日本レーザー医学会誌
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44 巻, 2 号
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会告
一般
原著
  • 尾本 大輔, 西堀 公治
    原稿種別: 原著
    2023 年 44 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/07/05
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    現在の太田母斑や異所性蒙古斑の治療では,Qスイッチレーザー(ルビー,アレキサンドライト,Nd:YAG)が主として用いられておりその有効性は明らかであるが,色素沈着や色素脱失などの合併症が問題になる.近年,より短いパルス幅のピコ秒レーザーが登場し,合併症のリスクを低減した治療が期待されている.当院では,ピコ秒レーザーによる太田母斑・異所性蒙古斑の治療にパルス幅339 psのピコ秒Nd:YAGレーザーを用いている.太田母斑,異所性蒙古斑のいずれにおいても,特に乳児においては良好な結果が得られたが,成人では効果に乏しい例もあった.合併症についてはQスイッチレーザーによる治療よりも軽症で頻度も少ない結果が得られた.しかし同一患者においても,患部の皮膚の厚みの違いや施術者の違いに起因すると考えられる,治療効果の差異が生じた.今後はピコ秒レーザーの適応となる患者や,最適なフルーエンス設定をさらに検討する必要がある.

脳神経外科領域におけるPDTの現状と問題点
原著
  • 今井 亮太郎, 佐々木 光
    原稿種別: 原著
    2023 年 44 巻 2 号 p. 85-94
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/07
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    光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)を実施した悪性脳腫瘍患者19例の治療経過を追跡した.このうち神経膠腫は17例で,WHO2016におけるGrade IVが13例(初発8例,再発5例),Grade IIIが4例(初発1例,再発3例)であった.9例ではカルムスチンウエハーの留置を併用した.良好な局所制御を示した例が見られた一方,9例(Grade IVの6例,Grade IIIの3例)でPDT後の再発を認めた.因果関係は不明だが,術後に頭蓋内出血で死亡した1例があった.初発膠芽腫の無増悪生存期間中央値は15か月,6か月の無増悪生存率は51%であった.手術映像の検討によると,PDTが十分に行われた領域での局所制御は向上する可能性があるが,レーザーが到達しない部位での再発や播種の予防は困難と思われた.可及的広範囲へのレーザー照射ならびに慎重な経過観察が治療成績の向上に必要である.

  • 棗田 学, 温 城太郎, 渡邉 潤, 塚本 佳広, 岡田 正康, 小倉 良介, 平石 哲也, 大石 誠, 藤井 幸彦
    原稿種別: 原著
    2023 年 44 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/24
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    2018年7月に当科に光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)を導入してから2021年6月まで,当科でPDTを施行した悪性脳腫瘍症例の臨床的特徴および無増悪生存期間(progression free survival: PFS),全生存期間(overall survival: OS),主な合併症について検討した.初発膠芽腫9例におけるPFSの中央値は14ヶ月,OS中央値は未達であった.死亡例は早期に遠隔再発を来した1例のみであった.主な合併症は光過敏症が1例,脳表に可逆性のFLAIR高信号が3例,術後うつ状態が5例に認め,いずれも一過性であった.術後の長期間遮光管理が原因と思われるうつ症状には,早期遮光解除などの工夫が必要と思われた.実際の症例を提示し我々のPDT初期治療経験を紹介し,また,次世代治療と考える近赤外光線免疫療法(near-infrared photoimmunotherapy: NIR-PIT)の研究に関しても紹介する.NIR-PITは,癌細胞の表面抗原を標識とし,近赤外線照射により生じた熱エネルギーにより腫瘍細胞の細胞膜を破壊する画期的な治療法である.今回,我々は膠芽腫細胞株に特異的な表面抗原Xに対する抗体を用いたNIR-PITを行い,殺細胞効果を確認した.

