日本デザイン学会研究発表大会概要集
日本デザイン学会 第52回研究発表大会
選択された号の論文の182件中1~50を表示しています
  • 東島 真弓, 吉原 直彦, 西田 麻希子
    p. 1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    REPREは岡山県立大学ビジュアルデザイン学科の研究グループで年一回発行する、表象文化とデザインの研究誌である。その編集方針については文字通り、現代の表象から導かれるメディア、身体、地域などにおける文化的諸課題をデザインとのつながりにおいて考究、定着するという点が挙げられるが、その他に院生教育や地域におけるデザインの営み及び大学広報に関する研究を並行、反映するという側面も持ち合わせる。また同時に、少人数編成の編集デザイン部スタッフにより、企画・取材・編集及びDTPによる装丁や編集デザインといった実務を並行して実施しているが、そのようなブックデザインだけでなく種々のワークフローの改善等にも取り組んでおり、次元の異なる諸問題を抱えつつ進行しているという現状がある。以上のような取り組みの一過程としてこのたびREPRE第4号を刊行した。発表では本誌制作を通じた研究の経緯と、次号以降の展望について述べる予定である。
  • 駅空間と広告の関係を中心に
    西川 潔, 山本 早里, 高 台泳
    p. 2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    近来、駅は交通機能だけでなく、経済や文化活動などに関わる様々な情報の発信地としての機能も担いつつある。このような駅の多様な活用は、街の活性化や駅の地域密着度の向上、そして消費拡大に促される経済の促進という側面においては、評価に異論はないだろう。しかし、交通の結節点という本来の機能を考えると、駅は効率良く、快適に乗降したり、乗り換えしたりできることが優先されるべきである。また人と人が出会い、また別れの場所としての演出、劇性を備える必要もある。ところで現在の駅空間の場合、方向感覚の喪失を促し、合理的で快適な駅の利用を妨げる様々な問題を抱えており、その原因一つとして情報の混乱が挙げられる。そこで、現在の駅空間の抱えている問題を解消するべく、広告のさまざまな関係を見直し、まとまり感のある景観を形成するための方策が次のように提案された。それは、広告の構造化と装置化、情報のヒエラルキー化とフェイスデザインの改質、掲出状態の整理、見通しの良い空間の確保である。すなわち、空間の特性を充分検討し、それに合った方向で広告のあり方を提案することによって、変化と秩序のある、美しく快適な景観をつくることができるとの結論を得た。
  • 高 台泳, 西川 潔
    p. 3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    我々の生活する空間には、様々な図像的イメージが存在している。本研究は、環境を彩る様々なグラフィカルな仕事を「環境グラフィック」の名称で呼び、その概念的考察を試みたものである。まず、「環境グラフィック」の概念の定義からはじめ、次に形式や目的、効果や展開の状況などを、様々な観点から整理を行った。その結果、「環境グラフィック」は人間の存在基盤に直結し、具体的なスケールと物理的条件をもつ外的世界としての「環境」」に対し、2次元的なグラフィックを通じて視覚的に働きかけるものであることがわかった。それは被膜であることが多く、失敗したら描き直せる気楽さを持ちながら、その効果は人間の精神的側面にまで及んでいた。「環境グラフィック」はしばしば非日常的な視覚経験を我々に与えて、新たな環境の形成、あるいは変貌を促していたのである。その起源は先史時代の洞窟画に通じているほど、長い歴史を持っていた。しかし、その名称が登場したのは20世紀後半で、その背景には環境問題に対するデザインの積極的な参与が指摘できる。このように、「環境グラフィック」は時代の情況を反映しながら、人間と共に展開されてきたことがわかった。
  • ドイツ改良服運動の高まりの中で
    椎名 輝世
    p. 4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    19世紀から20世紀への転換期に、実用美術の様々な分野に活躍の場を広げたペーター・べーレンス(Peter Behrens 1868_から_1940  ドイツの工芸・工業デザイナー、建築家。以下B.と略す)は、1901年と02年(当時33_から_34歳)婦人服デザインにも挑戦していた。それはB.の広範なデザイン活動の小部分にすぎなかったし、商業的に成功したわけでもなかったが、世紀転換期の健康志向の中で高まったドイツ改良服運動の一翼を担ったものであった。そこでその運動の時代背景と、B.の服人服デザインへの関与について出来るだけ明らかにしたい。
  • 坂本 久子
    p. 5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     フィラデルフィア万国博覧会(1876年)の会場には二棟の日本の建物が建てられた。これらは日本から建築資材を運び、日本の職人が現地に赴き建てたものであり、アメリカで多くの人々が見た本格的な日本建築であった。一棟は「日本家屋」で、もう一棟は「日本賣物店ノ建築」である。そしてこれらは万国博覧会の日本の出品物であった。これらの建物については、「日本的なもの」や「日本」の演出について考察した研究は見られるが、アメリカの人々がどのような目を向けつつこれらの建物を受留めたかの論考はなされていない。 本報告は、当時の絵入新聞三誌の記事と挿絵を中心にして、この建物を扱ったアメリカの著書と写真を参照しながら、報道を通して日本の建築に対するアメリカ人の受留め方と共にその建設過程についても考察するものである。
  • 井上 勝雄, 中村 千枝, 伊藤 弘樹, 関口 彰
    p. 6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    消費者の視点から、メガネデザインの選好要因を感性工学的な手法を用いて定量的に分析することが本研究の目的である。さらに、現場デザイナーを被験者に、分析結果にもとづくデザイン提案の検証実験を実施し、その課題についても考察した。分析プロセスは、まず、市販の71種類のメガネサンプルをもとに、レパートリー・グリッド発展手法を用いて、メガネの評価用語(態度とイメージ)と認知部位を求めた。そして、評価用語をSD尺度評価し、その求められたデータをもとに、態度とイメージ、認知部位の階層関係を明らかにした。具体的には、態度とイメージの関係を分析するために重回帰分析を行い、イメージと認知部位の関係は、ラフ集合と決定ルール分析法を用いて分析・考察した。その結果、消費者の選好構造の階層関係が定量的に求められた。この結果をもとにした検証実験の結果、メガネのデザインをする際には、デザインの設計認識として活用することは十分可能であることが示された。また、斬新なデザインをするにはまだ改良の余地があることや、細部の装飾や造形の情報が不足しているとの指摘もあった。
