本研究の目的は,骨量と筋量がともに低下する女性高齢者の運動機能の特徴を縦断的に検討することである。2018年と2019年に開催された体力測定会にともに参加した65歳以上の女性高齢者105名を解析対象とした。筋量低下の基準は四肢骨格筋指数が5.7㎏/㎡未満とし,骨量低下の基準はTスコアが-2.5以下とした。1年後の身体組成の状態から骨量・筋量低下群,筋量のみ低下群,骨量のみ低下群,正常群の4群に分け,ベースライン時の運動機能を比較した。さらに,身体組成別の4群を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を実施した。その結果,骨量・筋量低下群はBody Mass Index(BMI),握力,通常歩行速度が有意な影響要因として抽出された。これらのことから,骨量と筋量がともに低下してしまう女性高齢者は,BMI が低いこと,握力が弱いこと,通常歩行速度が遅いことに影響を受けることが示唆された。
本研究では介護予防事業において,特別な機器を使用せず実施できる測定項目から妥当性のある体力年齢を見極めることを目的とした。対象は,介護予防事業に参加登録している60歳以上で80歳未満の女性高齢者73名とした。体力年齢の算出には握力,長座体前屈距離,開眼片足立ち保持時間,30秒椅子立ち上がりテスト,Timed Up & Go Test を用いた。その他,体力年齢の妥当性を検討するため,身体組成,大腿四頭筋筋力,歩行速度,認知機能テストとしてMini-Mental State Examination とTrail making test-A を測定した。 統計処理は,実年齢および体力年齢と各測定項目との相関を検討した。さらに,体力年齢が実年齢よりも高い者と体力年齢が実年齢よりも低い(若い)の者に分類し,各測定値を対応のないt 検定を用いて比較した。結果,体力年齢は高齢者の全般的な体力や心身状態を反映する指標であることが確認され,体力年齢は高齢者自身の体力レベルの理解には分かりやすく有効な手段の1つであることが示された。