比較生理生化学
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28 巻 , 2 号
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総説
  • 坂井 貴臣
    2011 年 28 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
     神経遺伝学は動物の本能行動の研究に利用されている。特定の行動を支配する遺伝子を同定することができれば,その行動にかかわる神経回路の同定やその生理学的メカニズムの解明に役立つ。キイロショウジョウバエは古くから行動実験に利用されてきたが,その中でも特に性行動の研究が盛んに行われ,多くの研究者によって雌雄の複雑な性行動が詳細に報告されてきた。また,分子生物学的解析が容易なことから,性行動にかかわる多くの遺伝子が同定されてきた。オスの性行動の研究では遺伝子を同定するにとどまらず,性行動を制御する脳神経細胞・回路が同定され,さらにそれらの神経活動と性行動の関係も明らかにされつつある。一方,未交尾メスの性行動にかかわる遺伝子も報告されているものの,メスの性行動を制御する脳機構はいまだ不明な点が多い。本稿では,キイロショウジョウバエメスの性行動の研究手法とこれまでに報告された遺伝子や神経遺伝学的研究を紹介するとともに,これまでに得られた知見からその分子・生理機構について議論する。
  • 富岡 征大
    2011 年 28 巻 2 号 p. 231-239
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
     線虫Caenorhabditis elegansはわずか302個のコンパクトな神経系を持つ。その構造は脊椎動物や昆虫などの脳と大きく異なるが,そこで働く神経回路の様式や分子経路は種を超えて共通したものが多くみられる。線虫は,餌の匂いへの誘引行動や侵害刺激からの忌避行動など,様々な外部刺激に対する応答を示す。さらに,個体群密度や餌の有無など複数の情報を統合し記憶することで,状況に適した行動パターンを選択する。同種他個体から放出される線虫フェロモンにより個体群密度の認識がなされており,フェロモンの作用は幼虫期の発生や,社会性行動,学習など多岐に渡る。学習により後天的に獲得される行動には,インスリン様シグナル伝達やモノアミンシグナル伝達などの種を超えて保存された重要な分子経路が働く。線虫は,遺伝学的解析に有用なモデル生物として古くから用いられてきたが,近年ではそれに加えて神経活動のイメージングによる生理学的な解析も広く行われている。本稿では,線虫の神経系の構造を概説し,化学物質に対する感覚応答や記憶学習を制御する神経回路と分子機構について紹介したい。
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