日本養豚研究会誌
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17 巻, 3 号
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  • I 隣豚房との関連
    美斉津 康民, 河上 尚実, 八木 満寿雄, 瑞穂 当, 栗原 武
    1980 年 17 巻 3 号 p. 135-143
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    豚の排ふん習性を知り, その習性を逆に利用することによって, 除ふん作業を省力的に実施できる豚房構造を究明することを最終目的として, まず, 豚の排ふん場所が隣接豚房との関連によってどのように影響されるかを実験した。得られた知見を要約すると次のようである。
    1 豚は飼槽の周辺ならびに豚房中央部分にはほとんど排ふんすることなく, 豚房周辺部, とくに四隅の部分を排ふん所として選ぶ習性がある。
    2 隣豚房の豚の有無との関連では, 豚は空室側を寝所として選び, 隣房豚のいる柵沿いに排ふんが集中する。
    3 左右隣房とも豚が収容されている条件でも, 片側の仕切柵を透視できない壁構造とし, 他方の仕切柵を隣豚房を透視できる柵構造にすれば, 豚はお互いに透視できる柵側を排ふん場所にする。
    4 豚が排ふん場所を選定したあとでは, 仕切柵の軽度な変更があっても, 排ふん場所をそのまま継続する傾向がある。しかし, 不定期的な騒音など豚に警戒心をいだかせるような状況が発生すると, 豚は新しく発生した状況の方により強く反応して排ふん場所を変える。すなわち, 固定的・連続的な条件に対しては馴れによる不感症状態になりやすいが, 突発的・不定期的な条件に対しては強い警戒心をいだくものである。
    5 豚が小さいうちは, 排ふん場所が限定されにくい傾向がある。その理由としては, 豚房面積に対して, 横臥休息に必要とする面積が相対的に小さいためと考えられるが, 外敵から身を守るという意識が薄いこともその一因と思われる。
    6 夏と冬とでは, 豚の排ふん場所に微妙な違いが見れた。その原因は, 通風や床面の湿潤など, 季節に関連しての居住性の好みの違いによるものと思われる。
    7 この実験では, 豚房の左右どちらかの側に排ふんを集中させることは容易であったが, 豚房の後方, いわゆるデンマーク式豚房で言う排ふん所の区画には, 最高75%までしか排みんを集められなかった。その理由としては, 実験に用いた豚房の形が横長であったためと考えられ, 豚房の形も豚の排ふん場所の誘導に影響を持つようである。
  • II 豚房内部構造との関連
    美斉津 康民, 河上 尚実, 八木 満寿雄, 瑞穂 当
    1980 年 17 巻 3 号 p. 144-150
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    前報における隣豚房との関係に続いて, 今回は, 豚房内の諸要因が豚の排ふん場所にどのような影響を及ぼすかについて実験を行なった。得られた結果は次のようである。
    1. 群飼条件の豚は, 飼槽の近くを休息所として選ぶ習性があるが, これはえさ場を常に確保しておきたいという本能的なものと考えられる。一方, 外敵から身を守るような遮蔽物があり, 居住性の良好な区画も休息場として望ましい条件である。飼槽の位置と居住性の条件とが両立した場合は, 豚の休息場所が確立され, その結果として排ふん場所もよく限局される。飼槽の位置と居住性のすぐれた位置とが対立する場合は, 飼槽の位置の方がやや優先的に休息場所となり, 結果的には排ふん場所が混乱しやすい。
    2. 飲水場の周辺は水で床面がぬれるので居住性が劣り, 他の条件に優先して排ふん場所となる傾向が強い。しかし, 飲水場の近くであっても, 床面を他の部分より高くして乾燥をはかってやれば, 豚に休息場所として使用させることができる。
    3. 外敵に対する安全感や, 居住性において同等な場所が豚房内に2ヶ所以上存在する場合は, 豚は休息場の選定に迷い, 結果として排ふん場所が混乱する。
    4. 休息場所となるべき面積が, 豚の収容頭数に対して広すぎる条件においては, 人間が希望する限局的な区域に排ふんさせることは困難である。
    5. 結論的に, 豚に排ふん場所を限局させたい場合は, 次のような条件を整えることが望ましい。
    (1) 休息場の床面は, 排ふん場所より高くし, その区画の外壁は透視できない壁面構造として安全感をもたせる。飼槽はこの区域に設置する。
    (2) 排ふん場所の柵は, 隣豚房を透視できる構造とする。飲水器は, この区域に設置して床面を湿った状態にする。豚房への出入扉もなるべくこの区域に設ける。
    (3) 休息場の面積に対して少なすぎない頭数を収容する。
  • III 運動場を付設した豚房における排ふん行動
    美斉津 康民, 河上 尚実, 八木 満寿雄, 瑞穂 当
    1980 年 17 巻 3 号 p. 152-158
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    前2報においては, 全期間舎飼い条件におかれた場合の排ふん場所が, 隣豚房および豚房構造との関係においてどのように影響されるかを調査した。今回は, 運動場付き豚房での排ふん行動と, 外的要因との関連について実験を行ない次のような結果を得た。
