日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
3 巻, 1 号
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  • 松村 ちづか, 川越 博美
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,在宅療養者の自己決定と家族の意向が不一致な状況において,熟練訪問看護者がその不一致を解決し,療養者の自己決定を実現するためにどのような意思決定をしているのか,構成要素および構造を明確にし,療養者の自己決定を支えるための訪問看護者の意思決定のあり方の示唆を得ることである.対象は5名の熟練訪問看護者で,継続的な家庭訪問での参加観察とインタビューを用いた質的記述研究を行った.その結果,熟練訪問看護者が認識した療養者の自己決定と家族の意向が不一致である内容としては,療養者の日常のケア,治療,生き方に関するものがあった.また,不一致の根底にある療養者と家族の関係性として,家族が療養者を大切に思うがゆえに不一致が生じているものと過去からの関係性の困難さから不一致が生じているものがあった.熟練訪問看護者の意思決定の構成要素として,訪問看護者としてのあり方を意味する2コアカテゴリー【訪問看護者としての生き方】【個人としての生き方】,意思決定のプロセスを意味する10コアカテゴリー【役割認識をもつこと】【了解すること】【自己関与させること】【自己と対話すること】【支援目標をもつこと】【見通すこと】【決断すること】【働きかけのタイミングを掴むこと】【働きかけ方の選定をすること】【支援について省みること】が抽出された.これらのコアカテゴリーを各熟練訪問看護者の意思決定の経時的プロセスに当てはめてみた結果,熟練訪問看護者の意思決定の全体を構造化することができた.以上の結果から,訪問看護者が在宅療養者の自己決定と家族の意向が不一致な状況を解決し療養者の自己決定を支えるためには,療養者と家族が共に納得できるような方向性の家族ケアを提供する必要性が示唆された.そして,訪問看護者の意思決定のあり方として,療養者の自己決定する権利を認識し,療養者の心身の利益の優先という倫理的,かつ自己のあり方を問う自律的な意思決定をしていく重要性が示唆された.
  • 鳩野 洋子, 田中 久恵, 古川 馨子, 増田 勝恵
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    寝たきり予防の観点から注目されている,閉じこもりの状態の高齢者のケアを考えてゆく上での基礎資料とするため,ある町においで閉じこもりの出現割合および背景要因の分析を行った.調査方法は住民基本台帳から家族形態を勘案して抽出した65歳以上の高齢者544名に対する留め置き式のアンケート調査,および看護職による聞き取りと観察である.調査内容は,属性,健康状態,転倒経験,ライフスタイル,役割,家族や友人との関係性,QOL,環境条件であった.寝たきり,痴呆,医学的な外出の禁忌を指示されているものを除き,月数回以下しか外出していない高齢者を「閉じこもり群」とし,そうでない高齢者を「非閉じこもり群」と定義した.分析は,2群の背景要因についで比較するとともに,単変量解析にて10%未満で有意であった項目を説明変数としてロジスティック回帰分析を実施した.472名を解析した結果,本調査対象の中での閉じこもりの出現割合は6.6%であった.多変量解析の結果,有意であった項目は,居住地が海側か山側か,友人の有無,歩行障害の有無,生活の規則性であった.今後は自立ないしそれに近い状況でありながら,外出していない高齢者の将来の寝たきりの可能性を検討する必要性があることが考えられた.また閉じこもりのケアを考える上では高齢者の個別性とともに,環境条件に着目することが重要であることが示唆された.
  • 鈴木 和子, 岡部 明子, 松坂 由香里
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,介護保険制度開始後の家族援助に関する行政保健婦・士と訪問看護婦・士の家族援助に関する役割認識と役割期待を明らかにすることを目的とする.研究方法は,K県M市の保健センターと市立訪問看護ステーションで同一事例に関わる保健婦・士と看護婦・士に対する面接調査から得られた35項目の家族援助内容について,自己の役割意識と相手に対する役割期待について5段階評価で回答を得る調査表を作成する.これをK県内の全市町村と訪問看護ステーションに各5枚ずつ送付し,上限を5人として回答を得る.また,その評価結果について両職種間で有意差検定を行った.調査結果では,合計129か所の施設から491人の回答を得た.保健婦・士の役割では,他職種との連携やインフォーマルサポートに関することなどが,看護婦・士では,療養者の病変時の対応や介護者との信頼関係の形成,精神的支援などが上位を占め,それらの保健婦・士と看護婦・士それぞれの役割認識と役割期待の高い項目は,ほぼ一致していた.しかし,看護婦・士の役割認識が保健婦・士の役割期待より有意に高く評価されていた項目が30項目であったのに比べ,保健婦・士の役割認識と期待の間で有意差があったのは4項目のみで,保健婦・士のほうが認識と期待の一致度が高いことが明らかになった.また,保健婦・士,訪問看護婦・士ともに自他の役割についての評価が35項目中,それぞれ29項目ずつに有意差があり,自他の役割をかなり区別していることが明らかになった.これらから,介護保険制度開始後では,互いに自他の役割を強く意識し,区別したものと捉えて有効な役割分担を指向していることが示唆された.
  • 齋藤 明子, 小林 淳子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:ALS患者は病状の進行に伴い寝たきりとなり,人工呼吸器,経管栄養が適用となる.在宅療養には,高度な介護技術が長期間にわたり必要となるため,介護者となる家族の負担は大きい.しかし,これまでの介護負担感の研究は要介護高齢者が中心であり,ALS患者の介護負担感についてはほとんど報告がされていない.そこで本研究では,在宅ALS患者の介護者の介護負担感を測定し,患者の特徴,介護者の特徴,ソーシャルサポート資源と介護負担感との関連性を明らかにすることを目的とした.方法:在宅ALS患者の介護者75名を調査対象とし,平成11年8〜11月に質問紙調査を実施した.介護負担感の測定にはZarit介護負担感尺度日本語版を使用し,また,患者,介護者,ソーシャルサポート資源についてのALSの特徴的な要因を取り上げて尋ね,介護負担感との関連をみた.成績:有効回答数は67名(89.3%)であった.(1)介護負担感得点は平均41.2±13.5(10〜77)であった.(2)介護者の特徴はいずれも介護負担感と有意な関連性は認められなかった.(3)ALS患者の特徴のうち,在宅療養期間は介護負担感との間に負の相関が認められ,在宅療養期間が長くなるほど,介護負担感は減少する傾向にあった.(4)ソーシャルサポート資源のうち,訪問看護の利用回数,訪問看護の利用時間はそれぞれ,介護負担感との負の相関が認められた.訪問看護の利用回数が多く,利用時間か長い介護者ほど介護負担感は低い傾向が認められた.結論;以上のことから,在宅ALS患者の介護者の支援においては,訪問看護の効果が推察され,在宅療養機関を考慮した支援のあり方の必要性が示唆された.
