日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
14 巻, 2 号
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  • 吉田 礼維子, 和泉 比佐子, 片倉 洋子, 波川 京子
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 5-13
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:介護予防システムを推進する保健師の活動指標を開発し,妥当性・信頼性を検証することを目的とする.方法:市町村および地域包括支援センターの保健師1,612人を対象に郵送による質問紙調査を実施した.再調査は,同意が得られた141人を対象に実施した.調査内容は,基本属性,活動指標案,連携活動評価尺度である.結果:509人の有効回答(回答率31.6%)と再調査の91人の有効回答(回答率64.5%)を分析した.活動指標案42項目の因子分析の結果,「住民の主体性を促す基盤づくり」「情報提供と評価による介護予防活動の強化」「多様な方法による介護予防ニーズの把握」「介護予防の課題・目標の共有」の4因子29項目から構成される活動指標を開発した.累積寄与率は51.9%で,内容妥当性を確保できた.活動指標全体のCronbach α信頼係数は0.95,各因子は0.80〜0.90で,内的整合性を確保できた.再調査との級内相関係数は0.84で安定性が確認された.結論:4因子29項目からなる介護予防システムを推進する保健師の活動指標を開発し,妥当性・信頼性を確認することができた.活動指標の項目に基づき介護予防システムを推進する活動の実施状況を評価し,意図的な活動を展開することで,今後の活動を方向づける指標となりうることが示唆された.活動指標は,介護予防システムを推進する保健師の活動として特徴的な内容を含んだ指標であると考える.
  • 石塚 裕美子, 永田 智子, 戸村 ひかり, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 14-23
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:高齢患者の計画外再入院の予防策について検討することを目的とし,再入院に至る経過の調査を行った.方法:2009年8〜10月に都内の急性期病院の循環器内科・呼吸器内科病棟に入院した全患者のうち,65歳以上の再入院患者のなかで,前回退院日から6か月未満に計画外再入院をした患者から,拒否・死亡等を除いた29人を分析対象者とした.患者・家族への構造化面接に加え,診療録・医師・看護師から情報を収集し,再入院に至る経過を分類した.結果:再入院に至る経過は,「自覚症状はあったが異常所見なし」「不適切なケア・体調管理による病状悪化」「避けられない病状悪化だが,症状出現後の早期対応なし」「避けられない疾患発症・病状悪化で,症状出現後は早期対応」できていた群に分類された.考察:再入院に至る経過の分類から,患者の状態に応じた退院時指導,医療のフォローアップ体制の調整,医療者間の情報伝達の促進が,高齢者の再入院の予防策として有効と考えられた.
  • 佐々木 彩子, 上別府 圭子
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 24-31
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健師に男性への門戸が開放され15年以上経過したが,男性保健師については研究が行われていないのが現状である.そこで本研究の目的は,男性保健師が性別と関係づけている職業上の経験を明らかにすることである.方法:保健師として就業経験をもつ12人の男性保健師を対象に,半構造化面接を実施した.働くうえで男性であることを感じたと話した10人の男性保健師を分析対象とし,経験の変化に着目して,修正版グラウンデッドセオリーアプローチを参考に分析を行った.結果:男性保健師は職業遂行のなかで,仕事のやりにくさ,やりにくさに対する対処的・予防的行動,男性であることの発揮,男性ならではの仕事の仕方の確立などの体験を段階的にすることが示された.またこの展開に伴い,男性保健師が仕事をするうえで,男性であることをどう受け止めているかという性別の認識に変化がみられた.そして,職業を続けていくうえで周囲のサポートなどが助けとなることが語られた.保健師特有の経験として,女性や母子が対象である場合,電話相談,家庭訪問という業務形態で,問題を抱えやすいことが明らかとなった.結論:男性保健師に対する認知の低さや男性の一般的イメージを感じた男性保健師自身の経験が,職業上の問題に影響していると考えられる.男性保健師が職業上の問題に対応し,職業を継続するには,女性保健師の協力が必要であり,男性女性双方の保健師が専門職として協働することが期待される.
