露頭データベースの作成には露頭構造と層序の数学的表現が必要である.従来の研究で逆転のない地層群だけでなく貫入や断層を含む露頭の場合も露頭構造と層序はグラフ理論と二項関係を使用した構造グラフと層序グラフで数学的に表現できることを示した.本論文ではさらにレンズ層や同時異相を含む地質構造に対する露頭構造と層序を構造グラフと層序序グラフで表現する方法を提案する. 地質体間の接触関係を
xR#yと一般表現する.
R#=
R∨
I∨
F∨
L∨
Dであり,
xRyは空間的な上下関係,
xIyは貫入,
xFyは断層による切断,
xLyは包含関係,
xDyは同時異相の関係である.
xR#yが成り立つ順序対の集合を
R#として,構造グラフを
G=(
V,
R#, φ
V, φ
A)と再定義する.ここで,
Vは露頭を構成する地質体の集合であり,φ
Vはグラフの頂点に地質体の名称を対応付ける写像,φ
Aは順序対(
x,
y)に接触関係の名称(整合, 不整合, 貫入, 断層, 包含, 同時異相)を対応付ける写像である. レンズ層や同時異相を含む地質体の集合
Vは,形成時期が同じであるという同値関係
E*にもとづいていくつかの同値類の集まり
V/E*に類別できる.この商集合に対する層序グラフを
S=(
V/E*,
U*, φ
V, φ
A)と再定義する.ここで,φ
Vはグラフの頂点[
x]に代表元
xの名称を対応付ける写像,φ
Aは順序対([
x],[
y])に接触関係の名称(整合,不整合,貫入,断層)を対応付ける写像である.接触関係から推論した新旧関係
U*は半順序であり,
V/E*の各元を
CiU*
Cj ⇒
i ≦
jとなるように番号付けることができる.
U*が全順序になる場合,
C1,
C2, …,
Cm(
m:同値類の数)の並びは形成順序を表すので,層序は,
P’=(
C1, φ
A(
C1,
C2),
C2, …,
Cm-1, φ
A(
Cm -1,
Cm),
Cm)で表すことができる.
抄録全体を表示