小児耳鼻咽喉科
Online ISSN : 2186-5957
Print ISSN : 0919-5858
32 巻 , 3 号
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巻頭言
診療トピックス
第6回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
特別講演 II
  • 平敷 淳子
    原稿種別: 特別講演
    2011 年 32 巻 3 号 p. 239-241
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      医師の Professionalism は,2009年医学界新聞で日野原重明先生の掲げられた Learned profession(修得された知的職業),Mission(使命感)と Compassion(感性豊かでいとおしむ心のある人間性)が基本と考える。厳然とした professionalism のもとに,日々の competence(力量)に裏づけされてはじめて医師としての leadership が成就され,その結果が生ずると考える。学生時代から医師としての生涯のシナリオを描き,それを遂行していくための毅然とした哲学,なによりも精神的,肉体的に強靭であることが leadership に繋がると考える。その背景には management を考えた支援が必要となる。数々のアンケート調査でも,女性医師が生涯働き続ける上での希望事項には家族,環境からの支援はいうに及ばず,保育支援と病児支援が高位をしめていた。
シンポジウム I 反復性中耳炎の危険因子とその対応
  • 上出 洋介
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 242-247
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      反復遷延する中耳炎の背景に胃食道逆流症が隠れていることがある。この関与を疑った症例の入院検査(上部消化管造影と24時間食道 pH モニタリング)結果と中耳貯留液に含まれるペプシノゲン 1 の定量を行い貯留液 pH との関連性について報告し,危険因子として述べる。入院検査の結果13例中,上部消化管造影検査で 4 例が喉頭までの逆流が見られた。24時間食道 pH モニタリングで 2 例が pH index 4.0%以上であった。その他に疑い症例があり,合計 7 例が胃食道逆流症が背景にあると考えた。
      中耳貯留液 pH 測定では全39例の中央値 pH 7.9 であった。Pepsinogen 1 の測定値が100 μg/L 未満の群(23例)では pH 中央値8.2,100 μg/L 以上の群(13例)では央値7.7であり,両群間に有意差(p value=Mann-Whitney U test)が認められた。
      免疫学的に十分対応できない年齢の時に,保育施設などで早期に鼻咽腔に薬剤耐性菌が定着して細菌叢を形成し,下部食道括約部の機能が十分でないために逆流した胃液(特にペプシン)が,それほど頻回でなくても繰り返して耳管付近まで逆流することで耳管機能不全が惹起し中耳炎を誘発することが推測される。これらの例では pH index 4%以上という基準を満たさなくても中耳炎が起こりうる。中耳貯留液の pH を測定することは逆流症が背景にあるかどうかの一応の目安となりえる。
  • 加藤 俊徳
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児中耳炎の発症要因のなかで,頭位(体位)の関与するものに,授乳時の姿勢,胃食道逆流,寝ているときの姿勢が考えられる。授乳時の姿勢と中耳炎については,1960年ダンカンが哺乳瓶を寝せた状態で授乳させると,ミルクが耳管を経て中耳に入り,中耳炎の原因になることを指摘し,哺乳瓶を寝せた状態で授乳したことによりおこる中耳炎を頭位性中耳炎(positional otitis media)と名づけた。日本でも30年前に授乳の時の姿勢により中耳炎をおこすことが,わかっていた。しかし,多くの母親は,臥位授乳をしているので,その理由を検討した。そして授乳の姿勢による中耳炎を検討し,さらに,胃食道逆流や,寝ているときの姿勢の関与を考察した。
  • 伊藤 真人
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 254-257
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      我国において,乳幼児の反復性中耳炎の急激な増加が始まったのは1990年代半ばである。当初からリスクファクターとしての集団保育の関与が疑われていたが,集団保育環境下での薬剤耐性菌の蔓延の状態が明らかにされるに伴って,「低年齢(2 歳未満)の保育園児」がハイリスク群であることが明らかとなってきた。免疫能の未熟な乳幼児期に,上咽頭に多量の病原細菌がコロニー形成していることが問題となる。
      反復性中耳炎の原因として,第一に中耳炎起炎菌の薬剤耐性化の進行がある。さらに集団保育環境下ではウイルス性上気道炎の流行がしばしば起こり,これが誘因となって中耳炎やその他の細菌感染症が発症しやすい。その結果抗菌薬の使用頻度が高まり,これが耐性細菌の選択圧となり蔓延に繋がっている可能性がある。