  • National Geographic Magazine の歴史的進化研究 (3)
    谷内 健
    p. 7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     本報告は、第49回、50回研究発表大会において報告した「National Geographic誌の歴史的進化研究」の続報(第3報)である。同誌は、地理を主軸においた月刊誌として1888年創刊後100年余を経過し、現在では各国語版を入れ1000万部の発行部数を誇る世界的総合知識雑誌として進化した。 雑誌広告は、読者にとって重要な情報源ともなっており、広告のコンテンツを時系列的に分析することにより、社会的・文化的背景やライフスタイルの変遷などを解明できるのではないか、との仮説をたて、1886年から1996年までの同誌広告100年分の資料をもとに精査・統計的整理・分析を行なった。 その結果「同誌が規定した独特のフォーマットが原則的には遵守されていること」「大恐慌や、世界大戦等の社会情勢の変化が広告にも影響を与えたこと」などが確認できた。
  • 実用色彩調和理論「Blue Base / Yellow Base Color System」の研究
    赤澤 智津子, 大嶋 辰夫, 上原 勝
    p. 8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    「Blue Base / Yellow Base color system」は、実用性に重きをおいた色彩調和理論であり、製品開発、インテリアコーディネート、パーソナルカラー分析等々に用いられ実績を上げてきた。 このシステムは、カラーキープログラム(色票)を用いる。すべての色票は、それに含まれる青と黄色の色素の物理的な比重によりブルーベースの色とイエローベースの色の2系統に分けられ、それぞれの系統のグループ内の配色であれば、色同士は調和しあい、別グループが混在すれば調和しないことになる。そして人間も、パーソナルカラーとしてブルーベースもしくはイエローベースに分類できる。 本研究ではこのシステムにおいて被験者のパーソナルカラーと好む色との相関性を調べるのが目的である。実験の結果、もっとも好む色を1色に絞って提示してもらった場合、パーソナルカラーがブルーベースの人はブルーベース色を好み、パーソナルカラーがイエローベースの人はイエローベース色を好むという被験者の属性と嗜好色の相関がみられた一方、選択の幅を広げるとその傾向はみられなくなったことなどがわかった。
  • 案と坐具について
    藤原 美樹, 松本 静夫, 石丸 進
    p. 9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    『金瓶梅』は、中国の古典文学で四大奇書のひとつとして知られ、明時代の万暦年中頃に書かれると言われる。 本稿は、『金瓶梅』にみえる家具の中で、案と坐具についての考察を行い、家具・室内意匠の特性について明らかにすることを試みる。考察の結果、次の4つについて明らかになった。(1)交椅は、時代により、名称と形態は異なる。(2)西門慶邸の書斎には、東坡椅や酔翁椅が陳設され、形状も他に類が見られない。(3)主に女性の住まいや妓院に陳設される坐具は、坐具としての用途だけではなく、室内意匠の要素のひとつになっていると考えられる。(4)家具・室内意匠と人物描写には、関連性がある。家具・室内意匠の描写を通して、登場人物の社会的身分や生活様式が表現されている。
  • 片山 勢津子
    p. 10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    NYチェアXがMOMAの永久収蔵品に選定されるなど,NYチェアは名作椅子として知られる。しかし他と違い,廉価で雑貨店等でも手軽に購入できるため,作者の新居猛やその作品,制作姿勢についてあまり知られていないのが実情である。本稿では,椅子制作に至った経緯や折り畳み椅子の系譜,コピー製品を廻る裁判からNYチェアの制作思想を探る。新居の家業は剣道具屋であったが,戦後,GHQによって剣道が禁止になったため,彼は木工技術を学ぶ。作品で詳細が分かる椅子は24脚で,特徴のあるのはNYチェアシリーズ9脚と試作2脚の計11脚である。その変遷を見ると,折り畳み形式,安定性,軽量化,使用場所等を考慮して改良していることがわかる。自社工場で製作するため,自ら使用して改善,試作を重ね,大衆向けに拘りコスト削減を図る。こうした新居の椅子への思いを踏みにじったのが,コピー商品の出現である。著作権の侵害を一人訴えたが,最高裁でも棄却された。それ以降,彼は真似のできないオリジナル製品を強く指向する。他にない椅子を作ろうと考え,洋の椅子を和の伝統技術で作り上げた職人気質をNYチェアには認めることができる。
  • Javaプログラミング授業の教材として使える外部入力デバイスの比較検討
    有賀 妙子
    p. 11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    大学において、デザイン・メディアアートを学ぶ学科のカリキュラムには、プログラミングを学習する科目が設けられている。プログラミングは、コンピュータという表現手法の理解を深め、表現の幅を広げるために重要である。しかし、そこには理工学関連の学科とは異なる目標があり、それに対応した教材が求められる。
    筆者はデザイン・メディアアート系学科の学生を念頭に、汎用プログラミング言語Java教育教材を開発してきた。コンピュータを表現の道具として使う際に、プログラムに求められるのは、コンピュータと人とのインターラクションを仲介することである。キーボードやマウス以外の物理的/身体的な入力装置を使うことは、表現手法を拡大する可能性をもつ。
    センサーやバーコードリーダといった外部入力装置からデータを得るプログラムの作成を学習するためのハードウェア、ならびにプログラミング環境について、検討結果を報告する。
  • アフォーダンス、そしてエスノメソドロジーへと
