社会福祉学
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46 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 荻野 剛史
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 3-15
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,わが国における難民受入れと公的支援の変遷を,文献から明らかにすることを目的としている.まずインドシナ難民について,日本政府は1975年から滞在を,また1979年には定住を認め,現在ではおよそ11,000人のインドシナ難民がわが国で生活を送っている.また条約難民について,1982年から受入れが開始され,これまでおよそ330人が条約難民と認定された.また,受入れと公的支援について,いくつかの問題点が明らかになった.第一に,インドシナ難民についてその受入れ数は限定的であったこと,第二に定住のための公的な支援は定住が認められてから数年が経過してからようやく開始されたこと,第三に,条約難民について,わが国の条約難民の認定率は他国と比べきわめて低いこと,第四に定住のための公的な支援は,近年までほとんどなかった.
  • 山田 嘉子, 杉澤 秀博, 杉原 陽子, 深谷 太郎, 中谷 陽明
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 16-27
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では要介護高齢者の主介護者である配偶者のストレスの性差に焦点をあて,ストレッサー・資源・介護ストレスの分布,およびストレスに対するストレッサーと資源の効果の性差を検証した.対象者は,要介護高齢者の主介護者で配偶者の男性68人と女性134人である.ストレッサーは要介護者のADLおよび認知障害数,介護頻度,介護期間を用い,資源は暮らし向きと,副介護者・訪問介護利用・適所サービス利用・ショートステイ利用おのおのの有無を用いた.介護ストレスは,情緒的消耗,愁訴,社会的制約を用いた.すべてのストレッサーで性差がみられなかった一方,資源では男性で副介護者ありと訪問介護利用ありの割合が有意に高かった.また男性は情緒的消耗と愁訴で女性より有意に良好であった.ストレスに対するストレッサーと資源の効果を分析した結果,女性のみで暮らし向きと愁訴・社会的制約に,男性のみで認知障害数と愁訴に有意な関係が示された.
  • 久保田 晃生
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 28-37
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢者のQOLと生命予後の関連を縦断研究により明らかにすることである.対象は,静岡県内に住む65〜84歳までの高齢者である.そして,1999年にベースライン調査として,QOL,生活習慣,既往歴等について質問紙調査を実施した.その結果,14,001人より回答があった.回答があった者を3年間追跡したところ,死亡の確認ができたのは781人,生存と確認できたのは11,509人,不明は1,711人であった.得られた結果を分析したところ,QOL得点が低いグループの死亡率が高いこと,性,年齢,既往歴,自立能力の調整をした分析でQOL得点が死亡率に影響することが明らかとなった.したがって,高齢者においてQOLを良好にすることは,生命予後にも意味があることといえる.
  • 久保 昌昭, 横山 正博
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 38-47
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,要介護認定を受けていない在宅高齢者(男性44人,女性122人)に対して面接法と郵送留置法による調査を行い,外出頻度による閉じこもりを定義してその関連要因を明らかにすることを目的とした.対象者における「閉じこもり群」は21.1%(35人),「非閉じこもり群」は78.9%(131人)であり,「閉じこもり群」の比率は先行研究と比べてやや高い傾向にあった.閉じこもりに関連する要因としては,老研式活動能力指標全体,下位尺度の社会的役割,健康度自己評価,体力自己評価,社会活動,ソーシャルサポートが挙げられたが,手段的自立や知的能動性といった活動能力と,地理的要因には関連がなかった.関連がみられた要因について多重ロジスティック回帰分析を用いて分析した結果,社会的役割,体力自己評価,社会活動のうち市民館等での学習活動が閉じこもりの有無と有意に関連しており,社会的役割や体力自己評価が高いほど,市民館等での学習活動を行っているほど,閉じこもりとなるリスクが低くなる結果となった.特に,体力自己評価は現在のIADL能力等には関連がないにもかかわらず閉じこもりの要因となっていた.地域で閉じこもり予防活動等を行う際には,高齢者の体力に着目した活動内容を検討することが有効である可能性が示唆された.
  • 岡本 秀明, 岡田 進一, 白澤 政和
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 48-62
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    高齢者を対象に,社会活動の種別ごとに,非活動者を活動参加意向の有無に基づいて類型化し,活動ありの者とこの非活動者の各類型を比較した.分析対象者は,活動能力がおおむね自立している593人であった.4種の活動別に多項ロジスティック回帰分析を行った結果,活動ありの者と比較した場合,活動参加への意向はあるが実際の活動に結びついていないという活動参加意向未充足群の主な特性は,町内会・自治会について,失敗不安の得点が高く,外出等への誘いを受けることがないことであった.学習は,親しい友人や仲間の数が少なく,外出等への誘いがないことであった.ボランティアは,失敗不安の得点が高く,役立つ技術・知識・資格がなく,親しい友人や仲間の数が少なく,活動情報の認知の程度が低かった・趣味や娯楽のサークル等は,外出時に体のつらさを感じており,親しい友人や仲間の数が少なく,外出等への誘いがないことであった.