  • 百瀬 由美子, 麻原 きよみ, 大久保 功子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は高齢者健康増進活動(福祉ひろば)の参加者の特性および参加者の視点から,その活動に参加したことによる効果の内容および構造を探求し,活動を評価することを目的とした.福祉ひろば活動参加者424名を対象に質問紙調査を行い,参加者の特性を検討した.また,福祉ひろば参加者が記述したドキュメント分析から導かれた主観的効果を示す評価指標の16項目すべてに回答の得られた178名について,効果の内容を記述統計により明らかにし,さらに効果の構造を検討するために探索的因子分析を行った.その結果,以下のことが明らかになった.(1)参加者の特性は,女性が男性の4倍を占め,70歳代が参加者の半数以上を占めていた.(2)16項目の効果のうち,最も回答数が高かったのは「楽しみが増えた」であり,次いで「人との会話が増えた」,「友だちが増えた」,「外出する機会が増えた」の順であった.(3)因子分析の結果,『自己認識の変容』,『社会関係の拡大』,『健康の増進』の3つの因子が抽出され,累積寄与率は61.3%であった.以上より,福祉ひろば活動はこのプログラムが閉じこもりと寝たきりを防ぐ可能性があり,高齢者にとっての楽しみを増やす場として機能していると考えられた.また本研究において用いた,参加者の主観的効果を示す評価指標は,コミュニティ中心の健康増進活動を評価する際の重要な手がかりになると考えられた.
  • 田高 悦子, 金川 克子, 立浦 紀代子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,地域(在宅)の寝たきり高齢者に対する一方策の確立に向けて,在宅寝たきり高齢者82名を対象(介入群41名;対照群41名)として1年半にわたり実施した,座位耐性訓練を中心とするプログラムの効果を,高齢者の転帰ならびにADLの側面から検討することである.研究方法は介入研究であり,介入群に対してはプログラムを実施し,対照群に対しては標準的な訪問指導を実施しで,両群の経過を比較,検討した.その結果,1)介入群と対照群における1年半後の転帰では,生命予後については有意差を認めなかったものの,生存者の転帰については介入群では,対照群に比して在宅継続の割合が有意に高いことが示された.2)介入群での1年半後のADLおよび非臥床時間では,ベースラインに比して,セルフケア動作を中心としたADL領域および非臥床時間の維持,拡大効果が認められた.一方,トイレ動作,排泄コントロール,移乗動作の領域では,低下の可能性も示唆された.以上より,在宅の寝たきり高齢者に対する座位耐性訓練を中心としたプログラムは,継続的かつ組織的な介入により,1年半後のセルフケア動作を中心としたADLおよび非臥床時間の維持,改善に対し有効であり,在宅生活の維持に寄与することが示唆された.
  • 小西 かおる
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,脳血管障害患者を対象に,障害によるストレスの認知的評価とコーピング行動の特徴を退院時,退院後2週間,退院後3か月の3時点で経時的な変化を明らかにすることを目的とする.方法:対象は,首都圏の3医療機関にリハビリテーション目的で入院し,1998年10月〜1999年2月に退院した脳血管障害患者305人(100%)のうち,発症後初めて自宅退院した者(主治医が質問内容の理解が困難と判断したものを除く)105人(34.4%)である.調査は,退院時(T1),退院後2週間(T2),退院後3か月(T3)の3時点とし,研究者が質問紙による面接調査を行った.T1は病室,T2,T3は自宅訪問し調査を行った.調査全過程の期間は1998年10月〜1999年6月であり,3回目まで継続的に面接を受けた患者は85人(27.9%)であった.調査内容は,基本属性,ADL,認知能力,ストレス,コーピング行動;(1)主観的評価(直面志向型,情動志向型,回避志向型コーピング),(2)客観的評価(活動度変数),QOLから構成される.分析方法は,3回目まで継続的に面接を受けた85人を対象に,ストレスの認知的評価とコーピング行動の経時変化の特徴について,反復測定による分散分析(Repeated Measure ANOVA),多重比較(Tukey法)により検討を行った.結果:退院直後にストレスは有意に増大しており,特に「状況の変化」や「自己管理信念」に関するストレスが有意に増大していた.また,コーピング行動は「情動志向型」が増え,「直面志向型」が減る傾向にあった.退院後3か月では,ストレスは有意に減少し,「情動志向型」コーピングが減り,「直面志向型」コーピングが増大する傾向にあった.活動度変数も,退院後3か月で高くなる傾向にあった.結論:本研究で明らかにされた脳血管障害患者のストレスの認知的評価とコーピング行動の経時変化の特徴から,退院直後は,訓練行動を促すより,むしろ精神面への援助により心理的安定を図る必要があり,患者自らが積極行動を起こすような働きかけが重要であることが提言された.障害によるストレスの認知的評価の経時変化の特徴は,脳血管障害患者の障害に伴う心理的側面への理解に役立つ示唆を与えたといえる.
