比較生理生化学
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31 巻, 2 号
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総説
  • 市村 浩一郎
    2014 年 31 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 2014/06/24
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    排泄器官は多細胞動物の進化のごく初期に獲得されたと考えられ,その基本構築は動物間で保存されている。つまり,体液を濾過して原尿を生成する原尿産生装置と原尿を修飾・排出する調節導管からなる点で共通している。本総説では多細胞動物における原尿産生装置の進化を概観した上で,脊椎動物における糸球体の獲得と哺乳類における糸球体の高機能化について焦点を絞って述べてみたい。
  • 今野 紀文
    2014 年 31 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2014/06/24
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    脊椎動物にとって,身体に「水」を保持することは生命を維持する上で必要不可欠である。バソプレシン[vasopressin(VP)]/バソトシン[vasotocin(VT)]は,体内水分の喪失(脱水)に応答して脳下垂体後葉から放出され,腎臓において尿からの水再吸収を促進する抗利尿ホルモンとして働いている。この水を保持する作用は,V2受容体を介した水チャネル(AQP2)の発現促進によって発揮されるが,この仕組み(VP/VT-V2受容体-AQP2系)はこれまで両生類以降の動物群でしか見つかっておらず,原始的な両生類の陸上進出に伴って獲得されたと考えられてきた。しかし,最近,我々は両生類に最も近縁な魚類である肺魚にもこの仕組みが備わっていることを発見し,淡水中では機能しないが,夏眠と呼ばれる陸生化にともなって機能して,水の保持に働くことを明らかにした。また,肺魚と同じ肉鰭類のシーラカンスにも,この分子基盤が備わっていること,条鰭類や軟骨魚類のゲノムにはAQP2やAQP0p(四肢動物AQP2の祖先遺伝子)が存在していないことから,VP/VTによる抗利尿作用は原始肉鰭類を起源とし,魚類の水中から陸上への進出に重要な役割を果たしたことを示した。さらに,四肢動物とは系統が異なる条鰭類にもV2受容体が存在していることを発見し,その機能について調べた。本稿では, V2受容体を介したVP/VTの浸透圧調節作用が脊椎動物の進化や環境適応に果たした役割について紹介する。
  • 木村 有希子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2014/06/24
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    近年開発された光遺伝学は,特定の神経細胞の活動を光照射によって制御することを可能にした。この革新的な技術は,神経回路機能の理解を進めるための強力なツールになる。光遺伝学は様々な動物種で神経回路機能の解析に用いられ,既に多くの成果を上げているが,光遺伝学を実際の動物に適用する技術は発展途上である。ゼブラフィッシュは光遺伝学を用いた神経回路の解析に適した特徴を持つ実験動物である。ゼブラフィッシュは,分子生物学的操作が容易なモデル動物であり,幼魚の体は小さく透明であるため,光遺伝学的な実験操作がしやすい。また,脊椎動物として比較的単純な神経回路をもち,シンプルな行動をとるので,行動を制御する神経回路の解析にも適している。本稿では光遺伝学を動物個体に適用するための一例として,ゼブラフィッシュの光遺伝学的な解析手法の概説を行う。また,具体例として,筆者らによるゼブラフィッシュ遊泳行動に関わる後脳神経細胞の光遺伝学を用いた解析を紹介する。
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