-
中野 愛, 野田 暁子, 奥山 英登志, 西山 佳孝, 林 秀則
p.
652
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
光合成の初期過程で不可避的に発生する活性酸素は、光化学系IIの修復に必要なタンパク質の新規合成を阻害する。本研究では、活性酸素に対する消去能力を高め、光合成の修復を向上させるために、
Vibrio rumoiensis strain S-1 のカタラーゼ遺伝子
vktA および
Synechocystis sp. PCC 6803 のスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子
sodB をラン藻
Synechococcus sp. PCC 7942 で過剰発現させた。
vktA 過剰発現株は、弱光下において、1 mM H
2O
2 の存在下でも生育し、H
2O
2 に対する耐性が増大した。また、1 mM H
2O
2 の存在下で 500 μE m
-2 s
-1 の強光を照射した場合、
vktA 過剰発現株は野生株より高い光化学系II活性を維持していた。さらに、タンパク質の
in vivo ラベリング実験により、この酸化ストレス条件下で、光化学系IIの修復に必要なD1タンパク質の新規合成が促進していることが明らかになった。一方、
sodB 過剰発現株は 1.5 mM メチルビオロゲンの存在下でも生育し、スーパーオキシドに対する耐性が増大した。現在、
vktA と
sodB を共発現させた二重変異株について、光化学系IIの酸化ストレス耐性を解析している。
抄録全体を表示
-
岩崎 郁子, 小村 理行, 鈴木 英治, 佐藤 朗, 原 光二郎, 小峰 正史, 山本 好和, 伊藤 繁
p.
653
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
地衣類は菌類と藻類の共生体であり、乾燥耐性能を示すものが多く、環境の状態を知る「指標生物」と言われる。シアノバクテリアを共生藻(以下、共生ラン藻)とするモミジツメゴケ(
Peltigera polydactylon秋田県)の共生ラン藻を分離し、共生と非共生状態における生理学的特性を調べた。
1. 共生ラン藻は地衣体の上皮層近くの藻類層に分布し、色素組成は大部分の細胞が典型的なシアノバクテリアの吸収と蛍光スペクトルを示した。
2. PAMシステムによる非破壊的な光合成活性測定では、共生・非共生ともに、乾燥条件では光化学系II由来の蛍光は消失するが、灌水後1分程度で回復し、乾燥と灌水の繰り返しに対して再現性を示した。
3. 極低温(5 K)での定常蛍光スペクトル測定を行い、蛍光寿命をナノおよびピコ秒時間分解能で観察したところ、乾燥状態ではPS II由来の蛍光が見えないが、灌水すると1分以内でフィコビリンから系IIへのエネルギー移動が観察され、系Iへのエネルギー移動も見られた。
4. 採取地の2定点(高尾山と田沢湖)の共生ラン藻ゲノムDNAからニトロゲナーゼのαサブユニット遺伝子(
nifD)全長をクローン化して配列を決定した。2株間でのNifD翻訳配列の相同性は97.8 %であった。既知の糸状性ラン藻の遺伝子と比較した結果、これらの共生ラン藻は
Nostocより
Anabaenaに近縁の種であることが示唆された。
抄録全体を表示
-
吉田 宰, 大川 泰一郎, 臼田 秀明, 平沢 正
p.
654
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
水稲品種アケノホシは日本晴に比べて,乾物生産量が高く,このことには登熟期の葉身の老化が遅く,光合成速度が高く維持されることが関係する.アケノホシの光合成速度が高い要因には,葉身のRubisco含量が多いことがある.また、アケノホシは葉の老化を抑制する木部出液中のサイトカイニン含量が高いことが認められている。しかし、サイトカイニンがどのように葉の光合成速度に影響を及ぼすのかは明らかでない。そこで本研究では,日本晴にサイトカイニン(BA)を散布し,光合成速度に及ぼす影響とその要因について検討した.
BA散布個体の大気CO
2濃度における個葉光合成速度は対照個体と比べて有意に高く推移し、葉内CO
2濃度が一定のときの光合成速度はBA散布個体が高く維持された.止葉のA-Ci曲線は,BA散布個体の初期勾配が有意に高く,炭酸固定効率が高く維持された.また,BA散布個体の最大光合成速度(飽和CO
2濃度)も有意に高く,リン酸の再利用及びRuBP再生能力が高く維持された.葉身のRubisco含量は,BA散布個体で有意に高く推移し,
rbcL,
rbcSmRNA蓄積量もBA散布個体で有意に高くなった.
これらのことから,サイトカイニンにより水稲葉身の光合成速度が大気CO
2濃度で促進される大きな要因は,
rbcL,
rbcS転写蓄積量が増加し,Rubisco含量が高く維持され,炭酸固定効率が高くなることが示された。
抄録全体を表示
-
山田 雅大, 谷口 光隆, 川崎 通夫, 三宅 博
p.
655
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
C
4植物の成熟葉には発達した2種の光合成細胞,葉肉(M)細胞と維管束鞘(BS)細胞が存在する.M葉緑体は細胞膜に沿って均一に分布している一方,BS葉緑体は維管束側(求心的)またはM細胞側(遠心的)に局在している.このような葉緑体の細胞内配向性は,M細胞とBS細胞間の効率的な代謝産物輸送やBS細胞内で脱炭酸されたCO
2のM細胞側への漏れ抑制のために効果があると考えられている.我々は,このBS葉緑体の細胞内配向性は細胞の発達と共に獲得されること,遠心力をかけて配列を乱しても1~2時間後には元の配列に戻ること,配向性獲得にはアクトミオシン系と新規タンパク質合成が関与する一方チュブリンや光は必須でないことを明らかにしてきた.
本研究では,両細胞の葉緑体の配向性が環境ストレスでどのように影響されるかを調べた.シコクビエ成熟葉を強光に曝すと,M葉緑体では逃避反応が見られたが,BS葉緑体の求心的配列に変化は見られなかった.M葉緑体の逃避反応は真夏の太陽光に曝されたシコクビエ葉でも観察された.また,乾燥ストレスに陥っているシコクビエ葉でもM葉緑体の逃避反応が見られたが,BS葉緑体の配列に変化はなかった.同様の現象はトウモロコシでも確認している.これらの結果より,様々な面で機能分化しているM,BS細胞は,環境の変動に応じた葉緑体の配向性制御機構においても違いが見られることが明らかとなった.
抄録全体を表示
-
石川 正行, 藤原 誠, 佐藤 直樹
p.
656
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
葉緑体は独自のゲノムを持っているが、細胞内共生の過程で葉緑体が機能するためのタンパク質遺伝子の多くは細胞核へと移行している。本研究では、比較ゲノムのツールであるGclustプログラムによって予想された細胞内共生起源と考えられる葉緑体タンパク質の機能解析を、シロイヌナズナを用いて行った結果を報告する。Gclustプログラムは多種の生物間での相同タンパク質グループを様々な条件に従って抽出できるプログラムである。このプログラムを用いて得られたタンパク質群のグループ名を
Chloroplast
Proteins of
Endosymbiont
Originの頭文字をとってCPRENDO(CPR)と名付け、CPRグループに含まれるタンパク質の機能解析を行った。CPR中のシロイヌナズナのタンパク質56個のうち、53個が葉緑体に局在することがGFPとの融合タンパク質を用いた実験から確かめられた。CPRに含まれるタンパク質をコードする遺伝子破壊株にPAMを用いた解析を行ったところ、多くの変異株でNPQの上昇が観察され熱放散系の異常が示唆された。また、このうち
ycf65と
ycf20は可視的な表現型を示した。
ycf65は子葉がペールグリーンになり、
ycf20は葉が斑入りになる。これらの変異株ではFv/Fmが減少するなど光化学系の異常が観察された。得られた変異株についてさらに詳しい解析を行っていく予定である。
抄録全体を表示
-
小村 理行, 岩崎 郁子, 伊藤 繁
p.
657
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
地衣類は菌類中に藻類が共生して光独立栄養的に生育し、乾燥すると光合成電子伝達系を停止し、水分吸収後は迅速に電子伝達を再開することで乾燥に耐える。乾燥時は吸収した光エネルギーを熱に変換し、過剰な酸化力・還元力の蓄積による光化学系の光阻害を防ぐと推定されてきた。しかし、この物理的メカニズムは不明である。地衣類20種類を採集し、乾燥時のアンテナ色素系と電子伝達系のふるまいを検討した。77Kでの定常蛍光スペクトル測定から、地衣類の光合成系を3種類(シアノ型、緑藻型1、緑藻型2)に分類できることを見出した。更にピコ秒蛍光寿命測定から、シアノ型、緑藻型1は乾燥時の光化学系IIの蛍光寿命が5から10倍速くなり、未知の蛍光消光機構により光化学系IIを保護することがわかった。蛍光消光は水添加後30秒以内に解消された。他の1種類(緑藻型2)は蛍光消光機構をもたず、アンテナサイズを小さくすることで光化学系IIを光阻害から保護した。いずれも光化学系Iアンテナ系には大きな変化がなかった。乾燥細胞のPAM測定では光誘起によるQaの還元は観測されなかったが、ナノ秒領域での遅延蛍光が観測される事から、P680からフェオフィチンへの電子移動が一部確認された。また、ミリ秒領域の遅延蛍光や熱発光測定を行い、光化学系IIの電子伝達系について検討した。これらの結果を元に、乾燥時に地衣類が光阻害を防ぐメカニズムを考察する。
抄録全体を表示
-
石崎 公庸, Schauer Nicolas, Larson Tony R., Graham Ian A., Fernie Alisdair ...
p.