      対策として考えられる方法は,①肺炎球菌ワクチン,②インフルエンザ・ウイルスワクチン,③保育園の環境整備,④ 2 歳までの休園指導などである。
  • 井埜 利博
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 258-263
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      筆者らは熊谷市の小学校 4 年生を対象に受動喫煙検診を行っている。この検診は児童における受動喫煙の生体内指標である尿中コチニン(UC)測定と両親へのアンケート調査からなる。児童に UC が検出され,両親が禁煙を希望する場合のプロトコール等も確立された。2007年以降は市の公費負担によって無料で行われた。毎年,小学校 4 年生1300~1400名がこの検診を受診,その中から2010年度の1425名について受動喫煙と中耳炎との関係を後方視的に検討した。UC は約半数に検出され,UC 濃度≧5.0 ng/mL が約30%であった。また,母親の喫煙は児の UC 濃度を上昇させる大きな因子であった。中耳炎の既往児は10.2%に認められ,両親の喫煙があると UC 濃度は平均3.6倍高かった。両親の喫煙がある方が児の中耳炎の既往がやや多い傾向があった。また,UC 濃度<1.4 ng/mL の児における中耳炎既往はアレルギー合併例が多かったためと思われた。母親の妊娠中喫煙も中耳炎発生に関与すると思われた。
シンポジウム II 小児耳鼻咽喉科疾患に対する手術療法の選択
  • 三代 康雄
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 264-271
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児耳鼻咽喉科疾患の手術療法の選択として,耳疾患,特に 1)真珠腫,2)穿孔性中耳炎,3)滲出性中耳炎について適応や問題点を述べる。小児の中耳手術の問題点は,側頭骨や耳管機能が成長過程にあるということである。したがって手術治療後に滲出性中耳炎,急性中耳炎,鼓膜の陥凹・癒着などを来たすことが少なくない。小児真珠腫は先天性・後天性が混在すること,広範進展例が多く,再発も多いことなどが特徴であるが,診断は必ずしも容易ではない。また成人するまでの長期の経過観察が必要である。小児の穿孔性中耳炎は穿孔閉鎖率や聴力改善成功率では成人と差がないが,術後に滲出性中耳炎や鼓膜陥凹・癒着などを有意に起こしやすい。このことはインフォームドコンセントとして説明しておく必要がある。小児の滲出性中耳炎は保存治療が有効でなければ,鼓膜チューブ挿入が第一選択となるが,チューブ脱落後の滲出性中耳炎再発や鼓膜穿孔残存以外に鼓膜チューブの鼓室内脱落についてもインフォームドコンセントが望ましい。
  • 月舘 利治
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 272-275
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児鼻副鼻腔疾患において手術を検討する場合,発育段階にあるということなど,成人との違いを考慮しなければならない。小児の副鼻腔炎は保存的治療に反応しやすく,なかには自然治癒が認められるものもあるので,まず保存的治療を優先する。保存的治療を行っても改善のないものや鼻ポリープを合併するものが手術適応となる。われわれは小児の副鼻腔が発育途上であることを考慮して,年齢により術式を選択している。後鼻孔ポリープ症例に関しては例外であり,基部を残すと再発をきたすことがあるので,比較的低年齢でも上顎洞を大きく開放して基部の処置を行う。鼻性眼窩内合併症は小児においても早急な対処が必要な疾患であり,眼窩骨膜下膿瘍,眼窩内膿瘍,視力障害を合併しているものは年齢にかかわらずに積極的に手術を行っている。多くは眼窩内側にあり,内視鏡下に鼻内から排膿することができるが,眼窩外側に形成された場合は外切開も必要となる。
  • 新谷 朋子, 氷見 徹夫, 宮崎 総一郎
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 276-281
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      アデノイド・扁桃摘出術は小児耳鼻咽喉科のなかではチューブ挿入術に次ぎ,多く行われている手術である。反復性扁桃炎,睡眠時無呼吸症候群,IgA 腎症が手術適応である。
      以前は反復性扁桃炎による手術例が多かったが抗菌薬の発達と免疫学的な機能を重視するようになり1970年以降は手術例が減っている。反復性扁桃炎では,1 年間に 8 回以上,2 年間,年に 4–5 回の扁桃炎では手術が勧められる。睡眠時無呼吸症候群は無呼吸,いびきに加えて夜尿や注意欠陥多動性障害様学業上の問題が注目されている。扁桃摘出術による睡眠時無呼吸症候群の改善率は66–80%のため,手術後の非改善例や肥満例や合併疾患がある場合は,終夜睡眠ポリグラフィで評価することが必要である。病巣性扁桃炎としての IgA 腎症に対するステロイドパルス療法と扁桃摘出術を組みあわせたは小児でも有効であると報告がみられる。
      術後の出血や疼痛の管理,扁桃の免疫機能,リスクを上回る効果を考慮して扁桃摘出術を行うことが必要である。
