日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
24 巻, 3 号
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研究報告
  • 太田 あゆ美, 春山 早苗
    2021 年 24 巻 3 号 p. 4-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:統括保健師が配置されていない小規模町村の部署横断的な保健活動における保健師の活動内容を明らかにし,住民のニーズを充足する部署横断的な保健活動を推進するための小規模町村保健師の活動の方法を検討する.

    方法:小規模町村のうち統括保健師を配置していない町村に従事している保健師4人におのおの過去3年以内の部署横断的な保健活動を1事例ずつ半構造化面接により聴取し,質的記述的に分析した.

    結果:保健師の活動内容は4事例から42の活動内容のコードが抽出され,26のサブカテゴリー,15のカテゴリー,4のコアカテゴリーに分類された.コアカテゴリーは【他職種とおのおのが重視することをすり合わせるための活動】【関係性を保ちながら他者の協力を得て必要な役割を担ってもらうための活動】【統括保健師という役割や職位がないなかで活動するためにコミュニケーションの方法や機会を駆使した活動】【統括保健師が配置されていないなかで部署横断的な活動を実現するために上司や主管部署にリーダーシップを発揮してもらう活動】であった.

    考察:小規模町村では,統括保健師という部署横断的な活動を調整する者がおらず課題があるなか,統括保健師の役割や職位のない保健師が,協働部署と所属部署に対して,段階的な調整や上司や実働する職員に説明する順番やタイミングを見計らう等の戦略的な活動を行うことにより部署横断的な保健活動を推進していく必要がある.

  • 多田 美由貴, 岡久 玲子, 岩本 里織, 松下 恭子
    2021 年 24 巻 3 号 p. 13-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:健康や医療に関する情報を入手,理解,評価,活用して健康に結びつくよりよい意思決定ができる力であるヘルスリテラシーが健康を決める力として注目されている.本研究では,乳幼児をもつ母親の育児に関するヘルスリテラシー(以下,育児リテラシー)を明確化することを目的とする.

    方法:A県の子育て支援施設を利用しており,育児リテラシーを発揮して育児ができていると推薦された乳幼児をもつ母親10人を研究参加者とした.半構成的面接調査を実施し,母親の育児リテラシーについて,質的帰納的に分析した.

    結果:乳幼児をもつ母親の育児リテラシーとして,【子育て情報にアンテナを張る】【複数の子育て情報源にアクセスする】【子育て情報を理解する】【子育て情報の信頼性を判断する】【自分や子どもに必要な子育て情報であるか判断する】【子育て情報を自分の子育てに取り入れる】の6つのカテゴリーが抽出された.

    考察:乳幼児をもつ母親の育児リテラシーの内容に特徴的な要素として【子育て情報にアンテナを張る】【自分や子どもに必要な子育て情報であるか判断する】の2カテゴリーが,ヘルスリテラシーに共通する要素として残り4カテゴリーが明確化された.保健師は,早期からの育児リテラシー教育とともに,育児相談等における環境づくりや根拠を基にしたアドバイス,また,母親に対するねぎらいの言葉をかける等の支援の必要性が示唆された.

  • 仲野 宏子, 荒木田 美香子, 長弘 千恵, 小笹 美子
    2021 年 24 巻 3 号 p. 23-33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:60歳代地域在住者の自覚的疲労感と家庭内役割との関係を明らかにすることである.

    方法:A町在住の60歳代4,970人を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.家庭内役割を孫の世話,介護とし,調査内容は,自覚的疲労感は蓄積的疲労徴候調査の一部を除く72項目,家庭内役割の状況,生活状況(健康意識・暮らし向き等),保健行動(運動習慣等),健康状態(腰痛や肩痛等)とし,自覚的疲労感を従属変数として二項ロジスティック回帰分析にて検討した.

    結果:回収した2,052人(回収率41.2%)のうち記入欠損を除く1,990人を分析対象とした.家庭内役割は,孫の世話のみあり男性11.1%,女性16.3%,介護のみあり男性13.6%,女性15.2%,孫の世話と介護の両方あり男性2.6%,女性3.2%であった.男性の身体的・精神的疲労感に家庭内役割は関連していなかった.女性の身体的疲労感には,介護のみあり(OR=2.52,95%CI:1.57 ~ 4.05),孫の世話と介護の両方あり(OR=3.16,95%CI:1.39 ~ 7.20),精神的疲労感には,介護のみあり(OR=1.72,95%CI:1.07 ~ 2.75)は関連が示された.男女ともに身体的・精神的疲労感には健康意識,暮らし向き,運動習慣,腰痛や肩痛が関連していた.

    考察:60歳代地域住民の自覚的疲労感と家庭内役割との関連は性別で異なることから,性差を考慮した理解が必要であることが示唆された.

資料
  • ─A県市町の管理期保健師のインタビュー分析─
    塩澤 百合子, 野尻 由佳, 会沢 紀子, 板垣 昭代, 安藤 はるか
    2021 年 24 巻 3 号 p. 34-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    目的:市町の管理期保健師が期待する新人保健師の実践能力について明らかにする.

    方法:A県内市町の管理期の保健師で,公募により協力が得られた8人を対象に半構造化面接を実施し,新人保健師に期待する実践能力に着目し質的記述的に分析した.

    結果:分析の結果,コード数88から13のサブカテゴリーと4つのカテゴリー①組織のなかで円滑なコミュニケーションを図る②動機と前向きな姿勢をもち,取り組む③住民に関心を寄せ,生活の視点からニーズを予測して対象への支援を主体的に行う④地域特性を生かし他者とつながり活動するが生成された.①②は“社会や組織で働くうえでの基本的な能力”で,③④は“保健師としての基盤を形成する能力”であった.

    考察:新人保健師には,社会人としての姿勢や態度面を中心とした“社会や組織で働くうえでの基本的な能力”を基盤として,個別支援から地域活動を展開する“保健師としての基盤を形成する能力”を求めていることが示唆され,看護基礎教育のなかで意識づけていくことが必要であると考える.保健師基礎教育で実施している個別支援から地域をとらえ地域診断を基盤に地域活動を展開する学習の必要性が再確認でき,教育の充実を図るとともに自分から質問し考え,主体性を高める教育の必要性が示唆された.教育機関は時代が求めている新人保健師の傾向をとらえて到達目標と合わせて基礎教育を行うよう行政保健師と情報共有していく必要があると考える.

  • 塩澤 百合子
    2021 年 24 巻 3 号 p. 1-
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/28
    ジャーナル フリー
第24回学術集会報告:学術集会長講演
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