  • 廣田 真由美, 永田 智子, 戸村 ひかり, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 32-42
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:入院中に退院支援を受けた学齢未満の重症児の養育者が,在宅移行期に認識した退院後の問題と問題発生の理由について検討し,効果的な支援を行うための示唆を得ることを目的とする.方法:関東圏の3つの特定機能病院または小児専門病院の退院支援看護師3人と,これらの退院支援看護師から退院支援を受けた重症児の養育者10人に対して半構造化面接を行い,質的記述的に分析を行った.結果:養育者が認識した退院後の問題として,《児の体調管理・ケアについての問題》と《児とともに暮らしていくことに関連する問題》が挙げられた.問題発生の理由は「重症児の特徴に関連するもの」「養育者の状況に関連するもの」「院内での支援に関連するもの」「資源の不足によるもの」に大別された.考察:退院後の状況を見据えた入院中の準備,退院後のサービス量を柔軟に増大できる仕組みづくり,退院支援看護師と外来看護師による在宅療養支援の継続,レスパイトケアの充実,きょうだい児への支援などが今後の課題であることが示された.
  • 有本 梓, 横山 由美, 西垣 佳織, 臺 有桂, 馬場 千恵, 新井 志穂, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 43-52
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点を明らかにする.方法:重症児のみを対象とするA訪問看護ステーションの訪問看護師6人を対象に,2007年9月にグループ面接を行った.質的記述的分析を参考に,訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点についてコード化し,類似したコードをまとめてサブカテゴリーを,類似したサブカテゴリーをまとめてカテゴリーを作成した.結果:訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点は,支援するうえで重要ととらえている情報と支援姿勢に二分された.重要ととらえている情報は,【母親のケア能力】【母親による子の受け止め方】【母親の性格】【母親の心理状態】【母親の身体状態】【子の身体的状況】【子の能力】【在宅療養への家族のサポート体制】【家族の訪問看護に対する気持ち】【母親と訪問看護師との関係】からなっていた.訪問看護の支援姿勢として,【母親のペースに合わせて段階的にかかわる】【子と家族の生活のなかで子育てを共有する】【長期的なケアを見込み母親と社会をつなぐ】が明らかになった.結論:在宅重症児への訪問看護では,(1)母親の心理状態や生活状態の理解,(2)子や家族の状況に応じた母親のケア能力と家族のサポート体制の強化,(3)母親のペースでの関係構築,(4)長期的視点での関係機関と母親との関係構築が重要と考えられた.
  • 田髙 悦子, 河野 あゆみ, 国井 由生子, 藤田 倶子, 丸尾 智美
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 53-61
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:都市部の一人暮らし男性高齢者ができる限り長く地域で自立した生活を送るうえで鍵となるセルフケアと地域交流に着眼し,高齢者個人のセルフケアの向上と地域との交流の確立に向けた一方策として自立支援プログラムを開発し,その有効性を検証する.方法:研究対象は大都市在住一人暮らし男性高齢者22人ならびに地区活動の推進役を担う地域住民12人である.研究方法は介入研究であり,介入方法は人間の行動の動機づけにかかる自己決定理論に基づく,心の健康,身体の健康,地域交流の各テーマからなるグループワークセッションである.結果:介入プログラムによる一人暮らし男性高齢者の健康管理に対するセルフエフィカシーへの効果については,'健康を守るために必要な情報を集められる'と'孤立しないよう地域の人と交われる'について,ベースラインに比してフォロアップで上昇する傾向が確認された.また,地域とのつながりに対する重要度,関心度への効果については,ベースラインに比してフォロアップでおのおの有意な上昇が確認された.結論:高齢者個人のセルフケアの向上と地域との交流の確立に向けた本プログラムは,一人暮らし男性高齢者における心身の健康づくりと地域交流を確立するための動機づけの支援に資するプログラムであることが示唆された.