    1. いつでも運動場に出られる条件の豚房では, 豚は豚房内で排ふんするよりも戸外に出て排ふんする方を好む習性がある。この理由としては, 戸外の運動場は, 天候, 音, 人畜の通過など豚房内より不安定要因が多いため, 豚は安心感に富む豚房内を安息区域とし, 運動場を遊びと排ふん場所にあてるように本能的に使い分けているものと考えられる。しかしながら, 不安条件も度がすぎて, 強風が吹き荒れたり, はげしい雨など豚に明らかに恐怖心ないしは過度の不快感をいだかせる状態になった場合は, 豚は戸外に出ることをためらい, 豚房内での排ふんが多くなる。
    2. 冬季におけるなだらかな気温低下には豚はよく順応してゆくが, 気温が急冷した日には戸外に出ることをおっくうがり, 豚房内で排ふんする割合が多くなる傾向が見られた。
    3. 冬季と夏季とを比較すると, 冬季は多少なりとも毎日豚房内に排ふんが見られたが, 夏季は豚房内に排ふんが全く見られない日の方が多かった。その理由として, 夏は豚が豚房全面に散らばって臥るのに対して, 冬は保温のために1ヶ所に体を寄せあって臥るため排ふんを誘うようなスペースが豚房内に出来ることも一因と考えられる。
    4. 或る個体が下痢して豚房内をよごすと, 他の豚もそれにつられて豚房内で排ふんする様子が観察された。この現象は, 豚房内を努めて清潔にしておくことによって豚房内への排ふんを抑止するという一種の学習効果が期待できることを意味するものと考えられる。
    5. 運動場がある場合は, 豚房の広さや構造は排ふん行動に対して影響が小さいような結果が得られたが, 透視できる仕切柵の向いがわの隣房豚を常時とじこめて豚房内で排ふんせざるを得ない状態を作ってやると, それにつられてこちら側の豚群も豚房内にかなりの排ふんをするようになった。したがって, 戸外へ排ふんを集中させたい場合は, 豚房間の仕切柵はすべて透視できない構造にすることが望ましい。
  • 椎葉 純一, 宮嶋 松一, 河野 建夫, 高橋 努, 稲垣 二郎
    1980 年 17 巻 3 号 p. 159-165
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    豚の椎骨数は変異が大きく, 屠肉形質と関連すると言われている。そこで, ランドレース2,761頭のデータを用いて, 椎骨数と発育, と体形質の関係を検討した。
    1. 椎骨数の多い個体は, 体長が長く, 胸囲が小さくなる傾向にある。
    2. 椎骨数と屠体長及び背腰長IIは, 明らかに関連しており, 椎骨数が1個増加することに, それぞれ, 1.78cm, 2.01cm長くなった。
    3. 椎骨数と屠体長及び背腰長IIとの相関は, 日齢を一定にして分析すると, 0.390, 0.621であった。
    4. 1日平均増体重, 90kg時日齢, 背脂肪の厚さ及び腹脂肪の厚さにおいては, 各椎骨型間に有意な差は認められなかった。
    椎骨数の多い豚は, 屠体長及び背腰長IIが長く, ロースバラ割合が増加し, 反面, ロース断面積が小さく, カタ割合及びハム割合が減少する傾向にあった。
  • 椎葉 純一, 宮嶋 松一, 河野 建夫, 高橋 努, 稲垣 二郎
    1980 年 17 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ランドレースの椎骨数の遺伝率について117頭の父と425頭の母, その産子3,819頭のデータを用いて分析を行ったところ, 次のような結果を得た。
    1. 胸椎数は14型から17型の範囲にあり, 16型の出現率が最も高く, 15型は16型の約半分の出現率であった。
    17型と14型の出現率は少なかった。
    2. 腰椎数は, 5型から7型の範囲にあり, 6型が最も多く, 続いて7型, 5型の順であった。
    3. 胸椎と腰椎を合せた椎骨数は, 20型から23型の範囲にあった。21型及び22型で全体の約95%を占めており, 最も多い出現率であった。
    4. 同数の椎骨数を持った両親の交配でも, その産子の椎骨数には変異が認められた。椎骨数が多い交配は, 椎骨数の少ない交配より, その産子の平均椎骨数が多かった。椎骨数の出現率は, 世代的変化は認められなかった。
    5. 椎骨数の遺伝率は, 表6, 7, 8に示すとおでである。腰椎に関する遺伝率以外, 一般に高い遺伝率で, 椎骨数を増加するには個体選抜が有効であることを示唆している。
  • 柏崎 守, 久米 常夫, 多田 融右, 西村 豊
    1980 年 17 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    イミダゾール系合成抗菌剤ロニダゾールの豚赤痢トレポネーマに対する in vitro での抗菌活性および実験的豚赤痢に対する治療効果について検討し, 次の成績を得た。
    1) ロニダゾールの豚赤痢トレポネーマに対する抗菌活性を寒天平板希釈法で調べた。そのMIC値は0.1μg/ml内外で, 高い抗菌活性を有した。
    2) 豚赤痢トレポネーマの培養菌でSPF豚を感染させ, 発病豚および同居豚に対して0.003または0.006%濃度のロニダゾールを3日間飲水投与し, 治療効果を調べた。その結果, 発病豚は投薬開始後48時間以内に回復し, 投与菌は糞便から回収されなくなった。また, 投薬中止後10日間の観察期間中に同居豚の発病はなく, 回復豚の再発も認められなかった。
  • 1980 年 17 巻 3 号 p. 179-193
    発行日: 1980/12/31
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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