情報地質
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30 巻, 4 号
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表紙(情報地質 第30巻 第4号)
目次
巻頭言
総説
  • 坂本 正徳, 根本 達也, 升本 眞二, 能美 洋介
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻4 号 p. 147-159
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    本稿ではシンポジウムや技術講習会を通じた日本情報地質学会の教育活動を概観する.本学会の設立直後の10年間では地質情報のコンピュータ処理への理解を深めるように努力した.次の10年間には野外調査でコンピュータ資源を有効に活用できる人材の育成に努めた.学会認定の資格制度制定を計画したが,時期早尚として実施が見送られた.全地連による地質情報管理士が2006年に制定され,本学会は計画段階からその運用に協力している.最近の10年は,地質情報のコンピュータ処理は実践・検証の新しい段階に入り,主な関心はWeb-GIS,ボーリングデータベースの利活用,三次元地質モデリングのような実用的な解析システムに移行している.この社会的要請にこたえるためには大学においてカリキュラムに情報地質学関連科目を組み込む必要がある.参考事例として,大阪市立大学と岡山理科大学の先進的なカリキュラムを簡略に紹介する.本学会は今後も引き続き幅広い範囲の地質関連業務における情報化を推し進める人材の育成に中心的な役割を担っていくであろう.

  • 塩野 清治
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻4 号 p. 161-179
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    「論理地質学」は地質情報のコンピュータ処理の理論的基礎として,地質学における論理の体系を数学の形式で再構築することを目的として,弘原海ほか(1987)によって提唱された新しい学問分野である.本稿は1990年の日本情報地質学会設立から30年間の研究成果を総括する.地質学では連続な空間や時間が地質単元や地質年代に分割され,それら離散化された対象の関係が研究対象となる.この観点から主に離散数学を基礎にして,新しい理論とアルゴリズムの開発・展開が進められてきた.主な成果は次の通りである,(1)初生的水平性の法則,側方連続性の法則,地層累重の法則という地層の基本的特性を数学表現する3つの公理,(2)露頭での地質体の接触関係を表現するラベル付き有向グラフ,(3)多数の露頭での観察結果を統合して地域層序を求めるデータ処理の流れ,(4)生層序学の基本的手続きをシミュレートする単純な数学モデル,(5)地質構造の3次元モデルを数学表現するための地質体と面の間に成り立つ論理的関係(地質構造の論理モデル),(6)地質構造の論理モデルを図式表現するラベル付き2分木,(7)論理モデルに関係する多様な集合演算を実行するためのビット演算法.地質情報処理を多面的に推進させるために論理地質学のさらなる発展が望まれる.
  • 根本 達也, 野々垣 進, ベンカテッシュ ラガワン, 升本 眞二
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻4 号 p. 181-195
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    3次元地質モデルは基礎的な野外調査のデータと地質学の知識・解釈に基づく地質解析の結果として構築される地質情報の最終的な成果の1つである.日本情報地質学会では,その前身である情報地質研究会(1979年設立)の時代から3次元地質モデルの構築方法に関連する多くの研究論文が報告されてきた.本稿では,主に日本情報地質学会の論文誌・学術講演会・講習会などを通じて開発され,発展してきた3次元地質モデルの構築・可視化方法と地質境界面の推定方法に焦点をあてた.これらの研究成果は研究会時代から長年にわたりコンピュータの進化に合わせて,開発・改良・充実されてきた.モデル構築の数学的な原理は2000年頃までに開発された.つぎの10年で,3次元地質モデリングのための個別のソフトウェアや汎用GISのためのアルゴリズムが確立した.その後,研究・開発は実用化と普及に向かった.その間,地質境界面の推定のためのアルゴリズムも進化した.現在,これらの研究成果は実務で利用されている商用の3次元地質モデルリングソフトウェアの技術的基盤を提供している.最後に,モデルの作成者や利用者の視点から3次元地質モデルの現状と将来の展望を述べた.

