豚の排ふん習性を知り, その習性を逆に利用することによって, 除ふん作業を省力的に実施できる豚房構造を究明することを最終目的として, まず, 豚の排ふん場所が隣接豚房との関連によってどのように影響されるかを実験した。得られた知見を要約すると次のようである。
1 豚は飼槽の周辺ならびに豚房中央部分にはほとんど排ふんすることなく, 豚房周辺部, とくに四隅の部分を排ふん所として選ぶ習性がある。
2 隣豚房の豚の有無との関連では, 豚は空室側を寝所として選び, 隣房豚のいる柵沿いに排ふんが集中する。
3 左右隣房とも豚が収容されている条件でも, 片側の仕切柵を透視できない壁構造とし, 他方の仕切柵を隣豚房を透視できる柵構造にすれば, 豚はお互いに透視できる柵側を排ふん場所にする。
4 豚が排ふん場所を選定したあとでは, 仕切柵の軽度な変更があっても, 排ふん場所をそのまま継続する傾向がある。しかし, 不定期的な騒音など豚に警戒心をいだかせるような状況が発生すると, 豚は新しく発生した状況の方により強く反応して排ふん場所を変える。すなわち, 固定的・連続的な条件に対しては馴れによる不感症状態になりやすいが, 突発的・不定期的な条件に対しては強い警戒心をいだくものである。
5 豚が小さいうちは, 排ふん場所が限定されにくい傾向がある。その理由としては, 豚房面積に対して, 横臥休息に必要とする面積が相対的に小さいためと考えられるが, 外敵から身を守るという意識が薄いこともその一因と思われる。
6 夏と冬とでは, 豚の排ふん場所に微妙な違いが見れた。その原因は, 通風や床面の湿潤など, 季節に関連しての居住性の好みの違いによるものと思われる。
7 この実験では, 豚房の左右どちらかの側に排ふんを集中させることは容易であったが, 豚房の後方, いわゆるデンマーク式豚房で言う排ふん所の区画には, 最高75%までしか排みんを集められなかった。その理由としては, 実験に用いた豚房の形が横長であったためと考えられ, 豚房の形も豚の排ふん場所の誘導に影響を持つようである。
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