日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
14 巻, 1 号
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  • 尾形 玲美, 有本 梓, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:児童虐待のリスクが高い事例に対する個別支援の際に行政保健師が行った保育所保育士との連携の内容を具体的に明らかにする.方法:協力者は,母子保健または児童虐待防止に携わっている首都圏3市の保健師5人である.2009年12月に半構造化面接を行った.面接では,乳幼児期の子どもへの実母による身体的虐待,ネグレクト,心理的虐待リスクが高い事例に対して,保健師が保育所保育士と密に連絡を取り合いながら支援した際の連携内容についてたずねた.計5事例への支援に関する逐語録をデータとして,質的記述的研究を参考に分析した.結果:行政保健師が行った保育所保育士との連携内容として,《保育士と母子の情報を共有する》《児童虐待のリスクに注意しながら母子に対応するよう依頼する》《保育士が安心して対応できるように対応方針を共有する》《保育士と母親や他機関とを橋渡しをする》の4つのカテゴリーが抽出された.結論:保健師は,保育所保育士と密に連携することによって,日々母子に対応している保育士を支援し,保育所が虐待についての観察と報告を行いやすくするとともに,保育所のモニタリングの結果を保健師自身の支援に生かしながら,保育所が子どもへの保育機能や親へのケア機能を発揮できるようにしていたと考えられた.
  • 後藤 順子, 細谷 たき子, 小林 淳子, 叶谷 由佳
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:健康教室参加高齢者の主観的健康観への関連要因を身体状況,体力,生活状況の観点から明らかにする.研究方法:健康教室に参加した65歳以上の180人に対して,健康教育の介入前に健康調査と体力測定を実施した.分析は主観的健康観の健康群と非健康群の2群を従属変数とし,男女別に関連要因を検討した.結果:対象者は男性68人,平均年齢73.3歳,女性112人,72.2歳であった.「健康」群は男女合計146人(81.1%)であった.対象者の筋力,歩行能力は既存の報告以上で身体機能が良好な集団であったが,体力測定値は主観的健康観には関連しなかった.多重ロジスティック回帰分析の結果,主観的健康観への関連要因は,男性の「心臓病の既往がない」「町内会へよく参加する」,女性の「心臓病の既往がない」「糖尿病の既往がない」「町内会へよく参加する」「生活満足度が高い」「抑うつ得点が低い」であった.結論:身体状況では男女ともに心臓病の予防,女性で特徴的だった抑うつ状態,糖尿病に対する早期発見・治療の必要性,また生活面では,男女共通に社会交流の場である町内会活動への参加支援が自立した元気な高齢者の健康支援における重要課題として示唆された.
  • 永田 智子, 田口 敦子, 戸村 ひかり, 廣田 真由美, 石塚 裕美子, 山居 優子, 草刈 由美子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:訪問看護ステーション(ST)が患者の円滑な退院のために病院と行っている連携の実態と,連携を実施しているSTの特徴を明らかにすることを目的とした.方法:全国の3,578か所のSTに調査票を送付し,郵送により1,188通を回収(回収率33.2%)し,すべてを有効回答とした.結果:入院患者の情報共有のために定期的に病院を訪問しているのは468か所で,このうち,病棟を定期的にラウンドしているのが219か所,入院患者に関する病院内の会議への定期参加が171か所,入院患者に関する病棟カンファレンスへの定期参加が145か所であった.病院訪問をしているSTの特徴は,開設主体が医療法人,同一法人内に病院.介護老人保健施設あり,緊急時訪問看護加算等の届け出あり,常勤の看護職数が多い,であった.病院の退院支援担当者としての業務を行っているのは295か所で,ほとんどが病院から個別ケースについての依頼を受けて実施していたが,病院を定期訪問したり駐在したりして実施しているSTもあった.退院支援担当者の業務をしているSTの特徴は,重症者管理加算の算定あり,常勤の看護職数が多い,医療保険による訪問看護の延べ訪問回数が多い,であった.考察:STの規模や重症者への対応状況が病院との連携に関連していた.今後は,これらの業務を行うためのコストとその効果を明らかにし,連携のあり方について検討していく必要がある.