  • 黒木 春郎
    原稿種別: シンポジウム
    2011 年 32 巻 3 号 p. 282-286
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児科と耳鼻咽喉科は共通の領域が広く,共同で診療,研究する余地が大きいと考える。たとえば,滲出性中耳炎に関しては,日本の一般小児科医の耳鼻科診療の現状と,耳鼻咽喉科と小児科の連携を踏まえて,治療方法,治療的介入の意義などの指針が必要であろう。また,閉塞性無呼吸も診断されていない例も多数存在すると考えられ,同時に手術適応の検討も要する。小児か耳鼻科双方からの症例検討が蓄積されることが望まれる。千葉県こども病院耳鼻咽喉科への2008年の紹介例を検討すると,中耳炎関連は耳鼻科診療所からの紹介が多く,扁桃・アデノイド関連は小児科診療所と耳鼻科診療所はほぼ同数であった。このことは睡眠時無呼吸の発見が小児科診療所と耳鼻科診療所でほぼ同等であることを示す。医師患者関係の研究から,保護者との信頼関係の構築には,専門性の高さ,説明の明快さ,保護者と児の受容が求められるとされる。
モーニングセミナー
ランチョンセミナー I
  • 宇野 芳史
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2011 年 32 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      近年急性鼻副鼻腔炎はその主たる起炎菌である S. pneumoniaeH. influenzae の耐性化の増加により,経口抗菌薬投与によっても症状が改善せず遷延したり,一旦治癒しても再発を繰り返したりする難治症例が増加している。また,小児の場合,成人と異なり投与可能な経口抗菌薬に制限があり,抗菌薬の選択に難渋する場合もある。
      今回,このような状況にある急性鼻副鼻腔炎症例に適切に対応し,また限りある抗菌薬を適切に使用するために,「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年度版」が作成された。急性鼻副鼻腔炎診療の point に従いこのガイドラインは,その構成が,1)診断・検査,2)治療,3)合併症,その他からなり,各々に clinical question とそれに対し,国内外から文献の収集を行いエビデンスレベルを決定し answer を作成すると同時に推奨度を決定し推奨グレードも記載している。
      このガイドラインをもとに小児急性鼻副鼻腔炎の治療について検討を行うと同時に,このガイドラインに従い治療を行った当院での小児急性鼻副鼻腔炎症例の治療成績からガイドラインの有用性を検討した。
ランチョンセミナー IV
  • 中野 貴司
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2011 年 32 巻 3 号 p. 297-304
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      肺炎球菌は90種類以上の莢膜血清型に分類され,防御免疫は各血清型ごとに特異的である。結合型ワクチンは,乳児へ接種した場合でも良好な免疫原性を発揮し,ブースター効果や粘膜免疫付与も期待できる。肺炎球菌による侵襲性感染症は IPD と総称されるが,PCV7 による IPD 予防効果はすばらしく,定期接種として導入した国々では細菌性髄膜炎などが著明に減少した。肺炎球菌は小児急性中耳炎の主要な原因菌でもあり,ワクチンで予防することができれば子どもや家族の負担は大きく軽減される。しかし,現状のわが国では,PCV7 の効能効果に「中耳炎の予防」は含まれていない。海外データでは,血清型特異的な肺炎球菌による中耳炎予防など対象を限れば,有意な予防効果が認められたという報告もあり,急性中耳炎の予防が承認されている国々も存在する。新しいワクチンの開発も進んでおり,今後臨床研究のデータが集積することを期待したい。
臨床セミナー I
  • 五島 史行
    原稿種別: 臨床セミナー
    2011 年 32 巻 3 号 p. 305-309
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児のめまいの診察は,成人のめまいと異なり本人からめまいの訴えを聴取することが難しいため,家族から情報を聴取する必要がある。鑑別診断としてどのようなめまいが多いのか,またその臨床的特徴を知ることは重要である。これまで日本では起立性調節障害の頻度が高いという報告が多い。海外の報告では BPV(小児良性発作性めまい症:Benign paroxysmal vertigo of childhood)の頻度が高いとされている。国立成育医療研究センターを受診した男児 5 例,女児 7 例を対象として検討を行った。診断は BPV が 8 例,起立性調節障害 2 例などであった。BPV は小児のめまいで最も頻度が高いものであった。本疾患は片頭痛または家族歴に片頭痛を認め起立性調節障害との合併も多く認めた。診断に当たっては診断基準を熟知した上で,めまい発作の際の状況や片頭痛の有無など本疾患の臨床的特徴を熟知し問診を行うことが重要である。
臨床セミナー II
  • 渡部 京太
    原稿種別: 臨床セミナー
    2011 年 32 巻 3 号 p. 310-316
