比較生理生化学
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26 巻 , 4 号
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総説
  • 定本 久世
    2009 年 26 巻 4 号 p. 163-168
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
      軟体動物腹足類(Gastropoda)は,神経細胞サイズが大きく,中枢神経系に含まれる細胞数も少ない。このため,古くから特定行動に関わる神経回路研究に利用されてきた。本総説では,長期記憶の基となるシナプス可塑性に関わる分子メカニズムについて,ヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)の味覚嫌悪学習におけるこれまでに得られた結果をまとめた。
      学習による長期記憶形成では,遺伝子発現をともなう新しいタンパク質合成が起こり,転写調節因子CREB1を含むスイッチングメカニズムが働くことが示されている。まず,筆者らはモノアラガイの味覚嫌悪学習で鍵となるニューロンにおいてCREB1依存性のシナプス可塑性メカニズムが存在することを生理学実験により確認した。次に,モノアラガイ中枢神経系内において,遺伝子発現を促進するCREB1とともに,抑制因子として働くCREB2および抑制型CREB1アイソフォームが常に存在することを示し,各CREB1アイソフォーム間相互作用についてリアルタイム解析に成功した。さらに,味覚嫌悪学習の鍵となるニューロンにおいてCREB2遺伝子発現が学習後に変化することを明らかにした。本稿では,他の動物門でも保存されているであろう転写調節機構を中心として報告をまとめ,CREBによる伝達物質放出量の調節メカニズムに関して現在得られている結果,また軟体動物における遺伝子情報の整備状況について紹介する。
  • 知見 聡美
    2009 年 26 巻 4 号 p. 169-174
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/05
    ジャーナル フリー
      マウスにはミュータントやトランスジェニックが多数存在し,これらの動物を行動学的,電気生理学的に解析することは非常に有用であるが,マウスにおける電気生理学的解析はin vitro におけるスライス実験がほとんどであり,個体そのものからニューロン活動を記録した例は非常に少ない。大脳基底核疾患の1つであるジストニアは,筋収縮が不随意に起こることによって,姿勢の異常や不随意運動が生じる難病であるが,解析を行うために適したモデル動物が存在しなかったこともあり,その病態についてはほとんど明らかにされていなかった。近年,ヒト全身性ジストニアの原因遺伝子を組み込むことによって,ジストニアのモデルマウスが作製された。私達は,マウスのニューロン活動を覚醒条件下で記録するシステムを確立し,このモデルマウスの神経活動を解析した。このマウスでは,大脳基底核の出力部である淡蒼球内節において,ニューロンの活動低下と大脳皮質刺激に対する長い活動抑制を伴う異常な応答パターンが観察され,これらがジストニア症状の発現に関与していることが示唆された。さらに実験を進めることにより,ジストニアの正確な病態を明らかにし,効果的な治療法の開発にも貢献できると期待される。
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