比較生理生化学
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30 巻 , 3 号
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総説
  • 渡邉 英博
    2013 年 30 巻 3 号 p. 89-105
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    夜行性で雑食性の不完全変態昆虫であるワモンゴキブリ(Periplaneta americana)は高い匂い識別能力と匂い学習能力を備えた昆虫である。また,その実験学的な扱いやすさから過去四半世紀の間,嗅覚の神経機構を探る電気生理学研究や解剖学研究,行動実験に広く用いられてきた。ワモンゴキブリは二本の鞭状の長い触角の表面に存在する,三種類の形態学的に異なる嗅感覚子によって,外界の匂い分子を取得する。これらの嗅覚情報は一次嗅覚中枢である触角葉を構成する205個の糸球体の時空間的な応答パターンに符号化され,高次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉で異種感覚情報や記憶情報と統合される。本稿ではワモンゴキブリの嗅覚情報処理機構について触角嗅感覚系での嗅覚受容から,触角葉での一般臭の匂い情報処理機構について報告する。続いて,高次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉で,これらの匂い情報がどのように処理されているのかを,最近の解剖学研究を中心に紹介する。現在,昆虫を用いた嗅覚情報処理機構の研究は遺伝学を中心にモデル生物であるショウジョウバエを中心にミツバチ,カイコガなどで目覚ましい発展を遂げている。これら完全変態昆虫の嗅覚系とワモンゴキブリのような不完全変態昆虫の嗅覚系を比較し,相同点,相違点を見出すことにより,昆虫の脳進化を理解する一助になるだろう。
  • 朝野 維起
    2013 年 30 巻 3 号 p. 106-114
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    黒〜茶系色素であるメラニンは,地球上の生物に極めてありふれた存在である。髪の毛や鱗・皮膚など,我々脊椎動物の体色形成に関わるほか,植物や原生動物でも黒色色素の合成が観察される。また,本総説で説明する昆虫について見てみると,アリやクロアゲハ・カブトムシなどの色からも明らかなように,メラニンの合成は特に珍しいものではない。しかし,種々の生物がつくるメラニンは,一見すると同じ物体であるかの様に見えつつも,個々の生物に特有の合成経路・合成酵素が存在する。つまり,進化の過程に於いてそれぞれの生き物が独自にメラニン合成能を発達・進化させてきたと考えられる。この総説では昆虫のメラニン合成系について論ずるが,特に我々が直接目にする「昆虫の体そのもの」である外骨格内の酵素群について説明する。ドーパやドーパミンなどのフェノール性基質の酸化反応を触媒する含銅酵素を中心に,それらの基質合成系などにも触れる。また,ヒトなどとの違いについて説明するとともに,その進化学的な意義について議論したい。
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