汚染物質jの濃度をxj,その規制値をAjとして過濃度比rj=xj/Ajを定義したとき,μとr0を正の定数としてそれらの組合せで得られる数式Σrj1/μ=r01/μで,汚染物質間の相互作用を評価することができる.すなわち,相互作用はその程度をμ(相互作用指数)で表すことができ,1) μ→0ならば独立,2) 0<μ<1ならば独立と相補的の間(あるいは負),3) μ=1ならば完全に相補的であり,4) μ>1ならば相補的よりも強い(あるいは正である).この式に従うと,ダイオキシン類の環境基準は,ダイオキシン類に属す化学物質間の相互作用が完全に相補的であるという前提の下に与えられている.石綿と喫煙に関連する肺癌の死亡率rは,rAとrCをそれぞれ石綿のみおよび喫煙のみの場合の死亡率として, r={rA1/3+rC1/3}3なる式で与えられる.この式は,両方による死亡率(約600)が,石綿のみの場合(約50)の12倍で,喫煙のみの場合(約100)の6倍であることを示している.また,環境基準が汚染物質間の相互作用を考慮することなく決められると,危険な場合が安全と評価されたり,安全な場合が危険と評価されるリスクが生じることが,上述の式から導かれる.相互作用指数を定量的に与えることができないときは,相互作用が完全に相補的であると仮定することが妥当なようである.
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