  • 廣部 すみえ, 飯田 澄美子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 68-75
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は訪問看護職者の判断の特徴を明らかにし,訪問看護職者の教育方法について示唆を得る目的で行った.研究デザインは帰納的アプローチによる質的記述的研究である.対象はF県下の3か所の訪問看護ステーション訪問看護婦14名,方法は半構成的質問紙法によるインタビューである.面接内容は,「困った事例,うまくいった事例,気になっている事例」での家庭で看護ケアする際の看護者の判断である.19事例58判断場面の研究資料が得られ,各々の判断場面から判断内容と判断プロセスの2側面を帰納的に整理し,以下の結果が得られた.1.判断内容に4つの大カテゴリー【関わりの方針・ケアの方向性への判断】【看護者・体制への判断】【患者へのケア展開方法への判断】【家族へのケア展開方法への判断】が見られた.2.訪問看護職者の判断プロセスは様々な思考を使用し,多彩で複数の判断プロセスを経て看護活動にいたっていた.特に,「生活」を理解するための円環的判断プロセス,患者・家族の気持ちに添いながら判断する「循環型」判断プロセス,活用する資源が少ない中での「開発型」判断プロセスに特徴が見られた.3.以上の結果から,訪問看護者を対象とした系統的な継続した教育システムの導入と現場で実際に指導できるスーパーバイザーの育成が重要である.
  • 島内 節, 大賀 英史, 山口 亜幸子, 赤塚 寮子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 76-85
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在宅ケアの効果を評価する方法を,ケア実践例を用いて明らかにした.調査5機関のアウトカム標準値(利用者の改善率と安定率)と各機関のアウトカム値を比較可能にするために,アウトカムに影響する利用者条件の調整方法を検討し,それに基づき各機関のアウトカム結果を明らかにした.方法:1999年9〜12月,5つの訪問看護ステーションにおいて,全数609事例中,アウトカムの測定が困難なターミナル事例を除き,40〜64歳の介護保険対象疾患患者と65歳以上全数で,2か月間継続してケアを行い,看護職により各事例について調査開始とケア2か月後の2時点の同一項目調査によりアウトカム測定ができた451事例を分析対象とした.アウトカム項目はPeter W. Shaughnessyらにより開発され,全米のMedicare対象者に義務づけられているOASIS(The Outcome Assessment Information Set)の簡易版15項目を検討し,これらの項目は日本訪問看護振興財団のアウトカム研究でも大部分が測定可能とされており,わが国に適用可能と判断して,これらの全項目を使用した.利用者背景については過去の研究からわが国で必要と考えた6項目について利用者条件調整の要否を分析した.結果:5機関の調査全事例のアウトカム値に有意な影響があることが確認された利用者背景条件は,自立度(障害老人の日常生活自立度,JABCの4段階)と痴呆度(痴呆性老人の日常生活自立度,痴呆なし〜Mの6段階)であった.この2項目は各機関の利用者アウトカム値(改善率と安定率)の調整が必要であることが明らかになった.アウトカムの標準値と各機関との比較は,各機関値を標本百分率,全機関値を母百分率とし,有意差のあったアウトカム項目に注目すべきとした.その注目すべきこととして,アウトカムが標準値より有意に高い項目が多かったA機関では,自立度で調整した場合は改善率では整容,洗身,移動,軽食の準備,痛み,尿失禁が高かった.痴呆度で調整した場合は,改善率では整容,洗身,移乗,軽食の準備,服薬が高かった.本研究から,全5機関のアウトカム標準値と,アウトカムに影響する利用者の条件を調整した各機関のアウトカム値を比較することによって,各機関のアウトカム値が客観化され,評価の精度を高めるといえる.本研究は以下のことに利用可能と考える.アウトカム評価の結果に基づいてケアの質を改善すべき内容を焦点化,ケアマネジャーによる利用者アウトカム管理,第三者評価,評価結果が公表されれば利用者のケア機関選択の情報となる.
  • 小野寺 琴江, 白井 英子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 86-92
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,長期慢性疾患である橋本病患者の基本的属性(年齢,家族形態,職業,罹病期間,治療状況,症状の訴え)と,ソーシャルサポートおよびセルフ・エフィカシーとの関連性を明らかにすることである.調査対象者は,浦河保健所管内4町在住の北海道特定疾患治療研究事業における橋本病認定者で在宅療養中の225名である.調査方法は,対象者の基本的属性とソーシャルサポート,およびセルフエフィカシーに関する質問紙による郵送調査である.分析対象者は,女性129名(92.8%),平均年齢は54.7歳,有効回答数139名(有効回答率88.5%)であった.ソーシャルサポートとセルフエフィカシーの尺度は金らのもの(1996)を用いた.1.ソーシャルサポートの総得点では,年齢,家族形態,症状に有意差(p<0.05)が認められた.情動的サポートでは,基本的属性のすべての項目に有意差はなく,行動的サポートでは,年齢(p<0.05),家族形態(p<0.01),罹病期間(p<0.05),症状(p<0.01),に有意差が認められた.下位尺度では35〜49歳,単身,罹病期間が3年以下,症状なしの人の行動的サポート得点が低かった.セルフエフィカシーの総得点では,基本的属性のすべての項目に有意差は認められなかった.疾患に対する対処行動の積極性では,職業で有意差(p<0.01)があり,定職者の得点が低く,健康に対する統制感では,性別(p<0.05),症状(p<0.01)に有意差が認められ,男性と症状ありの人の得点が低かった.2.ソーシャルサポートとセルフエフィカシーとの間には,正の高い相関関係が認められ,特に情動的サポートと行動的サポートは,疾患に対する対処行動の積極性と高い相関間係が認められた.今後,橋本病患者の年齢,家族形態,職業,症状を考慮した保健サービスの提供が求められている.橋本病患者のセルフ・エフィカシーを強化するためには,ソーシャルサポートを高めることが先行要件であり,その際,個別援助に加えて,セルフ・ヘルプグループ活動の推進など地域の生活に根ざした看護活動を作り出すことが求められている.
