本試験は, i) 豚の系統造成における選抜・交配方式の確立, ii) 地域環境と遺伝との交互作用の検討, そして副次的には, iii) 実際に優良な系統の造成を目的として実施した。この第I報では試験の設計について報告する。
設計の概要は次の通りである。
昭和46年, 岩手県と宮崎県にランドレース種の2集団を用意する。基礎豚は同腹同性2頭を単位として購入し, 1頭づつ両県の集団に分配して, 出発時の両集団の遺伝的構造を可及的に等しくする。以後, 両集団それぞれ種雄豚12, 種雌豚60の閉鎖群として繁殖し, 毎世代, 両県同一方式の選抜と交配を実施する。
選抜計画の特徴は, i) 慣行的選抜の場合に比して若齢時の選抜を緩め, 体重90kg前後での選抜により大きい余地を残す, ii) 各腹から2頭の雄を調査豚として去勢, 肥育し, その屠体成績を同腹育成豚の選抜に利用する, iii) 雌の初産子を次代とし, 雄も同世代雌にだけ供用する, という点に在る。ii) のきょうだい検定の採用とiii) の初産での世代回転は,平均世代間隔を短く抑える意図である。この計画では, 平均世代間隔は1年である。なお, 90kg時の選抜は指数選抜とする。
交配は, 基本的には無作為交配, ただしきょうだい交配は避ける。
主に集団の大きさの有限性からくる平均血縁度の上昇は, 世代当り約3%と見込む。7~8世代経て, 平均血縁係数が20%を超えたとき試験を終了する。
試験期間の中間と最後に, 両集団の子豚の一部を交換して肥育し, 遺伝と環境の交互作用を検討することとする。
考察においては, 以上の設計内容などについて背景, 理由を述べた。また, このような豚選抜試験はわが国では始めてであるが, 欧米での過去の主な選抜試験との関係におけるこの試験の位置付けにも触れた。
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