【目的】超音波による大腿部骨格筋評価と転倒経験との関連性を明らかにすることである。【方法】152名の地域在住高齢者を対象とした横断研究である。年齢,性別,BMI,運動機能,二重課題,注意機能,大腿部筋厚と筋輝度,等尺性膝伸展筋力を評価した。過去1年間の転倒の有無を調査して,二項ロジスティック回帰分析で転倒関連因子を抽出した。【結果】開眼片脚立ち時間(オッズ比3.01)とDual Task Timed Up and Go Test(オッズ比3.38)が転倒関連因子として抽出された。【結論】超音波で評価した大腿部骨格筋の量的,質的指標は転倒経験に対しては独立した影響要因ではなかった。今回の結果からは,自立歩行にて生活している地域在住高齢者においては,立位姿勢保持能力や二重課題遂行機能が転倒経験に影響する要因である可能性が示唆された。
【目的】本研究の目的は,介護予防通所リハビリテーションでの運動介入による歩行能力の経時変化について確認することである。【対象と方法】当法人の介護予防通所リハビリテーションを6ヵ月間以上連続して利用した18名を対象とし,10m 歩行時間およびTimed up and go test の結果について,6ヵ月間の運動介入に伴う経時変化を後方視的に分析した。【結果】10m 歩行時間は介入前に比べ,介入1ヵ月後では有意に速くなっていた。Timed up and go test は介入前および介入1ヵ月後に比べ,介入2ヵ月後では有意に速くなっていた。いずれの項目についても,介入2ヵ月後以降の変化には統計学的な有意差を確認することができなかった。【結語】本研究の結果から,介護予防通所リハビリテーションでの運動介入は,2ヵ月間で10m 歩行時間とTUG を指標とした歩行能力を向上させる可能性が示唆された。
本研究では要支援者(31名)と軽度要介護者(18名)の身体機能および精神・認知機能を比較した。身体機能評価は,握力,30秒間椅子立ち上がりテスト,開眼片脚立位時間,歩行速度を測定した。認知機能の評価には,mini-mental state examination とtrail making test- part A を実施し,精神機能の評価には抑うつ尺度(5-item geriatric depression scale)を用いた。その結果,身体機能と精神機能の評価項目においては,要支援者と軽度要介護者では有意差は認められなかった。しかし認知機能に関しては,要支援者の方が軽度要介護者より有意に良好な結果を示した。両群ともに転倒リスクの高い高齢者であることから虚弱高齢者においては転倒予防と認知機能の維持に努めることによって,介護状態の重度化を予防できる可能性があると考える。