  • 多田 敏子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    高齢者のQOL(Quality of Life)とADL(Activyties of Daily Living),身体機能および社会生活の関連について検討することを目的に,農村で生活する65歳以上の高齢者を対象に自記式の既存の調査表(KALS,VAS)により調査した.さらに,農作業による影響を見るために現在または過去において農業に従事した人(農業群)と,そうでない人(非農業群)の結果についても比較検討した.その結果,以下の結論を得た.1.男性は180人で,そのうち農業群は81人(45%),非農業群は99人(55%)であった.女性は231人で,農業群は135人(58.4%),非農業群は96人(41.6%)であった.2.平均年齢は,男女ともに農業群のほうが非農業群に比べて有意(p<0.001)に高く,男性において,農業群は74.3±6.8歳,非農業群では71.3±5.2歳であった.女性はそれぞれ74.4±6.9歳,71.0±4.7歳であった.3.QOLと年齢は関連なく,ADL,身体的および社会的機能が,QOLにおける有意な要因であった.4,QOL平均値は,男女ともに農業群と非農業群に明らかな差は見られなかった.5.QOLと社会生活との関連性が大きかったのは,男性であった.6.QOLと身体的機能との関連性が高かったのは,農業群の男性と非農業群の女性であった.
  • 伊藤 千代子, 杉浦 静子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    年齢18〜69歳の女性369名を対象として,自己の体重を適正体重に維持しようとする態度について検討することを目的とした.体重制御態度を表す尺度として,現体重(A),本人が目標とする体重(B)および標準体重(C)をもとに次の3尺度を求めた.すなわち(1)痩せ願望か肥り願望か.現体重と目標体重との差(A-B)を求めた.この値が正の値は痩せ願望を,負の値は肥り願望を表している.(2)気構えの強さ:(A-B)/A×100で表した.(A-B)の値は,痩せ願望もしくは肥り願望を表しているが,何kg痩せたいかもしくは肥りたいかの絶対値は現体重によって左右されるので,体重の異なる集団間の気構えの強さを比較するために,現体重の影響を補正した値を用いた.この値のマイナスの大きい数値ほど肥りたいという気構えが強いこと,プラスの大きい数値ほど痩せたいという気構えが強いことを表している.(3)目標体重(B)の妥当性:(B-C)/A×100で表し,この値が0に近いほど目標値の妥当性は高いことになる.年齢を18〜24歳,30〜49歳および50〜69歳の3階級に分け検討した.その結果,いずれの年齢階級においても痩せ願望がみられた.また,体重を制御しようとする気構えの強さに有意な年齢階級間差は認められなかった.一方,目標体重の妥当性には有意な年齢階級間差が認められ,18〜24歳で低く,50〜69歳で高かった.体重を制御しようとする気構えの強さと肥満指標との間には有意な正の相関が認められ,痩せたい願望は肥っている人ほど強く,肥りたい願望は痩せている人ほど強かった.気構えの強さと最も強く関連する肥満指標は,肥満度であり,このことはすべての年齢階級に共通していた.また,年齢階級別相関係数の差を検討したところ,50〜69歳では,皮脂厚和と気構えの強さとの関連が若年層に比べて強かった.以上の結果から,本人が設定している目標体重の妥当性および体重制御の気構えを起こす刺激となり得る身体情報は年齢階級により異なることが推測され,適正体重維持に向けた保健指導における留意点が示唆された.
  • 平澤 則子, 小林 恵子, 飯吉 令枝, 斎藤 智子, 佐々木 美佐子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,市町村保健婦の保健所保健婦に対するコンサルテーションニーズと,保健所保健婦の市町村保健活動に対するコンサルテーションの実態およびその効果を調査し,保健所保健婦のコンサルテーション機能の意義とそのあり方を明らかにすることを目的とした.結果を以下に示す.1.市町村保健婦の約9割は保健所保健婦にコンサルテーション機能を「果たして欲しい」と考え,保健所保健婦の全員がコンサルテーション機能を「果たす必要がある」と答えているが,実際にコンサルテーション機能を「果たしている」と思う者は約5割であった.2.市町村保健活動支援の実践事例では,コンサルテーションプロセスのすべてが実施されていた.3.保健所保健婦のコンサルテーションプロセスの構成要素として,「相談者と問題を共有」「期待する結果の明確化」「問題解決時期の明確化」を意図的に実施していく必要がある.
  • 平野 憲子, 加藤 欣子, 佐伯 和子, 和泉 比佐子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:痴呆性高齢者の受療における課題を検討するため,アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆高齢者の介護者の受療に関する認識と痴呆性疾患による認識の相違や共通点の特徴を明らかにし,検討することを目的とする.方法:対象は在宅生活をしている痴呆性高齢者の介護者で研究協力の得られた高齢者とし,訪問による半構成面接を行った.対象者の了解を得てテープ録音し,逐語録を作成しデータとした.データの分析は受療に関して話されたエピソードを抽出しコード化をし,さらに相違と類似を検討し,アルツハイマー型痴呆(ATD)高齢者と脳血管性痴呆(VD)高齢者に分けて認識をカテゴリー化し,その特徴を比較検討した.結果分析の妥当性については共同研究者間で検討した.結果:痴呆性高齢者を介護する介護者は,受療に関する様々な認識に,(1)被介護者の受診の困難性,(2)受療の目的,(3)医師の治療方針,(4)同伴通院,(5)入院経験の評価,(6)急性症状の対応,(7)家族に対する医師の対応,(8)家族の医師に対する疑問やニーズ,(9)老人性痴呆疾患センター受診の意味,の9つの側面がみられた.その中でATD高齢者とVD高齢者の介護者の認識に相違と共通点の特徴がみられた.相違の特徴の主なものは,第一に,被介護者の受診の困難には,ATD高齢者の介護者は刺激が多い医療機関に入ってからの対応に困難を感じ,VD高齢者の介護者は受診前の準備に困難を示していた.第二に,ATD高齢者の介護者は受療目的や医師の治療を,痴呆の進行の確認や,また医療機関とのつながりを確保する機会として認識し,VD高齢者の介護者は基礎疾患の治療,管理として認識していた.第三に,入院が与える被介護者への影響として,ATD高齢者の介護者は認知機能の低下,VD高齢者の介護者は身体的機能の低下を認識していた.第四に,医師の介護者への対応では,ATD高齢者の介護者ば医師から労いやサービス利用の情報を提供され,VD高齢者の介護者は治療協力者の期待をかけられているとみていた.ニーズでは,ATD介護者は医師に介護の生活の理解や相談対応と,被介護者のプライドを配慮した診察を求め,VD介護者は基礎疾患のケアの情報と同時に痴呆性疾患についても相談対応を求めていた.共通点では,入院や急性症状の対応の困難性が見られた.これら介護者の認識から出てきた9つの側面とその認識の内容からは,1)受療における介護者の困難とそのニーズの理解,2)介護者との十分な相談,3)急性症状に対応等,主な課題が浮き彫りになり,これらの検討が痴呆性高齢者との在宅生活を支えていく上でも重要であると考える.
