高水分麦類を収穫後, ただちに密封貯蔵し, 発酵させたものでの, 肥育豚に対する効率的な利用体系を明らかにするため, 麦類の栄養価, 肥育効果, 調理法, 熟期別の栄養価, 利用限界, 栄養補正などについての検討を行った。
1. 高水分の大麦, 小麦, えん麦の栄養価値は, TDNで, 小麦, 大麦, えん麦の順に高く, DCPでえん麦, 小麦, 大麦の順に高かった。
2. 配合飼料に対し, 風乾物で30%を単純に高水分麦類で代替給与した場合は, 大麦, 小麦は配合飼料と同等の発育増体を示すが, えん麦は劣っていた。
3. 高水分小麦を圧ぺん, 粉砕処理したものと粒状との間には, 発育増体に有意差は認められなかったが, 処理によって, 発育増体, 飼料効率の改善の傾向が見られ, 低水分穀実になるほど処理が必要である。
4. 小麦の高水分及び低水分穀実と乾燥粉砕したものの消化率は, 各成分とも乾燥粉砕, 高水分, 低水分の順となった。
5. 小麦を粒状のまま, 配合飼料の30%, 50%, 70%を代替給与したが, 子実の水分含量が低かったために, 高率に代替する程, 発育増体, 飼料要求率は劣った。
6. 高水分のえん麦を配合飼料の30%, 50%代替給与し, 動物性油脂と大豆粕で栄養補正を行うことによって, 配合飼料の単一給与と同等の発育増体を示し, 十分利用が可能である。
7. 高水分麦類は水分含量の如何にかかわらず, 肥育豚での嗜好性は良好であった。
8. 高水分麦類の給与による肉質への悪影響はほとんど認められなかった。
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