比較生理生化学
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33 巻, 2 号
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総説
  • 北條 賢
    2016 年33 巻2 号 p. 60-67
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/27
    ジャーナル フリー
     生物はなぜ他個体に協力的な振る舞いを示すのか?この疑問は生物学の大きな命題の一つとして長年議論されている。相利共生は個体が互いに利益を与え合う生物種間の協力的な関係であり,関係を持つ個体同士が栄養や防衛,繁殖といった商品やサービスを交換し合う。しかしながら,相利共生には潜在的な利害対立が存在し,理論的には対価を支払わずに相手のサービスを搾取する「裏切り」が個体にとっての最大の利益をもたらす。そのため各個体は,パートナーの潜在能力・相手から受け取った直接的な利益・相手の過去の振る舞い・自らの社会的状況といった様々な要因に応じて,協力行動をとるか否かの意思決定を柔軟に下す必要がある。近年,送粉共生・防衛共生・掃除共生において,協力行動の生理的メカニズムに着目した研究が進み,神経修飾物質・神経ホルモンを介した協力行動の可塑性や連動性の一端が明らかにされつつある。今後,生態学的に妥当な条件下で協力行動が制御される生理学的メカニズムを明らかにしていくことで,相利共生を始めとする生物の協力行動の総合的な理解が深まることが期待される。
  • 宇田 幸司
    2016 年33 巻2 号 p. 68-76
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/07/27
    ジャーナル フリー
     タンパク質を構成するアミノ酸は,グリシンを除いて全てL体である。そのため,生物はアミノ酸の2種類の光学異性体のうちL体のみを選択的に利用していると長年考えられてきた。しかし,近年様々な動物に遊離型のD-アミノ酸が存在することが報告され,それらが生理機能をもつことが明らかになってきた。一方で,動物での遊離型D-アミノ酸の広範囲な分布とは異なり,D-アミノ酸の合成酵素であるアミノ酸ラセマーゼは,非常に限られた生物種でしか発見されていなかった。我々は,D-アミノ酸の存在同様,アミノ酸ラセマーゼも動物界に広く分布して存在するのではないかと考え,その遺伝子の探索を進めた。まず,哺乳類から報告されていたセリンラセマーゼのホモログ遺伝子を複数の動物門の生物から単離し,その酵素機能を確認した。その結果,動物に広く存在するセリンラセマーゼのホモログは,セリンラセマーゼ,またはアスパラギン酸ラセマーゼとして機能し,セリン/アスパラギン酸ラセマーゼファミリーを形成することがわかった。本稿では遊離型D-アミノ酸の分布と生理機能,セリン/アスパラギン酸ラセマーゼの構造と機能の進化について紹介する。
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