  • 宮地 文子, 山下 美根子, 渡辺 好恵, 関 美雪
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 115-122
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域母子保健において,少子化や核家族化に伴う乳幼児の母親のメンタルヘルスの向上を支援する体制づくりが課題となっている.欧米の文献では,母親の抑うつは母子相互作用を妨げ,子どもの心の発達に影響を及ぼすことが指摘され,その関連要因について検討されているが,わが国ではこれらの検討が極めて少ない.そこで,初妊婦・3〜4か月児・保育園児の母親を対象に抑うつ状態とその関連要因について検討した.方法:埼玉県都市部のU市の母親学級に参加した初妊婦33名,K市保健センターの3〜4か月児健診に来所した母親57名,K市立S保育園における1〜5歳児の保護者会に参加した母親49名,計139名に,Zung自己評価式抑うつ尺度・健康生活習慣・育児に関する憂慮・育児意識・夫との関係の満足度・ソーシャルサポート・属性に関する自記式質問紙調査を実施した.まず,χ2検定または一元配置分散分析によって上記の各項目を3群間で比較し,つぎにPearson積率相関係数と一元配置分散分析によって,抑うつとこれらの要因の関連性を分析した.結果:(1)平均抑うつ得点は,初妊婦39.9点,3〜4か月児の母親39.1点,保育園児の母親39.0点,軽度抑うつ(40〜47点)・中等度(48〜55点)または重度抑うつ(56点以上)の割合は,各々初妊婦42.4%・9,1%,3〜4か月児の母親31.6%・14.0%,保育園児の母親27.7%・8.5%で,3群間に差はみられず,3歳児の母親で測定した結果やわが国における新生児や乳児の母親・看護学生・地域の一般成人女子における成績とも同程度のレベルであった.(2)初妊婦では健康生活習慣と夫婦関係の2要因が,3〜4か月児の母親では5要因すべてが,保育園児の母親では育児意識・夫婦関係の満足度・ソーシャルサポートの3要因が関連しており,各群に差異がみられた.(3)わが国の地域母子保健における子育て支援事業について,母親の抑うつを軽減する視点から,周囲の人々とりわけ夫からの情緒的サポートを強化する看護支援が重要と考える.
  • 長江 弘子, 千葉 京子, 中村 美鈴, 柳澤 尚代
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 123-130
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,生活障害をもちながら地域で暮らす高齢者の主体的選択である「生活の折り合い」の概念を明らかにすることを目的とした.研究対象は,都内に居住する70〜89歳までの要支援高齢者20名である.データ収業は,個別訪問による半構成的面接を行い,高齢者の言語データをありのままに捉えるBerelsonによる内容分析の技法を用いて分析した.結論として生活障害をもちながら地域で暮らす高齢者の「生活の折り合い」概念は,「身体的機能障害によって変化した日々の生活スタイルを修正し,以前の生活に近い状態,あるいは自分の望む生活を自立的に選択しながら老いの成熟へ向かう過程」と定義された.この概念は,地域看護における新しい看護支援概念であり,「楽しく過ごすが生活信条」「老いに伴う生活調整」「自己尊重感を保障する健康」「生活保障に対する安心感」の4主要因で構成されていた.生活の折り合いの過程では,この主要因が絡み合い,肯定的認識と否定的認識との心的葛藤を伴う高齢者自身の心の仕事として意味をもっている.構成する4主要因は,地域で暮らす高齢者の日々の生活における個別支援への方略を提供するものであると考える.
  • 高﨑 絹子, 千葉 由美, 中馬 妙子, 大谷 遊子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 131-137
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    全国の自治体類型別に歯科保健事業に関わる専門職の配置状況,高齢者への歯科保健事業の実施状況,および歯科保健事業の評価などについて調査分析し,以下の結果を得た.なお,分析対象数は860(回収数26.4%)である.(1)歯科保健事業に関わる各職種の配置率は,常勤では保健婦が67.0%と最も高く,非常勤では歯科衛生士が47.7%と最も高くなっていた.また,特別区・政令市では歯科医師(常)・歯科衛生士(常)の配置率が高いのに対して,市,町,村では保健婦(常)が約60%から73%と高率に配置されていた.(2)高齢者歯科健事業を実施しているのは,有効回答852のうち427(50.1%)であり,特別区・政令市21(84.0%),市177(66.5%),町194(42.8%),村35(32.4%)であった.(3)自治体類型別の高齢者歯科保健事業に関わる各職種10万人当たりの平均人数は,どの職種でも人数が多い方から,村,町,市,特別区・政令市の順であった.(4)保健婦と歯科衛生士が共に高齢者歯科保健事業に参加している割合は,常勤で特別区・政令市が14.2%と最も低かった.(5)事業の評価の実施率は,全体では390(45.3%)であった.以上の結果をふまえて,今後の高齢者への歯科保健事業の展開方法を検討する必要がある.
  • 別所 遊子, 細谷 たき子, 長谷川 美香, 吉田 幸代, 安井 裕子, 花山 邦子, 玉木 篤子, 境井 早苗, 友安 賀代子, 笠井 み ...