  • 杉本 浩章, 近藤 克則
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 63-74
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    特別養護老人ホーム(以下,特養)における終末期ケアの現状を整理し,質の高い看取りを実現するための課題を明らかにする目的で,それに関連する研究をレビューした.現状では特養で最期を迎えている人は少数(約2%)にすぎない.しかし,自宅外での最期を望む国民や看取りに前向きな特養の多さを背景に,「施設方針の明確化」など必要な手立てをとることで,今後,看取りの増加が期待されている.一方で,現状では,医療体制の弱さなどから,質の高い終末期ケアの条件が満たされているとは言い難い.以上を踏まえ,政策・施設・臨床の3つのレベルにおける課題を整理した.特養での看取りを進めるのであれば,政策レベルで看取りの場として位置づけ,必要な措置をとること.施設レベルでは, 4つの成立条件の整備,事前指示書等の導入,質の評価指標の開発など諸研究の蓄積が求められる.臨床レベルでは,マネジメント技術の体系化などが必要と思われる.
  • 山口 宰
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 75-86
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,従来型特別養護老人ホームにおけるユニットケア導入が,入居する認知症高齢者にもたらす効果を明らかにすることを目的として実施された.フィールドとした特別養護老人ホームは2004年2月よりユニットケア導入に取り組んでおり,現在までの約1年半にわたってフィールドワークを行った.研究に際しては,フィールドのひとつのユニットを取り上げ, 5人の入居者を対象として入居から現在までの状況,および状態の変化に関するケーススタディを実施した.ケーススタディに際しては,ケース記録,ユニットカンファレンス記録,ケアプラン,スタッフへのインタビュー等のリソースを使用した.ケーススタディを考察した結果,「『ユニットケア』への順応」「コミュニケーション」「食事」「意欲・気力」「グループのもつ力」の5点において,入居者に改善がみられることが明らかとなった.
  • 西原 尚之
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 87-97
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本論は経済的不利を伴う家庭で生活する不登校児の実態を明確にし,支援の方向性を示唆した研究である.そのため最初に福岡県筑豊地域の民間フリースクールに通級する子どもたちの現状を紹介した.この地域の生活保護率は全国の10倍以上に上り,通級児たちの家庭もその過半数が生活保護世帯である.また彼らの多くは学力が大幅に低下しており,たとえ学校に復帰してもこのうち7割が通常の授業についていけない状況にある.またひとり親家庭(42%),親が精神または知的障害を伴っている家庭(25%)も多い.本論ではこうした社会的不利をかかえる家庭で生活する不登校児たちの中心課題を教育デプリベーションと位置づける.そのうえで必要な支援として,多層な補償教育システムの配備を提言した.また補償教育システムが有効に機能するためには親との協働が欠かせないという視点から,家族に対するアプローチについても検討している.
  • 小西 祐馬
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 98-108
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    本稿は,わが国で子どもの貧困研究を進めていくうえでの課題を提示するために,これまでの子どもの貧困・不平等研究の動向を検討するものである.縦断調査の量的データを基にした研究,子どもの主観から貧困の影響に迫っている研究,家庭での参与観察を基にした研究などを検討した結果,T・リッジの「子ども中心の視点(child-centred perspective)」による研究や,A・ラリューの子育て方法や家族内の相互作用の階級間比較による研究が,現在の到達点であると考えられた.しかし,いずれにおいても,家族の貧困が子どもに影響を与えていくプロセスを解明するには至っておらず,今後はこの点を追究していく必要性があることが明らかになった.その際,家族や教育システムなどの客観的条件と子どもの主観的意識との関連から分析を行い,「ライフチャンスの不平等」を具体的に把握していくことが最も重要であると確認された.
  • 横山 登志子
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 109-121
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    わが国の精神保健医療福祉施策は急速に変化しており,適正な精神医療と包括的な地域生活支援を志向している.なかでも地域生活支援をになうソーシャルワーカーは,存在意義が高まっている.本稿ではこの動向を踏まえ,精神医療が地域生活支援を視野に入れたときに生じるソーシャルワーカーのジレンマを取り上げ,ソーシャルワーカーの本質的使命を考察した.その結果,第一に「生活の医療的管理」現象について「医療化」概念を用いて批判的に検討し,ソーシャルワーカーの本質的使命とは,利用者の再定義を前提とした関係性にあると指摘した.第二に,多様な職種が地域生活支援をになうなかで「ソーシャルワークの固有性」が見えづらい点について,生活支援の特性から考察し,専門家としてのスタンスの固有性について指摘した.さらにソーシャルワーカーの専門性とは「高度な知識・技術の適応者」にあるのではなく,「実践における知識・技術の生成者」にあると述べた.
  • 門田 光司
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 122-133
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
    今回の調査目的は,児童生徒の問題対応で学校と関係機関が協働して取り組むためのつなぎ役として学校ソーシャルワーカーが求められている状況を示すことにある.そこで,福岡県下の市町村教育委員会,小学校,中学校を対象とした実態調査を実施した.結果は,関係機関との協力組織をつくっている場合,(1)調整役はほとんどが学校教育関係者であり,授業や校務の多忙さから時間・日程および連絡調整が困難で専任職員の配置を必要としていること,(2)協力組織の有無にかかわらず,児童生徒の問題対応に対して関係機関とは専門性の立場や考え方に違いを感じること,(3)関係機関は即応的に対応してもらえないこと,(4)関係機関の専門的役割や実務担当者を知らないこと,(5)関係機関に気軽に相談できるような相互信頼が欠けること,などで対応依頼や協働へのとまどいが指摘されている.以上の調査結果から,わが国でも学校と関係機関が協働して取り組むためのつなぎ役として,学校ソーシャルワーカーの活躍がおおいに期待される状況にあるといえる.
  • 里見 賢治
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 134-136
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
  • 平塚 良子
    原稿種別: 本文
    2006 年46 巻3 号 p. 137-139
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2018/07/20
    ジャーナル フリー
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