[目的]妊娠・出産に関連する骨盤痛が妊娠中・産後女性の歩行に及ぼす影響を,文献レビューにより明らかにすることを目的とした。[方法]6つの文献データベースとハンドサーチにて検索した論文について,採択基準(妊娠期または産後の骨盤痛を有する女性の歩容の特徴)をもとに,該当論文を1)歩行速度,2)歩隔・歩幅・歩行周期,3)骨盤-胸郭,体幹,股関節,COP の3つの項目について整理した。文献の評価にはRisk of Bias Assessment Tool for Nonrandomized Studies (RoBANS)を使用した。[結果]採択論文は6編であった。6編より,妊娠中に骨盤痛があると歩行速度は低下し,歩幅は短く,両脚支持期の延長を認めたが,歩隔には有意差を認めなかった。胸郭・骨盤回旋の動きは増大し,骨盤の前後傾と股関節伸展可動域は減少した。[結論]妊娠中に骨盤痛があると顕著な歩容の変化が生じる。一方,産後における骨盤痛の歩容への影響は不明である。
本研究の目的は,高齢者の下肢筋力評価法として開発された30秒椅子立ち上がりテスト(30‐second chair stand test; CS‐30)が,小学校低・中学年を対象としても有用か否かを検討することである。対象は1年生から4年生までの小学生157名(男子86名,女子71名,平均年齢は7.5±1.2歳)であり,CS‐30と握力の他,身長,体重,上体起こし,長座体前屈距離,反復横跳び,立ち幅跳び,体支持持続時間を測定して検討した。その結果,長座体前屈距離に性差が認められたが,その他の項目に性差は認められなかった。相関分析の結果,CS‐30は身長や体重とは有意な相関は認められなかったが,今回測定したすべての身体機能測定値との間に有意な相関が認められた。これらの知見から,特別な機器を必要とせず,簡便に実施できるCS‐30は,小学校低・中学年の体力測定として実施する意義が示された。
本研究は,股関節開排筋力および大腿四頭筋筋力と各種身体機能との関連を分析し,股関節開排筋力測定の有用性を検討することを目的とした。地域在住高齢者274名(男性52名,女性222名,平均年齢74.4±5.2歳)を対象に,股関節開排筋力,大腿四頭筋筋力,足趾把持力,握力,上体起こし回数,長座体前屈距離,開眼片足立ち保持時間,Timed Up &Gotest(TUG),筋肉量,下肢筋肉量を計測した。分析の結果,股関節開排筋力と大腿四頭筋筋力は,男性ではともに筋肉量と下肢筋肉量を除くすべての項目と有意な相関が認められ,女性では長座体前屈距離と開眼片足立ち保持時間を除くすべての項目と有意な相関が認められた。これらの知見から,股関節開排筋力測定は大腿四頭筋筋力と同様に,高齢者における体力全般を表す指標となりうることが示された。
本研究の目的は,介護度別に地域在住後期女性高齢者の身体機能,Activities of Daily Living(ADL)および認知機能を比較検討し,その特性を明らかにすることである。対象者は地域在住後期女性高齢者で,自立群20名,要支援1・2群19名,要介護1・2群21名の計60名とした。評価項目は,身体機能(筋力,バランス能力,歩行能力)およびADL,認知機能,を測定し比較検討した。結果,10-sec Chair Stand test(CS-10)は自立群が要支援群,要介護群よりも有意に高かった。TimedUpandGotest(TUG)は自立群が要介護群より有意に高く,重心動揺測定では,自立群と要支援群がそれぞれ要介護群よりも有意に低かった。また,身体機能について自立群は,要支援群・要介護群と比較し有意に高いことが確認されたが,要支援群と要介護群の身体機能に静的バランス以外は有意な差はみられず,静的バランスが介護度に影響している可能性が示唆された。
[目的]立位での足指圧迫力の有用性を明らかにするために転倒リスクとの関係を検討した。[対象]要介護高齢者75名とした。[方法]測定は,立位での足指圧迫力,簡易転倒スコア(fall risk index : FRI‐5),基本チェックリストに加え各身体機能とした。FRI ‐5から転倒リスクあり群となし群に分け,転倒リスクの有無に関係する要因を検討した。また,転倒リスクを判別するカットオフ値を求めた。[結果]転倒リスクあり群は42名,なし群は33名であった。転倒リスクに関与する因子は,立位での足指圧迫力,基本チェックリスト,mini mental state examination(MMSE)であった。転倒リスクの有無を判別する立位での足指圧迫力のカットオフ値は23.6kgf であった。[結語]立位での足指圧迫力は,要介護高齢者の転倒リスクの判別能を有する評価法である可能性が示された。