日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
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12 巻, 2 号
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  • 石原 孝子
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 7-14
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    肥満の中でも腹腔内脂肪の貯留による肥満は内臓脂肪型肥満と呼ばれ,動脈硬化性疾患を惹起するリスク要因のひとつである.内臓脂肪の蓄積は生活習慣の結果であると考えられ,具体的な生活習慣を明らかにすることが重要である.そこで,腹部CT検査を含む人間ドック受診者3,659名を対象に,まず年齢・性別と内臓脂肪面積との関連を検討し,対象を40〜60代の中高年に絞って(男性1,677名,女性1,187名)内臓脂肪面積と生活習慣項目について,分散分析と多重比較を用いて関連要因を探った.その結果,内臓脂肪の蓄積には,睡眠の質や時間,満腹まで食べる,外食が多い,塩分が多い,動物性脂肪の摂取が多く植物性食品の摂取が少ない,といった食習慣,飲酒や喫煙などの嗜好習慣が影響していることが示唆された.内臓脂肪に関連するとされる運動については,男性は頻度による差がみられたが,女性は明確な差異がなかった.結論として,内臓脂肪の蓄積には,食事摂取量および飲酒量の過多,睡眠の質の低下や長時間ないし短時間の睡眠,動物性食品に偏った食事,運動不足が影響していた.
  • 高橋 郁子, 原口 由紀子
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 15-21
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:感染予防の基本は手指衛生や標準予防策を実施することであるが,医療従事者の手指衛生や標準予防策に対するコンプライアンスは低い.また,手指衛生などの実施に関連する要因として個人の態度が指摘されている.この研究の目的は高齢者施設の手指衛生や手袋の着用を促進するために,感染予防に対して前向きな態度に関連する要因を明らかにし,行動の変容を促すための介護職員の態度に働きかける方策に示唆を得ることである.方法:山口県の介護老人福祉施設と介護老人保健施設全147施設の中で,了解の得られた56施設に勤務する介護職員を対象に,自記式質問紙調査票を2007年10月から11月に郵送した.調査内容は,基本属性,教育,知識,態度などである.結果:調査票は42施設から回収し,該当者数1,663名中,1,323名(79.6%)の回答があった.予防に対する態度が前向きな者は725名(72.3%)であった.予防に対する態度に関連する要因を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を実施した.その結果,予防に前向きな態度には,「職種」(オッズ比2.50)が最も影響し,次いで自分が「感染源になる可能性があると思う」(OR:2.06)であった,結論:手指衛生や標準予防策の実施を促進するには,感染予防に前向きな態度をもつことが必要である.そのためには,感染症の正しい知識を身につけ,正しい行動がとれると自分自身が思えるようにし,自分自身が感染をさせるかもしれないと他者への配慮ができることが求められる.
  • 嶋津 多恵子, 蔭山 正子, 星田 ゆかり, 田口 敦子, 麻原 きよみ
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 22-28
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:へき地における戦後から高度経済成長期までの保健師活動の技術とその目的を明らかにすることを研究目的とした.研究方法:へき地における戦後から高度経済成長期までの保健師活動を行った保健師10名を対象として,へき地における保健師活動とその意図について半構造的面接を実施し,保健師活動の技術とその活動目的を質的記述的に分析した.結果:保健師活動の技術を表すサブカテゴリが12,活動目的を表すカテゴリは【保健師の足場を確保する】,【保健師活動の戦略を立てる】,【まずは住民の命と生活を守る】,【住民の命と生活を守る行動を育てる】,【住民の命と生活を守る行動を根付かせる】の5つであり,これらから住民の「命と生活を守る」が保健師活動の最終目的であると考えられた.また,当時の状況下で用いられた「土地の文化に対峙する」中核技術と具体的な技術が明らかとなった.結語:これらの知見は,本研究のへき地と類似した状況で保健師活動をする際の方法論や活動モデルの開発に資すると考える.
