本研究目的は地域在住高齢女性を疼痛の部位数によって分類し,比較することで,疼痛を有する高齢者の特徴を明らかにすることである。対象は,186名の高齢女性(平均年齢72.5±5.9歳)とした。測定は,身体機能および精神心理機能を調査した。対象者を疼痛0箇所,1箇所,2箇所以上で分類を行い,一元配置分散分析後,多重比較Tukey 法を用いて比較した。その結果,疼痛部位数が2箇所以上群は0箇所群あるいは1箇所群と比べて大腿四頭筋筋力体重比,上体起こし回数,片足立ち保持時間が有意に低く,Timed Up and Go test,睡眠不良状態,主観的不健康感は有意に高かった。疼痛の部位数0箇所群と1箇所群の間には,有意差を示した項目はなかった。以上のことから,疼痛の部位数という側面を考慮することで,疼痛を有する高齢者の特徴をより詳細に捉えることが可能なことを明らかにした。
【目的】本研究では,Navicular Drop test(ND test)の妥当性を明らかにする目的で,ND test の結果とND test 実施中に生じる足部運動との関連性を検討した。【対象と方法】健常成人12名を対象とした。ND test で測定する距骨下関節中間位での座位~安静立位に移行する際の舟状骨高の低下量に加え,前足部および後足部の三平面状における角度変化量を測定した。これらの測定には三次元動作解析装置を用いた。舟状骨高の低下量と各運動方向における足部セグメント間の角度変化量との関係をPearson の相関係数を求めて検討した。【結果】舟状骨高の低下量と有意な相関が認められたのは前足部に対する後足部の回内角度(r=0.63,p=0.03)であった。【結語】本研究の結果は,後足部回内アライメントの評価方法としてのND test の妥当性を支持するものであると考える。
本研究は,若年者と高齢者を対象に安静立位,および認知課題有無の2条件におけるCross test の重心動揺を比較・検討した。若年群(19名)と高齢群(16名)の測定値を比較した結果,安静立位の総軌跡長が若年群に比べて高齢群の方が有意に大きかった。Cross test では,群と認知課題の有無を要因とした二元配置分散分析の結果,足長に対する前後方向の重心移動能である%FB と足幅に対する左右方向への重心移動能である%LR がともに群間に有意な主効果を認めた。%FB は群間と認知課題条件間で交互作用が有意であり,下位検定の結果,高齢群のみ,認知課題無しに比べて認知課題有りの%FB が有意に低値であった。本研究結果から,若年者に比べて高齢者の安静立位は不安定性であり,随意的重心移動能力も低いことが示唆された。また,認知課題を付加したCross test の結果から,若年者に比べて高齢者は前後の随意的重心移動能力に認知課題負荷の影響を受けやすいことが示唆された。