比較生理生化学
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25 巻, 3 号
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総説
  • 吉岡 伸也
    2008 年 25 巻 3 号 p. 86-95
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/16
    ジャーナル フリー
      青いモルフォチョウを代表例とする構造色, その輝きは古くから科学者達の注目を集めてきた。光学顕微鏡で詳しい観察がされた時代の後, 20世紀中頃に電子顕微鏡が開発されると構造色研究は大きく進展した。輝きの背後にある緻密な微細構造が次々と明らかにされたのである。その構造には波長サイズの周期性が見られたため, 光の波としての性質である“干渉”が, 波長選択的な反射に寄与していることが確かになった。しかし, 自然界の構造色は, 微細構造だけで語ることはできない。もっと大きなサイズの形状や色素の併用など, 総合的な発色の工夫を生物は持っているのである。蝶や蛾の鮮やかな翅の発色の仕組みを紹介しながら, 構造色研究の現状と今後の方向性について考えてみたい。
  • 松浦 哲也, 加納 正道
    2008 年 25 巻 3 号 p. 96-105
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/16
    ジャーナル フリー
      動物行動の多くは,さまざまな環境要因によって決定される。また,それらのうちあるものは特定の刺激により発現し,しかも定型的である。コオロギは空気流刺激に対し,逃避行動をはじめとして飛翔や遊泳など,さまざまな行動を発現する。すなわち,発現する行動はコオロギのおかれた状況により大きく異なる。このことから,空気流刺激に対するこれらの行動は単なる反射ではないことがわかる。コオロギの腹部末端には尾葉と呼ばれる突起があり,尾葉上には多数の機械感覚毛が存在する。これら感覚毛の動きによって感覚ニューロンの活動へと変換された空気流情報は,腹部最終神経節内の複数の巨大介在ニューロンへと伝えられ統合される。巨大介在ニューロンの活動は,逃避行動の発現に重要な役割を担っている。本稿では,はじめにコオロギの逃避行動と尾葉上に存在する機械感覚毛および巨大介在ニューロンの反応特性について概説する。次に,巨大介在ニューロンの活動と逃避行動の関係,成長にともなうこれらニューロンの反応特性の変化について述べる。また,片側の尾葉を失ったコオロギの行動補償と,巨大介在ニューロンの可塑的性質に関する最近の知見も紹介する。コオロギの神経系の研究は,動物行動の神経基盤を理解する上で重要な手がかりになると考えられる。
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