ヘルスプロモーション理学療法研究
Online ISSN : 2187-3305
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10 巻, 2 号
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原著
  • 古後 晴基, 山下 裕, 村田 伸, 鳥山 海樹, 村田 潤, 東 登志夫
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    本研究は,圧痕深度評価法の測定値で圧痕性浮腫の病態を識別するカットオフ値を得ることを目的とした。圧痕性浮腫ありと診断され,症状が安定している患者65名(男性39名・女性26名)と,地域の体力測定会に任意で参加した一般健常者35名(男11名,女性24名)を対象とした。被験者に足底を床面に接地した端座位にさせて,第3中足骨骨頭の足背部の圧痕深度を圧痕深度測定機器で左右測定した。統計解析は,圧痕性浮腫の有無を従属変数,圧痕深度値,性別,年齢,身長,体重,Body Mass Index(BMI)を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,Receiver Operating Characteristic Curve(ROC 曲線)からカットオフ値を求め,感度・特異度を算出した。その結果,圧痕性浮腫の有無に影響する因子として圧痕深度値が抽出され,オッズ比は135.0であった。ROC 曲線から圧痕深度値のカットオフ値は2.25,感度は0.83,特異度は1.00の値が算出された。本研究より,圧痕深度評価法は,圧痕性浮腫の有無を識別可能で有用な評価法であり,その病態識別値は2.25mm であることが示唆された。

  • ―術前項目による検討―
    廻角 侑弥, 久保 峰鳴, 幸田 仁志, 福本 貴彦, 今北 英高, 藤井 唯誌, 稲垣 有佐, 田中 康仁
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    [目的]人工膝関節全置換術後患者の杖歩行が自立するまでの日数(歩行自立日数)に影響を及ぼす要因を術前項目より検討した。[対象]片側の人工膝関節全置換術を施行した99名とした。[方法]測定項目は歩行自立日数,自己効力感,痛みの破局的思考,安静時痛,歩行時痛,膝関節屈曲可動域および伸展可動域,等尺性膝伸展筋力,歩行速度とした。統計解析はピアソンの相関係数を用いて歩行自立日数との関係性を分析し,また歩行自立日数を目的変数,他項目を説明変数とした重回帰分析を行った。[結果]歩行自立日数は,自己効力感(r=-0.40),痛みの破局的思考(r=0.27),等尺性膝伸展筋力(r =-0.24),歩行速度(r=-0.25)との間に有意な相関関係を認めた。重回帰分析の結果,歩行自立日数に影響を及ぼす要因として自己効力感のみが抽出された。[結語]人工膝関節全置換術後の杖歩行の自立には筋力や歩行速度だけでなく,自己効力感が影響すると示唆された。

  • 村田 伸, 合田 明生, 中野 英樹, 安井 実紅, 高屋 真奈, 玻名城 愛香, 上城 憲司
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 2 号 p. 67-71
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,デイサービスを利用している34名の女性高齢者を対象に,30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec Chair Stand test; CS-30)と虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(10-sec Chair Stand test for Frail Elderly; Frail CS-10)を併せて行い,大腿四頭筋筋力とともに各種身体機能評価の測定値との相関分析から,デイサービス事業所で実施しやすい下肢機能評価法を検討することである。相関分析の結果,大腿四頭筋筋力と有意な相関が認められたのは握力のみであったが,CS-30とFrail CS-10はともに握力・最速歩行時間・Timed Up Go Test·Trail making test Part A との間に有意な相関が認められた。さらに,Frail CS-10のみ通常歩行時間とも有意な相関が認められた。これらの結果から,特別な機器を必要とせず,簡便に短時間で実施できるFrail CS-10は,デイサービス利用高齢者の歩行能力や動的バランスを反映する下肢機能評価法であることが示唆された。