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      近年,わが国の子どもの心と発達の問題として広汎性発達障害(PDD),注意欠如・多動性障害(ADHD),学習障害(LD)などの発達障害が注目されるようになった。発達障害という用語は,国際的な疾病分類である世界保健機構(WHO)の定めた ICD–10や米国精神医学会の DSM–IV–TR には,明確な定義が見あたらない。ICD–10では,①発症は乳幼児期あるいは小児期であること,②中枢神経系の生物学的成熟に深く関係していること,③寛解や再発がみられない経過であること,があげられている。わが国の発達障害者支援法では,その第二条において,「この法律において『発達障害』とは,自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって,その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」としている。本稿では,PDD, ADHD の疾患概念,そして基本的な対応について述べたいと思う。
原著
  • 橋本 かほる, 能登谷 晶子, 原田 浩美, 伊藤 真人
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      金沢方式による訓練を受け 9 歳以上に達した聴覚障害児・者のうち,動作性知能が正常範囲にある18名の言語性知能に関与する項目について検討し,以下の結論を得た。言語性知能(VIQ)の中央値は92で,成績幅は60–124であった。VIQ が正常以上であったものは14/18名(77.7%)であった。口答で検査可能であったものは16/18名(88.9%)であった。VIQ に関与する因子を検討した結果,動作性知能(PIQ),訓練開始年齢,平均聴力レベルのいずれの因子も VIQ 値に関与せず,会話明瞭度だけが関係を示した。また本研究から,聴覚障害児が正常範囲の音声言語を獲得するためには,必ずしも高い動作性知能を必要とはせず,むしろ乳幼児期からの聴覚に加えて手話や文字言語による日本語の構造を脳内に構築する金沢方式が有効であることが示唆された。
  • 坂井田 麻祐子, 莊司 邦夫
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 323-328
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児反復性中耳炎の治療法は,鼓膜換気チューブ挿入術,外来抗菌薬静注療法が一般的だが,近年,免疫力向上効果をもつ漢方薬,十全大補湯の有効性が報告されている。今回,小児反復性中耳炎例25例(平均月齢12.5カ月)に約 3 カ月間の十全大補湯内服を指示(0.15 g/kgBW/day)し,投与前後における急性中耳炎罹患頻度,重症度,鼻咽腔細菌検査結果について検討した。投与前の急性中耳炎罹患頻度(平均1.8回/月)と比較し,投与中,投与終了後は平均0.39回/月(p<0.0001)と有意に減少した。重症度は,投与前後で改善する例や不変例など,症例により異なる傾向を示した。鼻咽腔細菌検査結果は特に変化を認めなかった。PRSP の保有率は約75%であった。投与終了後再燃した 3 症例に再投与を行った。うち 2 例は再投与後の経過は良好であったが,1 例は再発を繰り返し,最終的に外来抗菌薬静注療法を選択した。
  • 今井 直子, 安達 のどか, 浅沼 聡, 鍵本 聖一, 二藤 隆春, 坂田 英明
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      乳児喉頭血管腫は急速に気道閉塞など重篤な障害をきたしうる疾患であり,これまではステロイド,ビンクリスチン,インターフェロン α,レーザー焼灼術,気管切開術,外切開手術などの治療が試みられてきた。今回我々は,喉頭血管腫に対し,β 遮断薬投与が著効した症例を 2 例経験した。症例 1 では呼吸苦を繰り返していた声門下血管腫に対して投与し,急速な呼吸苦の改善を認めた。症例 2 では比較的広範に及んだ声門上血管腫に対して投与し,腫瘍の良好なコントロールを得ている。乳児血管腫に対する β 遮断薬による治療は2008年に Léauté-Labrèze らが発表して以来,海外では報告があるが本邦での喉頭血管腫に対する報告はない。β 遮断薬は即効性があること,経口投与可能で低侵襲であること,副作用が少ないことなどから今後,本邦でも新しい乳児血管腫の治療法の選択肢となりうると考えられる。
  • 井上 真規, 小河原 昇, 田辺 輝彦, 佃 守
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      舌根部囊胞は新生児期や乳児期に重篤な呼吸障害を来すことがあり早期の診断・治療が必要である。今回,平成 9 年以降に当科で診断され手術が施行された舌根部囊胞15例の臨床的検討を行った。喘鳴を主訴に発症することが最も多く,半数以上の 9 例が 1 歳未満での発症で,この 9 例の主訴は喘鳴であった。性別では男児にやや多くみられた。治療は全例に喉頭直達鏡下囊胞開窓術が施行された。4 例が再発し再手術を要したが,その後の再発はみられていない。病理組織所見は全例が甲状舌管囊胞であった。呼吸障害を認める症例において,舌根部囊胞も念頭におく必要があると思われた。また治療として喉頭直達鏡下囊胞開窓術は有効と考えられた。
