日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
18 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 中村 光彦
    1997 年 18 巻 4 号 p. 3-14
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    肝腫瘍に対する光化学治療の基礎的実験として, 腫瘍親和性のある光感受性物質PH-1126を用い, 治療用レーザー装置には新しく開発された波長可変パルスレーザーのYAG-OPOレーザーを用いた。
    日本白色家兎の肝にVX2細胞を移植して肝腫瘍モデルを作成した。担癌家兎の静脈内に3 (mg/kg) 体重のPH4126を投与した後肝組織及び腫瘍内のPH-1126を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により経時的に計測した。腫瘍内のPH-1126濃度は, 投与後48時間で正常肝組織 (254±0.15μg/g) と比較して約1.5倍3.43±0.22 (μg/g) を示し至適照射時間を裏付けした。
    光化学治療はPH-1126投与48時間後にYAG-OPOレーザー波長650 (mm), パルスエネルギー2 (mJ/pulse), 繰り返し周波数50Hz, 平均出力 (100mW/cm2) で150J/cm2) 照射にて行った。レーザー照射に伴う組織内の温度上昇をデーターロガーを用いて測定したところ, 3℃以内に留まった。治療効果の判定はPDT施行2週間後と3週間後に犠牲致死し,遺残する腫瘍の最大割面の面積で判定した。その結果, 完治症例は認あられなかったが, 対照群 (179.0±40.3mm2) に比較し65.5±19.7 (mm2) と有意に腫瘍の縮小効果が認められた。さらに腫瘍の増殖抑制効果が認められたのみならず, 1) 肝内転移増殖抑制, 2) 肺転移増殖抑制の2点の新しい治療効果を含む有意な抗腫瘍効果が認められた。
  • -主として完全閉塞病変に対して-
    淀野 啓, 野田 浩, 篠原 敦, 阿部 秀一郎, 斎藤 陽子, 佐々木 泰輔, 清水 将之, 鈴木 宗平, 竹川 鉦一
    1997 年 18 巻 4 号 p. 15-20
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    閉塞病変に対するレーザー血管形成術 (PTLA) は一般に困難な場合が多い。今回, 1986年から1995年まで下肢閉塞性動脈疾患に対してレーザー血管形成術を行った130件の中から, 完全閉塞症例について, 血栓溶解療法を併用したPTLA療法の有用性と問題点について検討したので報告する。症例は130例中41例 (32%) であり全例閉塞性動脈硬化症である。血栓溶解療法に使用した薬剤は, ウロキナーゼであり, 挿入したカテーテルを血栓内に刺入し1-2万単位/ml/min. の濃度と速度で動注し, 総量30-120万単位投与した。使用した装置は, オリンパス社製1060nm CW Nd: YAGレーザー装置である。術後良好な開存を示した症例は31例で, 初期成功率76%であった。1年開存率は67%, 3年開存率は50%, 5年開存率は46%であった。
    血栓溶解療法併用下レーザー血管形成術は, 対象が完全閉塞病変であることを考慮すれば初期成功率の改善に有用であったと考えられたが, その遠隔成績は十分なものではなかった。
  • 星野 俊一, 緑川 博文
    1997 年 18 巻 4 号 p. 21-29
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    1997年6月迄に下肢慢性閉塞性動脈硬化症56例80病変に対し, レーザー血管形成術 (LAP) と他のinterventional treatmentの併用療法を施行した。LAPは, 病変長が腸骨動脈領域は5cm以下, 大腿膝窩動脈領域は10cm以下が良い適応であり, さらにバルーン血管形成術にかわり, LAPにアテレクトミー, ステントを併用することは臨床成績向上に有用であった。LAPは従来バルーンでは困難であった病変に対して, 血管形成術の適応を拡大した意義は大きい。今後レーザーシステムの改良開発がすすめば, さらなる臨床成績の向上が期待される。
  • 岡田 昌義
    1997 年 18 巻 4 号 p. 31-39
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    社会の高齢化や食事の欧米化とともにわが国において動脈硬化症が急増している。その結果, 虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症が頓に増加している。とくに, 虚血性心疾患に対しては, 血管内治療法としてPTCAやStent療法, 外科治療として冠動脈バイパス手術 (CABG) が一般的に実施され, かなりの成果がえられている。しかし, これらの症例の中には冠動脈が全体に枯枝のごとく細くこれらの治療法が実施できないケースが存在する。