    田村 直樹
    p. 12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     マーケティングとデザインとは深い関係がある。マーケティングの成功と優れたデザインとは密接に関係している。本報告ではマーケティング研究という文脈からデザインを取り上げようと試みている。その手がかりとして、近年注目されているアフォーダンス概念を検討しつつ、エスノメソドロジーという社会学的視点からデザインという実践を捉えなおそうとしている。したがって、本報告は理論的、方法論的議論となる。 本報告では特に製品マーケティングと関わりのあるプロダクト・デザインを取り上げ、「知覚」「言語」「物質」「生活」といったキーワードによってデザインのもつダイナミズムに社会科学的に接近しようとする。
  • 鶴田 崇義
    p. 13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    現在、病院・医療機関には、患者が使用する車椅子が常備されている。車椅子とは、足と同じ役割を果たす重要な身体の一部である。足の大きさが人それぞれで、靴にも様々なサイズがあるように、車椅子にも障害に合わせて、さまざまな機能を備えたものが必要である。現在でも、障害や身体的特徴に適応した個人の車椅子は存在する。しかし、不特定多数の障害を持った人が集まる病院・医療機関のほとんどが、標準型車椅子しか常備していないのが現状だ。両足だけが不自由な人にとっては相応しいが、特にリハビリ機関の患者の多数を占める半身麻痺者にとっては、標準型車椅子の使用は腰痛、肩こりなどの二次的障害の要因になる。半身麻痺用車椅子にはダブルリム方式とレバー方式があるが、右麻痺・左麻痺の相互使用が不可能であるので、医療機関に常備するには難しいという問題点がある。そこで、今回、病院・医療機関に常備するべき車椅子の提案を行う。
  • 関口 彰, 嶋 暁人, 井上 勝雄, 伊藤 弘樹
    p. 14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は携帯音響機器(MDプレイヤー)デザインの選好(買いたい)という態度を引き起こす要因を感性工学的な手法を用い、定量的に分析することを目的とした報告である。まず、デザインの選好に寄与する11項目イメージの中から強く寄与する項目として、4つのイメージ「新しい」、「シンプル」、「ポップな」、「量感がある」を、20名の被験者によるSD法5段階評価の結果を使って、重回帰分析により抽出した。次に、これらの4つのイメージと認知部位(認知的形態要素)との関係について、各イメージ毎にラフ集合の決定ルールをそれぞれ求め、決定ルール分析法により、これら多くの決定ルールから最適な認知部位の属性値を求める計算を行い、これらの関係を商品構想として活用できる指標としてまとめた。これらの分析結果により、デザインの選好と認知部位との階層的構造が明確となり、商品選好に関する逆推論を用いた商品仕様抽出のための設計手法としての有効性が明らかになった。さらに、この有効性に関する検証実験のために現役デザイナーによるデザインスケッチ作成を実施し、改善のための幾つかの有効な提言を受け、手法としての課題についても考察を行った。
  • インタフェースデザインにおける「仕掛け」のデザイン
    井上 順子, 鶴巻 史子, 小山内 靖美
    p. 15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     デザインの発想において類推的思考の有効性は、発想法の研究で明らかにされている。本研究では、画面デザインにおけるアナロジーの使用について注目した。Webサイトのデザインプロセスのうち、サイト企画および画面デザインにおいて類推的思考を用い、サイトデザインにおけるアナロジーの有効性を検証した。デザインプロセスにおいて以下の異なるアナロジーの使用を検証した。[1]アイデアの発想手法としてのアナロジーの利用[2]画面デザインにおけるわかりやすさのためのアナロジーの利用アイデアの発想手法としてのアナロジーの利用は、デザイナーが発想の切り口を意図的に変更することに役立つといえる。また一方で、画面インタフェースに利用された「仕掛け」は、ユーザーに対して「直感的なわかりやすさ」を提供する。人間の持つ共通感覚を画面インタフェースに取り入れることで、「わかりやすさ」に近づくことができる。デザイナーにとって発想手法として、類推的思考を利用することが、新しい情報のかたちを発想するために有効だとわかった。
  • ストーリー形成における骨相学と観相学の関係
    高田 哲雄, 高田 多恵子
    p. 16
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    実際の映像作品制作においては、骨格となるストーリー構造というものが私達にとって必要不可欠である。そして表情としての視覚情報の組み立てがなければ作品は完成できない。実験の視点をもう一度”骨相学”と”観相学”の二つの視点から総合的感覚分析のレベルに戻し、かつ局所的な因果関係に固執することなく全体構成を意味づけている問題について考察してみる。今回私は心理的イメージによってカラーブロックを分配した後、それらの配置の違いが如何に全体の印象を変えるかという実験をおこなった。
  • 岩倉 信弥, 長沢 伸也, 岩谷 昌樹
    p. 17
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    企業は、デザインで高付加価値や差異を図ることができる。もっと言うと、企業はデザインを戦略的に活用することで、_丸1_製品の差異化、_丸2_ブランドの形成、_丸3_製品市場の拡大が可能になる。企業が、これから特に取り組まなければならないのは「こと」のデザインである。それは「もの(製品)」と「ひと(使い手)」との関係を滑らかに取り持つために不可欠なものである。何よりも、製品と人間との接点(触れ合う部分)を第一に考えなければならない。実際の企業を見ても「こと」のデザインに向けたデザイン・パワーの活用が数多く確認できる。企業はいまや、単にデザインを管理するというよりも、経営をデザインする必要がある。それが、デザイン・マネジメントである。
  • 長沢 伸也, 岩谷 昌樹, 岩倉 信弥
