著者らは千葉県市原市において, 構造が同じで管理者が異なる2棟の肥育豚舎の管理作業を調査した。これらの豚舎には, 自動給餌機と自動除ふん機が設置されていた。結果を要約すると次のとおりである。1) これら2棟の肥育豚舎の管理作業については, 除ふん清掃作業, 観察作業, 点検整備作業, 出荷作業の4種の単位作業が観察された。2) 豚舎構造が等しいにもかかわらず, 除ふん清掃作業の方法には管理者による差が認められた。E豚舎の豚房内の除ふん作業は, スコップを用いるふんのかき取りとホーキを用いる掃き寄せにより行われていたが, F豚舎のそれは, スコップだけを用いていた。E豚舎とF豚舎の冬季の作業は全豚房を対象に行われていたが, F豚舎の夏季には1豚房おきに除ふん作業を行なっていた。3) 調査時における肥育頭数は, E豚舎の冬季が162頭, 夏季が207頭であり, F豚舎の冬季が264頭, 夏季が444頭であった。1日の作業時間は, E豚舎の冬季が6,444秒, 夏季が4,830秒であり, F豚舎の冬季が4,107秒, 夏季が3,827秒であった。1日の作業動線長は, それぞれ1,438.75m, 1,130.95m, 1,179.60m, 1,032.10mであった。4) 得られた結果を既往の成績と比較するため, 飼育密度で修正し, 調査対象豚舎の収容頭数を412頭とした場合, 肥育豚1頭を管理者1人で1日管理した場合の日常的管理作業に要する時間は, E豚舎が17.90秒, F豚舎の冬季が8.05秒, 同夏季が3.82秒であった。肥育豚1頭を1日管理するために必要な歩行距離は, それぞれ3.64m, 2.51m, 1.08mであった。5) この結果を, 著者らが報告したふん尿分離型スノコ式豚舎とふん尿混合型スノコ式豚舎の所要時間ならびに歩行距離と比較すると, 大幅な短縮が認められた。しかし, 観察作業等の豚の健康管理に係る作業は, 実数値ならびに全作業に占める割合ともに増加していた。
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