  • 藤田 倶子, 河野 あゆみ, 丸尾 智実, 田髙 悦子, 国井 由生子
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:独居男性高齢者を対象としたセルフケア向上のための健康教育による食事バランスの認識の変化を明らかにし,健康教育の有効性とプログラム内容を検討する.方法:地域に暮らす独居男性高齢者18人を対象に食事バランスガイドを用いた健康教育を実施した.健康教育では食事バランスに関する講義の前後に普段の食事のバランスを知るワークと翌日の食事バランスを考えるワークを実施した.なお,対象者が記入した普段の食事と翌日の食事のServing(SV)数をデータとして活用した.SV数と目安の数との差の前後比較を対応のあるt検定にて行った.結果:対象者の講義前の料理のSV数の平均値(SD)は主食が4.3(1.3)SV,副菜が3.3(2.6)SV,主菜が4.1(2.1)SV,果物が0.9(1.2)Sv,乳製品が1.0(1.1)SVと主菜のみ目安のSV数よりも多く,他の料理区分のSV数は目安のSV数よりも少なかった.講義前後の料理のSV数と目安のSV数の差は副菜が-2.8(2.6)SVから-1.0(1.3)SV(p=0.009),果物が-1.2(1.2)SVから-0.3(0.8)SV(p=0.020),乳製品が-1.1(1.1)SVから-0.2(1.0)SV(p<0.001)と講義後は目安のSV数に近づいた.結論:食事バランスガイドを用いた本健康教育は独居男性高齢者においてバランスが整った食事の認識向上に有効性がある可能性が示唆された.また,プログラムの構成が高齢者自身により普段の食事バランスをアセスメントする作業,「なにを」「どれだけ」食べたらよいかを考える作業の構成となった可能性が示唆された.
  • 石丸 美奈, 岩村 龍子, 大川 眞智子
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,共同研究をした看護系大学教員と行政保健師の双方の共同研究のプロセスや成果についての意見から,教員および保健師にとって,共同研究を行った利点と協働の方法を明らかにすることである.方法:教員と保健師が共同で報告している6つの地域看護の研究課題の教員7人と保健師9人を対象に,研究者2人による半構造的インタビューによりデータ収集し,質的に分析した.結果:共同研究の利点は10の大カテゴリー【住民サービスの向上】【健康指標の改善】【保健師の実践の充実・改善】【実践に対する保健師の認識の深まり】【教育活動の充実】【研究活動の発展】【協働者である保健師の人材育成】【他の保健師への波及】【地域の看護職の学習の機会】【大学と保健師間の関係作り】に集約された.また,教員と保健師による協働の方法は,7つの大カテゴリー【研究開始の契機をつくる】【保健師活動をふり返り評価し,実践につなげる】【研究としての質を保証する】【互いの役割分担と責任を遂行する】【協働の関係性を構築する】【協働のための条件を整備する】【学習の機会とする】に集約された.考察:共同研究を通して互いに利点をもたらす協働の方法として,(1)互いに主体的に取り組む協働の方法,(2)両者にとって利点をもたらすための条件整備,(3)保健師の学習の機会とする協働の方法が重要である.
  • 俵 志江
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域包括支援センター(以下,センターとする)の専門職の社会資源の創出と,属性および個別支援における連携に関する項目,連携先との関連要因を明らかにすることである.方法:全国のセンターから系統的無作為抽出した1,324か所に所属する専門職(社会福祉士,保健師,主任介護支援専門員)を対象に,郵送による自記式質問紙法を実施した.調査項目は,属性と連携に関する項目(連携活動評価尺度,連携先数),連携先との連携の有無,社会資源の創出経験の有無とした.調査期間は2009年6〜8月であった.結果:社会資源の創出あり群は275人(31.3%),創出なし群は605人(68.7%)であった.社会資源の創出の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,属性と連携に関する項目では運営形態が直営であること,「在宅介護支援センター」での職務経験があること,連携活動得点が高いことと正の関連があり,「要支援者の介護予防ケアマネジメント業務」が担当業務であることに負の関連を示していた.連携先では,「行政,その他担当課」「自主グループ」「弁護士」と正の関連があり,「介護サービス事業所(訪問サービス)」と負の関連を示していた.結論:センターの専門職が社会資源を創出するには,要支援者の予防プラン作成の負担軽減,多様な個別支援を通した連携活動の促進,インフォーマル資源や行政との連携・協働の必要性が示唆された.
