日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
9 巻, 2 号
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  • 和泉 比佐子, 佐伯 和子, 藺牟田 洋美, 森 満
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 7-14
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    生活習慣の影響が検査値に現れると報告されている壮年前期(30〜49歳)の人々を対象に,高脂血症予防に関係する運動や食事の行動変容に影響を及ぼす自己効力感を測定する尺度を開発することを目的とした.壮年前期の高脂血症予防のための保健行動に対する自己効力感尺度の開発は2段階からなり,第1段階はインタビューから壮年前期の成人における高脂血症予防のための保健行動を明らかにし,尺度原案を作成した.尺度原案の内容妥当性を高めるために専門家7人による質問項目の妥当性の評価を行い,40項目からなる原案修正版を作成した.第2段階では2つの地方自治体職員を対象に,健診結果の配布と合わせて質問紙調査を行った.有効回答594人を分析に用い,尺度原案修正版40項目について因子分析を行った結果,3因子16項目からなる尺度が抽出された.3因子は「無理のない運動行動の変容」,「行動変容の拠りどころ」と「積極的な食行動の変容」と解釈した.尺度全体のCronbach's のα係数は0.855で,信頼性係数である再調査の級内相関係数は0.809であった.尺度得点と健康行動得点とは有意な関連を示した.尺度は健康行動と有意に関連しており,高脂血症予防のための保健行動を表していたといえる.また,尺度としての信頼性が高いことが確認された.しかし,調査において選択バイアスおよび応答バイアスが生じている可能性があった.
  • 齋藤 智子, 佐藤 由美
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 15-23
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:対応困難を生じている介護支援専門員に対して保健師が行う支援行為の意図を明らかにすることである.研究方法:NおよびG県内の市町村に所属し,介護支援専門員への支援実績のある保健師17名を対象に,半構成的面接によるインタビュー調査を実施した.対応困難を生じている介護支援専門員に対して保健師が行った支援経過に沿って,支援行為とその意図を聴取し,質的帰納的に分析を行った.結果:保健師の行う介護支援専門員への支援意図は,20カテゴリーが抽出され,それらは「支援の必要性の判断」,「支援の実施」,「支援の評価」,「地域支援体制拡充への発展」の局面に分類された.保健師はそれぞれの局面での判断を組み合わせながら介護支援専門員への支援を行っていた.また「支援の実施」には,介護支援専門員の<ケアマネジメント能力の向上を図る>と<ケアマネジメントを実施しやすくする>という意図があり,双方の側面からの支援行為に結び付けていた.考察:介護支援専門員への支援において保健師は,対応困難の要因を多様な側面から捉え,支援の必要性を判断していた.また,介護支援専門員が質の高いケアマネジメントを実施できるよう促すために,保健師がもつケアマネジメントや家族支援技術を活用していることが明らかになった.さらに介護支援専門員への支援においても,個別の課題を地域の共通課題として取り上げ,地域支援体制拡充への発展を図るという保健師の専門性を活かした意図の特徴がみられた.
  • 村山 洋史, 田口 敦子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 24-31
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健分野の住民組織の1つとして,行政養成型ボランティアである健康推進員が存在する.本研究は,健康推進員のもつ地域社会への態度に着目し,経験年数による比較とともにその関連要因を探索し,今後の健康推進員活動における組織づくりと行政による活動支援の手がかりを得ることを目的とした.方法:S県A市およびB市で活動する健康推進員604名を対象に,2005年9月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.結果:有効回答数は432票(有効回答率71.5%)であった.地域社会への態度尺度の因子分析を行った結果,「積極性」,「協同志向」の2因子に分かれた.これらはいずれも,経験年数9年以上群が1〜3年群に比べて有意に高かった.また,「積極性」は,1〜3年群,4〜8年群で養成講座修了時のやる気が高く,9年以上群で地区の区長(自治会長)が健康推進員活動に協力的であるほど高かった.「協同志向」は,1〜3年群,4〜8年群で養成講座修了時のやる気が高く,健康推進員仲間からのサポートが高いほど,すべての年数群で地域住民からのサポートが高いほど高かった.結論:健康推進員活動における組織づくりに関して,健康推進員同士のつながりを強化すること,地域住民との関わりがもてるような活動に参加してもらうことの重要性が示唆された.また,活動支援として,地区の区長(自治会長)の健康推進員活動への協力が得られるよう働きかけること,仲間,地域住民からのサポートを強化するような支援を行うことが重要であると考えられた.