658
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
哺乳類において、電子伝達フラビン蛋白(ETF)はαサブユニットとβサブユニットによって構成されるヘテロ2量体であり、少なくとも9つのミトコンドリアマトリクス局在脱水素酵素の電子受容体である。ETFによって受けとられた電子はETF-ユビキノン酸化還元酵素(ETFQO)を介して呼吸鎖-電子伝達系へと渡される。ETFに電子を渡す9つの脱水素酵素は、それぞれ脂肪酸のβ酸化、アミノ酸分解、コリン代謝の鍵となる酵素であり、ETFの働きは複数の代謝経路に必須である。シロイヌナズナゲノムを探索したところ、哺乳類のETFαとETFβの相同遺伝子がそれぞれ一個ずつ見つかった。そこで酵母2ハイブリッド実験によってシロイヌナズナETFαとETFβがヘテロ2量体を形成しうる事を確かめた。次にETFの植物での機能を調べるため、ETFβのT-DNA挿入変異株を単離し、解析を行ったところ、長期暗所条件下でetfb変異株は野生株に比べてより早く枯死した。このときのetfb変異株と野生株における代謝産物プロファイル計測したところ、ロイシン、イソロイシン、バリン、などのアミノ酸とIsovaleryl-CoA、そしてPhytanoyl-CoAがetfb変異株で顕著に蓄積していた。これらの表現型の特徴は、以前に我々がetfqo変異株で観察したものと酷似しており、植物でもETFとETFQOが相補的に機能しているという仮説を裏付けるものである。
抄録全体を表示
-
蜂谷 卓士, 寺島 一郎, 野口 航
p.
659
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物の呼吸鎖には、動物と共通のシトクロム経路とは別に、alternative oxidase (AOX)が存在する。AOXは、還元型ユビキノンから電子を酸素に移し、プロトン輸送を伴わない。従ってAOXはエネルギー的に無駄であるが、過剰な還元力を散逸させ、活性酸素生成を抑制していると考えられている (Maxwell et al., 1999)。窒素同化は多くの細胞内の還元力を消費することで知られ、特に硝酸還元の寄与は大きい。こうしてAOXと硝酸還元はともに還元力の消費系と見なすことができる。植物を硝酸を与えずに(アンモニア下で)生育すると、AOX活性や遺伝子発現が誘導されることが知られている (Escobar et al., 2006)。このことは、AOXと硝酸還元が、還元力を巡って相互作用する可能性を提起する。本研究では、実際に硝酸還元の活性の変化がAOXの活性に影響するのかを検証した。シロイヌナズナの葉のNR活性をタングステンで阻害し、シアン耐性呼吸速度としてAOXの最大活性を測定した。その結果、硝酸還元とシアン耐性呼吸の両経路の電子フラックスは同程度であり、阻害剤処理によるNR活性の減少量とシアン耐性呼吸の増加量とは強い正の相関があった。この結果は、NR活性の減少によって余った還元力が、AOXにより消費されることを示唆した。今回の発表では、AOX活性のさらなる定量的な解析や、還元力輸送系の解析に関する結果を報告する。
抄録全体を表示
-
渡辺 千尋, 寺島 一郎, 野口 航
p.
660
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物ミトコンドリア呼吸鎖にはATP産生と共役しない経路として、alternative oxidase(AOX)を介するシアン耐性経路とuncoupling protein(UCP)経路が存在する。これらはエネルギー的には無駄な経路であるが、還元力の過剰時に活性酸素生成の抑制やTCA回路の回転維持に貢献すると考えられている。
シロイヌナズナには
AOX1a, 1b, 1c, 1d, 2, UCP1-6が存在する。25℃栽培の植物に10℃処理を施し、そのロゼット葉を実験に用いた。10℃処理3時間後に
AOX1aと
UCP5の発現が一過的に増加した。AOXタンパク質量の増加に伴いシアン耐性呼吸速度も上昇した。酸化ダメージの指標であるmalondialdehyde量は、AOX増加に伴い減少した。10℃処理下ではAOXとUCPが共に還元力の消去に働いていると考えられる。また、10℃処理下での両者の発現パターンは、Boreckyら(2006)が報告している4℃処理下での発現パターンとは異なっていた。したがってストレス強度に応じたAOX、UCPの使い分けがあることが予想される。
そこで、本研究では、10℃と4℃処理間で呼吸鎖酵素の発現パターンや呼吸系の応答の違いを詳細に調べ、負荷の異なる低温ストレスに対する植物の応答について考察する。
抄録全体を表示
-
今村 壮輔, 兼崎 友, 寺下 優, 西田 淳子, 黒岩 常祥, 田中 寛
p.
661
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Cyanidioschyzon merolae(シゾン)は単細胞紅藻であり、核・ミトコンドリア・葉緑体全ゲノム塩基配列が既に決定され、その遺伝子重複性が低い事や、細胞構造が単純であること等から、植物の優れたモデル生物と考えられている。窒素の同化は植物の生長を決定する重要なプロセスの一つであるが、その制御に関わる分子機構については不明な点が多い。本研究ではシゾンを用い、窒素同化遺伝子群の発現を制御する転写因子の同定と機能解析を行ったので報告する。
DNAマイクロアレイ解析の結果、窒素枯渇条件2時間後においてR2R3タイプのMYB型転写因子遺伝子 (
MYB-1) の発現が誘導される事が明らかになった。また、MYB-1の蛋白質レベルも窒素枯渇条件下で顕著な誘導が観察され、それらの核への局在が観察された。クロマチン免疫沈降・ゲルシフト解析の結果、MYB-1が窒素枯渇下特異的に
NRT,
NIR, そして
GS プロモーターに結合している事が明らかとなり、MYB-1が窒素枯渇下において窒素同化遺伝子群の発現を正に制御している事が明らかになった。また、窒素枯渇条件4時間後においては1RタイプのMYB型転写因子遺伝子(
MYB-2)の発現誘導が観察され、窒素同化遺伝子群の発現におけるMYB型転写因子の時期特異的な貢献が推測された。これらの結果を踏まえ、植物の窒素代謝におけるMYB型転写因子の役割について考察したい。
抄録全体を表示
-
大沼 みお, 横山 敬士, 井上 貴之, 関根 靖彦, 田中 寛
p.
662
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Cyanidioschyzon merolae 10Dは核、ミトコンドリア、葉緑体が一個ずつの極めて単純な細胞構造をもつ単細胞性紅藻であり、そのゲノム配列に基づいた解析は
C. melaraeが真核細胞の成立時の特徴を多く残す「生きた化石」であることを支持している。我々は、この生物をモデルとした真核細胞の基本的構築に関する研究を進めるため、基盤となる形質転換技術の開発を行っている。
前回我々は、5-フルオロオロト酸(5-FOA)耐性を指標として取得された
URA5.3欠損株(
URA5.3遺伝子中の
URA3領域frameshift変異株:ウラシル要求性)を受容細胞として用い、相同組換えによる形質転換が可能であることを示した。
C. merolaeの
URA5.3遺伝子は、オロト酸ホスホリボシル転移酵素(URA5)とオロト酸脱炭酸酵素(URA3)が融合した蛋白質をコードしている。今回、
C. merolae URA5.3遺伝子の
URA3領域(3’側)を、別の単細胞紅藻
Galdieria sulphurariaの対応領域と置換することで、
URA3領域での相同組換えを避けるようなマーカー遺伝子を構築した。この融合遺伝子を連結した大腸菌プラスミドによりウラシル要求性の回復を指標とした形質転換実験を行った結果、得られたウラシル非要求株は導入したプラスミドDNAをそのまま保持していることが示された。従って、このプラスミドが
C. merolae細胞内で安定に複製されている可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
Khurshida Hossain, Hideo Yamasaki
p.
663
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Arabidopsis thaliana possesses three types of hemoglobin (Hb) genes: class I, class II, and truncated Hb (trHb).
AtGLB3 is a homologe of trHb that are widely distributed in lower organisms such as bacteria and unicellular eukaryotes. The function of
AtGLB3 in vivo has remained unknown. The T-DNA insertion mutant ΔGLB3 lacks the functional gene of the trHb. We have found that ΔGLB3 cannot germinate above 32ºC where the wild type shows normal germination. The mutant is extremely sensitive to high temperature stress during germination. The germination was partially restored by adding carboxy-PTIO, a nitric oxide (NO) scavenger, chlorogenic acid or bovine serum Hb. Furthermore, the volatile organic compound isoprene also restored the germination capability of ΔGLB3 at high temperature. This strongly suggests that the failure of ΔGLB3 to germinate at high temperature is caused by NO scavenging activity and physiological function of ΔGLB3 have been first reported in this paper.