  • 成尾 一彦, 清水 直樹, 太田 一郎, 細井 裕司
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 340-346
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      12歳女児で,術前に非反回神経を想定できた小児甲状腺びまん性硬化型乳頭癌例につき報告した。初診時すでに左声帯麻痺を認め,頸部エコー検査では甲状腺はびまん性に腫大し微細な高エコー輝点を認めたが明らかな結節性病変はなかった。CT,MRI ならびに穿刺吸引細胞診より,甲状腺びまん性硬化型乳頭癌,両頸部リンパ節転移,気管食道浸潤,肺転移(T4aN1bM1)と診断された。また右鎖骨下動脈起始異常があり右側の非反回神経の存在が疑われた。甲状腺全摘術,両頸部郭清術(D3b),気管層状切除術,左反回神経・食道筋層合併切除を施行した。術前の予想通り右側は右迷走神経より直接分岐する右側非反回神経であった。術後に右声帯麻痺という手術合併症をおこすことなく,患児の QOL の維持が可能であった。甲状腺の手術を担当する耳鼻咽喉・頭頸部外科医として,頻度は低いものの非反回神経の可能性に常に留意すべきであると思われた。
  • 早水 佳子, 大堀 純一郎, 黒野 祐一
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      右の頬部腫脹を主訴とする16歳男性の上顎 juvenile trabecular ossifying fibroma(JTOF)を経験した。初診時,CT にて右上顎洞に造影効果があり一部骨破壊を伴う約30 mm 大の腫瘍病変を認めた。内部には石灰化を認めた。MRI は T1 等信号,T2 低信号で,漸増性の造影効果があった。骨シンチでは同部位に強い集積を認め,PET では SUV 最大値7.6であった。歯齦部から生検を行ったところ,osteosarcoma と診断された。全身麻酔下に経口腔的に右上顎部分切除術を施行し,術後の永久病理検査で JTOF と診断され,切除断端は陰性であった。JTOF は本症例のごとく10歳代を中心に上顎骨に発生することが多く,悪性疾患に類似した局所所見を呈することと再発傾向が強いことから,悪性新生物と同様に外科的切除が第一選択とされる。
      現在,術後 7 カ月経過するが,再発等はなく経過は良好である。
  • 菊池 恒, 今吉 正一郎, 笹村 佳美, 川田 和己, 市村 恵一
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 352-359
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      当科でアレルギー性鼻炎に対して KTP レーザー治療を施行した小児患者の治療成績について,アンケート調査を中心に検討した。対象は2005年から2009年の 5 年間に KTP レーザー治療を施行した小児37名である。アンケート郵送で行い22名より回答をえた。術前と比較した術後の改善率は鼻閉,擤鼻回数,くしゃみ回数,日常生活の支障度の全ての項目で改善を認め,手術をうけて効果があったとの回答が18名にみられた。しかし効果のあった期間は 2 年未満が18名中14名であった。術後の出血はやや多かった以上が22名 9 名にみられた。また術前の不安は少しあったが12名にみられ,術後出血と患者の不安を取り除くことが今後の検討課題と考えられた。保存的治療に抵抗する小児のアレルギー性鼻炎の患者において,KTP レーザー治療は有効な治療であるが,根治的な治療にはなりえないと思われた。さらに患者満足度の高い治療を行う上でアンケートは有用であった。
  • 久場 潔実
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 360-363
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      舌に化膿性炎症を生じることは少なく,膿瘍を形成することは稀である。
      我々は舌痛と構音嚥下障害,呼吸困難を主訴に来院した14歳女児の舌膿瘍症例を経験した。視触診のみでは診断は困難であったが,造影 CT 検査により舌膿瘍の診断に至り,抗菌薬点滴によって穿刺,切開を行わずに改善した。
      1980年以降の舌膿瘍本邦報告例を検討した。舌体部に多く,特発性が大半であった。多くが穿刺,切開により確定診断に至っているが,本例では造影 CT 検査が非侵襲的な診断法として有用であった。膿瘍治療の原則は穿刺,切開であるが,本例を含め抗菌薬で改善する例も数例認められた。明らかな気道閉塞,異物がなく,初回の穿刺切開が困難な例では厳重な監視下に抗菌薬単独で経過を見ることも可能と思われる。しかし数日で改善しない場合には躊躇せず穿刺,切開に踏み切るべきと考えられた。
  • 水川 知子, 水川 敦裕, 松岡 るみ子, 佐藤 宏昭, 小林 有美子, 村井 盛子, 宍戸 潔, 草野 英昭
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 364-371
