本研究の目的は,男性高齢者による床からの立ち上がり動作について,立ち上がり動作パターンと身体機能の特徴を検討することである。対象は,60歳以上の男性高齢者49 名(平均年齢74.8±5.7歳)とした。床からの立ち上がり動作パターンを分類し,パターン別に年齢,BMI,上下肢・体幹の筋力,柔軟性,立位バランス能力,歩行能力を比較した。また,床からの立ち上がり所要時間と各種身体機能との関連を検討した。その結果,床からの立ち上がり動作は,?両手両足を床につけた高這い位を経て立ち上がるパターン,?片膝立ちを経て立ち上がるパターン,?しゃがみ位から立ち上がるパターンの3つに分類され,3群別のBMI と床からの立ち上がり所要時間に有意な群間差が認められた。多重比較検定の結果,BMI と床からの立ち上がり所要時間は,高這い位を経て立ち上がるパターン群が,しゃがみ位から立ち上がるパターン群と比較して,BMI は有意に高く,床からの立ち上がり所要時間は有意に長かった。一方,床からの立ち上がり所要時間は,身体の柔軟性を除く全ての項目と有意な相関を認めた。これらの知見から,男性高齢者の床からの立ち上がり動作パターンは,体格の影響を受けること,また,床からの立ち上がり所要時間を計測することで,詳細な体力テストが必要か否かのスクリーニングテストとして使用できる可能性が示された。
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