    p. 18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    コア・コンピタンス経営では、企業独自の中核能力が注目を浴びた。しかし、企業の個性というものを考えると、中核技術をもとに製品をつくりだすときに、デザインが違いを出す最大のポイントとなる。強力なデザイン・パワーを用いるとともに、デザイン・マインドを持ったトップ・マネジャーがデザインを全社戦略の武器として取り扱うことで、企業は卓越さを手にすることができるだろう。特に、トップ・マネジャーのデザイン・マインドは、戦略がないと言われる日本企業の中でも、例外的に戦略があると見なされるソニー、ホンダ、シャープなどに顕著である。トップ・マネジャーそれぞれにデザインの力点の置き場に違いはある。しかし、そうしたデザイン・マインドの差が、企業に個性を与えているのである。
  • ホンダから捉えるデザイン・マネジメント戦略
    岩谷 昌樹, 岩倉 信弥, 長沢 伸也
    p. 19
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    1990年代、経営戦略論の領域では「コア・コンピタンス」と「ナレッジ・マネジメント」という2つの概念が発展の機会を見た。確かにこれらは有益な考え方を提供できるものであった。しかし一方で、そういった点にアクセントが置かれるがために、見落としがちな重要な部分、すなわちデザインについての捉え方が、いまだ戦略論においてつながりを求めている。企業が経営戦略を立てる上で、独自性を打ち出すためにはデザイン・マネジメントが欠かせない。コア・コンピタンスを持っているだけでは、製品はつくり出せても、それが売り物として魅力的であるかどうかは別の問題だ。本報告では、デザインを戦略上の有力なツールとして用いるホンダを例に、この点に触れる。
  • 河川水族館のデザイン(平成16年度 文部科学省社会教育活性化21世紀プラン事業 実践報告)
    諫見 泰彦
    p. 20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    筆者らは、福岡県筑紫郡那珂川町の那珂川流域を対象として、豊かな生活環境形成に対して河川が果たす役割について考え、新たな提案を行うことを目的とした「まちづくり学習」に取り組んでいる。学習の成果として筆者らは、那珂川河岸に河川水族館を計画し、これを中心施設としたまちづくりを提案することにした。21世紀は「環境の世紀」といわれる。「建築」という工業技術も、時としてかけがえのない自然環境を破壊してしまうことがある。極言すれば建築教育と環境教育は相反するベクトルを持つものかもしれないが、まちづくりをテーマにこれらを融合した教育実践ができないかという模索が、この学習の背景にある。「まちづくり学習」は、環境に対して責任のある仕事ができ、環境保全と生産開発が調和のあるものとする技術者の育成が目標であり、多様な環境問題との関わりを総合的・多面的に考えながらの実践過程にこそ意義をおいている。
  • サインにおける外国語表記とピクトグラムの有効性について
    井上 征矢, 李 ウンジン, 山本 早里, 西川 潔
    p. 21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    今日の交通関連施設では、一般的なサインには日本語と英語の2ヶ国語を用い、出口、トイレ、インフォメーションなど、特に外国人に必要性が高い対象については、中国語、韓国語を加えた4ヶ国語で表記する場合が増えている。しかし限られた表示スペースに4カ国語を表記するには、文字を小さくする必要があり、表示内容の可読性が損なわれることになる。本研究では、駅のサインに表記される言語数や、言語に代わるピクトグラムの有効性について検証するために、日本語、英語、韓国語、中国語を母国語とする被験者に対してサインの瞬間提示実験を行った。その結果、やはり日本語と英語を母国語とする者にとっては、2カ国語表示が4カ国語表示よりも有意な差で見やすいことが確認された。韓国語を母国語とする者についても、漢字やローマ字を手がかりに回答できるためか、ハングルがない2カ国語表記において誤答率が上がることはなかった。従って英語を母国語としない人にとってもローマ字表記が有効であることが確認された。ピクトグラムの有効性については、今回の実験方法では明らかにできず、今後の課題として残された。
  • ニュンフェンブルク磁器マニュファクチュアのモダン・デザイン
    針貝 綾
    p. 22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本論は、アーデルベルト・ニーマイヤー(Adelbert Niemeyer, 1967-1932)がニュンフェンブルク磁器マニュファクチュア(Die Porzellan-Manufaktur Nymphenburg)に提供した820番という食器セットをめぐる問題について検討するものである。820番の装飾模様の中でも、金彩による装飾模様752番は820番のセットに最もマッチしており、ベストセラーになると同時に意匠保護期間が終了した1909年以降、次々に作品のコピーが出回ることになった。ニーマイヤーのセットが成功した要因は、そのモダンなデザインと共にニュンフェンブルク磁器マニュファクチュアがこの頃展覧会を通して新たな販売ルートを開拓したことが挙げられる。有限会社ドイツ手工芸美術工房が販売に関わった他、デューラーブントもニーマイヤーのコーヒーセットを掲載した商品カタログを売り出した。ウィーン工房も関心を示したニーマイヤーの清新なデザイン感覚はウィーン・ゼツェッションにも共鳴するものであり、シンプルなフォルムは容易にコピーできるため多くのコピーが出回るなどの問題が絶えなかったが、ニュンフェンブルク磁器マニュファクチュアにモダン・デザインを持ち込み、普及させた所にニーマイヤーの功績があったと考えられる。
  • 楠林 拓, 森山 俊輔, 松本 誠一, 金本 幸喜子, 酒見 準一, 橋爪 大樹, 上田 美加
    p. 23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    ユニバーサルデザイン(共用品)の考え方から、車椅子利用者を中心にして、我々に馴染みのある家具:箪笥を見直した。障害者の家庭でのモニター調査の結果、現在の箪笥は以下の問題を車椅子利用者に与えていることがわかった。1.引出しを引きながら後に下がる必要があり、車椅子には困難である。2.車椅子の足が箪笥に当たり近づけない、このことで、引出しの奥のものが取り出しにくい。そこで、引出しを直線的に引出すのではなく、半円形にして回転させる方法を採用した。従来の箪笥は、車椅子の足が当たり近づけなかったが、最下段をクリアランススペースにしてアクセスを容易にした。試作を行い再び車椅子利用者にモニター調査を行った。意図した回転式の引出しは概ね期待通りに機能を果たすことがわかった。いくつか未解決の問題は残されているが、箪笥という古典的な道具に、新しいイメージとユニバーサルデザインの機能を盛り込むことに成功した事例と考えている。