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      過去29年間に当科を受診した小児のムンプス難聴49例中,厚生省特定疾患高度難聴調査研究班の作成した診断基準(1987)に基づいて診断した確実例37例を対象として,性差,両耳性,発症年齢,耳下腺腫脹から難聴発現までの日数,前庭症状,初診時聴力検査,治療,治療後聴力検査成績につき検討した。性差は男性20例,女性17例であり,一側性35例(95%),両側性 2 例(5%)であった。耳下腺腫脹から難聴発現までの日数は,耳下腺腫脹の 1 日前~16日後までで,平均6.6日であった。初診時聴力検査では,37例中32例が重度難聴あるいは聾であり,治療にもかかわらず 1 例を除く36例では聴力の改善がみられなかった。当科を受診したムンプス難聴患者数の経時的な増減は,全国のムンプスの流行の時機とよく一致していた。従来の報告と同様,今回の検討でもムンプス難聴の予後は不良であり,対策としては早期の予防接種の定期化が重要である。同時にムンプス難聴の啓蒙活動,小児科医との連携,ムンプスワクチンの質の向上が必要と考えられた。
  • 益田 博司, 余谷 暢之, 阪井 裕一, 守本 倫子, 泰地 秀信
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 372-376
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      顔面奇形を伴わない先天性鼻腔狭窄は,新生児・乳幼児の呼吸障害の原因の一つである。2002年 3 月から2009年12月までの間に当院で診察した先天性鼻腔狭窄例は,全 5 例であった。出生直後の呼吸障害(3 例),感冒を契機とした鼻閉を伴う呼吸窮迫(4 例),哺乳不良(3 例),栄養チューブ,吸引カテーテルの鼻腔内での通過障害(4 例)などの特徴的な病歴を呈していた。鼻腔内視鏡検査や副鼻腔 CT 検査を施行して診断を確定した。CT 検査にて固有鼻腔狭窄は 1 例,梨状口狭窄は 4 例であり,梨状口狭窄 4 例中 3 例は呼吸障害が重症でステント治療を必要とした。一方,症状が軽かった 2 例は α 刺激薬の点鼻または経過観察のみで,成長とともに症状が改善した。
  • 針谷 しげ子, 田中 美郷
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      新生児期の聴覚スクリーニング(以下 NHS)は Pass(両側及び一側 Pass を含む)しながら,発達の過程で難聴が疑われ精査を実施した小児の聴力・言語発達・教育環境の実態を検討し今後行うべき対応について報告した。難聴は高度難聴,中等度難聴,一側性の高度難聴例があり,父親の暴力による心因性難聴の一例もあった。両側 Pass 例では難聴に気付いた年齢が高く,言語獲得の敏感期を無為に過ごさない為の配慮が必要であった。更に,検査器機の違いが産む Pass・Refer の判断への注意も指摘した。難聴の早期発見,早期療育を目指して行うスクリーニングであるが,Pass の結果を過信し,難聴児に必要な対策が遅れることが示唆された。聴覚発達の確認を 1 歳半の健康診査で行うことが Pass 例の難聴の発見や,難聴のハイリスク児の問題解決の重要点であること,健診・療育担当者,耳鼻科医・ST 連携が健診の成果を上げることを報告した。
  • 森 正博
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 385-392
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      耳鼻咽喉科医が,誤嚥防止術や気管切開術を除くと,摂食・嚥下障害児に関わる機会は少ない。しかし,我々耳鼻咽喉科医が果たすべき役割は少なくない。嚥下機能の評価も重要な役割である。小児科主治医や子供の摂食に関わる医療従事者や家族は,摂食に関して大きな問題や不安を持つ。嚥下機能評価のために,子供は耳鼻咽喉科を受診する。これらの問題や不安を解決するために,嚥下機能を的確に評価する必要がある。その評価法として嚥下造影検査(VF)は重要である。しかし,哺乳障害を持つ乳幼児や経口摂取経験のない子供・意思疎通の困難な子供も多い。適切な VF の施行には大きな課題がある。その解決策の一つは,子供の嚥下機能評価ができる最適な VF の環境・条件を考えながら,事前の情報収集を詳細にすること。次に,子供の問題を解決するために嚥下機能の的確な評価を行うのだから,VF が画一的であってはならないということである。
  • 山本 潤, 黒田 徹
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      口腔・咽頭外傷は 6 歳以下の小児に多く,歯ブラシは主な原因器物のひとつである。2010年に当科を受診した歯ブラシ外傷は 5 例であり,全例入院し抗生剤静注を施行したが,3例で膿瘍形成し,いずれも排膿処置を要した。症例 1 では咽頭収縮筋内と思われる部位に膿瘍形成し,口蓋扁桃を摘出した扁桃窩より排膿した。同症例を含めた全 5 例に関し,文献的考察を交え報告する。過去の報告を調査すると歯ブラシ外傷では高い膿瘍形成率を示した。その原因として,歯ブラシは口唇や歯牙で防御されることなく外力が直接伝わるので深く刺入しやすく,そのブラシ部分には S. milleri group 等の口腔内細菌が大量に付着していることが考えられる。以上より歯ブラシ外傷では,通常膿瘍形成する組織間隙以外にも,膿瘍形成し得ると考えられた。また,同様のエピソードで膿瘍形成しない症例では,ブラシ部分ではなく柄を刺入しているケースも想定された。