  • 和久井 君江, 田高 悦子, 真田 弘美, 金川 克子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 32-36
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:大都市部独居高齢者における精神健康増進のためのプログラム開発にむけて,抑うつの割合を把握するとともに,関連要因を明らかにする.方法:東京都A特別区在住の65歳以上独居高齢者250名を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った.調査項目は,抑うつ(Geriatric Depression Scale-15),高次活動能力,ソーシャルネットワーク,保健医療福祉サービス周知度・利用度,社会参加度,外出頻度等である.解析は,抑うつの割合を把握したうえで,抑うつを従属変数,抑うつと有意な単相関関係がみられた各要因を独立変数とする重回帰分析を行った.結果:回答数は206名(回答率:82.4%),有効回答数は172名(有効回答率:68.8%)であった.対象者における,抑うつの割合は43.6%であり,年齢,性別を制御したうえで有意な関連がみられた要因は,独居期間,要介護度,ソーシャルネットワークの3項目であった.すなわち,抑うつが強いことと「独居期間が短いこと」,「要介護度が高いこと」,「ソーシャルネットワークが小さいこと」が各々有意に関連していた.結論:大都市部独居高齢者の抑うつは,他地域,他世帯類型に比して高い可能性が示唆された.今後,独居期間,要介護度,ソーシャルネットワークに着眼した具体的プログラムの検討が必要である.
  • 有本 梓
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 37-45
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:児童虐待に対する保健師活動に関する研究結果を整理し,今後の研究・実践上の課題を明らかにした.方法:1996〜2006年7月に発表された文献を対象に医学中央雑誌とMEDLINEを用いて検索し,得られた論文34本を対象とした.結果:研究結果は「保健師が関わる事例の特徴」,「保健師の支援内容と求められる知識・技術」,「保健師の新たな役割」に分類できた.保健師が関わる事例の多くは,母子保健活動の対象で,保健師が最初に関わり長期間継続支援する場合が多かった.支援内容は,虐待者・母親の精神的支援,子どもの発達・安全の確認は具体的に明らかになっていたが,家族支援,関係機関との連携・調整については具体的な内容は明らかではなかった.ケースマネジメントの知識・技術が求められており,保健師は職場や経験によらず,個別支援の方法,家族支援の方法に関する研修を希望していた.近年,児童福祉分野での役割も求められていた.研修や職場内外での協力体制等の環境上の課題も明らかとなった.考察:今後の課題として,(1)虐待予防に貢献するための母子保健事業の活用と評価,(2)家族支援に関する研究の必要性,(3)連携・調整,社会福祉の知識・技術に関する研究実践および研究成果の活用,(4)新たな役割に向けた研究の継続・充実,(5)研修の企画運営の工夫および職場の上司・同僚,関係機関との協力体制の確立,が考えられた.
  • 小寺 さやか, 岡本 玲子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 46-52
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,神経難病患者に対する保健師による早期からの支援方法の手がかりを得るため,軽症期にある神経難病患者の生活の編み直し(再編成)で見える頑張りの内容を記述的に明らかすることである.調査方法は,在宅療養中のパーキンソン病および脊髄小脳変性症と診断された患者7名を対象とした半構成的個別面接であり,その逐語録をデータとし質的記述的に分析を行った.その結果,生活を編み直す頑張りとして,<現状を受け入れる>,<人や社会とのつながりを維持する><自己の役割・責任を遂行する>をはじめ9つのサブカテゴリーから【病の進行に向き合いその現状に積極的に対応する】,【人や社会と相互の関係性を築く】,【病に意義を見出し自己実現を図る】の3つのカテゴリーが抽出された.軽症期にある神経難病患者は,病による生活の変化に向き合い,さまざまな方法でそれらに適応しようと頑張っていた.以上から,症状のコントロールや残存能力の見極め,同病者や社会と交流する機会の提供,生活や病とともに生きる自己に新たな意味を見出す援助等の必要性が示唆された.今後,これらの頑張りを総合的にアセスメントし,頑張りの内容やレベルに応じて早期から継続支援していく必要がある.
  • 野村 美千江, 豊田 ゆかり, 中平 洋子, 柴 珠実, 宮内 清子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 53-59
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:認知症者の自動車運転は,公共安全の問題であると同時に病者の自立性に関わる問題である.本研究は,初期認知症者が自動車運転を中止する過程とその関連要因を記述することを目的とする.方法:対象は大学病院を受診し車の運転中止を勧告された初期認知症者13名とその介護者.平成15年10月〜17年12月の間,病者と介護者に半構造化面接と継続的な家族相談を実施した.カルテ・面接の逐語録・相談記録から病状経過,運転行動,中止要請への反応,介護者の認識と対応,生活環境等のデータを収集し,運転中止の過程と運転中止を困難にする要因を質的に分析した.結果:研究終了時点において,8名は運転を中止し5名は運転を継続していた.中止した8名は全員が自動車事故を起こし,診断から運転を断念するまでに5年を要した事例もあった.運転中止を困難にする要因は,同居家族の無免許や生活上の必要性,代替交通確保の難しさ,家族介護者の負担の増大などで,若年発症や身体能力が高い場合は中止がより困難であった.運転中止の過程において介護者は,病者の説得に苦労し,家族内の対立や近隣との軋轢など種々のストレスを体験していた.車のない生活への適応には家族の対応が影響していた.結論:認知症ドライバーを早期に発見し,病態や家族の問題解決力に見合った介護者相談や外出援助の資源開発等を行うことによって,運転中止後の生活適応を助ける必要がある.