  • 大森 純子, 小林 真朝, 今松 友紀, 龍 里奈
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 62-71
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:新興住宅地に居住する50〜60歳代女性を対象とした,近隣他者との交流を促すプログラムの効果と意義を検討する.方法:プログラムは,先行研究より示された,前期高齢女性のQOLを高める身近な他者との交流の特徴を示す概念『気遣い合い的日常交流』と,その交流の相互行為を示す構成概念「日常的相互関心」「共感的相互理解」を核に,居住地域の暮らしのなかでの主体的な健康増進を意識づける構成内容とした.実施の直前と直後,1・6・12か月後にQOLの認識を問う質問紙調査,直後と6か月後に日常生活と近隣他者との交流に関する意識の変化を問うインタビューを行った.結果・考察:参加者24人のうち全調査に回答した者は19人,平均年齢59.47(SD4.98)歳であった.QOLの認識は,心理・社会的側面,すなわち幸福感と社会関係の認識において6か月後と12か月後に有意な変化がみられた.その理由に,直後から6か月に起こった日常生活と近隣他者との交流に関する意識の変化が考えられた.プログラムと自主グループの活動を通じ,未来への前向きな姿勢,仲間意識,近隣コミュニティへの関心や愛着,住民としての使命感と行動等,10年後を見据えた前向きな変化がみられた.結論:プログラムは,個人・集団・地域の多次元レベルの効果をねらえる,中高年女性のQOLの向上と維持を支援する近隣コミュニティ単位の公衆衛生活動として有用性が確認された.
  • 大塚 敏子, 荒木田 美香子, 三上 洋
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 72-81
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:高校生の将来喫煙のリスクに対応した喫煙防止教育プログラムを考案し,将来喫煙のリスク群ごとにその効果を検証することを目的とした.方法:便宜的に抽出された近畿3府県の3高等学校の1年生548人(男子234人,女子314人)を対象に,考案した喫煙防止教育の実施および自記式質問紙調査(実施前後,実施6か月後)による評価を行った.質問項目は性別,喫煙行動,将来の喫煙意思,喫煙の勧めを断る自信,禁煙勧奨意欲,喫煙者の禁煙への関心等である.教育はグループワークを含む50分間の講義と,事前調査時点の喫煙行動と将来の喫煙意思から把握した将来喫煙のリスク(低,中,高リスク群に分類)に応じて行うホームワークであり,教育の効果を将来喫煙のリスク群ごとに設けた教育目標に沿って検証した.結果:低リスク群では本プログラムによる有意な変化はほとんどみられなかった.中リスク群では男子の将来の喫煙意思で有意な改善がみられたが,それ以外の項目では有意な変化はなかった.高リスク群では将来の喫煙意思,禁煙への関心等で有意な改善がみられた.結論:本研究で行った生徒のリスクに対応した喫煙防止教育は中リスク群については効果が小さかったが,高リスク群には一定の効果が認められたと考えられる.今後中リスク群への教育効果の向上を目指し,中リスク群で重要な喫煙の勧めを断る自信等を強化する教育内容の再検討が必要である.
  • 草刈 由美子, 成瀬 昂, 尾形 玲美, 堀越 直子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 82-91
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:親を介護する息子介護者に焦点をあて,就労状況別の息子介護者の食事準備形態を明らかにする.食事準備者・食事準備形態別の食塩,食物繊維,アルコール摂取状況を把握し,必要な支援について記述する.方法:都内にある訪問看護ステーション,在宅療養支援診療所,居宅介護支援事業所,訪問介護事業所合わせて全26事業所に協力を依頼し,事業所を利用する息子介護者42人に対して構造化面接を行った.食塩,食物繊維,アルコール摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ)を用いて算出した.過少申告の基準に該当しない40人を解析対象とした.結果:息子介護者の現在の食事準備者は,38人(95.0%)が息子自身であった.そのうち,息子介護者が介護を始める前は親が食事準備者だった者が,22人(55.0%)であった.就労状況別の食事準備形態は,有職者では半数以上が調理済み食品を購入し家で食べる「中食」であったのに対し,無職者では自宅で料理し食べる「内食」が半数以上であった.現在の息子介護者の食事準備者と食事準備形態別では,「息子が準備・内食」群も「息子が準備・中食」群も食塩,アルコールの過剰摂取,食物繊維の摂取不足者割合が同じであった.結論:息子介護者に対しては,内食を勧めるだけでなく,食塩,食物繊維,アルコールの摂取まで含めた食事指導を,就労・介護状況に合わせて行う必要がある.