  • 三澤 由幾, 荒井 真木, 加藤 照幸, 細川 久美子, 三澤 清, 峯田 周幸
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 401-404
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児の咽後膿瘍は咽後間隙のリンパ節炎から引き続いて生じる重症感染症である。今回我々は外耳道へ咽後膿瘍が進展した症例を経験した。症例は 1 歳 5 ヵ月女児で不明熱を主訴に当院小児科で点滴加療をうけるも改善しなかった。入院後右外耳道前下壁が膨瘤し切開すると膿汁が排泄された。同日撮影した頸部造影 CT で咽後部から副咽頭間隙を経て耳下腺間隙上方へ進展する陰影を認めた。同日咽後膿瘍切開術を施行し経過は良好であった。
      小児では骨部外耳道は未発達で,欠損部である Huschke 孔が存在し外耳道の炎症が頸部へ波及する経路といわれている。本症例では中耳や耳下腺に炎症所見はなく,この経路を通じて咽後膿瘍が外耳道へ進展したと考えられた。
  • 清水 雅子, 堀部 智子, 堀部 晴司, 内藤 健晴, 間宮 淑子
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      機能性構音障害は明らかな器質的疾患を認めない構音の障害であり,耳鼻咽喉科医が遭遇することは稀である。今回我々はイ列音で異常構音を呈した機能性構音障害の 1 例を経験したので報告する。症例は 6 歳 1 カ月男児。2 歳 8 カ月時に言語発達が遅いと母親が感じ,3 歳児検診で言語発達遅延を指摘され,4 歳 7 カ月時にはイ列音のみで異常構音を認める機能性構音障害と診断された。その後複数の医療機関を受診するも症状は改善されず,当科紹介受診となった。当科でもイ列音のみで異常構音を認める機能性構音障害と診断し,当院のリハビリで構音訓練を 4 カ月行った。構音訓練にて異常構音は消失し,その後 7 カ月経過するも再発をしていない。イ列音での異常構音は鼻咽腔構音の一つであり,鼻咽腔構音は適切な構音訓練で改善しやすいため,診断までに時間を要しても改善を得ることは十分可能である。また,構音訓練は本人の訓練意欲と家庭での訓練指導が重要と思われた。
  • 菅谷 明子, 福島 邦博, 片岡 祐子, 前田 幸英, 笠井 紀夫, 平井 美紗都, 長安 吏江, 西﨑 和則
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 409-414
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      一般的には人工内耳術後再手術の適応には,機器の故障,血腫の形成,創部感染,および電極の位置不良などが挙げられる。また最近の手術時年齢の低下からは,耳管機能の未熟さに伴い,経過中に中耳疾患を合併することも少なくない。
      今回当院で実施した小児の人工内耳埋め込み術150例のうち再手術を要した 3 例および追加手術を要した 2 例について検討した。再手術の 3 例は全員機器不良によるものであり,同側の人工内耳 explant/implant 術を施行した。また,追加手術の 2 例では鼓膜換気チューブ留置術および鼓膜形成術を施行した。このうち外傷後に再手術を行った内耳奇形の 1 例の詳細を報告した。
      再手術を要する症例では失聴期間をできるだけ短くするために迅速な対応を行い,術側の決定および術中の電極の位置確認を慎重に行うことが重要であると考える。
  • 加藤 久美, 曾田 史織, 小林 純美江, 八木 朝子, 渡邊 統星, 飯村 慈朗, 千葉 伸太郎, 太田 史一
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 415-420
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      いびきを主訴に受診し,終夜睡眠ポリグラフ(PSG)にて中枢性睡眠時無呼吸症候群と判明した 2 症例を経験した。症例 1 は10歳女児。アデノイド増殖・口蓋扁桃肥大を認め,簡易モニタにて無呼吸の頻発,入眠直後 1 時間に渡る酸素飽和度の断続的な低下を認め,経過途中より頭痛の訴えが出現した。症例 2 は11歳女児。4 歳時にアデノイド・口蓋扁桃摘出術を受けている。高度肥満ならびに多毛を認め,簡易モニタにて終夜にわたる頻脈,酸素飽和度低下時の脈拍変動が少ない特徴を示した。両症例とも PSG にて中枢性睡眠時無呼吸症候群と判明し,症例 1 は頭部 MRI にてキアリ奇形I型と診断された。小児睡眠診療では初診時に基礎疾患が明らかになっていない可能性があるため,身体所見や症状から基礎疾患が疑われる症例,簡易モニタにて非定型的なパターンを示す症例では,積極的に PSG を行うべきであると考えられる。
  • 藤澤 嘉郎, 笹村 佳美, 市村 恵一
