筆者らは豚用の簡易呼吸代謝測定装置を試作し, その適否を検討するための実験を行った。
1. 簡易呼吸代謝測定装置の呼吸室は厚さ5mmの透明なアクリル樹脂板でつくったが, 育成豚用の大きさは長さ100cm, 幅45cm, 高さ70cmであり, 子豚用はそれぞれ58cm, 30cm, 44cmであった。
2. 呼吸室の前側に育成豚用も子豚用も外気導入口を2ヶ所, 後側に育成豚用は3ヶ所, 子豚用は1ヶ所の通気排出口をつけた。
3. 豚の保定用ケージは鋼鉄アングルでつくり, 育成豚用は長さ85cm, 幅35cm, 高さ61.5cmとし, 下部に小型車輪をつけた。また, 子豚用ケージの寸法は, それぞれ50cm, 23cm, 25cmであった。
4. 呼吸室内の温度上昇を防ぐため上方に蛇行した銅管をとりつけ冷水を循環させたが, その全長は育成豚用が18m, 子豚用は5.8mであった。
5. 通気装置は湿式ガスメーターと真空ポンプよりなり, その間を硬質のゴム管で連結し, その途中2箇の三方管で採気部をつくり, 分配括栓で通気流量を調節するようにした。
6. 豚を入れたときの呼吸室内各部のCO
2濃度を比較したところ, それぞれの部位の間に有意差は認められなかった。
7. 豚を入れたときの呼吸室内各部の温度を比較したところ, 側壁部が最も高く外気導入部が低かったので, 室内の温度計は側壁部にとりつけた。
8. 呼吸室内の有効容積を求めるため, 12頭の豚について比重を測定したところ, 平均0.987であった。
9. 簡易呼吸代謝測定装置を使用するには, 予め豚の大きさごとに通気開始までの時間と通気流量を決めておく必要がある。
10. 夏期の高温時に呼吸室を冷却しない試験区と冷却した試験区に分け環境要因を比較したところ, いずれも非冷却区の値は冷却区より高く, 環境温度が14%, 相対湿度が0.7%, 絶対湿度は29%多かった。
11. 呼吸室の環境温度が29.0℃のとき, 平均体重1.9kgの豚の熱発生量は7.36Cal/kg
0.75. hr, 2.6kgの豚は7.61Cal/kg
0.75. hrであり, 温度25.6℃のとき3.8kgの豚の熱発生量は6.51Cal/kg
0.75. hrであった。また, 平均体重25.7kgの豚の熱発生量は温度23.2℃のとき7.75Cal/kg
0.75. hr, 26.3℃のときは8.74Cal/kg
0.75. hrであった。
12. 筆者らの試作した豚用の簡易呼吸代謝測定装置は, まだ, 若干の問題点も残るが操作簡易, 経時的測定可能, 移動容易, 製作費安価の面から有効であると考えられる。
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