本稿では,年金,児童手当,児童扶養手当,生活保護の4つの制度を取り上げ,それらが女性の所得保障に対してどのように据えられているのかを明らかにしている.分析にあたっては,「女性への位置づけ」と「所得保障の意味」の2つの焦点に沿って諸制度の制度間考察および守備範囲の検討を行っている.研究結果として,第1に,所得保障制度においてカバーされている女性は,伝統的家族モデルから抜け落ちた一部の女性,すなわち同モデルから外れていても依然としてそのモデルの性別役割分業に基づく妻や母親としての役割を遂行している女性であることが明らかになった. 第2に,4つの制度は受給者範囲,制度目的,保障事由,給付水準などそれぞれの固有の仕組みと守備範囲をもっており,そこには制度間連続性は見当たらなかった.その結果,所得保障の不備,所得保障制度からの排除などさまざまな問題が明らかになった.
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