  • 岡久 玲子, 多田 敏子, 藤井 智恵子, 松下 恭子
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,看護大学生が歩数計装着と生活行動記録後に行ったロールプレイを通して保健指導をどのように理解したかを明らかにする.方法:対象は,歩数計装着と生活行動記録グループワーク,ロールプレイの一連の過程を体験(以後,演習)した3年次看護大学生74人である.演習終了後に「保健指導の実際と対象者の反応,および保健指導場面を通しての気づき」に関するレポートを記載させた.レポートはその場で回収し,記述内容を保健指導の理解内容に注目して分析した.倫理的配慮として,今回の研究目的を口頭で説明し記録物使用の了解を得るとともに,記述内容の分類にあたっては氏名を伏せ,個人を特定できないようにした.結果:演習後に学生が記載した保健指導の理解についての記述内容を分析した結果,【対象者と保健師との関係づくり】【対象者が生活を振り返る場づくり】【対象者が自分の力を発揮するきっかけづくり】【対象者が行動変容にむけて踏み出す後押し】の4つのカテゴリーが導き出された.考察:学生は,保健指導の方法について理解したと考えられる.学生は,保健指導は対象者との人間関係づくりを基にして,対象者の力を引き出し,行動変容への後押しをすることと理解していた.
  • 松下 光子, 米増 直美
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:別居の子どもが通って支援している高齢者世帯への援助において,ケアマネジャーが自分なりによい援助ができた・援助がうまくいったと感じた経験と援助において困難を感じた経験から,通い介護家族への援助における課題と援助方法を検討する.方法:ケアマネジャー12人から,自分なりによい援助ができた・援助がうまくいったと感じた経験と援助において困難を感じた経験を具体的な事例とともに聞き取った.よい援助ができたと感じた内容,援助で感じた困難から事例を分類した.結果:自分なりによい援助ができた・援助がうまくいったと感じた経験は,家族が定期的に,あるいは頻回に通いながら介護を実施しており,家族の相談に対応する援助を行った,認知症症状のある高齢者の状況を伝え,家族が本人の状態を理解し,サービス利用につながった,等であった.困難を感じた経験は,認知症症状のある高齢者の状況を家族が理解できていないため,サービス利用につながらない,認知症高齢者の状況を地域の人にどこまで説明するか迷った,等であった.考察:通い介護家族への援助における課題と援助方法は,認知症症状等高齢者の現状を家族が理解する困難さと家族の理解を促す等の援助,周囲とのかかわりを調整する援助の必要性と関係調整の援助,介護保険と家族の通いで支え切れない部分への介護保険外サービスも取り込んだ援助が考えられる.
  • 上田 泉, 佐伯 和子, 平野 美千代, 本田 光
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健師教育における効果的な教育方法を検討するための基礎資料を得るため,現在,保健師養成を行っている教育機関で保健師教育課程の政策に関する教育の実施状況について把握することを目的とした.方法:全国の保健師養成を行っている教育機関のうち207校を対象に2009年9〜10月,郵送による無記名自記式質問紙調査を実施した.73校からの回答(回答率35.3%)があり,有効回答は72校(有効回答率34.8%)であった.政策に関する教育内容はQuad Council PHN Competenciesの項目を参考に,「現在の教育課程で実施している到達度」と「保健師教育課程で実施するのが望ましい到達度」の見解についてたずねた.結果および考察:保健師教育課程における政策に関する教育の実態として,〈分析的なアセスメントスキル〉の実施している到達度は理解レベル,実施するのが望ましい到達度は実行できるレベルであった.〈政策開発・事業計画スキル〉〈財政上の計画と管理スキル〉の実施している到達度は知っているレベル,実施するのが望ましい到達度は理解レベルであった.いずれにおいても,現在の実施している到達度よりも,望ましい到達度の方が高いレベルであった.今後,保健師が社会情勢をふまえた政策を実践するための能力を獲得していくには,保健師の基礎教育段階において,政策に関する基礎的な能力を育成することが望ましい.
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