日本レーザー医学会誌
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25 巻, 4 号
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原著論文
  • 熊崎 佳美, 毛利 大介
    2005 年 25 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    近年, レーザーを用いた手術が数多く行われるようになってきたが, 中耳手術の分野でも, 種々のレーザーが使用されるようになってきた. しかしながら, どのようなレーザーを用いるかは, 各術者の臨床経験より選択されており, 基礎的な裏付けが, ほとんどなされていないのが現状である. そこで, 我々は中耳手術における側頭骨や耳小骨の切削に対し, どのようなレーザーが最も適しているかを明らかにするため, 耳小骨の光吸収スペクトルの解析を試みた. 更に, その結果から耳小骨切削に適当と思われるレーザーを選択し, その効果を確認した. 耳小骨の光吸収スペクトルには, 3.03 μm, 6.10 μm及び9.83 μmの3つのピークを認めた. 3.03 μmは水の吸収帯を, 6.10 μmはアミド基, 9.83 μmはリン酸基の吸収帯を示していると考えられた. これらの結果より, 3.03 μmに対してはEr:YAGレーザー (発振波長2.94 μm), 9.83 μmに対してはCO2レーザー (発振波長10.6 μm) を選択し, 耳小骨 (キヌタ骨) への照射実験を行った. CO2レーザーの照射では, 耳小骨の照射中央が陥凹し, 周囲は炭化を伴っており, 切削深度は比較的浅く, 切削辺縁はなだらかであった. また, 切削面は粗く, 小さな亀裂が多数観察された. 一方, Er:YAGレーザー照射では, CO2レーザーと比べ, 切削深度は深く, 周囲の骨には炭化を伴っていなかった. 切削面は非常にスムースで, 凹凸が少なく, 亀裂も認められなかった. 以上の結果より, 中耳手術における骨の処理には, Er:YAGレーザーが適していると考えられた.
  • 内園 岳志, 部谷 学, 粟津 邦男, 砂田 和久, 吉川 一志, 井上 正義
    2005 年 25 巻 4 号 p. 265-272
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    レーザー生体相互作用の認識には, 生体組織の吸収係数や反射率等の光学特性の絶対値評価が不可欠である. 吸収係数はレーザー生体相互作用を特徴付ける重要な物理定数である. 本稿では, 中赤外域におけるヒト歯とウシ歯エナメル質の光学特性を評価するため, KBr粉末とエナメル質粉末からなるペレットをフーリエ変換赤外分光光度計 (Fourier Transform Infrared Spectroscopy, FTIR) を用いて吸収係数スペクトルを評価する手法, KBr-FTIR法を提案した. KBr-FTIR法にてヒト歯エナメル質, ウシ歯エナメル質の光学特性を求めた結果, 最大吸収ピーク波長 (9.6 μm) にてヒト歯エナメル質の吸収係数 (17324±12% [cm-1]) はウシ歯エナメル質のそれ (7701±12% [cm-1]) に比べて2倍程度大きいことが明らかとなった. このことから, ウシ歯はヒト歯の擬似モデル対象として幅広く研究に用いられているため, ヒト歯エナメル質およびウシ歯エナメル間の吸収係数の差を考慮し, 臨床において使用されるレーザーパラメーターに注意を払う必要がある.
特集「歯科におけるレーザー応用の現状」
  • 加藤 純二
    2005 年 25 巻 4 号 p. 273
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
  • 平井 義人, 篠原 崇, 高瀬 保晶
    2005 年 25 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    レーザーは工学, 医学をはじめ近代科学技術の様々な分野で応用されている. 歯科領域においても軟組織や硬組織への臨床応用を目的とした基礎的研究や臨床報告がさかんに行われている. 現在の齲蝕治療は, 精度が高く操作が簡便な診査法や, 切削器具の不快音や可及的に疼痛を抑えられる新規切削器機など, より患者への負担を軽減できる器機の開発が求められており, その器機としてレーザーが注目されている.
    当教室では半導体レーザーを応用した齲蝕診断装置の基礎的研究において, 臨床上簡便な装置であり, かつ齲蝕の診断に有効な診査法であると報告した. レーザーは, 回転切削器具と比較し騒音, 振動が少ないことによる不快感の減少や除痛法施行の抑制など新しい切削器具として注目されている. また, Er:YAGレーザーを歯質に応用した場合の歯髄への安全性については確認されている. しかし, レーザー切削面には変性層が生じ強い接着力が期待できない. そこで変性層の除去法に関する研究を行い接着力の回復が得られることを明らかにした.
    以上よりレーザー応用における修復治療は日々進歩しており, 今後の研究によりさらに臨床上有用な器具として飛躍することであろう.
  • 竹田 淳志
    2005 年 25 巻 4 号 p. 281-290
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    年々わが国の歯科医師の間でレーザー応用が普及しつつある. 特に歯科診療において口腔軟組織および窩洞形成へ応用されるようになってきている. 本論文は歯内治療学の分野における最近のレーザー応用, 特にレーザードップラー血流計による歯髄血流の測定, 直接覆髄法, 生活断髄法, 抜髄法, 根管消毒, 根管形成, 根尖切除術への応用について総括するものである. さらに, 根管内におけるレーザー照射に関する問題点について考察する.
