火山体の地形変化の把握は,火山活動や広域応力場に起因した地殻変動の特徴の抽出において重要であり,火山噴出物量の見積もり,および火山噴火後の降雨による流出量の推定という火山防災の分野にも貢献できる。LANDSATやSPOTに代表される光学センサによる観測は,火山噴出物の分布範囲の特定に利用できるが,地形や地形変化の詳細,かつ定量的な評価が困難である。そこで,全天候型である合成開口レーダ(SAR)データに注目し,活動が継続的な桜島火山を対象に選んで,JERS-1衛星データの干渉処理により火山体の地形変化の抽出を行った。1996年1月~1997年3月の比較的連続する3つのデータペアで良質の干渉画像が得られたので,解析はこの期間に限定した。1996年の火山活動は穏やかであり,しかも変位量の大きな部分は侵食谷の位置に対応しているので,干渉SARによって推定される地形変化は主に侵食に起因すると考えられた。3ペアでの変位量を加算した結果から,対象期間では侵食が優勢であり,北岳の北側で20 cm以上の侵食量が推定でき,侵食量の大きい部分が南北方向に伸びていることが見出された。また,南西側の斜面では火山噴出物の供給が大きいので,侵食量は相対的に小さいことなども明らかになった。
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