究
総説
第41回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
総説
  • 桐野 泉, 杉田 凛, 山岸 健人, 藤枝 俊宣, 坂上 恵, 藤田 克彦, 武岡 真司, 守本 祐司
    原稿種別: 第41回 日本レーザー医学会総会賞受賞論文
    2022 年 43 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2022/08/23
    [早期公開] 公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー HTML

    メトロノミックphotodynamic therapy(metronomic PDT: mPDT)は従来のPDTの1/1000にあたる0.1 mw/cm2以下の出力で長時間(数日以上)にわたり連続照射することにより癌細胞死を誘導するPDTの一手法である.筆者らはこれまでに小型の無線給電式皮下埋め込み型LEDデバイスを用いてmPDTを行いその抗腫瘍効果を報告した.さらに光源を腫瘍に接着させて照射を行うことにより,従来のPDTでは不可能だった緑色光(波長530 nm)による癌の光線力学治療が可能なことも示した.しかしメトロノミックPDTは照射時間が長いため,光増感剤の総使用量が多く,暴露時間が長くなる傾向にある.実際の臨床導入を想定すれば,光増感剤は安全性と利便性の面から経口投与が望ましい.そこでマウス皮内腫瘍モデルに対し光増感剤に経口投与の5-アミノレブリン酸(ALA)を使用し,皮下埋め込み型デバイスを用いた緑色光によるmPDTを用いた治療実験を行った.その結果ALA-mPDT群の皮内腫瘍はコントロール群と比較して優位に増殖抑制を受け,腫瘍が完全消失する個体もみられた.経口光増感剤ALAを使った無線給電式埋め込み型電子デバイスによるメトロノミックPDTは有効な抗腫瘍効果を発揮する.無線給電式埋め込み型電子デバイスと経口光増感剤を組み合わせた本治療法は,安全性の高い新しい局所癌治療法としてだけでなく,PDT治療中の患者のライフスタイルを変える次世代の癌治療法として期待される.

feedback
Top