  • 徳永 智史, 堀田 和司, 藤井 啓介, 岩井 浩一, 松田 智行, 藤田 好彦, 若山 修一, 大藏 倫博
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    【目的】地域在住高齢者におけるアパシーの身体活動量に及ぼす影響を明らかにする。【対象】2017年7月に茨城県笠間市で行われた長寿健診に参加した地域在住高齢者328名とした。【方法】アパシー評価としてやる気スコア,身体活動量評価としてPhysical Activity Scale for the Elderly,抑うつ評価としてGeriatric Depression Scale 短縮版(GDS‐15),ソーシャルネットワーク評価としてLubben Social Network Scale 短縮版(LSNS‐6),身体機能評価として握力,5回椅子立ち上がり,開眼片足立ち,Timed up and go test,長座体前屈,認知機能評価としてファイブ・コグ,Trail Making Test(TMT)を実施した。【結果】アパシーのみ呈した者の割合は23.2%,抑うつのみ呈した者は12.2%,アパシーと抑うつを合併していた者は15.2%であった。重回帰分析の結果では,身体活動量に対してやる気スコアやLSNS‐6,長座体前屈,ファイブ・コグ,TMT が有意に影響を及ぼしていた。GDS‐15の有意な影響は認められなかった。【結語】アパシーと抑うつは独立して存在し,身体活動量には社会交流や身体機能,認知機能などの多要因が影響しているが,アパシーもその一つである可能性が示された。

短報
  • 相馬 正之, 村田 伸, 大田尾 浩, 甲斐 義浩, 中江 秀幸, 佐藤 洋介, 村田 潤
    原稿種別: 短報
    2020 年 10 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    [目的]本研究は,適切な足趾把持力の測定肢位を検討するため,低座面高での端坐位姿勢が足趾把持力と足趾把持力発揮時の筋活動量に及ぼす影響を検討した。[対象・方法]健常成人女性20名を対象とした。足趾把持力の測定肢位は,股・膝関節90度屈曲位座位姿勢および20cm 台に着座した低座面高での端坐位姿勢の2条件とした。測定項目は,足趾把持力および足趾把持力発揮時の大腿直筋と大腿二頭筋長頭および前脛骨筋と腓腹筋内側頭の筋活動量を算出した。[結果]足趾把持力は,股・膝関節90度屈曲位座位姿勢に比べ低座面高での端坐位姿勢が有意に低値を示した。また,低座面高での端坐位姿勢における足趾把持力発揮時の筋活動は,大腿直筋および前脛骨筋の筋活動が,股・膝関節90度屈曲位座位姿勢に比べ有意に高値を示した。[結語]このことから低座面高での端坐位姿勢は,足趾把持力発揮時に拮抗筋の筋活動量が増加し,筋力発揮を妨げることで,足趾把持力が低値を示すことが示唆された。

  • 八谷 瑞紀, 村田 伸, 大田尾 浩, 熊野 亘, 中村 正造
    原稿種別: 短報
    2020 年 10 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,外来通院中のパーキンソン病患者18名を対象に,5m 歩行テスト,Timed Up & Go Test(TUG)および10m 障害物歩行の相対信頼性と絶対信頼性を検討することである。相対信頼性は級内相関係数(ICC),絶対信頼性はBland-Altman 分析を用いて検討した。その結果,5m 歩行テスト,TUG,10m 障害物歩行のICC は,それぞれ0.97,0.94,0.89であった。5m 歩行テストおよびTUG は系統誤差を認めず,最小可検変化量は0.6秒および1.8秒であった。10m 障害物歩行は加算誤差が確認されたため,誤差の許容範囲を算出したところ0.1~2.9秒であった。これらの知見から,パーキンソン病患者の5m 歩行テスト,TUG には高い信頼性があることが明らかとなった。一方,10m 障害物歩行の相対信頼性は高いものの,絶対信頼性では加算誤差が確認され,1回目よりも2回目の測定値が速くなる傾向が示された。

活動報告
  • 松野 悟之, 川瀬 博之, 岡田 直子, 筧 浩明, 中川 恭依, 浜岡 克伺, 中塚 貴之
    原稿種別: 活動報告
    2020 年 10 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2020/07/22
    公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    本研究は要介護高齢者の30‐second chair-stand test(CS‐30)と身体機能との関連を検討した。対象は通所介護施設に通所する要介護高齢者44名とした。身体機能は握力,大腿四頭筋筋力,足趾把持力を計測した。CS‐30との関連性を検討するために,要介護度を統制変数とした偏相関解析およびCS‐30を従属変数とした重回帰分析を実施した。偏相関係数の結果,大腿四頭筋筋力がCS‐30と有意な相関が認められた。重回帰分析の結果,CS‐30に独立して関連する身体機能要因として大腿四頭筋筋力が抽出された。通所介護施設に通所する要介護高齢者においてCS‐30は大腿四頭筋筋力と関連していることが示唆された。通所介護施設では下肢筋力を定量評価できる機器を所有していない施設もあるため,専用の機器を使用せず簡便に大腿四頭筋筋力を反映するCS‐30は通所介護施設にとって有用な指標になると考える。

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