日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
16 巻, 2 号
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原著
  • 近藤 ゆか, 西部 俊哉, 渡辺 徹, 星野 竜, 服部 浩治, 山下 満, 高木 靖, 安藤 太三, 清水 元良, 西部 正泰
    2007 年 16 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2007/04/23
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    閉塞性動脈硬化症に対する血管内治療は,腸骨動脈領域では良好な成績が示されており,TASC(TransAtlantic Inter-Society Consensus)の治療指針においてもTASC C,D病変を除き手術的治療に代わる方法として位置づけられている.しかし,大腿・下腿動脈領域においてはその適応・成績に関していまだ一定の見解は得られておらず,施設や術者の方針にゆだねられているところが多い.今回われわれは,透析や糖尿病を合併したハイリスク症例や重症虚血肢に対して積極的に血管内治療を行い,比較的良好な成績が得られたので報告する.2005年 2 月から2006年 9 月の間に血管内治療を行った29症例,37肢,44病変を対象とした.内訳は男性23例,女性 6 例,平均年齢は71歳であった.病変部位は浅大腿動脈23病変,膝窩動脈13病変,下腿動脈 8 病変であった.浅大腿病変はステント留置術を行い,膝下膝窩動脈・下腿動脈病変はバルーン拡張術を行った.治療の初期成功率はいずれも100%で,合併症は膝窩動脈血腫 1 例のみで死亡はなかった.浅大腿動脈病変の一次開存率は 3 カ月で94%,6 カ月で75%,12カ月で66%であり,一次補助開存率はそれぞれ100%,75%,66%であった.救肢率はそれぞれ96%,96%,85%であった.生存率は 3 カ月で100%,6 カ月で93%,12カ月で93%であった.膝下膝窩動脈・下腿動脈病変の一次開存率は 3 カ月で89%,6 カ月で67%であり,一次補助開存率はそれぞれ89%,89%であった.救肢率は 3 カ月,6 カ月で100%であった.生存率は 3 カ月で86%,6 カ月で86%であった.鼠径部以下の病変に対する血管内治療はバイパス手術と比較して長期の開存率は劣るが,低侵襲で早期社会復帰が可能であり,合併症や死亡が少ないなどの点から,重症虚血肢やハイリスク症例に対する治療の選択肢になりうると考えられた.
症例
  • 秋田 淳年, 栃井 将人, 星野 竜, 服部 浩治, 山下 満, 安藤 太三
    2007 年 16 巻 2 号 p. 55-58
    発行日: 2007/04/23
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は78歳男性.陳旧性肺結核に対する胸郭形成術の既往がある.5 年前に他院で呼吸機能不良のため,腹部大動脈瘤に対してY型ステントグラフトを留置された.術後より中枢側の近位部I型エンドリークを指摘されていたが,保存的に経過観察となった.2006年 1 月突然強い腹痛を自覚し近医受診.緊急CTにて腹部大動脈瘤破裂と診断され当院を紹介された.来院時意識清明で血圧は80台であったが,全身麻酔導入後にショック状態となった.心臓マッサージを行いつつ開腹し,Y型人工血管置換術を行った.術後呼吸管理に難渋したが,とくに重篤な合併症なく経過し,51日目に軽快退院となった.ステントグラフト治療は高齢者や全身状態が不良で手術が困難と考えられる症例には有効であるが,I型エンドリークを認める場合には動脈瘤破裂の危険があるため早期に追加治療を行う必要がある.
第35回 日本血管外科学会総会予稿集
抄録
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