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 138-141
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    福井県K市において,1992年度に社会福祉協議会が中心となり県保健所と市の保健婦,市内の精神科病院の医師,大学研究者が協同で,在宅高齢者全員を対象とした生活と健康に関する実態調査を実施した.その時に痴呆症と診断された201名を対象として,4年後の1996年度に追跡調査を実施した結果,家に引きこもりがちな痴呆症高齢者の身体的・心理社会的機能の活性化と生活満足感の増大,および痴呆症高齢者とその家族を支援する地域ネットワークの必要性が認識された.1997年度に,保健所保健婦が調整役となり,市保健婦と社会福祉協議会,研究者とが協働して,在宅痴呆症高齢者のための地域リハビリ教室を企画した.市内医療機関,福祉施設の介護職員,地区民生委員,ボランティア等に協力を依頼し,市内2か所の公民館でそれぞれ約15名ずつの参加者を対象にして10か月間教室を運営し,試行的に活動成果を評価した,その結果をふまえて,1998年度に回数を増やして教室を実施し,成果を評価した.教室に参加した高齢者には,心理社会的機能の改善を主とした成果が,また保健・医療の専門職には,他の職種の専門性への理解,痴呆症高齢者の見方,関わり方の変化などの成果がもたらされた.1999年度以降,教室はK市の機能訓練事業として位置付けられ,市内外に新たな活動が波及した.本報告では,地域リハビリ教室の企画と運営,成果の評価,および活動費の獲得,事業化の過程と,そこでの保健・福祉専門職,地域保健福祉活動員,研究者,ボランティアの協働について報告する.
  • 佐伯 和子, 和泉 比佐子, 加藤 欣子, 平野 憲子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 142-149
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健婦の地域の看護アセスメント力の向上を図るために,その認識を明らかにすることを目的とした.方法:対象は実習指導を担当した保健婦で,地域を把握していると考えられた3年以上の地域での活動経験のある者で,協力の承諾が得られた4名に半構成面接を行った.面接は了解を得てテープに録音し,逐語記録を作成した.データの分析は,グラウンデットセオリーを参考にして,中核となる認識を構造化し,妥当性と信頼性を検討した.結果:地域を看護アセスメントすることの目的と必要性は,《活動の根拠》を明確にし,《計画的な業務遂行》とチーム内での《ニーズの共有》があげられた.アセスメントの内容では,《全体的客観的な地域の把握》,特に住民の《生活実態の把握》であり,一方,《保健事業の課題》を明らかにすることという認識もみられた.しかし《系統的なアセスメント枠組みは不明確》であった.データについての考え方と方法では,現場の実際や実感を重視する《現場主義》がみられ,《住民の生の声が大切》で,《個から地域へ》と発展させようとする姿勢があった.データ化の段階では,《系統的なアセスメント能力の不足》,《質的データの未活用》,《量的データ処理の弱さ》がみられた.現場で簡便に利用できる《アセスメントツールへの期待》がみられた.アセスメントを実施することによる結果は,《仕事を実感》し,住民の《ニーズにそった事業》の実施,《施策化への参画》の可能性,《円滑なチームワーク》につながると考えられていた.活動におけるアセスメントの位置づけは,《重要性大》であるが,《非日常的な業務》,《困難な作業》とみなされていた.さらに,《地区診断と地域の看護アセスメントに隔たり》があると認識されていた.結論:保健婦の地域の看護アセスメント能力を向上させるためには,地域の看護アセスメントと地区診断との考え方を区別し,地域全体のアセスメントと事業実施のためのアセスメントの違いを理解して,アセスメントを活用することが重要である.また,地域の看護アセスメントの困難性の解決のためには,アセスメントの方法論の確立が期待される.
  • 中丸 弘子, 赤井 俊幸
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 150-155
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健室に訪れる児童生徒の健康問題は,病気やけがばかりではなく多様で,重症度・緊急度もそれぞれが個別で異なっている.保健室の養護教諭は,1名配置が原則であるが,30学級以上の大規模校と教育等の困難校は2名配置になっている.したがって,養護教諭は保健室に訪れた児童生徒には1人で対応するので,訪室する他の者にも同時に並行して観察しながらの対応をしている.そこで,養護教諭は,保健室を訪れる児童生徒にはどういう情報を得て判断をし,対応しているか,養護教諭が捉えている児童生徒の健康問題の視点および養護診断過程について明らかにしたいと考えた.方法:観察調査.観察内容:保健室の場で,訪れた児童生徒に養護教諭が対応する場面.調査時期:1998年5〜9月(休業日は除く).調査校:H県,公立の小・中・高等学校,計10校(うち,養護教諭2名配置は3校).結果:養護教諭は,児童生徒が保健室に入って来る状態も情報に入れて,「傷病の有無」と健康レベルを観察し,教育面と医療面の2領域で即時に判断をし,その時々の場の重症度,緊急度の高いほうから対応していることがわかった.
  • 福田 由紀子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 156-162
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,母親の1歳6か月健診受診の目的,満足度,児以外の不安内容の実態を調査し,その地域のニーズと内容,支援のあり方について評価,検討することである.研究方法:1998年9〜11月までにN保健所管内で行われた1歳6か月健診(健診と略す)に訪れる乳児の母親240人にアンケート調査,不安内容による健診受診の目的と満足度の分析を行った.結果および考察:育児上の不安「あり」が157人(65.4%),「全くなし」が83人(34.6%)であった.育児不安の内容では,「児についての不安」をもっている母親が116人(73.9%),「児以外の不安」をもっている母親が41人(26.1%)であった.具体的な内容は,児については「便秘がちである」「湿疹がひどい」などの身体面での育児不安が多く,児以外のものでは,「育児をすることで自分の時間や心にゆとりがもてない」という母親自身の心理面での心配が多く見られた.健診の期待については,「子どもの健康や発達を確認するために行こうと思っている」という母親は,234人(97.5%)で最も多く,次いで「子育てで迷ったことや心配なことを相談しようと思っている」という人が,105人(43.8%)であった.母親の不安の内容とその満足度については,児以外についての不安をもつ母親たちは,健診において「子育てで迷ったことや心配なことを相談しようと思っている」と答えた割合が児についての不安をもっている群に比し有意に低かった.健診に満足している母親たちは「心配や不安の解決のきっかけをつかめた」,「自分の育児方法を認められ,自信がついた」と答えている割合が有意に高かった.これより,現在の1歳6か月健診は児についての不安解消にはある程度母親に評価されているが,母親の児以外の不安に対する配慮がまだ不十分であることを示唆している.結論:1.1歳6か月健診を,ほぼ全員の母親が子どもの健康や発達を確認するために行うと認識していた.2.1歳6か月健診時における母親の不安の内容とその満足度についての検討では,育児について不安をもつ母親の26%が児以外についての不安をもっていた.3.母親のニーズを地域ごとに吸い上げる調査研究の推進と,母親自身を対象としたケアする場を構築する必要性が示唆された.
