比較生理生化学
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26 巻, 1 号
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総説
  • 織部 恵莉, 吉原 千尋, 高橋 純夫, 竹内 栄
    2009 年26 巻1 号 p. 3-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
     動物の体色には驚くほどの多様性がみられる。これは,体色が自然淘汰の様々な淘汰圧を受ける,生態学的に重要な形質であることを反映している。脊椎動物では,メラニンを用いた体色発現システムが,隠蔽,警告,性的提示などの生存戦略に関与し,体の色や色パターンに多様性を生じさせている。このような体色の多様性を創出する分子機構とはどのようなものであろうか。体色の進化や多様性の創出にも遺伝的な背景があり,原因となる遺伝子変化がある筈である。近交系マウスの毛色遺伝学の発展は,体色発現システムに関わる遺伝子の詳細な情報を提供するとともに,体色発現システムの分子レベルでの比較生物学を可能にした。本稿では,鳥類の羽色発現システムの分子機構に関する最新の知見を紹介する。羽色遺伝子座遺伝子の同定と性格付けによって,メラニンを用いた体色発現システムが鳥類と哺乳類との間で基本的に保存されていること,個々の羽や羽装にみられる複雑かつ多彩な色パターン形成に,局所性メラノコルチンシステムが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。メラノコルチンシステム構成遺伝子の発現制御の変化が,哺乳類との体色の違いを創出する原因の一つになっている可能性が考えられる。
  • 松本 幸久, 佐藤 千尋
    2009 年26 巻1 号 p. 12-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
     「記憶」は移り変わる環境の中で動物が生き抜くために必要な脳神経系の基本機能である。一般的に記憶は保持時間の長さにより短期記憶と長期記憶に分類できる。これらの記憶の形成過程にはそれぞれ様々な生体分子が関与しており,便宜上それらを「記憶関連分子」と呼ぶ。 昆虫は神経系を構成するニューロン数が比較的少ないわりに高度な学習・記憶能力を保持しているため学習・記憶の研究材料として適している。なかでもショウジョウバエは記憶関連分子についての報告が最も多くなされている昆虫である。本稿ではショウジョウバエの嗅覚学習・記憶に異常を示す突然変異体を例に挙げながら,昆虫の様々な記憶関連分子について紹介する。
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