    このような末期的虚血性心疾患に対して, 著者はCO2レーザーを用いて左室壁に血管を新生させて左室腔内の動脈血を虚血に陥った心筋内に灌流させる画期的な治療法を考案した。5年間にわたる基礎的研究で本法の有用性を確認した後, 1985年11月12日, 世界で初めて臨床例に応用し成功を収めた。これらの基礎的並びに臨床的研究の成果と世界におけるTMLRの現況について報告する。
  • 中野 元, 矢部 喜正
    1997 年 18 巻 4 号 p. 41-54
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    波長2.08μmのHo: YAGと波長2.01μmのTm: YAGを用いlaser coronary angioPlastyを行った。対象はHo: YAG18例, 全例1枝病変例でRCA5例, LAD11例, Cx2例である。術前の%DSは75.4±4.0, MLDは0.76±0.45拍田を示した。acute successは56% (10/18), 全例にadjunctive ballooningを施行しprocedural successを全例に得た。% DSの推移ではlaser alone 49.6±17.1, ballooning 24.7±12.2を示した。また, 遠隔期の再造影ではrestenosisは17% (3/18) と遠隔成績は良好であった。
    一方, Tm: YAGは対象17例, target lesionはRCA4例, LAD7例, Cx1例およびprotected LMCAを5例からなる。術前の% DSは80.0±9.4, MLDは0.68±0.35mmを示した。acute success 65% (11/17), 全例にballooningを行い, 100%のprocedural successを得た。%DSの推移はlaser alone 56,2±17.7, ballooningに26.4±12.8を示した。遠隔期の再造影の結果, 再狭窄を18% (3/17) に認めた。また, protected LMCA 5例については4例にacute successを得, 再狭窄を1例に認めた。Ho: YAG, Tm: YAG両群共にmajor complicaしionを認めず, 共に安全性に優れ, 確実な蒸散効果を有し臨床的有効性が示された。
  • 加藤 富嗣, 田村 憲, 笹目 敦子, 中島 均, 雨宮 正, 臼井 幹夫, 楽得 博之, 宮城 学, 原 武史, 内藤 雄一, 伊吹山 千 ...
    1997 年 18 巻 4 号 p. 55-60
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    光感受性物質であるHpDを用いて,動脈硬化に対するPDTの硬化にっいて研究してきた。しかし, PDTの臨床応用に際し, HpDの副作用である光線過敏症が問題となる。今回, Dispatch cathetrを用いて少量のHpDを動脈硬化に局所的に投与, 続いて血管内より630nmのYAG-OPOレーザーを200mW10分で照射した。動脈硬化内膜は非照射部位と比較し著名に菲薄化を認めた。内膜と中膜の比をI/M比としてPDTの効果を判定した。I/M比はPDT施行部位で2.38±0.55と有意に減少した。Dispatch catheterを用いることで動脈効果部位十分な量のHpDを取り込ませ, かつ有効にPDTを施行できた。
  • 林 潤一, 斉藤 喬士, 金田 明, 会沢 勝夫
    1997 年 18 巻 4 号 p. 61-65
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    光力学的診断・治療Photodynamic Diagnosis (PDD) and Thrapy (PDT)は, 1) 標的組織に集積する光感受性物質, 2) 組織透過性に優れた長波長レーザー, 3) 照射レーザーを分離した蛍光観測, の各領域における研究開発の近年における急速な発展により, 癌組織や粥状動脈硬化巣の診断・治療に新たな可能性を広げつつある。
    クロリン系光感受性物質NPe6は粥状動脈硬化巣に集積し, 664nmの長波長半導体レーザーの照射により672nmの蛍光を発する。バンドパスフィルターを組み込んだ高感度蛍光観測装置により蛍光を発する粥状動脈硬化巣の局在診断が可能となった。さらにレーザー照射による組織フルエンスを上げて, 粥状動脈硬化巣内の弾性繊維網を破壊することが可能となった。
    循環器領域における粥状動脈硬化巣に対する光力学的診断・治療が発展しつつある。
  • 桜田 真己, 三宅 隆之, 荒井 恒憲, 吉川 美弥, 菊地 眞, 宮本 明, 水野 杏一, 内海 厚, 竹内 清
    1997 年 18 巻 4 号 p. 67-74
    発行日: 1997年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    短時間でバルーンを加温・冷却できるホットバルーンを開発した。血管壁に対する効果から, 最適な加温条件があるかを検討した。高温または長時間加温による深部までの熱障害は再狭窄を増加させる。兎の腸骨動脈では, 70℃で15秒間の加温が, 最適であった。短時間加温のホットバルーンは, Elastic recoilを抑え, 内膜面の溶接が可能であるため, 経皮的冠動脈形成術後の再狭窄防止に有効であると思われる。
feedback
Top