  • 山崎 洋子, 山岸 春江, 太田 真里子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 163-170
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,市町村の福祉分野で活動する保健婦の活動の実態と今後の課題を明らかにすることを目的とした.現在山梨県の福祉分野に所属する保健婦30人のうち,調査に同意の得られた13市町村14人の保健婦とその上司を対象とした.14人の保健婦のうち,12人は保健婦としての職歴が5年以上あり,所属は福祉事務所,在宅介護支援センター,社会福祉協議会などであった.まず,保健婦の業務の実態を掴むために3日間の業務をたずねた.さらに,面接により,保健婦自身と直属の上司双方から,活動の成果や福祉サービスへの影響,今後の課題について聞き取り調査した.その結果,業務の内容は,介護保険の申請受けつけ,認定調査,ケアプラン作成など介護保険に関わる業務,住民からの介護相談,ケース連絡や庁舎内連絡などの連絡調整,研修やサービス調整会議などの会議,家庭訪問,ヘルパー援助などであった.その活動の成果として保健婦自身は,連携の推進や福祉サービスの窓口の役割,個別援助事例でのサービスの調整などをあげ,直属の上司は,保健医療面の専門性やサービスの窓口機能,職員の意識改革などを成果に上げていた.市町村の福祉分野の保健婦は,保健分野で培われた看護専門職としての知識や技術を駆使して住民の福祉ニーズに応えようとしており,保健婦の上司は,保健婦のもつ保健医療面の知識や技術を高く評価していることが確認された.今後の課題として,保健婦の福祉分野での活動実績を協働する他の職員や他職種にわかりやすく示すような取り組みと,福祉分野での実践の成果を保健分野の保健婦活動に還元するような働きかけが望まれる.
  • 清水 洋子, 福島 道子, 高村 寿子, 郷間 悦子, 星野 明子, 成木 弘子, 柳澤 尚代
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 171-175
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,地域看護の活動方針や健康教育の計画・実践・評価を行うための科学的なアプローチの手法を検討するため,プリシード・プロシード・モデル(以下,MIDORIモデル)およびヒアリング方法としてフォーカス・グループ・インタビュー法(以下,FGI)に着目し,これらの適用可能性を検討することをねらいとした.今回はA県B市K地区の中年婦人を対象として,老後生活に焦点を当てた住民のニーズを把握するため,MIDORIモデルの第1段階(社会診断)としてFGI法を用いてデータ収集した.得られた質的情報はMIDORIモデルを用いて分析した.本稿は,それらの活用結果と適用可能性について報告したい.1.MIDORIモデルとFGI法を活用した結果,K地区中年婦人の老後生活に備えて保健婦が活動すべき点として,「QOL(他者と交流したり,互いに助け合うことを通して安心して老後を迎え,自立した老後生活を送り,丈夫で長生きをする)」の実現をめざして,「老いを実感して受け入れる(準備因子)」,「高齢を体験する;たとえば高齢者疑似体験など(強化因子)」,「交流の場がある(実現因子)」に働きかけることが求められていると考えられた.2.MIDORIモデルを用いてデータを分析した結果,同モデルに政策や環境に関する枠組み(「強化因子」「実現因子」「環境」)があるため,健康教育が個人の行動変容のみならず,環境に働きかける必要性とその具体的内容が明確になり,健康教育の計画がより具体化することが明らかとなり,保健活動における有用性が示唆された.3.FGI法を用いて調査を行った結果,「QOL」の項目など個々の参加者の意見だけでなく,グループとして意見を確認することができたこと,対象から「ぜひこのような話し合える機会を続けて欲しい」など,調査に対する肯定的な意見が出され,住民のニーズを把握するための調査法として有効であると考えられた.
  • 大須賀 惠子, 泉 明美, 田川 信正
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 176-181
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:骨粗鬆症検診を自主的に受診した住民の,肥満と骨密度との関連を明らかにし,保健指導のあり方を考える.対象と方法:町のイベント時に実施した骨粗鬆症検診を受診した30〜70歳代の女性151名を対象者とし,骨密度測定および生活習慣等に関する自記式調査(厚生省骨粗鬆症検診マニュアルの問診票に準じた全18項目)を実施・分析した.骨密度測定は,超音波式骨密度測定装置(Lunar社A-1000+)を用い右足踵骨で行った.結果:1)本研究においては,肥満度body mass index(BMI)に注目し,骨密度および生活習慣等に関する自記式調査内容との関連を分析したところ,BMI24.2以上群では,骨粗鬆症に随伴する自覚症状の出現率が有意に高いという結果が得られた.2)肥満者(BMI24.2以上)の骨密度に関する要精検率を年齢別にみたところ,50歳未満者では要精検者がなかったが,60歳以上になると肥満者にも要精検者が高い率で現われており,肥満でない者(BMI24.2未満)との差はほとんどなくなっていることがわかった.体重増加は,骨密度を高める関係にあると一般的に考えられているが,本調査においては60歳以上になるとこの関係は見られなくなった.以上のことから,肥満者(BMI24.2以上)を,年齢によらず骨粗鬆症のhigh risk群として位置付け,適切な保健指導を実施することが望ましいと考える.