抄録全体を表示
-
Kunzhi Kunzhi Li, Lifeng Pan, Yue zhao, Yan zhao, Limei Chen
p.
664
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Dof1 is a plant-specific transcription factor which had been showed to improve nitrogen assimilation in transgenic
Arabidopsis. To investigate if the transcription factor is widely functions in all plants, the cDNA of adof1 from
Arabidopsis was overexpressed in tobacco leaves under the control of tomato rbcS-3C promoter. The assay for pyruvate kinase (PK) and phosphoenolpyruvate carboxylase (PEPC) indicated the overexpression of adof1 led to a 1.5-5 fold increase in PK activity and 1.5-3.2 fold increase in PEPC activity, respectively, in transgenic tobacco. When grown under lower (1 mM) and moderate (5 mM) nitrogen conditions, the transgenic tobacco displayed better growth as compared with the control. The height of the transgenic lines was 1.3-1.7 fold of the control while their fresh weight was 1.1-1.3 fold of the control. No significant differences were observed in the growth of transgenic lines and the control when they were grown under higher nitrogen conditions.
抄録全体を表示
-
大脇 良成, 川岸 万紀子, 若狭 暁, 菊地 直, 米山 忠克, 藤原 伸介, Kaiser Werner M.
p.
665
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
一酸化窒素は、動物では重要なシグナル伝達物質として知られているが、植物における発生経路および機能は十分明らかになっていない。本研究では、イネ個体および培養細胞からの一酸化窒素発生を化学発光法により測定し、一酸化窒素発生に及ぼす窒素源および気相中の酸素濃度の影響について検討した。大気気流中におけるイネの葉からの一酸化窒素発生は、硝酸を窒素源とした場合、暗条件では低く明条件で増加した。暗条件における葉からの一酸化窒素発生は、窒素気流中で大きく増加し、大気気流中の100倍程度に達した。一方、アンモニアを窒素源として生育したイネの葉からの一酸化窒素発生は、光や嫌気的条件によって促進されず低いレベルであった。硝酸を主な窒素源として生育したイネ懸濁培養細胞では、培地に亜硝酸を添加することにより一酸化窒素の発生が促進された。亜硝酸添加による一酸化窒素の発生は、葉と同様に窒素気流中で大きく増加した。アミノ酸を窒素源として生育した懸濁培養細胞では、硝酸を窒素源とした細胞よりも低いレベルではあるが、嫌気的条件により一酸化窒素発生が増加した。これらの結果から、イネの葉および培養細胞における一酸化窒素の生成経路について考察する。
抄録全体を表示
-
有田 奈央, Gurung Sushma, 山崎 秀雄
p.
666
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
ポリアミン(PAs)は多くの生物に存在する低分子脂肪族アミン類である。植物細胞でも高濃度で存在することが報告されているが、その機能は不明なことが多い。本研究では、アカウキクサにおけるポリアミンの新しい生理的作用を報告する。アカウキクサは熱帯及び温帯に生息する水生シダ植物である。生息環境が悪化すると根を脱離し避難する特徴を有する。代表的な3種のPAsとして、プトレシン(Put)、スペルミジン(Spd)、スペルミン(Spm)を用いて、根脱離に対するPAsの効果を検討した。その結果、Spd及びSpmに急速な離脱を誘発する作用があることが明らかとなった。Spmの一酸化窒素(NO)結合化合物であるspermine-NONOateを添加した場合、PAs単独よりも更に速い脱離が見られた。NO酸化物である亜硝酸も同様の現象を引き起こすことから、アカウキクサの根の脱離現象にPAs誘導性の活性窒素生成が関与していることが考えられる。
抄録全体を表示
-
愛知 真木子, 岩崎 秀雄, 佐藤 順通, 近藤 孝男, 杉田 譲, 永井 和夫, 小俣 達男
p.
667
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
ラン藻は窒素含量が高く(C:N=5),窒素の獲得と同化に多くのエネルギーを使っているので,窒素源の変動に対する遺伝子発現の応答は,環境適応の中でも特に重要である.アンモニアを窒素源として培養した
Synechococcus elongatusの細胞を,窒素を含まない培地に移すと,窒素の獲得や代謝に関与する数多くの遺伝子が転写制御因子NtcAによって活性化されるが,DNAマイクロアレイを用いた解析により,これらに加えてシグマ因子をコードするsyc0015(
rpoD6),syc0953 (
rpoD4)とresponse regulatorをコードするsyc1148 の発現がそれぞれ1.7倍,12.4倍,8.6倍に上昇することがわかった。これらの遺伝子の上流にはNtcA結合領域が存在しており,syc0015とsyc1148の誘導は完全にNtcA依存的だったが,syc0953は、NtcA欠損株でも窒素欠乏に応答して5.3倍に発現量が増加し、NtcA非依存的な制御機構の存在が推察された。syc0953の欠損株では、NtcAによって直接活性化される
nblA遺伝子の発現量が顕著に低下しておりNtcAが直接的、間接的にこの遺伝子を制御していることがわかった。
抄録全体を表示
-
伊藤 孝浩, 松井 文生, 佐藤 隆英, 中川 弘毅, 園田 雅俊
p.
668
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
一酸化窒素(NO)は、病害抵抗性や花成時期の制御を始め、植物の重要な生理作用に関わる情報伝達物質として注目されてきている。しかし、その情報伝達機構はあまりよくわかっていない。
我々は、高等植物におけるNO情報伝達機構の解明に向け、
Deinococcus radiodurans由来のNO合成酵素(deiNOS)遺伝子を恒常的あるいはエタノール誘導で一過的に過剰発現させるシロイヌナズナ(cdeiNOS並びにideiNOS)をそれぞれ作製し、解析を進めている。 昨年度の本大会において、cdeiNOS株のロゼッタ葉における約25,000遺伝子の発現様式をマイクロアレイ解析し、これまでに報告されているNO応答遺伝子の多くが変動していない事を報告した。
本研究ではNO応答遺伝子を調べるため、エタノール処理したideiNOS株の遺伝子発現様式をマイクロアレイ解析した。その結果、1731個の遺伝子(887個で増加、844個で減少)で発現量に顕著な差が見られた。興味深いことに、今回の結果でもこれまでに報告されているNO応答遺伝子の多くが変動していなかった。顕著な差が見られた遺伝子のうち、多くは代謝系の遺伝子であったが、転写因子やストレス応答に関わる遺伝子も変動していた。現在、cdeiNOS株とideiNOS株において同様な発現様式を示したNO応答遺伝子について詳細に解析している。
抄録全体を表示
-
森川 弘道, 高橋 美佐, 坂本 敦
p.
669
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物体内に取り込まれた無機窒素の約1/3は、アゾ、ジアゾ、ニトロ、ニトロソ、オキシムなどの一連の化合物(窒素が別の窒素と結合した構造または窒素が1個または2個の酸素と結合した構造をもつ)に変換される。これらの窒素は、ケールダール法では定量的に回収できず、未解明窒素(UN)と呼んでいる。
1. UN化合物は当初二酸化窒素由来の窒素で発見されたが、その後硝酸由来の窒素でも同じであることが分かり、UN化合物生成は、窒素代謝の一経路であると考えられる。メタボロームによる網羅的解析や生物普遍性は今後の課題である。
2. シロイヌナズナ葉で明らかとなったUN化合物には、チアジアゾール環化合物、ニトロ化合物(タンパク質ニトロチロシン)、N-ニトロソピロール化合物、S-ニトロソ化合物などがある。SciFinderに記載のない化合物もあった。これらの植物種共通性は未知である。
3. 個々のUN化合物の機能については、SAR誘導活性などが見出されているが、大部分は未解明である。
4. 外在活性窒素としての大気中窒素酸化物は、植物の成長、養分吸収、代謝を包括的に活性化するシグナルとしての作用(バイタリゼーション作用)をもつが、それを担う物質的実体とUN化合物との関連は、未知である。
本研究で、ご指導いただいた鈴木仁美京都大学名誉教授、平田敏文広島大学教授、藤田耕之輔広島大学教授に厚くお礼申し上げます。
抄録全体を表示
-
菅野 圭一, 牧野 周, 前 忠彦
p.
