日本レーザー医学会誌
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27 巻, 4 号
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原著
  • 正木 創平, 入内島 嵩紀, 斎藤 明義, 龍 順之助, 福元 俊孝, 相澤 信
    2006 年27 巻4 号 p. 249-256
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    SV40初期遺伝子の挿入により安定した増殖能を獲得した正常(Ch-8)および変形性関節症(Ch-8-OA)の関節軟骨由来ヒト軟骨細胞株をモデルとして,種々のサイトカイン,特にTNFαおよび低反応レベルレーザー照射に対する軟骨細胞の反応性を比較検討した.TNFα処理によりCh-8-OA細胞はCh-8細胞に比較して有意の増殖抑制が認められ,TUNEL陽性細胞の増加とcaspase 3および8活性の上昇が認められ,これら細胞がアポトーシス変化を起こしていることが観察された.一方AlGaInP diodeレーザー照射によりCh-8,Ch-8-OA細胞共に増殖促進が認められ,さらに興味深いことにレーザー照射の併用によりTNFαによる細胞増殖抑制作用の低減が観察され,レーザー照射が細胞増殖の促進,またTNFαによるアポトーシスの回避に機能していることが示唆された.同様の結果は正常あるいは変形性関節症(OA)患者由来の初代培養軟骨細胞においても観察された.これら結果より樹立した軟骨細胞株はOAの病態解析のためのモデルとして有用であると考えられる.またin vitroにおいてAlGaInP diodeレーザー照射がOA由来軟骨細胞の増殖促進作用を示したことは,今後OA患者に対するレーザー照射の臨床的応用の可能性を示すものと考えられる.
  • 春山 親弘, 加藤 純二, 天谷 哲也, 明石 豪, 大須賀 敬悟, 久木留 伸享, 五十嵐 章浩, 高瀬 保晶, 平井 義人
    2006 年27 巻4 号 p. 257-262
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    最近,一つのレーザー機器から異なる二つの波長2.94μmと1.67μmを同時に照射できる2波長レーザー装置が軟組織および硬組織の蒸散用に開発された.本研究では,このレーザーを象牙質切削に応用した際の基礎的実験として,レーザー照射後における歯髄反応を調べた.本研究に用いた被験歯は,成犬3頭から得られた計42歯である.これらの成犬に対し全身麻酔を施した後,エアータービンハンドピースにて象牙質内まで窩洞形成を行なった.その後,試作2波長レーザー発振装置を用いて,注水下のもと,30秒間レーザーを象牙質に照射した.照射条件を2.94μm(以下3μm帯と略す)と1.67μm(以下2μm帯と略す)の混合比率を変化させ,条件を設定した.すなわち,1. 3μm帯単独群(1W,40Hz) 2. 2μm帯単独群(1W,40Hz)3. 3μm(50%)-2μm(50%)帯混合群(1W, 40Hz)4. 3μm(100%)-2μm(100%)帯混合最大出力群(2W40Hz)を実験群とし,対照群をエアータービンのみによる切削の 5. タービン群とした.その後,グラスアイオノマーセメントを填塞した.観察期間は術直後,7日および28日間とし期間経過後,歯髄変化の実験病理組織学的検討を行った.3μm帯を含む照射条件では,象牙質の効率的な切削が得られたが,2μm帯では,全く象牙質の切削は得られなかった.また,全ての症例で,充血などの軽度な症状はみられたが,歯髄に対する重篤な損傷は全くみられず,良好な病理組織像を示した.したがって,本2波長レーザーは,特に3μm帯を含む条件では,効果的な象牙質の切削が得られ,また歯髄に対して安全であることが示唆された.
特集「皮膚科医が行うレーザー治療」
  • 山田 裕道
    2006 年27 巻4 号 p. 263
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
  • 長谷川 敏男, 須賀 康, 池嶋 文子, 水野 優起, 池田 志斈, 山田 裕道
    2006 年27 巻4 号 p. 264-269
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    後天性色素異常症である尋常性白斑は,特に分節型においては保存的治療に抵抗性のことが多く,外科的治療法として吸引水疱蓋を用いた表皮移植術が試みられている.この治療法は,白斑部の表皮を除去した後,正常皮膚から持続吸引により得た水疱蓋の表皮を移植するものである.今回,スキャニング装置付炭酸ガスレーザー(SurgiTouch: Lumenis Laser 30C®,日本ルミナス社製)を用いたレーザー・リサーフェシングによって白斑部の植皮床を形成する,吸引水疱蓋表皮移植術を分節型の尋常性白斑15症例に対して施行した.その結果形状が複雑な病変部においても正確で十分な表皮剥離が可能であり,植皮後の色素再生も従来の方法と比較して均一で整容的にも優れていた.