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      2008年 4 月より2010年 3 月の 2 年間に Feuerstein split tube を留置した難治性・反復性中耳炎児35児(90耳)について,留置期間・チューブ脱落時の状態・合併症・チューブ留置効果について検討した。平均留置期間は121.4日であり,53%で 3 ヵ月以上留置可能であった。チューブ留置に伴う合併症として,半年以上持続する鼓膜穿孔が1.1%,チューブ閉塞が1.1%であった。チューブが鼓室内に脱落した症例は認めなかった。チューブ留置前後 1 ヵ月の抗菌薬内服日数は留置前 1 ヶ月13.6日から留置後 1 ヶ月3.3日に減少し,チューブ留置効果と考える。このチューブは留置しやすく合併症の少ないチューブと考えられる。
  • 田中 学, 安達 のどか, 浅沼 聡, 坂田 英明, 加我 君孝
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 426-430
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科にことばの遅れを主訴として受診した児の中で,聴力検査で異常が認められなかった群について検討した。これらについて,小児神経科発達外来で発達評価および経過観察が行われた。4 年間の初診児の総計は101人で,4 歳未満が全体の70%を占めた。発達外来における診断名は,広汎性発達障害が50.5%で,精神遅滞が38.6%であった。正常範囲と判断されたのは7.9%で,判断時年齢は平均 4 歳 6 カ月であった。初診時年齢が 4 歳以上の群でも診断名の内訳は全体とほぼ同様の比率であった。この群において,知能検査で境界知能と判断された例を除く精神遅滞 5 人では,質問紙を用いた発達指数が初診時で平均84であった。この中には,乳幼児健診で問題なしとされた児が少なからず存在した。聴力に異常のない「ことばの遅い児」に,発達障害児は多く存在する。言語表出能力以外に,日常生活における対人関係や行動の問題の有無にも留意すべきである。
  • 酒井 あや, 佐藤 仁志, 鈴鹿 有子, 三輪 高喜
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 431-435
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児睡眠時無呼吸の閉塞原因の多くは口蓋扁桃肥大,アデノイド増殖である。基礎疾患を有する小児の場合,他の要因も加わるため,積極的治療に躊躇することがある。今回,多奇形のある乳児睡眠時無呼吸に対して保存的に気道管理を行ったので報告する。症例は 9 ヶ月,女児。基礎疾患は頭蓋縫合早期癒合,両側第 5 指の弯曲,胸骨形態異常,内斜視など多奇形を合併する。主訴は睡眠時無呼吸発作,覚醒時喘鳴。現病歴は出生時よりいびきを認めていた。母親の観察では無呼吸発作は数日に 1 回,数秒程度の出現であった。呼吸努力も伴っていた。離乳食は円滑ではなかったが,摂食は可能で体重増加も順調であった。日中,覚醒時にも仰臥位では喘鳴を認めていた。6 ヶ月時,頭部 MRI 撮影のため,小児科入院の際に睡眠時酸素飽和度の低下を認め,2010年12月10日精査加療目的に紹介となった。耳鼻咽喉科所見として,両側耳介低位,両側外耳道狭小,アデノイド軽度増殖あり。軟口蓋低位や巨舌なし。喉頭内視鏡観察下では舌根扁桃の肥大や喉頭軟弱症は認めなかった。ABR では,両側60 dB の中等度難聴を認めた。レントゲンおよび CT では上咽頭の狭小を認めた。頭部 MRI では脳幹に明らかな病変を認めなかった。簡易睡眠診断装置では ODI は50回/時間,最低酸素飽和度は53%と著明な酸素濃度の低下を認めた。以上の結果から,中部顔面劣成長による上~中咽頭の狭小化が閉塞性睡眠時無呼吸の原因であると診断した。入院後,睡眠時のみ経鼻酸素(0.2 L/分)投与下にて経鼻エアウェイを挿入し,睡眠時の無呼吸,酸素濃度の低下は認めず,退院となった。退院後も,患児が寝入った後に家族が酸素投与および経鼻エアウェイを挿入していたが,違和感が強く,夜間に何度も自己抜去した。現在は酸素投与下で経鼻持続陽圧呼吸(以下 CPAP)を装着している。バンドで固定され,外れることはなく,夜間酸素低下も認めておらず,経過は良好である。
  • 深見 雅也
    原稿種別: 原著論文
    2011 年 32 巻 3 号 p. 436-444
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      症状と鼻腔所見から急性鼻副鼻腔炎が疑われた小児132例に,急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2010年版)による重症度分類と上顎洞超音波検査を行った。その結果,いずれの重症度でも超音波検査陰性例が多く見られ,それらは 1 週間以内に治癒することが多かった。症状と鼻腔所見による重症度が同じでも,診断時の超音波検査の結果が高度である方が,治癒に要する期間が長い傾向があった。また,診断時超音波検査陰性でありながら,治癒に要する期間が長かった例では,その後の検査で陽性に転じている例が多かった。鼻副鼻腔炎の診断に,症状と鼻腔所見に加えて画像診断を行うことで,より正確な診断が行えることが示唆された。侵襲なく繰り返し行える超音波検査は,小児鼻副鼻腔炎の診断において,有用であると考えられた。
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