日本養豚研究会誌
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23 巻, 1 号
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  • 山田 豊, 中村 正斗, 美斉津 康民, 瑞穂 当
    1986 年 23 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジンF(PGF) の投与による豚の分娩誘起技術を, 実用技術として確立するために本実験を行った。その結果, 次のような成績が得られた。1) 乳汁分泌のみられない豚にPGFを1回注射した場合には, 妊娠111日以降5~20mg投与することによって, 平均約35時間後に分娩を開始させることができ, 分娩誘起効果は確実であった。この分娩誘起効果は, 5~20mg投与の範囲では同程度であった。2) PGFの投与から分娩開始までの時間をより一層斉一化することを目的として, 6時間あるいは24時間間隔で5mgずつ2回注射したが, 大きな改善効果はみられなかった。3) 乳汁分泌のみられる豚に1回注射した場合には, 5mg以上の注射で分娩開始までの時間は平均4時間であり, 顕著な分娩開始促進効果が認められた。4) PGFの投与によって, 分娩の経過や母豚および子豚への悪影響は認められなかった。5) 以上のように, PGFの投与による分娩誘起技術について一連の実験を行い, 本技術を実用技術として確立した。その結果, 豚の分娩開始をある程度人為的に調節することが可能となった。
  • 千国 幸一, 神部 昌行, 小沢 忍, 小石川 常吉, 吉武 充, 矢野 信礼
    1986 年 23 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ランドレース種, ハンプシャー種, デュロック種の去勢と雌より30, 50, 70, 90kg時に背脂肪の脂肪組織を採取し, 成長に伴う脂肪細胞の大きさの変化とその品種間差, 性差の発現時期について検討した。同時に背脂肪の厚さを超音波測定装置によって測り, 厚さの変化についても検討した。
    背脂肪の厚さの品種間差は70kg時から有意となり, ランドレース種の背脂肪が他の2品種に比べ厚かった。この品種間差は30kg時から傾向が認められた。
    性差は30kg時にはなく, 70kg時から有意な差となった。去勢は雌よりも背脂肪が厚く, 差は成長とともに拡大した。
    脂肪細胞の大きさの変化も背脂肪の厚さの変化に似ていた。成長に伴って大きさは増加し, 30kgと50kgの間で最も増加した。
    ランドレース種は他の2品種と比べて脂肪細胞が大きく, 品種間差は30kg時から有意であった。またランドレース種内での腹の違いによる差異も30kg時には表われる傾向が認められた。
    脂肪細胞の大きさの性差は90kg時の内層にのみ認められ, 去勢が雌よりも大であったが, その他の体重では有意差がなかった。
    以上のことから, 背脂肪の厚さの品種間差は脂肪酸合成能の差異により, 成長の比較的初期から脂肪細胞の肥大によって起こると考えられた。性差には細胞数の差異も関与していることが考えられた。
  • 杉本 亘之, 宮崎 元, 藤田 保
    1986 年 23 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ビートパルプの可消化炭水化物の栄養的効果についての知見を得るため, コーンスターチに由来する可消化炭水化物と比較検討した。飼料は基礎飼料として豚産肉能力検定飼料を用い, これにコーンスターチ+大豆粕とビートパルプ+大豆粕のDCP:TDN比が検定飼料のDCP:TDN比と同一になるように調製し, それぞれ検定飼料の一部を代替えした。その結果, 対照区は検定飼料75.2%+コーンスターチ15.6%+大豆粕8.6%+ビタミン・ミネラル0.6%, ビートパルプ区は検定飼料70.2%+ビートパルプ21.0%+大豆粕8.0%+ビタミン・ミネラル0.8%の構成割合となった。飼料の給与量は直接検定の給与基準による定量給与とし, 両試験区の栄養摂取量が等しくなるように, 対照区は0.97倍, ビートパルプ区は1.04倍して給与した。