  • 村上 存, 神 祐介
    p. 24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    製品や掲示において複数色を使用する場合、正常色覚、色覚異常、加齢(水晶体の黄変)など多様なユーザすべてが各色同士をある程度以上区別できるという条件と、統計的に多数である正常色覚者に訴えるデザイン性、審美性を実現するためにデザイナーが使用したい色であるという条件とを、デザイナーが満足できる範囲内で最適にバランスさせることが理想的である。本研究では、デザイナーが満足できる範囲内で前述の二つの条件を最適にバランスさせたn色を対話的、系統的に決定する数理的手法およびそれを実装したソフトウェアの研究、開発を行なった。提案した手法を、東京の地下鉄の路線図に用いられている13色に適用し、ユーザの多様性を考慮して全体的な識別性を向上できることを検証した。
  • 構成要素と街路景観の快適牲に関わる公共沿道空間のあり方について
    千代田 憲子
    p. 25
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     構成要素に関するまとめと街路景観の快適性と環境特性および感性的属性との関係から,公共沿道空間のあり方に関する考察の結果,連続型と分節型の公共沿道空間が混在しながら連続し,民地との連動や街路景観エレメントの充実と快適行動を引き出すコトが加わることで街路景観の快適性が形成され,さらに今後は都市環境のモラルの育成も重要になるという,構成要素の仕組みと関連性を提示した。そして,街路景観の快適性の構成を成立させる4点である「部分と全体の階層的関係による秩序性」「中間領域の有効性」「要素間の関係性と連続性」「行動と快適性の循環」から,公共沿道空間は,中間領域の持つ有効性を活かして,行動と快適性の循環による蓄積の受け皿として存在する。また,街路景観の快適性には部分と全体の関連性が深くかかわるが,階層的関係による秩序性が成立したうえで,ディテールからの発信や影響力が有効となる。加えて, 各要素は関係性をもって存在していることから効果が高まる,という考え方を導いた。そして,街路景観の快適性は,人と場と要素との関係性を巻き込みながらスパイラルに成長する,という快適性と関係性の構造を示すことができた。
  • 広告とサインとの関係に関する印象評価実験
    玉置 淳, 井上 征矢, 山本 早里, 西川 潔
    p. 26
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    サインを見つけ難くしている要因として、駅構内のサインと広告や店舗の看板が建築的に非常に近い位置に設置されていることが多いこと、これらに使われて> いる色彩には類似色が多いことが考えられる。本報では、駅構内におけるサインと広告との関係に焦点を絞り、特に空間的な位置と色彩に着目し、『サインの『見つけやすさ』『駅構内の印象』の二点に与える影響を、印象評価実験を通して検討した。その結果、両者共によくなるのは、「サインを黒地化」したものであった。「広告をなくす」場合は、『サインの見つけやすさ』は良くなるものの、『構内の雰囲気』は最も悪かった。空間的な関係では、「広告の位置を上下」させてサインの位置と離すことが、『サインを見つけやすく』する効果があったが、『構内の雰囲気』ではあまり効果はない。「広告の彩度を下げる」や「広告の内照式をやめる」は、『サインの見つけやすさ』に多少効果があるものの、『構内の雰囲気』を悪くしていた。以上から、サインを見つけやすくしつつ、構内の雰囲気を良くするためには、「サインの黒地化」が最も効果が高いことが明らかになった。
  • 森田 昌嗣, 清須美 匡洋
    p. 27
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    わが国有数の家具産地である福岡県大川市は、主力商品の婚礼家具などの需要が著しく低下し、さらに東アジアからの価格競争により最盛期の半分まで売上が落ち込んでいる。このような状況の中で、今年度大川は、国際的に通用するJAPANブランド事業に採択された。本稿は、「大川JAPANブランド」確立のためのブランド計画プロセスを報告するものである。本プロジェクトは、九州大学、大川商工会議所、メーカー、デザイナーなどの連携により推進チーム“Team Okawa”を組織した。国際的家具ブランドの確立は、大川家具のデザイン力や技術力をさらに向上させ、高質で高価値化による国内外での市場競争力の強化が目的である。“新しい価値の提供”を考えたコンセプト開発、デザイナーとのコラボレーションによるハイクオリティなデザインなど、既存製品とは一線を画する商品群の開発を進めている。計画初年度は、都市生活の高密度な住空間において、日本独自のモデュールで、もっと人に優しい家具を見つめ直すことをブランド・コンセプトに、「ヒトよりの、ヒトのための心地よい美しさ」を目指した新たな家具ブランドを提案した段階である。
  • 土屋 雅人
    p. 28
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    自然災害の被害を抑えるための有効で且つ簡便なツールとして防災マップがある.防災マップは、地域住民が自分の住む町の災害危険性を知り,災害に関する知識を事前に正しく理解することで,災害による被害を軽減することを目的として作られている.この防災マップを作成するツールとして,街中の位置情報を扱うGIS(地図情報システム)と,どこでも簡単に情報収集できるGPS・カメラ付き携帯電話が有効であると期待されている.今回,神奈川県藤沢市辻堂地区近郊の防災マップを作成するために,2004年4月からの2ヶ月間,地元住民と連携して,街頭消火器,防災井戸,貯水槽などの現状調査を行った.その調査では,GPS・カメラ付き携帯電話を用いて緯度・経度の位置情報付の画像情報等を取得し,携帯電話のメール機能を用いてメールサーバーに送信し,データ変換ソフトを用いてGISに取り込んだ.そして,そのデータから,紙の防災地図と,Web用データを生成した.本研究では,この一連の調査プロセスの中で試用したITツールと,それらを用いて防災マップを生成するまでの検討プロセスと課題を紹介する.