  • 齋藤 美紀, 時長 美希
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 29-36
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:糖尿病については予防への取り組みの必要性が主張されているが,同時にその予防活動の困難性も指摘されている.また糖尿病の可能性を否定できない人がその曖昧な状況の中でそのことについてどのように認知し,どのように対処しようとしているのかについては明らかにされていない.したがって本研究では糖尿病の可能性を否定できない人の曖昧な状況への対処を明らかにすることを目的とした.方法:市町村が主催する平成17年度の健康診査にて糖尿病境界域と判定された40〜69歳の者で,糖尿病での医療受診のない者6名に半構成的インタビューガイドを用いてデータ収集し質的帰納的に分析を行った.結果:糖尿病の可能性を否定できない人の曖昧な状況への対処は【状況の捉え】と【取り組み】によって構成されていた.また,【状況の捉え】【取り組み】の内容が明らかになった.【状況の捉え】はその人が自分の状況をどのように受けとめているのかを表わしたものであり5つの大カテゴリーが含まれていた.【取り組み】はその人がおかれた状況の中で何らかの意図をもって実践していることであり,13の大カテゴリーが含まれていた.結論:糖尿病の可能性を否定できない人に対する看護実践には本人の主観に注目した関わり,健康診査結果の有効な活用と医療との連携,主体性を応援する関わり,個人の健康づくりから地域づくりへの発展,これらを目指す看護の展開が重要である.
  • 河原田 まり子
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 37-44
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:公務員を対象に認知行動療法を応用したストレスマネジメント教育の効果を明らかにする.方法:1公務職場の事務職員140名を介入群と待機群に割り付けし,介入群に4週間ごとに認知行動療法を応用した3回の講習会とセルフモニタリングを実施した.1回目はストレスとコーピングの講義,2回目は問題解決と認知再構成法のトレーニング,3回目はリラクセーションとグループ討論を行った.介入前後,終了1カ月後と6カ月後に自記式質問紙調査を実施した.介入群54名と待機群63名を対象に二元配置分散分析を用いて介入効果を解析した.結果:介入群は終了直後に問題解決と積極的認知対処およびソーシャルサポートが有意に増加した.終了1カ月後,問題解決と積極的認知対処は有意な増加を継続した.終了6カ月後,問題解決とヘルスコンピテンスの有意な増加がみられた.ストレスマネジメント行動実践に関する関心度は,介入群で有意な変化があり,関心の高まりが確認できた.ストレス反応には有意な変化はなかった.結論:ストレス軽減に有効といわれているコーピングの向上がみられた.労働者を対象にしたストレスマネジメントの介入研究はまだ少ないため,さらなる研究が必要である,
  • 河野 あゆみ, 丸尾 智実, 藤田 倶子, 田髙 悦子, 国井 由生子
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 45-50
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は独居男性高齢者における「一人で暮らす地域でのおつきあい」をテーマとしたグループワーク(以下GWとする)のプロセスを明らかにすることである.方法:独居男性高齢者22人と地域住民12人にGWを行った.GWでは老人会への参加が少ない独居男性高齢者の太郎さんに世話人が年会費を回収する場面を設定し,『太郎さんの反応』『世話人の関わり方』『独居高齢者が住みやすい地域づくり』について話し合い,その内容を逐語化し質的分析を行った.結果:『太郎さんの反応』では「まずは老人会に行く」「状況によっては老人会に行く」と「老人会には行きにくい」「閉じこもっていたい」,『世話人の関わり方』では「積極的に関わらない」と「太郎さんのニーズをつかむ」「太郎さんと信頼関係がある人をつくる」「太郎さんの主体性を尊重する」「誘い方を工夫する」「積極的に誘う」という意見がみられた.『独居高齢者が住みやすい地域づくり』では「高齢者にも主体性が必要である」「高齢者の集まる場をつくる」「高齢者や住民に情報提供を行う」「閉じこもり高齢者とのつながりをもつ」「地域交流の基盤をつくる」がみられた.考察:GWにより,参加者は独居男性高齢者が住みやすい地域づくりについて建設的な提案を考えることが示された.結論:目的志向の高いGWを行うことにより高齢者や地域住民の地域づくりへの関心を高めるプロセスが明らかになった.