  • 岡本 玲子, 塩見 美抄, 鳩野 洋子, 岩本 里織, 中山 貴美子, 尾島 俊之, 別所 遊子, 千葉 由美, 井上 清美
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 60-67
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,今特に強化が必要な行政保健師の専門能力を明らかにすることである.データは,(1)学識経験者を対象としたフォーカスグループディスカッション(n=7)と,(2)保健師と関係他職種を対象とした個別面接(n=9)により収集した.専門能力は,研究者によるデータの解釈・分析によって抽出・精選した.専門能力の妥当性と優先度の検討は,(3)全国の現任保健師研修担当者への郵送質問紙調査により行った.(1)(2)を分析した結果,専門能力は次の5つにまとめられた.すなわち,a)住民の健康・幸福の公平を護る能力,b)住民の力量を高める能力,c)政策や社会資源を創出する能力,d)活動の必要性と成果を見せる能力,e)専門性を確立・開発する能力である.(3)の調査(n=225)では,a)〜 e)の専門能力は,被調査者の9割以上の賛同を得た.また,7割の者が優先度が高いとした専門能力は,c)d)であった.結果より,今回抽出した専門能力は,今特に強化が必要なものとしてコンセンサスを得られた.今後保健師がこれらの能力を獲得できるよう,とりわけ優先度の高い専門能力について,我々は早急に教育プログラムの開発や教育体制の整備を行っていく必要がある.
  • 西森 理恵, 荒木田 美香子, 白井 文恵
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本調査では,施設として展開する腰痛予防対策への資料を得るために,施設が行う腰痛予防対策の実情と,その規定要因である管理者側の腰痛に対する問題意識を明らかにすることを目的とした.方法:2005年9月から11月に,13の特別養護老人ホームに訪問し,施設長または介護業務責任者にインタビュー調査を行い,内容を分析した.結果:介護職の腰痛に問題意識をもつ施設は13施設中9施設であった.ボディメカニクスの活用や介護方法の学習会が多くの施設で行われていた.また,個別対応介護の排泄介助といった利用者の安全・安楽を考えた作業管理の工夫が行われ,それが腰痛予防にも繋がることが語られた.腰痛の問題意識が高くない施設においても同様の対策が行われていた.しかし,介護スペースを広く確保している施設や介護職のユティリティが整っている施設は少なかった.また,不適切な介護動作の要因として10施設で,「時間の余裕がない」ことを挙げていた.結論:本研究の結果より,直接的には介護職の腰痛予防を目的としていないが,施設として実施している利用者の安全や安楽に配慮した作業管理の改善が介護負担の軽減となり,結果的には介護職の腰痛予防に繋がることが示唆された.加えて,作業環境や健康安全管理体制を整備することが必要であることが示唆された.
  • 笠井 真紀, 河原 加代子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:育児期間中の母親への夫の育児サポートと夫婦関係との関連を明らかにし,子育てに取り組む母親への育児支援についての示唆を得る.方法:対象は東京都内A保健センターの乳幼児健康診査に来所する母親とし,「夫の育児サポート」(5項目)と「夫婦関係」(8項目),基本属性などについて,研究者作成の自記式・無記名の質問紙調査を行った.結果:対象者は407名であり,196名から回答を得た(回収率48.2%).1)対象者の平均年齢は32.4±4.2歳,結婚時の平均年齢は26.5±4.2歳,健診対象児が第1子である者は91名(47.2%)であった.2)「夫の育児サポート」と「夫婦関係」の因子分析を行った結果,どちらも1因子であり,『共同感』,『親近感』と名づけた.3)「夫の育児サポート」と「夫婦関係」の因子得点の相関分析を行った結果,強い正の相関が認められた(r=0.759, p<0.01).4)母親の基本属性,性別役割分業観別に「夫の育児サポート」と「夫婦関係」の因子得点の平均値を比較した結果,有意差は認められなかった(p<0.01).結論:育児期間中の「夫の育児サポート」と「夫婦関係」はどちらも1因子で構成され,重複する部分が多い概念であった.母親が『親近感』を感じることにより,『共同感』も高まることが期待できる.
