日本養豚研究会誌
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19 巻, 2 号
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  • 宮崎 昭, 米沢 隆, 川島 良治
    1982 年19 巻2 号 p. 83-88
    発行日: 1982/08/16
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    京都市中央卸売市場第二市場で, 近年肉豚の枝肉に骨折が発生していることに関し, その実情を調べるとともに骨折の原因について若干の検討を試みた。まず, 主要な食肉市場における肉豚の骨折発生率を1978年10月から半年間にわたって調査したところ, 京都市では全格付頭数の0.88%であり, その部位は腰椎や大腿骨であった。東京都では全屠畜検査頭数の0.06%と著しく低く, しかも骨折部位は四肢に集中していた。大阪市では骨折はなく, 全く問題にされていなかった。
    京都市における骨折は, 湯はぎ作業中に屠体が大型脱毛機内で急速に回転するために発生するようであるが, 東京都では皮はぎを採用しているので骨折は少なく, しかも四肢の骨折は搬入時に起こっているものと思われた。
    京都市に出荷される肉豚の経営別の骨折発生率は, 経営ごとに0.11から3.22%まで, 大きな差異があった。そこで, とくに骨折発生率の高い経営と低い経営について, 肉豚の飼育条件を調べたところ, パンくず多給の養豚経営における骨折発生が目立った。その経営では, 飼料乾物中30%がパンくずであり, しかもその中には甘い菓子パンが多かった。このような糖分の過剰摂取に加えて, カルシウムが不足し, また飼料中のカルシウムに対するリンの比率が著しく高いことが骨を脆弱にしているのではないかと推察され, また, 肉豚は同一条件下で飼育されても, 個体ごとに骨の弾性係数に差異が大きい。そのため, 飼養条件が適切でないため一般に骨が脆弱化している肉豚のうち, とくに何らかの原因で極度に弱くなっている個体が, 屠殺時に, 高速回転による湯はぎにかけられ, 骨折が発生することになると考えられた。
  • 秦 寛, 宮崎 元, 米道 裕弥, 杉本 亘之, 所 和暢
    1982 年19 巻2 号 p. 89-97
    発行日: 1982/08/16
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    豚におけるとうもろこしサイレージの利用性を検討する目的で, 肉豚にとうもろこしサイレージを体重の6%, 配合飼料を原則として3%給与し, 採食量・発育・と体の諸形質および選択採食にともなう摂取サイレージの成分変化を調査した。
    1. 体重20~90kg時のサイレージおよび配合飼料の総原物採食量は283.9kg, 224.4kgであり, 平均体重 (Xkg) と日平均サイレージ原物採食量 (Ykg) の間にY=0.037X+0.250の関係が得られた。
    2. 肉豚はとうもろこしサイレージに対して選択採食性を示し, その程度が強まるにしたがい摂取サイレージの組成は給与サイレージに比べ, 粗脂肪・NFEが高く, 粗繊維・粗灰分が低くなった。
    3. 日増体量は前期・後期・全期間それぞれ373g, 663g, 485gであった。
    4. と体の諸形質では胃重量が重く, 脂肪の融点が低いことが認められ, 唾液腺組織の著しい発達がみられた。
  • II. 選抜指数式の作製
    阿部 猛夫, 西田 朗, 伊藤 菁, 神部 昌行, 佐藤 勲, 三上 仁志
    1982 年19 巻2 号 p. 98-105
    発行日: 1982/08/16
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    本選抜試験において, 育成豚の体重90kg前後の時点の選抜 (第2次選抜) に用いた選抜指数式の作製について報告する。
    選抜指数は, 育成豚自身の1日平均増体重 (X1) および背脂肪の厚さ (X2), ならびに同腹調査豚 (去勢) のロース断面積平均値 (X3) およびハムの割合平均値(X4) を情報として利用するものとした。同腹調査豚は2頭を原則としたが, 1頭の場合もありうるので, それぞれの場合に対応する選抜指数式を作製した。
    このように選抜対象個体の情報と血縁個体の情報を同時に利用する選抜指数式の例は少いので, その作製法の要点をまず一般的に述べ, それに則る形で数値的に作製経過を示した。
    選抜指数式の作製に必要な関係形質の各種分散, 形質間の各種共分散などの遺伝特性値について, 当初はこのランドレース集団での推定値がなく, 他にも拠るべきランドレースでの推定値がないので, 暫定的に, 従来の産肉能力検定のヨークシャーのデータを分析した結果を基礎においた想定値を用いた。
    作製された選抜指数式は, 同腹調査豚2頭の場合と1頭の場合, それぞれ