  • 益岡 了, 川合 康央, 池田 岳史, 緒方 誠人
    p. 29
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    インターフェイスデザインに関連する領域の複合的な網羅と、デザイン評価システムの妥当性の検証を目指し、実験用Web Site(http://www.vicd.oka-pu.ac.jp/data1208/index.html)の運用を行い、インターネット上の評価システムと、実際の被験者を用いた実験の評価を比較することで、一定の有効性が明らかにした。そこで同一対象空間を撮影位置の高さを変えて撮影し、その高低の違いがインターフェイスデザインの評価にどのように影響するか検証する比較コンテンツを制作、調査を行った。その結果、実際の空間内で直立した場合の視覚的な高さと、選択された景観画像には相違があり、それらと景観イメージの開放性に関連があることが判明した。
  • 降旗 英史, 山口 光, 渡辺 雅志, 松本 康史
    p. 30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     本製品は大同工業株式会社(石川県)の委託により、2003年6月から2004年12月にかけて共同開発したものである。当社は我が国のいす式階段昇降機の草分けであり、市場で最大のシェアを占めているが、他社の追い上げが激しくデザイン導入の必要性に迫られていた。 国内外市場の製品調査の結果、事務いすを乗せた機械のような印象のデザインが多いことが分かった。高齢者や身体的なハンディを持つ人が住宅で利用するものである以上、人とも住まいとも調和する家具のようなものであるべきだという考えがデザインの出発点になった。「機械から家具へ」というデザインコンセプトのもとに、以下の特徴を持つ製品を開発した。_丸1_高所を移動する搭乗者に安心感を与えるように、身体を包み込む形態の木製いすを搭載した。(成形合板製の椅子の搭載は世界初)_丸2_日本の狭い住宅で使うことに配慮して世界最小の折畳み幅を実現した。_丸3_駆動部やレールはビスやギヤなどが見えないようにし、柔らかい形態と背後の壁に溶込む色使いによって機械的なイメージを払拭した。当製品は2004年にグッドデザイン賞を受賞し、国際福祉機器展で発表され、2005年1月より市場に投入されている。
  • デザインプロセスにおける理解のかたち
    鶴巻 史子, 村上 裕偉, 井上 順子, 宮崎 勝志, 山田 和弘, 佐藤 輝久
    p. 31
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    情報デザインにおいて「わかりやすさ」は重要な課題である。ユーザが理解しやすく、操作しやすいデザインは、情報デザインの主軸となっている。本研究では、主軸を担っている「わかりやすさ」の本質となる「わかる/理解する」ことに着目し、理解の構造を解明する。「頭の理解」と「身体の理解」を有機的に関連づける方法としては、「体験/経験」することを経て、意図的な試行錯誤(学習)を行い、双方の理解を合致させることである。デザインプロセスにおいて「わかる/理解する」ことは、ある一定のタスクを達成する鍵となり、次のタスクの方向を予測させるものであることもわかった。
  • プラスチックダンボールによる移動機器試作の研究事例
    山口 光
    p. 32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     プロダクトデザインにおけるスタディモデルの場合、意匠を検証する研究事例が多い。その一方で機能・構造・人間工学などはコンピューターで検証されることが多く、制作されない場合も少なくない。しかしスタディモデルによる体感的検証はデザイン案に影響する可能性があり、特に車椅子や自転車のような直接的に操作・運転する機器においては有用であると思われる。本研究は構造体試作の一手法として、構造を伴うスタディモデルの実践的研究を行うことを目的としている。ここでは素材の堅牢性・加工性・軽量性・環境性に着目し、ポリプロピレン製中空構造プラスチック板(通称プラスチックダンボール)を使用し、車椅子・キックボード・自転車などの人力移動機器にて試作を行い、試乗による検証を行うこととした。結果として、実用に準ずる使用が可能であることが確認できた。特に負荷の高い二輪自転車の試作において10kmの走行が可能であったことから、構造モデルとして一定の強度を有することが判明した。また素材であるポリプロピレンの特性などを利用することで、部品の一体化による試作の簡略化・軽量化および強度向上が可能であることが確認できた。
  • 蓮見 孝, 松井 彩乃
    p. 33
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    QOLを計る新たな尺度を開発するための基礎調査として、人が潜在的に持つと思われる「かくあるべきとする生活の質」が、どのようなイメージによって形成されているのかについて調査を行った。幸福感に満たされている状況にある人を対象に、「こうありたい」というような夢(あるべき生活の質)を表現するフリーコメントを収拾し、分析した。具体的には、2005年3月25日に行われた筑波大学卒業式において、卒業学生を対象に、「願い事プロジェクト」と称する感性的調査を企画・実施した。卒業式を終えた学生200人(男性100、女性100人)を対象に、卒業の時点で思い浮かぶ「願い事」をカードに記入させた(一人一件)。お祭り気分を阻害せず、被験者がリラックスして記入できるようにするために、学生調査員3名には、「縁屋さん」と呼ばれる仮装を施した。分析1:被験者によって記入されたカードを、KJ法的に、内容が似ていると思われるもの同士のグループに分類し「願い事マップ」を作成した。コメントの偏りを是正するため、「願い事マップ」を新入生に閲覧させ、「同感」と思われるグループにマークを付けさせるとともに、「自分の願い事」を落書き的に自由に追記させた。その結果、共感が全く得られないコメントは除外し、追記されたコメントで共感が得られたものについては、新たに「願い事マップ」に追記した。このようにして「願い事マップ」に掲載されたフリーコメントを全数点検し、そこからキーワードと思われるワードを抽出して、「キーワードリスト」を作成した。キーワードリストに掲載された全てのキーワードの相関関係を得るために、クラスター分析を行った。以上の調査研究から、「生活の質」は、「Physical activity(心身の健康度合い)」「Social communication(社会とのつながり度合い)」「Lifespan-management(人生設計における欲求の度合い)の3軸によって計れるものと判断された。
  • 課題の開発と指導
    高山 正喜久
    p. 34
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、課題の開発と指導について論じるものである。論点は以下のとおり。
    (1)課題とは何か
    (2)課題のバランスについて
    (3)学生に対する課題の割り当てについて
  • 曽我部 春香, 森田 昌嗣, 行平 信義, 尾池 哲郎
    p. 35
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    リサイクルタイルの開発を行うにあたり、よりよい開発を行うために主に、設計者を対象として、現市場のタイルについてのアンケート調査を行った。返送のあった、約70名の回答をインテリア床、インテリア壁、エクステリア床、エクステリア壁のそれぞれの用途別に集計し、分析を行った。全体の結果から、「素材」や「色」について、使用用途によりはっきりとした傾向が表れ、新素材に対する欲求や、現市場の大判タイルに対する不満、要望の多い色領域などが明らかとなり、タイル開発を行ううえでの多くの手がかりを得ることができた。
  • 田村 良一, 森田 昌嗣
    p. 36
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,熊本県阿蘇郡小国町の地域ブランドを構築するために,小国町とその他11地域の合計12地域を対象として,地域イメージの構造について検討したものである。12地域の地域イメージに関するアンケート調査を行い,性別・観光客層別に分けた4グループごとの平均値を算出し,それらの値をもとに因子分析を行った。その結果,地域イメージは「文化度因子」「親近度因子」「閑静度因子」の3因子で捉えられることがわかった。また,12地域に共通して4グループの評価にバラツキはみられたが,比較的に安定し,特徴的な評価が得られている地域もあった。一方,小国町は4グループの評価のバラツキが大きく,因子空間上での付置の様子にも大きな特徴がみられなかった。今後の小国町の地域ブランド構築にあたっては,地域イメージの方向性を明確にするとともに,そのイメージに対応したデザイン戦略の立案が必要と言える。
  • 石橋 伸介
    p. 37