670
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
夜温が栄養生長期のイネの乾物生産に与える影響を明らかにするため、夜温のみ異なる環境下で植物を生育させ(低夜温区:17℃、標準区:22℃、高夜温区:27℃)、個体の乾物生産量、成長解析、窒素含量および炭水化物量、および個体当たりのCO
2ガス交換速度を比較した。夜温処理は、播種後21日目から63日目まで屋内型人工気象室を用いて行った。昼温は27℃、光条件は1000 μmol m
-2 s
-1、相対湿度は60 %とした。
乾物生産量は高夜温区で最も高かった。播種後63日目の乾物あたり呼吸速度は高夜温区で大きかったが、光合成速度も大きかったため、乾物あたり正味の同化量は最も多かった。成長解析の結果から、相対成長速度は播種後21-42日目の生育初期のみ有意に異なり、夜温の高い方が増加した。また、高夜温区では生育初期のLARも有意に増加していたことから、相対成長速度の向上は葉面積の増加によるものであることが示された。播種後42日目の個体では、葉身への乾物および窒素の分配割合は、夜温が高くなるに従い増加する傾向が認められた。一方、播種後42日目における葉身と葉鞘の乾物あたりの炭水化物量は、夜温の高い方が減少する傾向が認められた。これらのことから、乾物生産は高夜温区で最も高く、それは生育初期のLARが大きいことや葉への窒素分配と乾物分配が大きいことなどによった。
抄録全体を表示
-
大森 弘之, 三輪 京子, 藤原 徹
p.
671
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナのホウ酸トランスポーターであるBOR1の6つの相同遺伝子のうち、BOR6とBOR7についての解析を行った。
まず、RT-PCRを行った結果、ホウ素十分条件、欠乏条件の違いに関わらず花序でBOR6とBOR7のRNAを検出した。また、BOR6、BOR7のプロモーター制御下でGUSを発現する形質転換シロイヌナズナをそれぞれ作出し、GUS染色を行ったところ、開花した花の花粉粒や受粉後の花粉管でGUS染色が認められた。
次に、BOR6のcDNAを酵母で発現させたところ、ベクターコントロールと比較して菌体内水溶性ホウ素濃度の低下が見られた。これよりBOR6がBOR1と同様にホウ素の細胞外への排出能を持つことが示唆された。
さらに、BOR6とBOR7のタンパク質の局在をGFP融合タンパク質の観察によって調べたところ、主に伸長している花粉管の先端に局在していることが確認された。
最後に、BOR6とBOR7の二重T-DNA挿入株を用いてin vitroで花粉を培養し、花粉管の長さを測定した。その結果、ホウ素欠乏培地で培養すると野生型に比べて二重挿入株では伸長した花粉管の長さが短かった。
これらにより、BOR6とBOR7は花粉に局在し、ホウ素欠乏条件下において花粉管の伸長に寄与するホウ素トランスポーターであることが示唆された。現在、BOR6とBOR7の働きについて詳細な解析を進めている。
抄録全体を表示
-
加藤 友彦, 浅水 恵理香, 金子 貴一, 田畑 哲之, 日尾野 隆
p.
672
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
樹木の分子育種において、花芽形成は重要なターゲットの1つであり、改変すべき点が多数残されている。私たちは、ユーカリの花芽形成の改変・制御を目標とし、これまでに花芽形成時に発現する遺伝子のEST解析、さらにMADS-box遺伝子の単離を報告してきた。最近、遺伝子の発現調節に低分子RNAが関わっていることが数多く報告され、花芽形成においても重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこでユーカリの花芽形成時における低分子RNAによる調節機構を解析するため、花芽形成時に発現するマイクロRNA(miRNA)の探索を行った。ユーカリのつぼみから全RNAを抽出し、電気泳動によって低分子RNAを分離・回収後、MPSS法により22塩基を解読し、約120,000種の配列を決定した。次に、rRNA, tRNA, snRNA, scRNAと相同な配列を除いた後、残った配列に対応するユーカリゲノム配列を検索した結果、約30,000種について、22塩基の相同配列を含む周辺ゲノム配列を取得した。これら約30,000種のゲノム配列についてmiRNAに特徴的な二次構造の予測解析を行った結果、ユーカリの花芽形成時には約500種のmiRNAの候補が存在していることが明らかとなった。これらの配列の中には既知のシロイヌナズナやポプラのmiRNAと相同な配列も含まれていたが、多数の新規なmiRNAの候補が見出された。
抄録全体を表示
-
佐々 路佳, 中村 研三, 石黒 澄衞
p.
673
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
花粉の表層にはポーレンコートというタンパク質や脂質に富む構造が存在する。ポーレンコートは、葯室の最も内側の層であるタペート細胞層が崩壊し、花粉の表面にタペート細胞内の物質が移動することで形成される。ポーレンコートは柱頭による同種花粉の認識に重要であるため、これがないと花粉は十分な稔性を持つことができない。
シロイヌナズナのEXTRACELLULAR LIPASE4(EXL4)及びEXL6タンパク質はGDSL型リパーゼに属し、ポーレンコートに大量に存在することが確認されているが、詳しい働きはまだ分かっていない。そこで、両タンパク質の機能の解明を目的として研究を行った。つぼみの発達段階ごとに分けて
EXL4,
EXL6遺伝子の発現を調べた結果、両遺伝子はつぼみの発達ステージ10から12の中期にかけて、すなわちタペート細胞内でポーレンコートの成分となる脂質が盛んに合成される時期に強く発現していることが分かった。また、両遺伝子の発現を抑制した株を作製したところ、稔性の低下が見られた。以上の結果は
EXL4,
EXL6両遺伝子がタペート細胞内で発現し、その遺伝産物はリパーゼとしてポーレンコートの脂質成分例えば遊離脂肪酸の生成に関与する可能性を示唆している。現在、それを確認するためポーレンコートを含む花粉表層構造の観察、ポーレンコートの脂質成分解析を行っている。
抄録全体を表示
-
王 スーイー, 岡本 龍史
p.
674
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Polypyrimidine tract-binding protein(PTB)はhnRNPファミリーの一つであるhnRNP typeIに属するRNA結合タンパク質である。動物細胞では、mRNAの細胞内輸送、代謝及び選択的スプライシングの制御といった様々な役割を担い、発生・分化などに深く関与することが明らかにされているが、植物におけるPTBの機能解析の報告例はない。発表者は、植物PTBの機能解析に向けた第一歩として、シロイヌナズナにおけるPTB遺伝子の発現部位をまず明らかにした。植物PTBタンパク質のデータベース検索及びそれらの系統樹解析により、シロイヌナズナにおいては2種のPTB (AtPTB1,2) が同定された。シロイヌナズナの各組織からmRNAを調製したのち、RT-PCR解析により
AtPTB1, 2の発現をみたところ、両遺伝子は生殖器官と栄養器官の双方で普遍的に発現していた。次に、
AtPTB1プロモータ::
GUS及び
AtPTB2プロモータ::
GUSコンストラクトを用いた形質転換シロイヌナズナをそれぞれ作製し、花器官における両遺伝子の発現を詳細に調べた。その結果、
AtPTB1および
2は主に成熟花粉粒と柱頭の乳頭部で発現し、さらに、胎座においても発現することが示されたが、胚発生過程においてはそれらの発現は見られなかった。変異体の単離・解析をすすめ、双方の変異体 (
ptb1,ptb2) を得たが、これら変異体の発生・分化・成長には異常に見られなかった。現在、二重変異体(
ptb1/ptb2) の作製中であり、この結果についても発表したい。
抄録全体を表示
-
押野 健, 安彦 真文, 齋藤 るみ子, 一石 英一郎, 遠藤 誠, 川岸 万紀子, 東谷 篤志
p.
675
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物の生殖成長過程は温度変化や乾燥などの環境ストレスに対して感受性が高い。特に、高温により雄性不稔となることがさまざまな植物種で報告されている。ここでは、各穎花間での同調性の高いオオムギを用いて花粉形成過程における高温障害について実験を行った。オオムギは高温条件において、雌蕊の発生・分化に異常は生じないが、葯の発生では、細胞分裂の停止や液胞化の進行、ミトコンドリアや核膜、粗面小胞体の異常、葉緑体の異常な発達などが観察される。また、葯壁細胞の早期崩壊や花粉母細胞の減数分裂への早期移行がおこり、結果として花粉形成に異常を生じ、雄性不稔となる。この高温障害に関わる遺伝子発現を調べるために、22K Barley1 GeneChipを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。ストレス関連の遺伝子群は、高温により幼穂と芽生えで共に発現が増加するものと芽生えでより大きく発現が増加するものがみられた。一方で、ヒストンやDNA複製関連、ミトコンドリア関連、リボソーム関連などの遺伝子群は高温により幼穂で特異的に発現が低下した。また、減数分裂特異的な遺伝子や葯特異的LTP遺伝子は高温によって早期に発現が増加した。以上の結果から、オオムギの高温障害は、花粉形成の過程において葯壁細胞の早期消失や減数分裂への未成熟段階での移行など、発生プログラムが高温より早期に実行されることに起因するという作業仮説を提唱したい。
抄録全体を表示
-
伊ヶ崎 知弘, 西口 満, 二村 典宏, 古藤田 信博
p.