  • 深見 真二郎, 秋元 治朗, 永井 健太, 河野 道宏
    原稿種別: 原著
    2023 年 44 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/07
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    悪性神経膠腫に対する光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)につき,照射の工夫・合併症・再発時期や再発パターンを検討した.対象はPDTを施行した106例の画像上悪性神経膠腫と診断した症例で,大きな合併症は1例の爪熱傷であったが,2例脳皮質熱傷が疑われた.再発までの期間の中央値は初発膠芽腫に限ると約12ヶ月で,再発パターンは局所再発が50例で,27例は遠隔部位や播種にて再発した.再発予防としてPDT耐性の腫瘍コントロールが重要と考えられた.

  • 井内 俊彦, 堺田 司, 杉山 孝弘, 横井 佐奈, 瀬戸口 大毅, 細野 純仁, 長谷川 祐三
    原稿種別: 原著
    2023 年 44 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
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    初発膠芽腫に対する光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)の効果を特に再発部位を中心に後方視的に検証した.PDTは摘出腔底部からの再発を予防しなかったが,摘出腔側壁からの再発は有意に予防した.側壁からの再発は,MGMT非メチル化例でも確認された.一方,開頭術後の有害事象の発生率に変化は無かった.PDTは安全で,摘出腔側壁からの再発を予防し,患者の日常生活維持期間を延長し,生命予後を改善した.

  • 荒川 芳輝
    原稿種別: 原著
    2023 年 44 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/07/14
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    原発性悪性脳腫瘍に対するtalaporfin sodiumを用いた光線力学的治療(photodynamic therapy: PDT)は,これまでの研究から安全性は確認されてきたが,その有効性は十分に明らかとなっていない.そこで,当院でのPDTの治療成績を解析し,その課題について検討した.原発性悪性脳腫瘍患者36例に対して,41回のPDTを行った.初発膠芽腫5例,再発膠芽腫19例の無増悪生存期間中央値は31.6か月,5.8か月,全生存期間は50.8か月,15.7か月であった.PDTに関連した有害事象として,5回で無症候性脳浮腫の悪化を認めたが,グレード2以上の皮膚有害事象は認めなかった.全摘出後にPDTを実施した初発膠芽腫患者,術後創部感染を合併した再発膠芽腫患者で長期の局所腫瘍制御を認めた.これらの結果から,PDTは安全に実施可能であり,全摘出された初発例でPDTによる腫瘍局所制御の可能性が示唆された.今後の課題は,全摘出された初発膠芽腫を対象としたPDTの有効性を評価するランダム化比較試験の実施である.

PDD/PDTの有害事象に向けて
総説
  • 上月 暎浩, 石川 栄一
    原稿種別: 総説
    2023 年 44 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/10
    ジャーナル フリー HTML

    悪性神経膠腫に対する5アミノレブリン酸(5-Amibolevlinic Acid: 5ALA)を用いた光線力学診断(Photodynamic diagnosis: PDD)とタラポルフィンナトリウム(talaporfin sodium: TS)を用いた光線力学療法(Photodynamic Therapy: PDT)は,摘出率の向上や生存期間中央値の改善に寄与し,本邦で広く用いられている.いずれも光感受性物質と特定波長のレーザー光を用いる手法で有害事象として光線過敏症がよく知られているが,その他の有害事象について脳外科領域での報告は少ない.我々は5ALA内服後に著明な低血圧を呈し,手術開始時間が遅延した1例を経験した.またTS-PDT後の遮光管理中にうつ状態となった1例を経験した.我々が経験した症例について報告し,5ALAとTSによる有害事象とその対策について考察する.

原著
症例報告
  • 池田 貴文, 松井 裕史
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 44 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/10
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    電子付録

    光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)は食道癌化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)後再発に対するサルベージ療法として注目されている.有害事象の一つであるPDT後瘢痕狭窄の発生頻度は比較的高く,当院でも約30%に発生しており注意が必要な合併症の一つである.この発症はQOLを著しく低下させるためその解決は重要である.ほとんどの症例では内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilatation: EBD)でその狭窄の改善が得られている.しかし,レーザーの照射が広範囲であった場合や食道癌再発に伴う複数回のPDT症例においては難治性や高度狭窄の可能性があり,内視鏡的バルーン拡張術だけでは狭窄の開存が不十分な場合がある.このような症例に対する新たな狭窄解除術としてRadial incision and cutting(RIC)法が提案されている.RICは確実に瘢痕組織を除去でき,劇的な通過改善が得られる治療のため,患者の満足度は高い.一方,RIC後の再狭窄率は高く,予防的なバルーン拡張術の繰り返しやステロイド投与などの必要性も報告されている.本稿では当院でバルーン拡張やRICのみで治療困難なピンホール状狭窄を経験し,針状型ナイフ切開,バルーン拡張,RICを組み合わせて治療を行い有効であった症例を報告する.これらの症例ではこの治療によって良好なQOL改善が得られた.