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、公共空間における人の行動の中でも、ある一定の空間に一定時間留まる行動である滞留行動に着目し、滞留行動と空間および装置類との関係を探り、両者のより良い関係を築くための計画手法の確立に向けて考察を行うことを目的とする。 福岡市美野島地区をケーススタディとして研究を進め、フィールド調査、物理量調査、アンケート、行動観察調査を行い、滞留空間を空間構成および装置分布とに類型化し、両者の関係を導き出し1つの体系化された表にまとめることができた。 最後に、まちづくりにおける課題解決に向けた考察として、公共空間の設計手法についての提案を行った。研究により導き出された公共空間における行動と空間および装置類との関係を利用し、利用者である住民とデザイナーとの間のイメージの共有を容易にすることで、よりスムーズな計画の進行を実現することができる。
  • 三井 直樹
    p. 38
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では、メディアの誕生から現代のマルチメディアまでの変遷を図式化することによって、メディアアートの体系化を試みる。さらにその表現形式を捉えながら、メディアアートに対する概念規定を提案したい。 第2次世界大戦後、再出発したテクノロジーアートは、後に新しいメディアアートを形成する母体となる。1970年代に入るとキネティックアートとライトアートを基盤として、TVやビデオなど映像メディアが加わったミックストメディアを中核とする新しい視覚表現を開拓してきた。80年代以降は、サイバネティックス性とインタラクティビティを獲得しながら、五感を動員させた体感アートに進化させてきた。 こうしてメディアアートは、20世紀美術の延長線上にある新しい芸術領域として認識されるようになるが、あくまでも芸術としての表現性や歴史的背景の視座から捉えた見方である。デジタルメディアが今日では既存の芸術領域だけでなく、TVゲームやCG、アニメーションなど、さまざまな周辺領域に拡大している。本稿は、このメディアと美術の関係について着目し、その表現形式の変容を通じて、新しいメディアアートの概念と枠組みを明確にする。
  • 5人のリーダーを中心に
    趙 採沃, 三井  秀樹
    p. 39
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    「Art to Wear」はファッションとアートが融合した独自なアートジャンルとして、現在、その発祥地であるアメリカでは、「Wearables」、「Wearable Art」、「Art Wear」などいくつの名称で呼ばれている。 筆者は、論文「韓国の『Art to Wear』の研究-概念と変遷を中心に」において、アメリカの「Art to Wear」は韓国の「Art to Wear」の直接的な契機となっていることを明らかにした。従って、アメリカの「Art to Wear」の考察は、韓国や日本などの「Art to Wear」の諸状況の理解や、その本質を把握する上で、有意義であると考えられる。 本稿は、1960年代後半から1980年代初めまでのアメリカの「Art to Wear Movement」に該当する時期における、その造形的な特徴をそれのリーダであった5人の作家(後出)に焦点を当って考察を行った。
  • 澁谷 智志, 木村 健一
    p. 40
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     作曲能力の熟達を促す創作過程を支援するソフトウェア「Soundbox」を実装した。「Soundbox」は、「_丸1_新しい視点で音を聴くタスク」、「_丸2_聴き取った音の特徴を音楽構造に発展させるタスク」、「_丸3_作成した音楽構造を見つめ直すタスク」の3つのタスクを機能として支援する。_丸1_のタスクでは、ネットワーク対応の共有画面にて短い音のパターンを持った音源を画面上に配置していくことで、即興を楽しむことができる。こうした、即興を行えることで新たな視点を促す。_丸2_のタスクでは、_丸1_で気に入った短い音のパターンを基に、音の高さや音の流れを変化させていくことで自分なりの音楽構造に発展させることができる。_丸3_のタスクでは、作成された音楽構造が、他者も閲覧できる共有の画面に置かれる。こうすることで、他者の作品と比べながら、自らの作品を客観的に見つめ直すことを促す。
     作曲の熟達には、様々な視点で音を聴く能力と、それを新しいカタチで提示していく能力の開拓が必要である。「Soundbox」は、そういった能力を養うためのプロセスを支援している。
  • 白石 光昭
    p. 41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    戦後日本の事務用椅子は他の事務用家具とは異なり,製品特性や形態を大きく変化させてきた。特に,姿勢変化への対応として,様々な座や背もたれの傾斜機構が開発されてきている。その背景には,人間工学からの視点が徐々に開発に取り入れられていった経緯があり,開発時に人間工学がどのように取り入れられていったかを検証するための重要な事例といえる。本研究は,過去のオフィス家具業界誌や各種二次史料文献,製品カタログ等をもとに,日本における戦後事務用椅子の変遷を調べ,その中で人間工学的な考え方の進展を分析し,その変遷と役割を明らかにすることが目的である。その結果,1960年代以降人間工学的視点が採り入れられることにより,事務用椅子開発に影響を与えたことを明らかにした。特に,1980年代以降に多く開発された座と背の連動傾斜機構の変化は,身体の動きに適切にフィットさせるとともに,人間への負担(大腿部の圧迫)軽減を考慮したことが大きな理由であったことを明らかにした。
  • 木村 友紀
    p. 42
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は車いす利用者が車椅子のままでの乗降、運転操作を可能とする1人乗り自操式電動コミューターについての提案である。現在市販されている福祉車両の大半は、既存の車両をベースに設計されたものであるが、本研究ではShoe in Shoe (靴と靴下の関係)コンセプトに基づき、車いす利用者が乗る事を前提として研究を行った。つまり外側からではなく、内側からレイアウトを構築していく事で車いす利用者にとっての理想的なパッケージングを構築していくという方法である。コミューターのサイズは可能な限りコンパクト化する事で、エレベーターでの移動をはじめ、屋内や都市部のような入り組んだ場所での扱いやすさ等も向上すると考える。そのための具体的な車体サイズを導き出し、実際に実寸大のモックアップモデルを製作し、車いすを使って検証を行った。本研究では上記のような条件に基づいたパッケージングの構築とガイドラインの設定を目的とするが、これらの成果を応用し、カースタイリング誌における国際コンペティション2005に応募した作品の概要を本報告の後半に示す。
  • 情報誌における理解と影響
    猪狩 和浩, 両角 清隆
    p. 43
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    情報は近代社会の中で複雑になっています。人々は1つの情報を得るために、多くの情報のコミュニケーションの構成からの情報を得ます。人々は情報を得るために時間と集中を必要とします。特に、インターネットは情報を理解するために多くの時間を必要とします。この研究は、どのデザイン要素が人々の理解に関係しているか分析します。さらに、情報を多くの情報の中から短時間に選ぶことができる「コミュニケーションデザイン」を提案します。研究方法は、インターネットのディジタル・メディアおよび情報のマガジンのディジタル・メディアに分類します。デザインの相互の特性の要素および問題の比較分析を作り、更に、「理解か影響の発生」のシステムおよびデザインの要素を明確にします。また、インターネットの「受け手のためのコミュニケーション・デザイン」のデザイン・モデルの提案をします。第1の研究として、アナログの媒体である情報のマガジンのデザイン要素を分析しました。
  • 益岡 了, 野宮 謙吾, 緒方 誠人
    p. 44
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    WEB上のインタフェースデザインの評価手法の有効性を確認するために、従来の視覚デザインの解析研究と比較することで、その有効性について検討した。また文字の画像上の効果的なイメージ表現手法について検討するために、視覚と聴覚のイメージの関連を調査した。関連する領域の研究において、Web上の実験の一定の有効性が明らかになったため、その成果を用いて、実験用コンテンツを制作した。その結果、濁音が含まれる擬態語、半濁音が含まれる擬態語、基本の文字構造は共通で、清音・濁音・半濁音によって区別される擬態語の書体選択、形容詞の選択には、紙面・Webの両調査の形式とも同一の傾向が見られる。特定の書体・形容詞の選択傾向がある擬態語の傾向についても同様である。このことから文字のイメージ(視覚・音声イメージ)の影響を調査する上で、WEBを用いたイメージ調査の一定の有効性を確認できる。
  • 範 聖璽, 野口 尚孝
    p. 45