  • 松下 光子, 米増 直美
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 51-56
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:過疎地域で別居の子どもによる通い介護を受けて暮らす高齢者世帯への地域住民による支援の現状と,さらに可能な支援を民生委員等と話し合い,地域住民による高齢者世帯への支援を促す方法について検討する.方法:平成15年に過疎地域指定されていた3地区の民生委員36名,母子保健推進員10名を対象とした.各地区の民生委員会議において,高齢者世帯の生活実態調査結果から通い介護を受けている高齢者世帯を誰がどのように支えているかを報告した後に,地域住民による支援の現状とさらに可能な支援について話し合いを実施し,出された意見を分類し整理した.結果:出された意見は5側面13項目に区分された.通い介護の存在は認識されていた.3地区とも高齢者同士の交流があった.民生委員による独居高齢者家庭訪問や地域での高齢者サロン開催は行われているが,住民による助け合いの基盤となる近所づきあいが若い世代では少ない状況があった.向う3軒両隣のミニミニネットワークをつくる,訪問販売への注意は自分もできる等の高齢者を支える方法が提案されたが,車の運転をやめた高齢者への支援等の課題も出された.考察:地域住民による支援を促すためには,通ってくる子どもと近隣者の関わりを促す,高齢者同士の交流をさらに詳細に捉える,壮年期の人々の高齢者への理解と関わりを促す,近所づきあいの意識化,近隣の助け合いのしくみづくりが必要である.
  • 森戸 雅子, 松本 啓子
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 57-63
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,軽度発達障碍児を育てている母親が,子どもの医療機関受診のつき添い体験から,どのような思いを抱いているのかを明らかにすることである.医療機関の受診を経験している軽度発達障碍児の母親で,研究参加への同意が得られた3名を対象として,半構成的面接法によりデータ収集し,質的に分析した.分析の結果,軽度発達障碍児の医療機関受診に伴う母親の思いから,【医療者の障碍認知の低さ】【受診に伴う環境の見直し】【適切な対応による信頼】【社会からの偏見】【障碍についての親の悩み】【子どもの言動に対する擁護】【当事者からの情報】の7カテゴリーが抽出された.医療機関の受診時における【医療者の障碍認知の低さ】が浮き彫りにされたと同時に,【適切な対応による信頼】や【受診に伴う環境の見直し】などの母親の思いから判断すると,医療者に対する期待も強く表現されていた.また,母親は,【社会からの偏見】が多い現状で,周囲から理解されにくい子どもに対して,【子どもの言動に対する擁護】の気持ちを表していた.【障碍についての親の悩み】もさまざまであり,【当事者からの情報】を集め,母親は子どもに対して,良い医療環境を目指している.医療機関の職員は,軽度発達障碍児の特性を理解し,つき添っている家族も含めた支援が必要である.さらに,医療機関の環境を整えることや家族からの情報提供をもとに,受診の手続きの工夫,診察や検査時における子どもに対する説明の仕方,待ち時間の過ごし方等について,配慮することの必要性が示唆された.
  • 小野 恵子, 片倉 直子, 島内 節
    原稿種別: 本文
    2010 年12 巻2 号 p. 64-69
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,在宅看護学概論の評価であり,具体的な授業の評価内容は,授業の理解度,授業形態の工夫による学習理解への役立ち度,在宅看護の具体的なイメージ化,授業の満足度を明らかにすることである.また,その評価の結果から,在宅看護のイメージに関連する内容,満足度に関連する内容,イメージ化と満足度との関係,授業理解度と授業形態の工夫との関係があるかどうかを明らかにする.対象は,A大学看護学科3年次学生の56名中,調査への同意が得られた者計52名である.調査の結果から,授業の工夫について8割以上の学生が,学習と理解に役立ったと評価していた.しかし「介護保険法」「自立支援法・健康保険法」のような法関連の授業の理解度は,他の授業内容に比べて低かった.これらの授業の理解は在宅看護のイメージ化に関係していたこと,イメージ化と関連した工夫はPRパンフレットだけであったことから,更なる授業の工夫の必要性が示唆された.また,在宅看護のイメージ化と授業の満足度,授業の満足度と授業の理解度,そして授業の理解度と授業形態は,それぞれ関連しており,在宅看護のイメージづくりには,授業の満足度と授業の理解度と授業形態が連鎖していると考える.
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