供試豚は大ヨークシャー去勢雄16頭で, 両試験区に8頭づつ割り当てた。肥育試験は体重50kgから100kgまでの期間で, いずれも単飼とした。なお, 試験飼料の栄養価を求めるためランドレース去勢雄6頭を2群に分け, 1処理区3頭ずつ用い, 予備期間5日, 採糞期間5日の全糞採取法により消化試験を実施した。その結果を要約すると以下のとおりである。1. 肥育試験の結果, 対照区およびビートパルプ区間に発育差は認められず, 消化試験の結果より得られた栄養価より試算された栄養消費量は, 両試験区でほぼ等しかった。2. 絶食後体重から消化管内容物を除いた正味の生体重量は, 対照区で92.55kg, ビートパルプ区で90.04kgであり, 両試験区に2.51kgの有意 (P<0.01) な差が認められた。このことから, ビートパルプとコーンスターチにそれぞれ由来する可消化炭水化物の, 栄養的効果の異なることが推察された。3. 消化器官の重量についてみると, ビートパルプ区は対照区に比較し, 胃 (P<0.01), 盲腸 (P<0.05) および結腸 (P<0.01) で有意に重かった。また, 消化器管の長さではビートパルプ区で小腸が有意 (P<0.01) に短く, 結腸が有意 (P<0.01) に長く, 飼料の質的な違いにより消化器管の発達に影響を及ぼすことが示唆された。4. ビートパルプを配合飼料へ20%程度配合しても, 枝肉の脂肪の理化学性状に, 特に悪影響を及ぼさないものと推察された。
  • 赤塚 巧, 武田 光彦, 菅野 興文, 田中 稔, 三谷 賢治, 中沢 宗生, 柏崎 守
    1986 年 23 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    離乳後下痢由来大腸菌105株を供試し, 12種類の抗菌剤に対する薬剤感受性試験を行い, 次の成績を得た。1) 各抗菌剤に対する耐性菌の出現率は, SA (92.4%), TC (91.4%), SM (91.4%), KM (80%), ABPC (25.7%), CP (16.2%), BCM (3.8%) であり, その他の抗菌剤に対しては, すべて感受性であった。2) いずれの抗菌剤にも感受性のあった6株を除いた99株の耐性型は, 各抗菌剤に対する耐性の組み合わせによって1~6剤耐性が認められ, その耐性パターンは12種類であった。そのなかで4剤耐性を示すものが最も多く, とくにTC・SA・SM・KM耐性のものが45株 (42.9%) を占めた。
  • III. 血液蛋白多型による桃園種と小耳種の遺伝子構成
    田中 一栄, 黒澤 弥悦, 大石 孝雄
    1986 年 23 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    台湾における2系統の在来豚, すなわち桃園種と小耳種について, 血液蛋白多型座位における遺伝的変異から比較検討した。得られた結果は次の通りである。1). デンプンゲルまたはセルロゲル電気泳動法により, 今回の実験で検出されたヘモグロビン型2座位および赤血球酵素型12座位のうち, 両種共に変異 (AA, ABおよびBB) が認められたのは6PGD座位で, いずれも6PGDA遺伝子が0.833および0.658と高い頻度を示した。また, Es-D座位では桃園種がすべてEs-DA遺伝子のみであったが, 小耳種にEs-DB遺伝子が0.028と僅かに認められた。その他については検出された泳動滞がすべて均一であり, 多型座位は全く認められなかった。2). そこで, 田中ら (1979, 1981) によりすでに報告されている血清蛋白5座位 (Pa, Tf, Hp, CpおよびAm) を加えた19座位で両種の遺伝的変異性を比較したところ, 桃園種がPpoly=0.2105, H=0.0998であり, 小耳種のそれは0.3158および0.1410で, 後者に比して明らかに前者の変異性は低い。また, 他の東アジア系在来豚との比較からも, 桃園種の遺伝子構成はかなり均一性の高いことが推察された。
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