  • 水田 明子, 巽 あさみ
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 92-100
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:深刻なこころの健康問題を抱えた学生は増加しており,保健室担当者はその対応に困難を抱いている.そこで本研究は,小規模私立大学の保健室担当者がこころの健康問題を抱える大学生に対して行う健康相談の内容から,課題を明らかにすることを目的とした.方法:小・中.高等学校の養護教諭勤務経験(経験歴3年以上)をもつ,小規模私立大学の保健室担当者(非常勤)5人に平均69分の半構造化面接を実施した.研究方法は,舟島なをみによる看護概念創出法を用いてデータ分析を行った.結果:197の「大学生のこころの健康問題に対する相談-困難経験コード」が抽出され,6コアカテゴリが形成された.大学生に対する健康相談において,保健室担当者が抱える3つの困難を表す概念は,【学生のこころの健康問題の深刻化】【教職員に健康相談について理解と協力を得る困難】【こころの健康問題を抱える学生への対応の困難さ】であり,3つの課題を表す概念は,【青年期の精神的自立支援】【関係者との連携】【健康相談の組織的取り組み】であった.結論:学生のこころの健康問題は深刻化しており,保健室担当者は健康相談の対応に困難を抱えている現状が明らかになった.大学の保健室担当者に,青年期の精神的自立支援を行う役割があることを示唆している.健康相談を進める過程で,関係者と連携を図り組織的に取り組むことが重要である.
  • 中下 富子, 宮崎 有紀子, 上原 美子, 大野 絢子, 鎌田 尚子
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:知的障害特別支援学校の児童生徒を抱える家族のストレスやニーズ,ソーシャルサポートとその関連性について明らかにする.方法:知的障害特別支援学校児童生徒の家族594人を対象に,持ち帰り学校一括留置法による無記名自記式質問紙調査を実施した.回収数は453人(回収率76.3%)であり,436人(有効回答率73.4%)を分析対象とした.調査は情動的・行動的サポート尺度,サポート源尺度,ストレス尺度,家族ニーズ尺度を用いた.分析は,家族ニーズ尺度,サポート源尺度は因子分析を行った.知的障害児および家族の各尺度はt検定または一元配置分散分析,関連をPearson積率相関関係によって分析した.結果:核家族や,児が通院や服薬をしている家族ほどストレスが高い.児が自閉症,年齢が6〜11歳,12〜14歳の家族ほど,療育情報・相談,周囲の理解,療育環境整備へのニーズが高い.児の障害が重度,疾病が自閉症,服薬をしている児の家族ほど,また拡大家族や,母親が有職である家族ほどソーシャルサポートを受けていた.家族への情動的・行動的サポート,サポート源では家族,友達・近所,教育・医療機関,関係機関サポートとの間に正の相関が認められた。考察:家族支援のために関係する人々の情報交換や関係機関と連携した支援の重要性が示唆された.
  • 平賀 睦
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,遺族訪問における訪問看護師の役割を検討するため,訪問看護師から受けた遺族訪問の状況を,遺族自身がどのように認識し意味づけているか,経験を明らかにすることを目的とした.方法:訪問看護師から遺族訪問を受けたことのある17人の遺族を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.結果:遺族は訪問看護師による遺族訪問において7つに集約される状況を認識しており,その状況認識から【訪問看護師との人としてのつながりの再認識】【こころの安定化】【介護生活への区切り】【これからの生活へ前向きに臨む気持ちの獲得】という意味づけを行っていることが明らかとなった.考察:遺族訪問を行う訪問看護師には,遺族を気遣うことで介護生活に対する否定的な思いを肯定的に捉え直すこと,情緒的・社会的支援を行うこと,介護に関するものの清算をしたり感謝の言葉を真摯に受け止めることを通して,遺族のこころの整理を促し,これからの生活への橋渡しをする役割があることが示唆された.
