Q スイッチNd:YAG レーザーの非接触照射を施行する際,病変部への刺激にならないような照射技術が必要である.しかし,これまで,照射方法の実際について本邦での検討の報告は無かった.今回,2通りの照射モデルを作成し,照射痕の解析を行った.結果,ハンドピースを顔の上で5 ~10 cm 離して手関節をスイングさせて照射する方法(Aとする)は,ピンポイントに相当数の重複が生じた上に,未照射領域が残存することが示された.一方,ハンドピースを顔に垂直にして顔から1 cm 以内の距離に保って一定速度で照射する(Bとする)と,重複数や照射範囲が術者の制御下になり,より安全で確実な照射方法と考えた.
2014 年に波長1470 nm 半導体レーザーとradial 2ring fiber による血管内レーザー治療(EVLA)が,わが国で行われた波長980 nm レーザーを対照とした多施設ランダム化比較試験の結果に基づいて保険認可された.波長1470 nm レーザーによるEVLA は,従来問題となっていた術後の疼痛,皮下出血が非常に少なく,治療成績も良好であり,今後のわが国における下肢静脈瘤治療を劇的に変えると期待される.
パルス幅を100 マイクロ秒に短縮した波長1320 nm マイクロパルス波レーザー(Micro PW)による血管内レーザー焼灼術(EVLA)の有効性と安全性を188例200肢の大伏在静脈および副伏在静脈を対象に検討した.1 年観察期間(120 肢)で血管閉塞率99.7%,血管収縮率23.7%,術後疼痛0%,鎮痛剤不要97%,皮下出血0%, EHIT Class2 以上2.0%であった.Micro PW EVLA は従来にない安全性と確実な有効性があり,次世代の血管内治療として有望である.
一次性静脈瘤の治療法としてのレーザー焼灼術は,近年広く受けいれられてきた.レーザー光と生体組織の相互反応は複雑であり,まだ不明な点を残すが,理解を深める事でレーザー焼灼術のパラメーターの適切な選択が可能となり,副作用の低減,治療の安全性・成績向上につながる.
本邦において主流である波長1470 nm ダイオードレーザーと2-ring radial fiber(2リングRF)で治療した焼灼静脈の超音波断層検査では,静脈内腔の血栓量が非常に少ない.著明な壁肥厚と径の縮小により狭小化した内腔には血流は認めず,代わりに内腔中央に低エコー輝度で易圧迫性の超音波断層像を認めた.この低エコー輝度部はおよそ3~6 か月間継続し,その後全体の線維化に同化され消失した.
波長1470 nm の組織における光減衰率は高く,これを2リングRF と組み合わせることにより,少ないエネルギーで静脈壁に全周性・内膜全層に及ぶ熱損傷を起こし,新たな血液の流入路は絶たれるため血栓は形成されず,加えて熱損傷程度も比較的軽いため創傷治癒反応もゆっくり進行する.
半導体レーザーによる伏在静脈瘤の血管内焼灼術は2011 年の保険収載以来急速に普及している.今後,標準術式になると予想されガイドラインの範囲を超えた病態への応用が期待される.今回,ストリッピング術再発例に対する硬化療法を併用した伏在静脈焼灼術および不全穿通枝に対する経皮的焼灼術の有効性を検討した.術後1 か月,6 か月, 1 年の閉塞率はそれぞれ97.0%,86.4%,72.0% と92.9%,77.4%,66.3% であった.中長期閉塞率を向上させるためには今後さらなる検討が必要である.
下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術(EVLA)は最も容認された治療法の一つとなってきた.治療における半導体レーザー装置は,現在ELVeS レーザーとELVeS レーザー1470 の2 機種が医療機器として承認され,商用化されている.主な相違点は,波長が980 nm:1470 nm,使用する光ファイバーがベアファイバー:ラディアル2リングファイバーとなっている.波長が長い1470 nm,およびラディアル2 リングファイバーを用いることにより,静脈壁内の水分に吸収されること,および全周的(360 度)なエネルギー放出は静脈壁に均一な光エネルギーによる障害を与えることで有効性を高めることができ,加えて静脈壁の穿孔や周辺組織の熱刺激を回避できるため,術後疼痛,皮下出血等の合併症を最小限とすることができる.
波長1470 nm の半導体レーザーと,CeramOptec 社により開発されたラディアルファイバー,またはラディアル2 リングファイバーを用いた血管内レーザー焼灼術についてモンテカルロ法を用いた光伝搬の計算と熱伝導方程式を用いた温度分布計算とを組み合わせた光・熱伝搬シミュレーションによる評価を行った.ラディアル2 リングファイバーを用いることで,ラディアルファイバーを用いた場合と比べて静脈の過度な温度上昇を避けることができ,治療中の炭化や固着を避けられることが,計算機シミュレーションとex vivo 実験の双方から確認された.