  • 服部 尚子, 朝比奈 昭彦, 渡辺 孝宏, 白井 明, 鑑 慎司, 渡辺 玲, 岸 晶子, 大原 國章
    2006 年27 巻4 号 p. 270-279
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    可変式ロングパルスダイレーザー(Vビーム®,595nm-long pulsed dye laser with adjustable pulse duration (ALPDL))は波長595nm,最大出力40 J/cm2のパルスダイレーザーであるが,パルス幅が可変(0.45ms~40ms)で,ダイナミック・クーリング・デバイス®とよばれるテトラフルオロエタンガス(-26.1℃)による皮膚冷却装置を付属していると言う特徴を有する.従来型の機種より波長の長いことから,より深くまでレーザー光が到達し,長いパルス幅,大きい出力により,より少ない副作用で,より大きな血管をターゲットとできる.ALPDLは5種類の円形のハンドピースと3x10mmの矩形のハンドピースを装着することができる.色素斑用ハンドピースは,患部の血管を障害することなく,老人性色素斑等の色素性病変を治療可能としている.
    ALPDLは,単純性血管腫,苺状血管腫,毛細血管拡張症,老人性色素斑,ウイルス性疣贅, 瘡,肥厚性瘢痕/ケロイド,乾癬,光老化等,様々な病変の治療に利用され,有効であるとの報告が示されている.ALPDLのこれらの疾患への治療可能性について報告する.
  • 山田 裕道
    2006 年27 巻4 号 p. 280-284
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    ロングパルスアレキサンドライトレーザーの脱毛治療時における毛幹・毛包組織の変化を病理組織学的に検討した.材料は27歳女性の頭皮.手術時に採取された余剰皮膚はレーザー照射された後,ホルマリン固定されHE染色に供された.用いたレーザー機種はGentle LASE LETM(Candela Corporation. Wayland.MA.USA)で波長755nm,パルス幅3msec,spot size 12mmである.照射出力は30 J/cm2で,皮膚を保護するための冷却装置dynamic cooling devices(DCD)を使用した.真皮上層から下層までにおいては,横断面,縦断面ともに毛幹組織の空胞変性と内毛根鞘から外毛根鞘にかけて変性像が見られた.表皮構造はよく保たれていた.脂肪組織中に存在する下部毛包および毛球部においては毛根鞘構造が破壊され,毛幹や内毛根鞘組織が脂肪組織中に逸脱している,興味深い像が認められた.以上の所見はDCDを用いたロングパルスアレキサンドライトレーザーによる脱毛治療の有効性と安全性を示唆するものと思われた.
  • 森田 秀樹
    2006 年27 巻4 号 p. 285-288
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    低出力レーザーの臨床応用は,当初,帯状疱疹等の疼痛治療に用いられていた.その後,アトピー性皮膚炎のかゆみや,皮膚潰瘍等にも使用されるようになった.本稿では,かゆみを訴える代表的疾患であるアトピー性皮膚炎と帯状疱疹の痛みに対する低出力レーザー治療を中心に記載した.臨床の場では,低出力レーザーは単独で用いられることは少なく,各疾患の一般的な治療に加えて用いられることが多い.低出力レーザーは,さしたる副作用もなく,疼痛軽減のみならず,止痒効果,抗潰瘍作用もあり,補助療法としての利用価値は大きい.
  • 遠藤 英樹
    2006 年27 巻4 号 p. 289-296
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    炭酸ガスレーザーは波長10600nmの気体レーザーであり,水分に吸収される特長を利用して皮膚科・形成外科領域では,皮膚小腫瘍の治療に多用されている.腫瘍の大小により,発振モード(シングルパルス,リピートパルス,連続波,スーパーパルス,スキャン)を選ぶことができる.日常の診療においても治療の選択範囲を広げる意味においても大変,有用なレーザーであるが,施術者は機器の特徴と出力設定,副作用について充分に理解しておく必要がある.
  • 馬場 直子
    2006 年27 巻4 号 p. 297-302
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    15歳以下の小児385例,主に6歳以下の乳幼児を対象に血管腫・メラニン増殖性疾患のレーザー治療を行った.こどものレーザー治療は,リドカインクリーム,トリクロリールシロップ,エスクレ座薬などを用いて,できる限り全身麻酔をかけずに,局所麻酔だけで行うことが望ましいと思われた.