  • 青木 章, 石川 烈
    2005 年 25 巻 4 号 p. 291-299
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    レーザーは, その蒸散, 止血, 殺菌などの様々な優れた生体への効果により, 歯周治療において従来の機械的治療法の補助あるいは代替手段として役立っている. レーザーは細菌感染による慢性炎症性疾患である歯周炎の治療に効果的である. 近年, 歯科領域において軟組織および硬組織両者に応用可能なEr:YAGレーザーの開発が進んだことにより, 歯周治療においてレーザーの応用の範囲が大きく広がり, Er:YAGレーザーは歯周治療において非常に有望なレーザーとなっている. 本稿では, 歯周治療における歯肉組織の審美治療, 歯石除去を含む歯周ポケット治療, 歯周外科治療, インプラント治療などへのEr:YAGレーザーの応用について, 最近の基礎的・臨床的研究成果に基づいて紹介する.
  • 田中 秀生, 大浦 健宏, 橋本 賢二
    2005 年 25 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    光線力学療法は, 比較的新しい癌の治療法である. われわれは, 口腔領域疾患が本療法の良い適応であると考え, その効果について検討してきた. 本稿で, われわれの行ってきた口腔癌に対する表面照射および組織内照射PDT, また口腔前癌病変に対するALA-PDTについて報告する.
  • 加藤 純二, 守矢 佳世子
    2005 年 25 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    小児歯科の診療では, 対象が子供であることから, 治療時に恐怖感や痛みを与えない安全な治療が求められる. また迅速な治療が要求されるとともに, 術後の管理がしやすいことも重要である. これら小児歯科特有の条件に対し, 歯科用レーザーの応用は非常に有用である. 現在, 歯髄処置には創傷治癒促進効果をもつHe-Neレーザーが応用されている. 齲蝕予防には炭酸ガスレーザーやNd:YAGレーザーが用いられ, エナメル質への耐酸性付与が確認されている. 口腔軟組織疾患には炭酸ガスレーザーが主に使用され, 術中出血がなく, なおかつ治癒が速やかで術後疼痛がほとんどないという点で効果を挙げている. さらに, 歯の切削にはEr:YAGレーザーが使用され, 痛みのない硬組織切削が可能となっている. これら全てのレーザーは小児に対して質の高い治療を提供している.
  • 安孫子 宜光
    2005 年 25 巻 4 号 p. 313-322
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    レーザー照射が創傷や難治性潰瘍に対して治癒効果があると報告されて以来, 炎症抑制, 疼痛減少, 骨折の治癒促進など広範な臨床効果が数多く報告され, レーザー療法の応用がめざましい. レーザー療法に対する懐疑的な意見や副作用に対する十分な検討が行われていないという指摘も依然として存在する. レーザー療法が進展しているなか, レーザー照射の生物学的効果のメカニズムに対する解明は遅れていると言わざるを得ない. 医学領域へのレーザー療法の積極的な応用を推進するためにも生物学的効果を実証科学的に明確に証明する必要があろう. レーザー照射の生物学的効果の分子レベル, 細胞生物学レベルでの解明にあたり, 培養細胞を利用することは有用性が高く, 得られる情報は生体の複雑な代謝系, 細胞機能に与えるレーザーの影響を解明することに貢献できると考えられる.
    ヒトゲノム計画のドラフトシーケンスが終了し, ポストゲノム科学研究へと進むなか, ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム, を統合したバイオインフォーマテイクス研究が飛躍的に進展している. ゲノム研究では, 膨大なゲノムデータベースを駆使した遺伝子ホモロジー検索, モチーフ検索が活用できるようになり, トランスクリプトーム研究では, 差分化遺伝子クローニングによる遺伝子探索や一度に数万の遺伝子の発現を短時間に解析できるDNAマイクロアレイ, Gene Chipが開発されている. 本稿では, レーザー療法の生物学的効果を実証科学的に解明する試みとして, 低出力レーザー照射による歯周病の炎症抑制や骨形成促進作用について歯周組織細胞, 骨芽細胞の培養系を応用して得られた研究成果を解説するとともに, 機能ゲノム科学研究技術を導入した低出力レーザー照射応答遺伝子や分子ネットワークの探索への試みを紹介する.
  • 部谷 学, 内園 岳志, 粟津 邦男
    2005 年 25 巻 4 号 p. 323-331
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/02
    ジャーナル フリー
    感染歯質除去, う蝕予防, 初期う蝕診断など, 歯牙硬組織を対象とした, 種々の歯科治療にレーザーが導入されつつある. レーザーを安全な医療技術として更に普及させるためには, 既存技術と比べて同等あるいはそれ以上の利点・治癒効果が求められる. レーザーの波長, ピークパワー密度などを, 適切に選択することによって, 特定の相互作用を空間的に制御して誘起できる. 本稿では, レーザー硬組織治療としてう蝕予防のための硬組織改質と窩洞形成のための硬組織掘削の2つを取りあげる. 基礎的な視点から, それぞれのレーザー治療・診断に関連するレーザー相互作用について述べる. また, 新たな窩洞形成手法として, 透過液体とレーザーを組み合わせた技術を紹介する.
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