比較生理生化学
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36 巻 , 3 号
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総説
  • 渕側 太郎
    原稿種別: 総説
    2019 年 36 巻 3 号 p. 155-165
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    バクテリアから哺乳類に至るまで多くの生物が体内の生理的過程や行動に24時間周期の環境変化に対応した周期性,すなわち概日リズムを示す。社会性昆虫は,地球上で最も繁栄している分類群のひとつであり,真社会性という際立った生活形態を持つことからも,生理学的にも生態学的にも長年注目されている。本稿では私の研究対象であり労働の分業や発達したコミュニケーションといった高度な社会性を示すミツバチを中心に,社会性昆虫の概日リズムについて解説する。概日リズムは概日時計と呼ばれる生理的仕掛けによって生み出された時間情報に基づいて内因的に形成される。本稿では,まず,社会性昆虫に見られる概日行動リズムの特徴について,特に個体間の概日行動リズムの同調現象,および行動リズムが消えたり現れたりする現象である概日リズム可塑性にについて解説する。次に,解析が進んでいるショウジョウバエでの例を参考にしつつ,社会性昆虫を含む昆虫全般の概日時計の分子的な機構,および概日時計機能を担うとされる脳内における時計細胞の解剖学的な特徴について解説する。これらを通して,社会性昆虫に見られる特徴的な概日行動リズムの現象とその背景にある生理的な仕組みを概観する。

  • 井上 武
    原稿種別: 総説
    2019 年 36 巻 3 号 p. 166-174
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    動物は,外部からの刺激がない環境でも不規則に運動することがある。この自発的に起こるゆらぎは,環境応答行動や指向性運動の正確さを妨げると考えられてきたため,その役割はあまり注目されてこなかった。しかし近年,プラナリアなどを用いた解析から自発的な運動が動物行動の適応性に重要であることが明らかになった。プラナリアは,感覚器官を介して感知した様々な環境情報を脳に集約することで適切な応答行動をとる。例えば,光刺激を頭部にある左右1対の眼で受容し,受け取った信号を脳に送って処理することで光から逃避する行動を示す。プラナリアの光応答行動を制御する機構はすでに十分明らかにされていると考えられていたが,近年,不規則に頭部を左右に振る自発振動が光の方向を正確に認識して効率的に逃避するために不可欠であることが明らかになった。また,自発振動の角度はプラナリアの眼の傾きの角度と相関していたことから,自発振動は眼の形態と密接な関係があることも分かった。さらに,自発振動は落ち葉や石の窪地に隠れるための行動にも必要であるだけでなく,その角度は光応答行動と隠れ行動の両方にとって最適な角度になっていることも明らかになった。これまでノイズと考えられていた自発的に起こる不規則な運動は,従来考えられてきた以上に,動物行動の適応性や効率のために巧みに調節されていることが見えてきた。

  • 永田 崇, 寺北 明久
    原稿種別: 総説
    2019 年 36 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    動物は環境の光から多くの情報を得るために,光受容タンパク質オプシンを使ってさまざまな光受容を行っている。 オプシンは吸収波長特性や生化学的性質などにおいて多様な特徴を示すので,動物の光受容の仕組みを理解するためにはオプシンの性質を知ることが重要である。特に視覚の発達した動物においては,オプシンの吸収波長特性が,眼や網膜の光学的な性質とも関連しながら視覚機能において重要な意味を持つ。筆者らは視覚が発達し,特殊な構造の網膜を持つハエトリグモの複数のオプシンについて,それぞれの吸収波長特性や機能について解析を行ってきた。網膜に発現する1種類のオプシンの吸収波長特性は,網膜の構造との関係によりピンぼけを生じさせ,それによって奥行き知覚のメカニズムを支えていることが示唆された。また,そのような吸収波長特性を生じさせる分子メカニズムにおいて,発色団レチナールの近傍に存在する水素結合系が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。本稿では,このようなオプシンの吸収波長特性の生理的意義や波長制御について筆者らの研究成果を中心に紹介する。

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