676
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
一般に、木本植物は播種してから開花結実するまでに長大な期間を要する。幼若期間と呼ばれるこの期間は、リンゴ等果樹の育種を推進する上で大きな障害となっている。一方、スギやヒノキなどは、着花齢に達すると大量の花粉を大気中に放出し、花粉症問題を引き起こしている。そこで、我々は、遺伝子組換え技術を利用して木本植物の花成を自在に制御することを目的に研究を進めている。今回、シロイヌナズナ等で花成抑制因子として報告されている
TERMINAL FLOWER 1 (
TFL1)と相同性の高い遺伝子
PnTFL1をポプラの一種であるセイヨウハコヤナギ(
Populus nigra L. var.
italica Koehne)から単離し、解析を行った。
PnTFL1の発現は、主に根、茎、頂芽、側芽で観察された。また、
PnTFL1をカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター下流に連結して、シロイヌナズナで過剰発現させたところ、組換え体の花成は顕著に遅延した。さらに、RNAi法を用いて
PnTFL1発現抑制組換えセイヨウハコヤナギを作出したところ、一部の組換え体の系統では通常20年以上を要する花成までの期間が5ヶ月以下に短縮され、もっとも強い表現型の系統では、約5週間で開花した。しかしながら、約5週間で開花する系統は成長速度の低下や葉の形態変化などの異常を生じた。
抄録全体を表示
-
鈴木 光宏, 渡辺 綾子, 森下 貴史, 渡辺 秀明, 山口 暢俊, 松山 善亮, 米田 好文
p.
677
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナ
PROTODERMAL FACTOR2 (
PDF2)遺伝子は茎頂分裂組織のL1層で発現し、表皮系の細胞分化と維持に関与しているが、
PDF2遺伝子をCaMV 35Sプロモーターの制御下で過剰発現させると、その形質転換植物の表現型は花芽分化誘導遅延を示す。そこで、
PDF2過剰発現体の花芽分化誘導遅延表現型を介して花芽分化誘導機構の新たな知見を得るために、
PDF2遺伝子と花芽分化誘導機構との相互作用の解析、新規突然変異体の単離を行った。PDF2はホメオドメイン、ZIP、STARTドメインをもつHD-GL2型の転写因子であるが、どの機能単位が花芽分化誘導機構と相互作用するかを検討するため、各機能単位を欠失させた
PDF2 cDNAを35Sプロモーターの下流に配した過剰発現体を作製し、
PDF2過剰発現体と比較したところ、花芽分化誘導遅延の表現型を示すには複数の機能単位が必要であることがわかった。また、過剰発現した
PDF2が花芽分化誘導経路の遺伝子との相互作用によって花芽分化誘導を抑制していると考えられるため、酵母Two-hybrid法を用いて解析したところ、統御過程に属する因子との相互作用は見られなかった。そこで、cDNAライブラリーによる相互作用タンパク質の検索を行っている。さらに、花芽分化誘導に関与する新規な遺伝子を単離する目的で
PDF2過剰発現体の花芽分化誘導遅延表現型を回復する突然変異体を単離した。本発表では、PDF2との相互作用因子の探索と突然変異体の単離について報告する。
抄録全体を表示
-
和田 雅人, 嬉野 紋乃, 工藤 和典, 別所 英男
p.
678
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
我々は、リンゴの花芽形成機構を解明するために、シロイヌナズナのLEAFY遺伝子のリンゴでのオルトログであるAFL1、AFL2遺伝子の発現解析を行った。AFL1、AFL2の発現はRT-PCRによってのみ確認され、AFL1が花芽茎頂でのみ検出されるのに対し、AFL2は、花芽茎頂及び栄養生長の茎頂でも検出された。そこで、発現組織を詳しく調べるためにそれぞれの遺伝子の3'ノンコーディング部位を特異的なプローブとして、リンゴの花芽形成時期の発現組織をin situ hybridization(ISH)法で解析した。2005年夏から2006年夏にかけて、果樹研究所リンゴ研究拠点(盛岡)の圃場のリンゴ樹から採取した花芽茎頂をFAA固定し、10 μm厚の切片を作製した。その切片でISHを行ったところ、AFL1、AFL2ともに花芽茎頂の外衣と葉原基が顕著に染色された。AFL1、AFL2それぞれの発現組織にはっきりとした違いは見いだせなかった。また発達した花序でもそれぞれの遺伝子は同様の発現様式を示した。リンゴ品種によって花芽の成熟までの期間が異なるが、それぞれの遺伝子の発現は形態変化、時期に関わらず、異なる品種でも共通した組織で観察された。以上のことはリンゴのAFL1、AFL2がともにリンゴの花芽形成に関与していることを示唆した。
抄録全体を表示
-
津金 絹枝, 木嵜 暁子
p.
679
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
トウモロコシの花成を制御する遺伝子,
INDETERMINATE1(
ID1)は4つのジンクフィンガーを含むタンパク質をコードしており,高等植物にのみ存在する遺伝子ファミリー(
IDDファミリー)を形成している.
IDDファミリー内では,ジンクフィンガーを含む約200アミノ酸残基の領域(IDドメイン)が,よく保存されている.我々はいくつかのIDDファミリーにおいて,IDドメインによって11塩基の特異的な塩基配列に結合することを示しており,このことはIDDファミリーが転写因子であることを示唆した.
これまでのゲノム解析により,トウモロコシでは16,イネでは14,シロイヌナズナでは16の
IDDファミリー遺伝子があることが明らかになった.しかし,トウモロコシの
ID1以外のファミリー遺伝子の機能は明らかになっていない.
そこで,我々はシロイヌナズナの
IDDファミリー遺伝子の機能を明らかにするために,各ファミリー遺伝子の発現様式を解析するとともに,過剰発現体およびRNAiにより発現を抑制した形質転換体を作製し,その表現型の解析を行った.これらの結果をもとに,シロイヌナズナにおける
IDDファミリー遺伝子の機能を考察する.
抄録全体を表示
-
柿窪 善浩, 高瀬 智敬, 清末 知宏
p.
680
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナのLKPファミリーの1つLKP2(LOV kelch repeat 2)は、LOV、F-boxおよびKelch repeatと呼ばれる3つの機能領域をコードしているタンパク質である。このLKP2の過剰発現体を用いた解析の結果から、LKP2はユビキチン-プロテアソーム系を介したタンパク質分解機構において、概日リズム、光形態形成および花成時期の制御に関わり得ると考えられている。我々はLKP2の機能解析を進める一方で、LKP2の相互作用因子にも注目している。酵母ツーハイブリッドシステムを用いた解析の結果、LKP2は時計関連因子TOC1とPRR5、SCF複合体構成因子ASKなど複数の因子と相互作用することを明らかにしている。本研究では、LKP2による概日リズム、光形態形成および花成時期制御のメカニズムを解明するため、LKP2相互作用因子の1つであるLIF1について、遺伝子発現解析、局在解析、形質転換植物を用いた表現型解析等を行ったので、それらの結果について報告し、LIF1の機能について考察したい。
なお、本研究は、独立行政法人農業生物系特定産業技術研究機構生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)の補助のもとに行われた。
抄録全体を表示
-
福井 充枝, Yeung Edward
p.
681
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物の生殖器官の形態形成は、内因性および外因性環境要因により制御されている。スギ雄花は、長日・恒温(25℃)条件下では形態形成の遅滞を示し、BクラスMADS box遺伝子ホモログおよびアレルゲン遺伝子の発現様式が変化する。今回は、生育温度の変化が雄花および花粉の形成過程にどのような影響を与えるかを検討した。2年生スギ挿し木苗に雄花誘導のためのジベレリン処理を7月中旬に施し、ファイトトロンにおいて自然日長・高温(明期30℃・暗期25℃)条件で育成した。ジベレリン処理後7週目に、挿し木の一部を自然日長・低温(明期20℃・暗期15℃)条件に移し、さらに6週間後に、その一部を野外に移した。一方、ジベレリン処理後、野外に植栽し続けたコントロールでは、10週目に胞子形成細胞が分化した後、13週目には小胞子の形成が観察され、34週目には花粉が飛散した。高温条件下の雄花では発育が遅れ、13週目に胞子形成細胞、16週目に花粉母細胞、19週目に減数分裂の各過程と小胞子の形成が観察されたが、25週目には核が消失し小胞子が崩壊しつつあった。低温条件に移した雄花では、コントロールと同様の発育段階を示した。低温条件から野外に移したものについては、コントロールと同時期に花粉が飛散した。スギ雄花の発育遅滞と回復について、関連遺伝子の発現様式の変化と併せて報告する。
抄録全体を表示
-
中道 範人, 北 雅規, 新沼 協, 溝口 剛, 水野 猛
p.
682
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物は一日の周期や季節変動を予期するために生物時計を利用している。シロイヌナズナでの実験解析や数理モデリングから、PSEUDO RESPONSE REGULATOR9/7/5(PRR9/7/5)、CIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED1 (CCA1)/ LATE ELONGATED HYPOCOTYL (LHY)、TIMING OF CAB EXPRESSION 1(TOC1:別名PRR1)、GIGANTEA(GI)らの、互いに制御しあう転写フィードバックループが時計本体と提案されている。
時計は様々な生理現象を時間に依存的に制限するが、その中でも重要なものは光周性花成制御である。一般に植物の光周性花成は‘概日リズムの位相’と‘光入力のタイミング’の一致に依存(外的符号モデル)しており、夕方に発現するCONSTANS(CO)タンパクの光による安定化がその実体である。
本学会では、時計変異体(cca1/lhy、prr7/5、gi)の遺伝的解析から、時計システムが異なる経路(PRR7/5-CO、CCA1/LHY-GI-CO)を通してCOの発現パターンを決定していることを発表する。さらに上記の時計遺伝子(CCA1/LHY、PRR7/5、GI)の発現パターンなどを踏まえ、‘夕方’という日長を測る上での最適な位相にCOの発現を厳密に規定することの意義やその分子機構についても提案をする。
抄録全体を表示
-
Takatoshi Kiba, Rossana Henriques, Hitoshi Sakakibara, Nam-Hai Chua
p.