    I2=0.0127X1-4.008X2+0.187X3+0.358X4
    I1=0.0129X1-4.077X2+0.116X3+0.209X4+C ただし,
    C=(0.0127-0.0129)X1-(4.008-4.077)X2+(0.187-0.116)X3+(0.358-0.209)X4 ここでX1-X4はそれぞれの形質の集団平均である。
    なお, この選抜指数式は, 第2世代での選抜まで用いるもので, 第3世代以降の選抜のためには, 遺伝特性値の新しい想定値による, また新しい作製法による選抜指数式を用意する計画である。
  • 山田 豊, 瑞穂 当, 美斉津 康民
    1982 年19 巻2 号 p. 106-111
    発行日: 1982/08/16
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    CPプロテアーゼ抗体を保有する母豚と保有しない母豚について繁殖成績を比較した結果, 産子成績および育成率には差がなく, 抗体を保有していても, 特別の障害をあらわしていない限り, 繁殖豚としての機能には差がないことが示された。
    CPプロテアーゼ抗体を保有する母豚および保有しない母豚から分娩された子豚について, 経時的に採血を行なって調査した結果, 保有する母豚から分娩された子豚は, 母乳を介して移行抗体を得るが, 離乳後は消失してゆくことが明らかになった。
    また, 母豚が陽性であるか陰性であるかによって, それらの子豚がCPに侵されやすいかどうかについては, いずれも8ヶ月齢まで抗体価が陰性であったことから, 特定の傾向はないものと判断された。
    稿を終るにあたり, CPプロテアーゼ抗原を提供して下さった農水省家畜衛生試験場武内正太郎技官に厚く御礼申し上げます。
  • 1. 簡易呼吸代謝測定装置の試作
    戸原 三郎, 広田 真司, 佐藤 至, 中村 彰, 中西 五十
    1982 年19 巻2 号 p. 112-122
    発行日: 1982/08/16
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    筆者らは豚用の簡易呼吸代謝測定装置を試作し, その適否を検討するための実験を行った。
    1. 簡易呼吸代謝測定装置の呼吸室は厚さ5mmの透明なアクリル樹脂板でつくったが, 育成豚用の大きさは長さ100cm, 幅45cm, 高さ70cmであり, 子豚用はそれぞれ58cm, 30cm, 44cmであった。
    2. 呼吸室の前側に育成豚用も子豚用も外気導入口を2ヶ所, 後側に育成豚用は3ヶ所, 子豚用は1ヶ所の通気排出口をつけた。
    3. 豚の保定用ケージは鋼鉄アングルでつくり, 育成豚用は長さ85cm, 幅35cm, 高さ61.5cmとし, 下部に小型車輪をつけた。また, 子豚用ケージの寸法は, それぞれ50cm, 23cm, 25cmであった。
    4. 呼吸室内の温度上昇を防ぐため上方に蛇行した銅管をとりつけ冷水を循環させたが, その全長は育成豚用が18m, 子豚用は5.8mであった。
    5. 通気装置は湿式ガスメーターと真空ポンプよりなり, その間を硬質のゴム管で連結し, その途中2箇の三方管で採気部をつくり, 分配括栓で通気流量を調節するようにした。
    6. 豚を入れたときの呼吸室内各部のCO2濃度を比較したところ, それぞれの部位の間に有意差は認められなかった。
    7. 豚を入れたときの呼吸室内各部の温度を比較したところ, 側壁部が最も高く外気導入部が低かったので, 室内の温度計は側壁部にとりつけた。
    8. 呼吸室内の有効容積を求めるため, 12頭の豚について比重を測定したところ, 平均0.987であった。
    9. 簡易呼吸代謝測定装置を使用するには, 予め豚の大きさごとに通気開始までの時間と通気流量を決めておく必要がある。
    10. 夏期の高温時に呼吸室を冷却しない試験区と冷却した試験区に分け環境要因を比較したところ, いずれも非冷却区の値は冷却区より高く, 環境温度が14%, 相対湿度が0.7%, 絶対湿度は29%多かった。
    11. 呼吸室の環境温度が29.0℃のとき, 平均体重1.9kgの豚の熱発生量は7.36Cal/kg0.75. hr, 2.6kgの豚は7.61Cal/kg0.75. hrであり, 温度25.6℃のとき3.8kgの豚の熱発生量は6.51Cal/kg0.75. hrであった。また, 平均体重25.7kgの豚の熱発生量は温度23.2℃のとき7.75Cal/kg0.75. hr, 26.3℃のときは8.74Cal/kg0.75. hrであった。
    12. 筆者らの試作した豚用の簡易呼吸代謝測定装置は, まだ, 若干の問題点も残るが操作簡易, 経時的測定可能, 移動容易, 製作費安価の面から有効であると考えられる。
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