比較生理生化学
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23 巻, 2 号
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総説
  • 村田 芳博, 後藤 信太郎, 中村 整
    2006 年23 巻2 号 p. 2_3-2_10
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    われわれの研究グループではこの数年, クロキンバエ (Phormia regina) を材料に, 味細胞の受容機構の解明に取り組んできた。その過程において, 糖受容を担う味細胞 (糖受容細胞) の受容機構に一酸化窒素 (NO) が関与することを見出した。これは一般によく知られているNOの作動様式とは異なり, 味細胞で合成されたNOをその味細胞自身がセカンドメッセンジャーとして利用する仕組みであることを示唆している。クロキンバエの糖受容細胞ではcGMPがセカンドメッセンジャーとして機能することが従来から示唆されており, NOはcGMPと一連の反応経路を形成して機能している可能性がある。本稿では, われわれがこれまでに得たデータから, NO-cGMP系が糖受容細胞の受容機構に関与する可能性とその役割を考察する。
  • 櫻井 健志, 関 洋一, 西岡 孝明, 神崎 亮平
    2006 年23 巻2 号 p. 11-25
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    昆虫は自然界に存在する様々な匂いを識別するとともに, 種特異的なフェロモンを鋭敏かつ特異的に検出することができる。このような嗅覚情報は触角上の嗅感覚子内にある嗅覚受容細胞上で発現する嗅覚受容体およびフェロモン受容体により受容される。触角で受容された情報は, 嗅覚系一次中枢である触角葉で処理され, 上位中枢である前大脳 (キノコ体, 前大脳側部) に伝達され, さらなる処理をうけ最終的に特定の行動を引き起こす。近年, 昆虫の嗅覚受容体および性フェロモン受容体の単離と解析から, 一般臭の受容, 識別機構やフェロモンの特異的かつ高感度な受容機構が受容体レベルでわかってきた。さらに, 嗅覚受容細胞からの情報が触角葉でコード化され, 前大脳でデコードされる機構も明らかになりつつある。昆虫の嗅覚情報の受容・識別機構を理解することは, 動物の神経系が複雑な外界の情報を処理し, 環境に適応した行動を起こす仕組みの理解につながるだろう。
  • ―その進化―
    西野 浩史
    2006 年23 巻2 号 p. 26-37
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    広い動物界にあって聴覚を有し, これを同種間コミュニケーションに役立てている動物は前口動物の頂点に位置づけられる昆虫と, 後口動物の頂点に位置づけられる脊椎動物に限定される。系統的に大きく隔てられたこれらの動物が聴覚を発達させていることは, 収斂進化の典型例とみなされてきた。しかし近年の研究からは, 音を処理する感覚細胞は動物間共通の分子機構を持つことが明らかとなってきている。むしろ収斂進化のもっとも顕著な部分は音エネルギーを効率良く感覚ニューロンに伝えるための体構造の修飾にある。鼓膜がその良い例である。本稿では最近10年の聴覚研究の新発見を広くとりあげ, 昆虫の聴覚器官の進化について論じてみたい。
  • ―情報とは何か? 情報量とは何か? 生命現象との関係は何か?―
    第5回
    下澤 楯夫
    2006 年23 巻2 号 p. 38-43
    発行日: 2006/04/20
    公開日: 2007/10/05
    ジャーナル フリー
    Part 5. Actual measurement of the rate of information transmitted along cricket wind sensory neurons is shown. Input-output coherence is measured for the practical calculation of neuronal information, instead of signal-to-noise ratio. The measurement reveals that the sensory neuron can transmit information at the rate of 400 bit per second at its maximum. Energy threshold of the sensory neuron is determined to be at the order of kBT. Based on these measurements, entropy cost of information in living neuron is also estimated to be very close to the thermo dynamic limit of 0.7kB per bit of information.
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