683
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Proteasome-mediated protein degradation pathway is implicated in all kinds biological responses in eukaryotes. In mammals and Drosophila, proteasome pathway is shown to play important role at the core of circadian clock. It is also known that the pathway is involved in plant circadian clock processes. However, the underlying molecular mechanisms of these processes in plants are still poorly understood. In this study, we show that an F-box protein ZEITLUPE (ZTL) plays a role in targeting PSEUDO-RESPONSE REGULATOR 5 (PRR5) to proteasome-dependent degradation in
Arabidopsis thaliana. Characterization of PRR5 protein levels and stability in WT,
ztl mutants and ZTL-overexpression plants in various circadian conditions demonstrate that ZTL is required for proper degradation of PRR5. We also provide evidence for genetic and physical interaction of ZTL with PRR5.
抄録全体を表示
-
青木 摂之, 岡田 龍, 近藤 紗代, 手塚 裕紀, 伊藤 智規
p.
684
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
植物の概日時計の分子機構は、今まで専らアラビドプシスでのみ研究されてきており、他の植物種での解析は非常に少なかった。したがって、植物の時計の進化と起源は全くの謎である。我々はこの謎について手がかりを得るため、セン類の一種ヒメツリガネゴケ
Physcomitrella patensを用いて概日リズムの研究を始めた。その成果の一つとして、以前の年会において、このコケの時計に制御される遺伝子が、連続暗でリズム発現を示す一方で、連続明ではアリズミックであることを報告した。今回の発表では、アラビドプシスの時計遺伝子のひとつ
PCL1のコケ・ホモログに関する最近の解析結果と、植物の時計遺伝子群についての、コケのホモログを中心とした系統学的解析の結果を報告する。
抄録全体を表示
-
岡田 龍, 近藤 紗代, 伊藤 智規, 青木 摂之
p.
685
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
これまでに植物の概日時計の分子機構については、被子植物であるシロイヌナズナにおいて精力的に研究されてきたが、他の植物種での報告は非常に少ない。その為、植物における概日時計の共通性(保存性)あるいは多様性はほとんど分かっていない。そして、植物の概日時計の進化と起源は全くの謎である。そこで我々は、被子植物とは数億年前に分岐したコケ植物の一種ヒメツリガネゴケ(
Physcomitrella patens)を用いて概日時計の解析を行ってきた。これまでにシロイヌナズナにおいては、時計遺伝子として
CCA1/
LHY、
TOC1 (
PRR1)、
PCL1 (
LUX)などが単離されているが、このコケにも、これらの遺伝子のホモログが幾つかあることが明らかとなった。本学会では、コケのCCA1相同遺伝子(
PpCCA1aと
PpCCA1b)について発光レポーターによる発現解析、およびコケの持つ高効率な遺伝子ターゲッティングを利用した機能解析の結果を報告する。
抄録全体を表示
-
有田 恭平, 橋本 博, 猪狩 久美子, 赤星 万由子, 沓名 伸介, 佐藤 衛, 清水 敏之
p.
686
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
ラン藻の時計関連遺伝子pexの欠損株の概日周期は、野生型より1時間短い。逆にpex恒常発現株の概日周期は約3時間長い。
pex変異体では
kaiA mRNAが有意に蓄積していることや、Pexは転写因子群PadRファミリーに属すことから、PexがDNA結合因子として概日時計を調節していることが考えられる。Pex蛋白質の構造と機能の関連やDNA結合活性については明らかにされていないので、われわれは、Pex蛋白質のX線結晶構造解析を行った。生体内のPex蛋白質はN末端を欠く分子量13.5 kDaの蛋白質として存在することが示唆されていたので、N末端の14アミノ酸残基を欠くPex蛋白質を調製して結晶化したところ、良質の結晶が得られ、1.8オングストローム分解能のX線結晶解析に成功した。その結果、PexはDNA結合蛋白質によく見られるwinged-helix構造をしていることがわかり、ゲルシフトアッセイによりPex蛋白質がDNAに結合することを確認した。さらにPexがDNAに結合する上で重要であると予測されるArg106をアラニンに置換した変異型Pex(PexR106A)はDNAに結合しないことも確かめた。PexR106Aをラン藻内で恒常発現させ、その活性を概日リズムを指標にして調べたが、その株のリズムに異常は見られなかった。このことから、PexのDNA結合活性の重要性が示唆される。
抄録全体を表示
-
河村 正和, 松鹿 昭則, 山篠 貴史, 水野 猛
p.
687
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
最近になって、シロイヌナズナの時計分子機構に関して多くの知見が蓄積しつつある。特に、我々が見出した時計関連PRRファミリー因子(TOC1を含む5種類のPRR)の重要性が広く認められつつある。しかし、他にも多くの時計関連因子が同定されつつあり、入力系・中心振動体・出力系を含む時計の全体像に関しては多くの点が不明である。今回、我々は5種類のPRR因子(PRR9、PRR7、PRR5、PRR3、及びPRR1/TOC1)の全てに関して恒常的発現形質転換植物体のセットを揃えることができた。これらのセットはPRRファミリー因子の時計関連機能を明らかにする上で有力な材料になると考えられる。そこでまず、これらに関して概日リズム・光形態形成・花成制御などの時計関連表現型に関する比較解析を行った。また、phyBなど他の遺伝子型を組み合わせた遺伝学的機能解析を行った。加えて、PRR5やPRR7に関してはその構造の一部だけを恒常的に発現する形質転換植物体を作成することで、PRR因子の構造と機能の相関を解析した。これらの結果をまとめて、PRR因子間の機能的特徴、構造と機能の相関、他の時計関連因子(phyBやCCA1)との機能相関に関して考察する。
抄録全体を表示
-
熊谷 武士, 伊藤 照悟, 山篠 貴史, 水野 猛
p.
688
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
最近、シロイヌナズナの時計分子機構に関して多くの知見が蓄積してきており、我々が見いだした時計関連ファミリー因子(TOC1を含む5種類のPRR)の重要性も広く認められつつある。さらに他にも多くの時計関連因子が同定されてきてはいるが、入力系・中心振動体・出力系を含む時計の全体像に関しては未だ多くの点が不明である。そのため時計機構においては、まだ他にこれと関連して働く多くの未同定の転写因子が存在すると推定される。そこで我々は公開されているトランスクリプトームデータを参考にして、その発現が概日リズムを刻む転写遺伝子群をリストアップした。そしてそれらの内、特徴的なBボックス型Znフィンガー転写因子ファミリーに着目して解析を行った。このBボックス型Znフィンガー転写因子ファミリーの代表としては有名な光周性花成制御因子COが挙げられる。そしてCOファミリーには20種類近くの相同性の高いBボックス型Znフィンガー転写因子が含まれ、その幾つかは概日リズムを刻み、また花成関連の働きをしていることが示唆されている。今回は、COファミリー以外のBボックス型Znフィンガー転写因子の網羅的解析を行うことで、特徴的な概日リズムを刻む幾つかの因子を同定した。これらの新規因子に関して、欠損変異体や恒常的発現形質転換体を作成して行った時計関連機能解析の結果も合わせて報告する。
抄録全体を表示
-
高田 直樹, 楠城 時彦, 篠原 健司, 上村 松生
p.
689
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
樹木は厳冬期を生き抜くための準備として、日長、温度変化に応答し段階的に休眠誘導・低温馴化を行う。休眠誘導・低温馴化の初期過程は、夏から秋への日長短縮を感知することにより生じ、樹木は成長期から自発的な休眠期へと移行する。このような、樹木の日長感知機構には内的な概日時計が関与すると推察される。近年、シロイヌナズナを用いた研究により、植物の概日時計機構が明らかにされつつある。植物が概日リズムを刻む機構として、Myb型転写因子であるLHY/CCA1、及び擬似レスポンスレギュレターであるTOC1/PRR1がフィードバックループにより転写制御され、概日時計の中心振動体を形成していると考えられている。このように草本植物でモデル化された中心振動体が、木本植物においても保存されているかどうかはこれまでほとんど報告されていない。そこで、本研究では木本植物のモデルであるポプラ属のセイヨウハコヤナギから
LHY/CCA1、及び
TOC1/PRR1のホモログを同定し、発現解析を行った。その結果、セイヨウハコヤナギから同定した
PnLHY1, 2は朝方に、
PnTOC1は夕方に発現のピークを示し、互いに発現を調節するフィードバックループを形成していることが示唆された。また、ゲノム構造解析、及び分子系統学的解析から、PnLHY1, 2は木本植物が草本植物から分岐した後に遺伝子重複したパラログであることが示唆された。
抄録全体を表示
-
田中 紀匡, 小口 太一, 小野 公代, 鎌田 博, 小野 道之
p.