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     創造的デザイン思考に関する研究の結果、全体としては創造的思考には抽象度の高いレベルで新しい概念を形成することが必要であることを示している。しかし抽象度の高い概念をそのままデザイン対象の視覚的イメージ形成に導入することは困難である。本研究においては、上位概念から基本レベルカテゴリーの人工物を生成することによって、概念の抽象化によるイメージ生成と創造的な思考との関係を検証する。それによって、より創造的なデザインを生成するための思考方法の考察と提案を行う。
  • KIM NAM SUK, Jung Chul Oh
    p. 46
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    Since the Industrial Revolution, with the development of technology, the skin and surface design in architecture has been separated from a main body as various architectural materials appeared either and formulated its unique characteristics and fields. This study is intended to examine the possibility of a smart building surface to develop the next generation technology by applying smart technology. That is a normative alternative in the future, in a situation that the expression of skin and surface design, as an interface to be expanded since the advent of digital media era, may not reach the limit of design, based on the expression of the skin and surface design experimented by the recognition of architects together with the separation from the main body and the structure from the progress of technology.
  • Lee Jeong Pil, Jung Chul Oh
    p. 47
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    This study purposes the change of the bathroom space by defining smart technology and researching the current change of people's need for well-being. In near future, a series of smart household electric appliances will be minimized and integrated with bathroom appliances such as mirror, toilet, etc. Consequently devices become wireless and soon will embodied by other body or surroundings in space. With increasing interest in healthcare and government healthcare law system, smart healthcare will be the major issues at smart home design. The history of bathroom design and emerging with new technologies and a new healthcare-oriented bathroom space of the future, using smart technologies, will be explored in this thesis.
  • 共感できる描画表現
    藤木 淳, 富松 潔
    p. 48
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     本研究は共感を与える描画表現として、与えられた2D,3Dデータから"落書き調"イメージを生成する手法の確立を目的としている。落書きの描画法には決まり事はなく人それぞれのスタイルを持つ。そもそも落書きは本来描くべくして描くものではないが、しかし、だからこそ時間にとらわれず自由に伸び伸びとした線がそこに描かれる。ここで目的とする描画法は勢いあるストロークを持ちラフな印象を与えつつも温かみのあるイメージを生成できるものである。そこで、次のような特徴を有する落書きスタイルを想定した。・全体的に比較的長い勢いのある丸みのある一連のストロークで、右斜め上下に方向に陰影付ける。・明度の低い(暗い)ところほど線を重ね掛ける回数を多くすることで線の勢いを殺さず塗りつぶし効果を得る。ここでは、上記2点の特徴を持ちアルゴリズム化した落書き描画技法を提案する。今回はまず3Dよりも開発コストの掛からない2Dイメージからの手法を対象とし、より多くの情報を含む3Dへの適応の足がかりとする
  • yeong hoon seo, chul oh jung
    p. 49
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    This study intends to investigate the design strategy of exterior space in apartment housing since 1990's in relation to demands of customers. For the study, a range of housing cases has been assessed from early 1990's to 2002 by reviewing past journals and new articles. The exterior space within all cases has been categorized and analysed within the framework not only of element classifications but also of conceptual divisions. The results of the study are follows; 1) in most cases, exterior space design considered to be a commercial advertisement in order to differentiate the housing as a good, 2) it necessarily leads to the fragmentary tendency in and planning and design process, 3) new design approaches in markets recently tends to adopt and develop to enforce an identity of site and community in exterior space design.
  • 浮世絵から読み解く江戸の文化史
    和田 菜穂子
    p. 50
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    公衆浴場は人々にとって身体を清めるだけでなく、コミュニケーションを図る場として重要な場所であった。江戸時代、公衆浴場のための水は、川や海から供給されていた。というのは、明治時代に公共の水道が開通するまで、水の供給はシステム化されておらず、水はとても貴重な資源であった。日本における公衆浴場の歴史は古く、身体を清めることが「沐浴」、「禊(みそぎ)」として宗教上行われていた。それは日本の風土、多湿な気候によるものが大きい。本稿では入浴の中でも特に公衆浴場(銭湯)に焦点をあて、デザインの歴史的背景を探る。手法として主に江戸時代における「浮世絵」や物語における「挿絵」などに描かれた建築デザインを分析することによって日本の文化、慣習を再現し、読み解いていくという新たな手法を用いる。江戸時代銭湯(公衆浴場)は社交の場として賑わいをみせていたが、第2次世界大戦後の日本人のライフスタイルの変化に伴い、銭湯の意味合いも大きく変化した。自家用風呂を所有する家庭が増え、銭湯離れが進むようになり今や問題となっている。
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