総説
  • 小川 恵美悠, 伊藤 颯人, 熊谷 寛
    原稿種別: 総説
    2023 年 44 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー HTML

    現在,光線力学療法(Photodynamic Therapy: PDT)では光線過敏症を回避するために2週間の遮光期間が取られている.しかし患者の薬剤代謝はこれよりも早いケースもあり,2週間の遮光期間が冗長となる可能性がある.また現在の光線過敏試験では侵襲性がある点,天候に左右される点,評価が定性的である点に課題がある.著者らは画像解析による光線過敏反応の定量化を行い,蛍光計測を用いたモニター装置および薬剤代謝を推定する数理モデルと組み合わせることで,新たな光線過敏試験および遮光管理の実現を目指している.本稿では,光線過敏試験の現状,定量化手法,およびこれまでに開発されたモニター装置について概説する.RGB,CIELAB,HSVの3つの色空間を用いて評価を行った結果,CIELAB色空間は光線過敏反応による発赤の定量評価に最も効果的であった.これらの光線過敏症リスクの定量的な評価の実現は,患者のQOL改善および医療コスト削減の両方のメリットを生むものと期待される.

脳神経外科領域におけるPDD
総説
原著
総説
  • 山本 淳考, 鈴木 恒平, 藤 圭太, 宮岡 亮, 長坂 昌平, 髙松 聖史郎, 梅村 武部, 齋藤 健, 中野 良昭
    原稿種別: 総説
    2023 年 44 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/05/24
    ジャーナル フリー HTML

    悪性神経膠腫に対する5-アミノレブリン酸(aminolevulinic acid: ALA)を使用した術中蛍光診断は,安全性や高い腫瘍集積性から臨床現場で広く使用されている.ヘム合成回路における代謝産物であるプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX: PpIX)が光感受性物質の性質を有しており,術中蛍光診断として利用される.光感受性物質であるために,光照射条件によりその蛍光は影響を受ける.また,5-ALAから代謝されるPpIXでは,非腫瘍性病変においても集積することがある.本総説では,脳神経外科領域における5-ALAを使用した術中蛍光診断の問題点について述べる.

  • 矢木 亮吉, 川端 信司, 福村 匡央, 大村 直已, 平松 亮, 亀田 雅博, 池田 直廉, 野々口 直助, 古瀬 元雅, 梶本 宜永, ...
    原稿種別: 総説
    2023 年 44 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
    ジャーナル フリー HTML

    脳腫瘍において,5-アミノレブリン酸(ALA)を用いた光線力学的診断(photodynamic diagnosis: PDD)の有用性はすでに周知されており,2013年には摘出率向上を目的して悪性神経膠腫に対する5-ALA製剤の術前投与が保険承認された.当教室では以前より様々な脳腫瘍に対する5-ALA-PDDを施行しており,蛍光強度の評価は従来行われている術者による主観的評価(肉眼的な3段階評価)に加え,分光スペクトル解析による蛍光強度の定量的評価(蛍光輝度計による測定)を用いている.本稿では,第一にわれわれが行ってきた神経膠腫以外の脳腫瘍に対する5-ALA投与による蛍光強度について,第二に近年増加傾向にある転移性脳腫瘍に対する5-ALA-PDDの特徴やその有用性について,最後に以前から行われているnavigationガイドによるneedle biopsyについて,補助光源の有用性などを含めて紹介する.現在もなお5-ALA投与に伴う脳腫瘍の蛍光機序は明らかになっていないが,実臨床における5-ALA-PDDのさらなる発展のために,我々のデータをもとに概説する.

原著
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