690
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナの
AtC401遺伝子は、光周性花成誘導に関連するプロテインキナーゼをコードし、転写レベルで暗期増加型の概日リズム発現を示す。
AtC401の最小プロモーターは、73 bpの5’-非翻訳領域と13 bpのイニシエーター領域のみで明確な概日リズムを示し、TATA-boxを欠く特異な構造である。本研究では、
AtC401プロモーターの概日リズム発現に重要なシス配列とトランス因子の同定を行い、転写制御機構の解明を目的とした。
AtC401最小プロモーターは、シス配列の候補と考えられるGATA配列4つとCCA1結合様配列3つを含む。そこで、最小プロモーター (
d5,85 bp)を対照とし、これにGATA配列に変異を加えた
ΔG、CCA1結合様配列に変異を加えた
ΔAを作製し、その下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子(
luc+)を連結したコンストラクトを作製した。これらを導入した形質転換植物を用いてレポーター解析を行った結果、
ΔG::luc+では発現レベルは下がるが概日リズムは維持され、
ΔA::luc+では発現レベルは変わらないが無周期になった。さらに、ゲルシフトアッセイを行い、このCCA1結合様配列に大腸菌で発現したCCA1タンパク質が結合することを確認した。これらの結果、
AtC401プロモーターでは、CCA1がトランス因子として5’-非翻訳領域に結合して概日リズム発現制御を行う可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
鈴木 剛, 和田 英雄, 後藤 公美, 中野 亜紀子, 山本 真紀, Rahman Sadequr, 向井 康比己
p.
691
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
コムギ穀粒の硬軟質性には
Ha(
Hardness)遺伝子座が関与しており、その領域には
puroindoline-a (
Pina)、
puroindoline-b (
Pinb)、
grain-softness-protein-1 (
GSP-1)という3種類の遺伝子が存在している。
本研究では、コムギ
Ha遺伝子座領域の
Pinaと
GSP-1を含む巨大ゲノムDNA断片をアグロバクテリウム法でイネへ導入した。作出された形質転換イネ4系統について、Fiber-FISH法により導入遺伝子座を可視化したところ、全ての系統において様々な再配列が起きていることが明らかになったが(Nakano et al. 2005)、
Pinaと
GSP-1の両遺伝子を保持していたため、後代を展開し、導入遺伝子座をホモで保持しているT
2個体を選抜した。ホモT
2個体は、サザンブロット法とFISH法により確認し、そのT
3種子の胚乳において導入遺伝子の発現をRT-PCRとウェスタンブロット分析により調べた。その結果、全ての系統において導入遺伝子の胚乳での発現が確認され、巨大ゲノムDNA断片として導入したコムギ遺伝子が形質転換イネ中で発現していることが分かった。形質転換イネ穀粒においてコムギ
Ha遺伝子群がどのように機能しているかを、走査型電子顕微鏡などを用いて解析を行っている。
抄録全体を表示
-
東 克己, 平田 佳奈, 当麻 みさき, 竹内 智彦, 渋川 登美子, 樋口 香保里, 森井 淳一, 芦沢 絵美子, 菊池 彰, 鎌田 博
p.
692
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
ニンジン不定胚形成過程において、胚形成能力を持つ細胞(embryogenic cells)は、細胞外に不定胚形成阻害因子である4-hydroxybenzyl alcohol(4HBA)を放出し、その結果高細胞密度下において不定胚形成は阻害される。4HBAは、不定胚形成の初期細胞増殖過程あるいはその前段階に作用して胚形成を阻害すると考えられるが、その詳細な作用機序は明らかになっていない。そこで本研究では、ニンジン不定胚発生に与える4HBAおよびその類縁化合物の効果を検証するため、これらの化合物を添加した固形培地上に、不定胚形成能を誘導したニンジン実生胚軸を置床し、不定胚形成の様子を観察した。4HBAおよびその類縁体であるvanillyl alcohol(VA)の投与は、予想に反して不定胚形成の減少をもたらさず、VAの添加ではむしろ不定胚形成が増加していた。現在、その他の類縁化合物についても同様の検討を行っている。次に、4HBAおよびVAが、不定胚形成にどのように作用しているかを知るため、組織学的観察および分子生物学的解析を行った。組織学的観察の結果、4HBAおよびVAは初期の細胞塊形成に対して抑制的であるが、その後の胚発達の過程に対しては促進的に作用しているように見られた。また胚発生時に発現する遺伝子の発現パターンの変化はこの観察結果を支持していた。これらの結果を踏まえ、4HBAおよびVAが不定胚形成に作用するメカニズムについて議論する。
抄録全体を表示
-
白矢 武士, 佐藤 修正, 加藤 友彦, 田畑 哲之, 岩崎 俊介
p.
693
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
私たちは2002年度本学会において、核タンパク質輸送体成分のイネインポーティンα(IMPα)のうち、光照射で発現が下方制御されるIMPα1aと特異的に結合する新奇タンパク質(IABP4と仮称)を報告した。IABP4の機能を調べるため、シロイヌナズナにホモログAt2g06210が存在することから、実験室での解析が容易なシロイヌナズナでT-DNA挿入によるノックアウトラインの表現型解析を行った。ホモ挿入個体の同定のため、Salk研究所のデータベースで見つけた2ラインと、かずさDNA研究所のタグラインから独自のスクリーニングにより同定した1ラインの合計3ラインの種子を播種し、芽生えからDNAを調製して特異的プライマーによるPCRを行ったが、どのラインにもホモ挿入個体は検出されなかった。そこで、ヘテロ挿入個体における種子形成率を調べたところ、野生型では約10%しか見られない種子形成不全が全てのラインにおいて約40%にまで増加しており、IABP4の遺伝子欠損が胚性致死の結果、種子形成不全となる可能性が示唆された。
しかし、At2g06210については、最近、花成関連遺伝子vip6/elf8として私たちと同じSalkタグラインを含む変異体を用いた表現型解析を含む報告が出された(Oh et al., 2004; He et al., 2004)。現在、私たちの結果との矛盾点をどのように説明できるのか苦慮している。
抄録全体を表示
-
山本(豊田) 章子, 加賀谷 安章, 田中 祥代, 堤田 久美子, 加賀谷 道子, 小嶋 美紀子, 榊原 均, 服部 束穂
p.
694
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
FUS3は種子成熟過程を制御する主要な転写制御因子のひとつである。FUS3による種子成熟過程の制御機構を明らかにするため、
fus3突然変異体および野生型の未熟種子(開花後8日目および12日目)を用いてマイクロアレイ解析を行った。その結果、
fus3変異体の未熟種子においては、オーキシン、ジベレリン、アブシジン酸、サイトカイニン等の植物ホルモンの合成・代謝、輸送、あるいはシグナル伝達に関与すると考えられる遺伝子ならびにその制御下にあると考えられる多数の遺伝子の発現が変化していた。例えばオーキシンに関連する遺伝子についてみると、
fus3変異体においては、
PIN7、
PIN3、
SUR2、
GH3様遺伝子群などオーキシン誘導性の遺伝子の発現が増加したのに対して、オーキシンシグナル伝達の負の制御因子であるIAA/AUXタンパク質のいくつかの遺伝子の発現は低下していた。一方、未熟種子におけるIAAレベルは野生型と変異体の間で大きな差はなかった。これらの結果を中心に、トランスクリプトーム比較から見えてくるFUS3の機能とホルモン制御に関して考察したい。
抄録全体を表示
-
谷口 桂太, 豊嶋 涼子, 堤田 久美子, 鈴木 将史, 堺 和彦, 加賀谷 道子, 山本 章子, 加賀谷 安章, 服部 束穂
p.
695
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナFUS3は種子成熟過程を制御する主要な転写因子のひとつであり、種子貯蔵タンパク質遺伝子群(
SSPs)の発現を調節している。これまでに、FUS3はABAシグナルと共役し何らかの中間転写因子の発現を介して
SSPsの発現制御を行う可能性を報告している。今回、
SSPsのうち
CRCに着目し、FUS3の下流制御メカニズムを解析した結果を報告する。FUS3人為的発現系を用いて
CRCプロモーターの転写因子結合動態を
in vivo footpriniting法により解析した。その結果、2箇所のABRE配列(R1, R2)と1箇所のABRE類似配列にABAおよびFUS3誘導特異的な転写因子の結合が観察された。一方、ノーザン解析からは、ABRE結合タンパク質のうちbZIP67がFUS3とABA依存的な発現制御を強くうけることが見出された。bZIP67の過剰発現は、FUS3による
CRCの発現誘導を増強し、
in vitroでbZIP67は、R1, R2に特異的に結合した。これらの結果は、bZIP67が
CRC転写制御の中間転写因子であることを強く示唆する。また、R3に結合する因子の同定も含め、FUS3を介した
CRCの発現制御に関わる因子の網羅的同定を目的に
rfc (
reduced FUS-dependent CRC expression)変異体の分離を行っており、あわせて報告したい。
抄録全体を表示
-
高橋 宏和, 雑賀 啓明, 松村 英生, 西澤 直子, 堤 伸浩, 中園 幹生
p.