  • 小長谷 百絵, 中馬 妙子, 富田 真佐子, 谷口 好美, 千葉 由美, 高﨑 絹子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 182-186
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    高齢者虐待の問題は,ケアの場が病院や施設から在宅に移行するにつれ,今後さらに増加することが予想される.高齢者虐待はスウェーデン,アメリカに比べて,日本では被害老人を擁護する支援システムが確立していない.この問題に対して,「高齢者虐待予防支援センター(代表・高崎絹子)による,高齢者虐待の電話相談「サポートライン」の活動を開始した.この電話相談は,電話の「かけ手」を支えることのほかに,専門職が行う電話相談であるため,老人看護にまつわる知識や技術の提供も目的としている.この研究の目的は,平成8年9月から平成12年2月末までの相談延べ件数160件のうち,高齢者虐待と判断した122例の高齢者および相談者の概要を報告し,さらに電話相談の対応を分析,看護職が行う電話相談のあり方を考察することである.以下にその結果を示す.相談者の内訳は,虐待の当事者(被虐待老人あるいは虐待者)は41例,第三者は81例であった.虐待者と思われる人として,息子・嫁が49名,娘27名,配偶者10名(上位3位)である.被害者の性別は男性26名(20%),女性96名(80%)である.被害者の年齢は,80〜84歳が31名,65〜69歳が20名,75〜79歳が18名(上位3位)の順である.主な虐待の種類は,情緒的・心理的虐待が68例,金銭的・物質的搾取が46例,介護拒否が35例,身体的虐待が32例(重複)である.虐待電話相談の実際の対応をKJ法により分類カテゴリー化し,次の4つの項目が抽出された.I.カウンセリングを行う,II.社会資源を提示し活用を勧める,III.専門家の助言,進言をする,IV.継続してつながりをもてるよう調整する,の4項目である.以上の結果から,電話相談の機能には,1)相談者が信条を語ることによる重荷おろしの役割,2)相談者の虐待への考え方の見直しや対処方法の発見への援助の役割,3)継続した接点を作ることによる孤立または無援の状態からの救いの機能があると考えられた.
  • 伊藤 美樹子, 吉田 綾, 古屋 由美子, 三上 洋
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 187-192
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    学校週5日制の実施などにより,子どもたちが学校外で生活する時間は延長し,家庭や地域での生活は重要になってくる.一方,これまで疾患や障害をもつ児童生徒の学校外の生活は社会性が乏しく,かつ親が抱え込んでいることが多いことが明らかにされてきた.本研究では,そうした障害病児と家族の家庭生活や地域生活など学校外の生活について,夏休みに焦点をあてて実状を明らかにし,地域生活の充実を図る手だてを考えていくための基礎資料とすることを目的に調査を行った.調査は,普通校の小中学校と養護学校の小学部・中学部に在籍する疾患・障害のある子どもの母親164名を対象に,無記名の自記式質問紙調査を実施した.分析対象となったのは101名であった.主な調査項目は子どもの要介助度,介助状況,子どもの夏休みの過ごし方,子どもと家族のイベントである.結果,疾病・障害をもつ子どものほとんどは,夏休み中は家族とすごしていた.また旅行や帰省などの家族イベントについては,8割以上が経験をしていた.一方,半数以上の子どもは,定期検診や機能訓練に通うなど,疾患や障害の管理に関わっており,それ自体が主要な外出の機会となっていた.また「学校主催」や「当事者や親の会主催」の行事への参加率と比べて,「自治会や子供会主催」の地域行事への参加は低くなっていた.夏休み中は,障害病児は社会参加の機会や家族以外の人と関わる機会は乏しく,社会性をのばせるような環境が学校外の生活の中に整っていないことが明らかになった.子どもの主たる介助者は母親がほとんどであった.主介助者の平均睡眠時間は短く,肩こりや起床時の疲労感などの身体症状をほとんどの者が訴えていた.夏休み中にはさらに介助や家事が非常に増えたと感じる者が3割にのぼり,平時よりも介助・家事の負担が増加していた.こうした介助・家事に対するサポートは,配偶者や子どもが主たる提供源になっており,家族同士で補完して対処していた.
  • 都筑 千景, 金川 克子
    原稿種別: 本文
    2001 年 3 巻 1 号 p. 193-198
    発行日: 2001/03/01
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:出産後から4か月までの間に母親に生じた育児上の不安とその解消方法,育児情報源について明らかにすることを目的とした.方法と対象:対象者はH県I市に居住する平成10年4〜6月の間に乳児健診に来所した母親274人であり,健診時に自記式質問紙を配布し,192人から回答を得た(有効回収率70.1%).主な質問項目は,出産後から産後1か月まで,産後1か月から産後4か月までの2時点における育児上の不安や心配事の大きさと内容および時期,不安の解消方法,主に利用している育児情報源である.結果:1)第1子母親は第2子以上母親よりも有意に不安が高く,育児に対する自信がなかった.不安は第1子母親では比較的早期に出現し,体や病気に関することと授乳に関することが多くあげられていた.また,第2子以上母親では産後3か月頃まで出現し,体や病気に関することのほか,特に上の子との関係に関することが多くあげられていた.2)不安や心配事は,第1子母親のほうが第2子以上母親より解決した人の割合が多かった.また,両者が不安解消のためにとった方法には異なりがみられた.3)育児に関する情報源として一番多く利用されているのは「人」であったが,その相手は第1子母親が「父母・義父母」,第2子母親は「友人」と異なっていた.次いで利用されていた育児書でも,第1子母親の6割以上が利用しているのに対し,第2子以上母親は3割程度の利用と差がみられた.結論:第1子母親と第2子以上母親に生じた育児上の不安とその解消方法,さらに利用している育児情報源には異なりがあることが明らかになった.初産の母親はもちろんのこと,すでに子をもつ母親についてもそれぞれに合った育児支援方法を検討していく必要があることが示唆された.
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