  • 奥田 美恵, 時長 美希
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 122-129
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,精神障害者サポートグループにおいて用いられる看護職の支援技術にはどのようなものがあるかを明らかにすることである.精神障害者の参加するサポートグループにスタッフとして参加したことのある看護職5人を対象に,参加観察および半構成面接を行い,インタビュー内容を質的・因子探索的に分析した.看護職が精神障害者やグループに提供しているグループ支援技術として,〈気になる人を支援する〉〈メンバーを守る〉〈自己表出を支援する〉〈自分を見つめ客観視できるよう支援する〉〈成長を促す〉〈メンバーを受け止める〉〈対等にかかわる〉〈グループへの参加を支援する〉〈グループがメンバーを受け入れるよう支援する〉〈相互作用を促進する〉〈グループの枠を守る〉〈グループ活動を運営する〉〈グループで考えるよう支援する〉〈グループ活動をほかの支援活動と結びつける〉という14のカテゴリーが明らかになった.これらは,{精神障害者自身を支援する技術){精神障害者とグループをつなぐ技術}{個と個をつなぐ技術}{精神障害者グループにかかわる技術}に分類された.精神障害者であるメンバーに対して,グループという方法,場だからこそ提供されやすい支援技術は,メンバーの成長を促す支援と,〈対等にかかわる〉という支援技術であった.また,看護職が提供する支援技術には,ほかの職種が提供する支援技術と同様のカテゴリーが含まれていたが,メンバーを,疾患や障害・健康という視点でとらえる点,疾患の特徴をふまえ,その疾患をもつメンバーにとってのグループの意義を意識して個別の支援意図を組み合わせグループの場で支援する点,グループ活動の場だけでなく,その他の機会も含めて継続的に支援を行う点は,看護職の特有のものであった.
  • 仲村 秀子, 鈴木 知代, 佐藤 圭子, 福田 容史子
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:指導者と共に参加する新任期保健師保健指導技術研修で,新任期保健師が得た「学び」および「学びを助けた要因」を明らかにし,今後の研修方法について示唆を得る.方法:新任期保健師と指導者の発言内容,質問紙調査結果等より,「学び」「学びを助けた要因」を抽出した.抽出したデータを,類似する意味をもつものにまとめ,サブカテゴリ・カテゴリを抽出した.結果:「学び」は,【看護過程の実践】【支援の具体的な方法の獲得】【個別支援から地区活動への発展方法の理解】【専門職者としての姿勢の獲得】の4カテゴリであった.その中に12のサブカテゴリが含まれていた.「学びを助けた要因」は,【指導者と共に参加する研修形態】【研修プログラム】【新人を支える職場環境】【自己努力】の4カテゴリであった.そのなかに,10のサブカテゴリが含まれていた.考察:指導者と共に参加する研修形態を用いたことにより,新任期保健師は,研修日以外でも,家庭訪問前後等で指導者から指導を受けていた.研修への参加が【新人を支える職場環境】という波及効果も生んでいた.また,毎回グループワークを実施することにより,指導者以外の参加者からも学ぶことができていた.現在,保健師の分散配置が進み,新任期保健師が上司や先輩の実践を見て,知識や技術を身につけるのが困難な状況にあるなかで,有用な研修方法であると考えられた.
  • 大友 光恵, 包國 幸代, 坂梨 めぐみ, 大森 純子
    原稿種別: 本文
    2012 年 14 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:発達障害者のために地域ケアシステムを構築した1事例から,保健師がビジョニングをしながら活動を展開する過程に,どのような段階があるのかを明らかにすることを目的とした.方法:発達障害者の就労を見据えて,地域ケアシステムの構築に取り組んだA町保健師3人,保育士5人,家族会メンバー1人に半構成的インタビューを実施し,質的に分析をした.結果:A町の保健師活動(ビジョニング)の段階を分析した結果,6つの段階【関係者と地域のビジョンを描いてきた】【協働の経験を積み重ねてきた】【関係者をつなげてきた】【ビジョンを共有する場をつくってきた】【関係者の力を発揮させてきた】【発達障害者を見守る地域ケアシステムを定着させてきた】があった.結論:保健師は,地域ケアシステムの進展に応じて,6つの段階を重層的,発展的に用いていた.つまり,これは,住民と地域のあるべき姿を描き,協働でビジョンを成し遂げることができるよう,保健師が意図的な介入を積み重ねていく展開過程であると考えられた.ビジョニングをしながら保健師が活動を展開することで,共通のビジョンを描き活動する過程で,関係者に熱意を生じさせ,ビジョンを目指した協働が可能になることが示唆された.
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