696
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
高等植物において、低酸素条件下での生存には、アルコール発酵が重要である。このアルコール発酵において、アルコール脱水素酵素(ADH)は、解糖系で利用されるNAD
+の供給の為に必要不可欠な酵素である。このADH活性が低下し、冠水条件下にて子葉鞘の伸張が抑制される表現型を示す
reduced adh activity (
rad)変異体が過去に報告されている。この変異体の原因遺伝子を調査した結果、
Adh1遺伝子の塩基配列中に生じた1塩基置換が、ADH活性の低下の原因であることが明らかになった。また、rad変異体では子葉鞘におけるATP濃度が野生型に比べ著しく低下していた。
私たちは更に、ADH活性の低下により変異体の子葉鞘でどのような事が生じているのかを理解するため、まず遺伝子発現の変化に着目した。そのために、レーザーマイクロダイセクション法を用い、吸水後1日の野生型または
rad変異体の種子胚より子葉鞘のみを単離した。それぞれの子葉鞘より抽出したRNAを用い、イネ22KオリゴDNAマイクロアレイを行い、
p-valueが0.05以下の遺伝子を選抜した結果、変異体でmRNAの蓄積量が多かった遺伝子が317個、野生型で多く蓄積されていた遺伝子が153個存在した。今後はこれらの遺伝子について詳細な解析を行う予定である。
抄録全体を表示
-
須藤 慶太, 今井 亮三, 鷲尾 健司, 中井 朋則, 山内 大輔
p.
697
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
イネ種子貯蔵タンパク質分解に関与するプロテアーゼREP-1の遺伝子
Rep1の発現は、ジベレリン(GA)により制御されている。そのプロモーターには、代表的なGA応答性転写因子であるGAMybが結合するGA応答配列 (GARE) とそれと協調的に働くCAACTC をコアとするシス配列(CARE) が存在し、それらがGA応答に関与している。DNA結合ドメインをC末端に持つMyb型の転写因子がCAREに結合し、その遺伝子を
CTMyb1と名づけた。この遺伝子から転写開始点の違いによりN末端部分の長さの異なる2種類のタンパク質が合成され、それらをCTMyb1L (521 アミノ酸残基)、CTMyb1S (409アミノ酸残基)と名づけた。一過的発現系により過剰発現させたCTMyb1Lは
Rep1プロモーターを活性化しなかったが、CTMyb1Sは、OsGAMybと協調的に作用して
Rep1プロモーターを強く活性化したCTMyb1SとOsGAMybとの相互作用は検出できなかったが、OsGAMybと結合するイネのプロラミンボックス結合因子(RPBF)とCTMyb1との間には相互作用が認められた。加えて、一過的発現系により、RPBFは
Rep1プロモーターを活性化した。これらのことから、
Rep1の転写活性化には、OsGAMyb, RPBF, CTMyb1Sの複合体が関与していることが示唆された。
抄録全体を表示
-
Sreekala Chellamma, Setsuko Komatsu, Makoto Takano
p.
698
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
Expression analysis of β subunits of OSK in germinating rice seeds using semi-quantitative RT-PCR techniques revealed high expression of all the four β subunits during seed germination. Analysis of OSK gene promoters fused to GUS gene exhibited very high expression of GUS in the scutellum during germination. An attempt to purify the OSK complex from seeds during the germination stage resulted in isolation of a complex with SNF1-specific kinase activity and molecular weight similar to the proposed hetero-trimeric complex. However, visualization of phosphorylation pattern of the purified complex revealed that in addition to OSK auto-phosphorylation, additional proteins were phosphorylated. These could be substrates of OSK in the germinating seeds. Furthermore, suppression of OSK1, OSK3 and OSK4 during germination, using chemical-inducible RNAi resulted in delayed germination. The results of RNA-interference experiments also suggest that each species of OSK could have distinct function during seed germination.
抄録全体を表示
-
保浦 徳昇, 潮見 直織美, 岩淵 雅樹, 小川 健一
p.
699
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
種子発芽時にH{SUB}2{/SUB}O{SUB}2{/SUB}やO{SUB}2{/SUB}{SUP}-{/SUP}などの活性酸素が必要であることが示されている。しかし、活性酸素がどの様なメカニズムで発芽を促進するのかは明確になっていない。本報では、吸水処理によって生成された活性酸素はジベレリン(GA)合成遺伝子の発現を増加させる事により種子発芽を促進する事を報告する。吸水処理後O{SUB}2{/SUB}{SUP}-{/SUP}が生成され、この時期にH{SUB}2{/SUB}O{SUB}2{/SUB}処理によって誘導される遺伝子にGA合成遺伝子が含まれている事がマイクロアレイ解析によって明らかとなった。H{SUB}2{/SUB}O{SUB}2{/SUB}処理によるGA合成遺伝子の誘導が起こる時期は吸水処理直後に顕著であった。NADPH oxidsaseの阻害剤DPIで処理すると発芽は阻害された。O{SUB}2{/SUB}{SUP}-{/SUP}生成の抑制は限定的であるが、その抑制と同程度のGA合成遺伝子発現の減少が認められた。予想外であったが、NADPH oxidaseの変異体ではO{SUB}2{/SUB}{SUP}-{/SUP}の生成量およびGA合成経路遺伝子発現が増加し、発芽も促進された。以上の事から、種子発芽時に生成されるO{SUB}2{/SUB}{SUP}-{/SUP}あるいはその不均化反応産物H{SUB}2{/SUB}O{SUB}2{/SUB}は吸水処理後のGA合成遺伝子の発現を早い時期に促進するシグナルとして働いていると考えられた。また、NADPHオキシダーゼが吸水処理後のO{SUB}2{/SUB}{SUP}-{/SUP}生成に関わる因子である事が示唆された。
抄録全体を表示
-
正木 俊平, 山田 哲也, 金勝 一樹
p.
700
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
乾燥種子中には、種子形成時に転写されたRNAが保存され、このRNAを利用して発芽初期のタンパク質合成が起こることが報告されている。しかしながら、乾燥種子中で長期間RNAの活性が保持される仕組みや、吸水直後にこれらのRNAを用いてタンパク質合成が誘導される機構については不明な点が多い。乾燥種子中のRNA結合タンパク質は、乾燥種子中に保存されたRNAの安定性や、これらのRNAを用いたタンパク質合成の誘導に関与する可能性がある。一般にRNA結合タンパク質は、一本鎖DNA(ssDNA)アフィニティーカラムクロマトグラフィーで選択的に精製できる。そこで我々は、乾燥種子中のRNAの機能制御に関わるRNA結合タンパク質の同定を目的として、イネ乾燥種子由来のssDNA結合画分中のタンパク質の網羅的な解析を行った。ssDNA結合画分中のタンパク質は2D-PAGEで分離し、MALDI-TOF-MSによるペプチドマスフィンガープリンティングで同定した。その結果、イネ乾燥種子にはglycine rich RNA binding protein、KH domain containing protein、リボソームタンパク質等のRNA結合タンパク質が存在することが明らかになった。これらのうち、KH domain containing proteinは、種子が吸水すると24時間以内に消失することがわかった。
抄録全体を表示
-
阪田 忠, Berger Frederic
p.
701
発行日: 2007年
公開日: 2007/12/13
会議録・要旨集
フリー
msi1変異体は、受精することなく種子発生が進行する変異体の一つとして同定された。msi1変異体の雌性配偶体の内乳では、受精後の正常な内乳形成に必須な核の多核化は起きるが、多核化した核の細胞化が完了しない。この際MSI1はポリコームタンパク質複合体の構成分子の一つとして遺伝子の転写抑制を行っている。msi1変異体のホモ接合体は、種子発生の初期に致死となる。その他のポリコームタンパク質複合体の一つであるmedeaの完全機能欠失変異体では、植物胞子体が形成されるため、MSI1はポリコームタンパク質複合体の構成分子として以外の機能を有している可能性が考えられる。本研究では、WD40リピートを有したMSI1の植物個体の発生分化過程における細胞レベルでの役割を明らかにすることを目的とした。
アラビドプシスの受精卵からglobularステージの初期胚に至る過程の細胞分裂の回数と方向は遺伝的に厳密に制御されており、その結果、同様の形態の初期胚が形成される。msi1ホモ接合体初期胚のsuspencer細胞とhypophysis細胞は、分裂を停止せずに異常に増殖した。この時suspencer細胞は、特異的遺伝子Pin7などを正常に発現していた。抗MSI1タンパク質特異的抗体を作製して、細胞内におけるMSI1タンパク質の局在を解析した。その結果、MSI1タンパク質は核に局在しており、核内のドット状の構造に特に蓄積していた。このMSI1の細胞内の局在と機能の関係に関して報告する。
抄録全体を表示