    ポートワイン母斑に対するダイレーザー治療は,年齢が若いほど有効で,生後2週目から治療は可能であった.部位別では,顔や 幹がより有効で,四肢は効果が下がる傾向が顕著にみられた.生涯残るサモンパッチではダイレーザー治療の適応となり,1回の照射だけでほとんど消失させることができた.苺状血管腫の腫瘤型は,隆起する前の,生後1~2か月以内にレーザー治療を行えば,ピーク時の大きさを縮小させ,早く消退させ,将来の瘢痕を最小限に抑えられる.
    異所性蒙古斑に対するQスイッチアレキサンドライトレーザー治療は,9割以上に有効で,満足できる結果が得られた.太田母斑に対するQスイッチアレキサンドライトレーザー治療は,年齢が若いほど有効で,思春期を過ぎると有効率が50%程度に下がる傾向がみられた.色素性母斑と扁平母斑に対するQスイッチアレキサンドライトレーザー治療は,80~90%で再発がみられ,無効例が多かったが,低月齢では10~20%程度の有効例もみられた.
  • 中瀬古 裕乃, 松本 義也
    2006 年27 巻4 号 p. 303-308
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    光線力学的療法(photodynamic therapy : PDT)は腫瘍親和性光感受性物質と光線との併用により悪性腫瘍内で光化学反応を惹起させ,腫瘍細胞を選択的に死滅させる治療法である.
    皮膚科領域においては未だ保険診療は認められてはいないが,ポルフィリン前駆体の5-aminolevulinic acid(ALA)を外用するALA-PDTが主に行われており,特に日光角化症,Bowen病,表在型基底細胞癌などの表在性上皮性皮膚悪性腫瘍の治療に有効である.
    われわれは630nmの波長であるエキシマダイレーザーを用い日光角化症,Bowen病,表在型基底細胞癌などの表在性皮膚悪性腫瘍,皮膚リンパ腫,手術が困難と思われる乳房外Paget病,さらに悪性腫瘍以外の脂腺増殖症,難治性疣贅,尋常性ざ瘡,サルコイドーシスなどの皮膚疾患に対しALA-PDTを行っている.特に日光角化症,Bowen病の症例を多数経験しており良好な治療成績を得ている.
    高齢化が進む現在,表在性皮膚悪性腫瘍の患者も年々増加傾向にある.外用ALA-PDTは非侵襲的であり,高齢者や全身状態の悪い方,手術を拒否された方にも適応できるのが特長である.
    全身への副作用はなく,繰り返し治療が可能であり,整容的にも優れているPDTの必要性は今後さらに高くなると考える.
    また皮膚科領域におけるPDTを広く一般に普及させるためにはガイドラインの作成が必要と考えられる.
  • 船坂 陽子
    2006 年27 巻4 号 p. 309-314
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え,光老化により生じた顔面のシミやシワ,あるいは若年者においてはニキビに対して,その改善と予防を望む声が高くなっている.美容皮膚科学的治療においてレーザー治療は重要な位置を占める.本稿ではレーザー光によりこれら病態に対してどのような治療効果がもたらされるのかを概説した.
  • 渡辺 晋一
    2006 年27 巻4 号 p. 315-326
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/01/15
    ジャーナル フリー
    ナノ秒のパルス幅のQスイッチ・レーザーは肝斑以外の色素病変の治療に有効である.しかし,カフェオレ斑のような茶アザはレーザー治療に反応しない事が多い.そこで,正確な診断を下すことがレーザー治療の鍵を握る.ただしレーザー治療後に炎症後色素沈着が見られるが,通常3-4カ月で自然消失する.もし,炎症後色素沈着が1年以上続く場合は,組織学的色素失調を疑わなければならない.血管腫の治療にはマイクロ秒のパルス幅のレーザーを使用しなければならない.また,光が到達する深さには限界があるため,すべての血管腫に有効というわけではない.脱毛や皮膚の若返りは,ミリ秒のパルス幅のレーザーあるいは光によって可能である.しかし,このパルス幅の光では表皮のダメージが強いので,照射エネルギーを下げ,また表皮を冷やさなければならない.その結果,皮膚の若返り効果は不十分である.いずれにせよレーザー光のパルス幅と波長はレーザー治療の鍵となる.使用するレーザーのパルス幅と波長をみれば,その治療の結果がどのようになるかを予想することができる.
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