  • 正路 徹也
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻4 号 p. 197-208
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    地球科学的調査の最適化を目指した地球情報の取得と解析におけるいくつかの試み 正路 徹也 地球科学的調査の最適化を目指した地球情報の解析手法の一端を紹介した.1) 賞罰関数を使うと調査の目的を明確化することができる.例えば,金鉱床付近の変質型の同定において,賞に対する罰が小さい場合,結果として同定精度が高くなる.2) 探査で得られた情報が評価できるならば,情報-コスト関数で複数の調査手法を最適に組み合わせることができる.3) 簡単なモデルで,調査の進行に伴うエントロピーあるいは分散の減少の様子を示すことができる.したがってこれらの変数は,調査の結果得られた情報の評価に利用できる可能性がある.

  • 小池 克明
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻4 号 p. 209-236
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    地質関連データは主として点データであり,対象領域の大きさに比べて限られた数の測点が離散的,不規則に分布する.地質学,応用地質学の分野では地質構造,物性分布,鉱石の品位分布,石油・地熱貯留層の形態などを高分解能,かつ広範囲で推定することが求められており,不規則配置のデータから真の分布をいかに正確に再現できるか,という空間モデリングはますます重要な課題になってきている.本稿では空間モデリング法をスプライン型,地球統計学,ニューラルネットワーク型に分類し,各手法の原理と最近の応用,発展の一例についてレビューした.特に補助情報を利用しての推定精度の向上,亀裂などの方向要素データや岩相分布で不可欠となるカテゴリーデータへの適用拡張,マルチスケールモデリングや異なったスケールへの分解,ベイズの定理に基づく逆問題への共分散構造の応用,時空間多変量データへの適用,および2点から多点統計学への拡張に注目し,これらに適した手法についてまとめ,さらに空間モデリングの結果から地球科学・工学的に新しい知見が得られた例をもとに,手法の有用性を実証した.今後の課題の一例としては,物理・化学法則,地質プロセス,地球統計学的性質の3つを組み合わせた空間モデリング,大規模データセットとグロ-バルスケールへの応用,マルチスケールと不均質構造の考慮の深化をかかげ,これらに関する予察的な結果と試案について述べた.

システム・ソフトウエア開発
  • 中田 文雄, 田中 義人, 北村 良介, 酒匂 一成, 伊藤 真一
    原稿種別: システム・ソフトウェア開発
    2019 年30 巻4 号 p. 237-251
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    鹿児島大学・酒匂研究室では,利用者限定の「鹿児島版地盤情報データベースシステム(K-DBS)」を構築して運用している.本文作成段階で12,000本以上のボーリング交換用データに加え,様々な土質試験結果データなどの地盤情報が登録されている.K-DBSは,鹿児島平野などの地盤モデルの作成,あるいは「地圏シミュレータ」に代表される地盤解析シミュレーションの入力用地盤情報を収集・整理するために利用される機会が多い.地層の堆積環境を推定するために極めて重要な情報が観察記事として記載されていることが多いため,K-DBSの構築にあたり地質名(工学的地質区分名現場土質名)及び観察記事を対象とする文字検索が可能なように設計した.利用者が地盤解析などを実施する場合に,ボーリングデータなどのソースデータを必要とするため,K-DBSではソースデータをダウンロードできる機能を有している. 筆者等は「メッシュ管理型の地盤情報データベース(K-MDBS)」を試作した.これは,K-DBSの検索機能により利用者の手元に集めたボーリングデータを二次利用した成果である.メッシュ管理型であるため,ポイントデータであるボーリングとは異なって,建設主である事業者名と詳細な掘削位置を不鮮明にすることができる.ボーリングの数が最も多いと想定されるビルや工場などの非公開ボーリングを収集できる可能性が広がる.収集量が増えると言うことは,地層境界面を推定する際に発生する外挿誤差の縮減が期待でき,結果的に三次元地盤モデルの精度向上も期待できよう.

「情報地質」第30巻総目次
「情報地質」原稿整理カード、保証書、入会申込書、編集後記
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