  • 大森 純子, 宮崎 紀枝, 麻原 きよみ, 百瀬 由美子, 長江 弘子, 加藤 典子, 梅田 麻希, 小林 真朝
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    保健師は,人々の健康の増進を担う専門職として,個人,家族,集団,地域全体のニーズと組織の方針に基づいて保健事業を展開するため,時に事務系職員と意見が対立し,いかに判断し,行動すべきか悩むことがある.本論文では,保健師が遭遇する倫理的ジレンマのうち,保健事業の展開において事務系職員と意見が異なる状況に焦点を当て,その場面と対立内容を記述する.A県主催の保健師リーダー研修会の全参加者144名を対象に,自己記入式質問紙による調査を行い,66人からの回答と35事例の自由記載を得た.分析の結果,半数以上の保健師が日頃の保健事業の展開過程で事務系職員と意見が異なる倫理的ジレンマに遭遇しており,その場面としては,特に立案段階が多かった.意見の対立内容の分析からは,保健事業の内容よりもその手続きに関心のある事務系職員と,事業の手続きよりもその内容に関心のある保健師の考え方に相違があることが改めて明らかとなった.また,保健師と事務系職員それぞれの考え方の特徴だけでなく,事務系職員が客観的に現状の活動を捉えていると考えられる記載もみられた.人々の健康増進という活動の目的を事務系職員と共有することが重要であり,そのためには,保健師が日頃から保健事業の効果を事務系職員に理解できるように提示すると同時に,事務系職員の声に耳を傾ける姿勢をもつことも必要と考えられた.保健師と事務系職員がともに学び合い,連携を密に協働する必要性が示唆された.
  • 板東 彩, 河野 あゆみ, 中村 裕美子, 上田 裕子, 大瀧 貴子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,地域虚弱高齢者に適用できる認知症予防のためのケアプログラムを試行し評価することを目的とする.方法:要支援から要介護1に相当する高齢者16人(男性7人,女性9人,平均79.6歳)を対象に,知的活動を刺激するレクリエーションを中心とした2カ月間の1回2時間,4回のプログラムを実施した.プログラムの効果をみるために,介入前後に,抑うつの評価としてGDS,認知機能の評価としてMMSEとストループテストを聞き取り調査により測定した.結果:介入の結果,GDS得点は介入後に減少していたが,有意な変化は認めなかった.MMSE得点は介入後に有意な上昇を認め(p=0.002),MMSE下位尺度得点では,「見当識」のみ有意な上昇がみられた(p=0.03).ストループテストにおいては,介入前に制限時間60秒以内に回答できなかった3人が介入後に著しく改善した.性別・年齢別での介入の効果をみると,MMSE得点は男性群(p=0.03)と年齢の若い群(p=0.03)で有意に上昇した.考察・結論:地域虚弱高齢者を対象とした認知症予防ケアプログラムにより,MMSE得点の有意な上昇と,ストループテストの改善が認められ,認知機能を高める有効性が示唆された.今後,研究規模を拡大し,性別や年齢など対象の特性による効果の違いを検討することが必要である.
  • 麻生 保子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:市町村で実施されてきた機能訓練事業は介護保険制度により対象者が限定されたため,これまでの機能訓練事業参加者の通所リハビリ関連サービスの利用状況には変化が生じた可能性がある.よって都内Z区の機能訓練事業参加者の介護保険施行後のリハビリ関連サービス利用状況と生活機能の推移を明らかにしたい.方法:対象者は平成12年に都内Z区の機能訓練事業に参加し,平成15年調査の可能な37人であった.平成12年と平成15年に同一の自記式質問紙を用い,現在の訓練状況,生活機能,ADL,総合的移動能力等を調査した.また,調査の結果,平成15年にリハビリ関連サービスを利用していない訓練中断者に,その理由を訪問と電話にて尋ねた.結果:対象者37名は平成15年には,訓練継続群,自主グループ群,介護保険デイサービス群,訓練中断群の4群に分かれていた.生活機能は,前者2群は維持・改善しているのに対し,後者2群は低下していた.特に訓練中断群はその低下が著しかった.この群は介護保険給付対象者だが,受給を希望していなかった.結論:以上より,リハビリ関連サービスを利用しなくなった者の生活機能が低下することが示唆され,今後は訓練を継続できるようなサービスプログラムの開発と訓練中断者の継続フォローが必要と考える.
  • 西嶋 真理子
    原稿種別: 本文
    2007 年 9 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,保健師に求められる地域看護診断(地域の保健ニーズをアセスメントし,計画策定)のできる能力の基礎を備えた保健師教育の基礎資料とすることを目的に,地域看護実習の中で学生が地域看護診断の展開過程をどのように学習しているかを分析した.方法は,E大学4年次学生22名のうち書面で同意が得られ,現地オリエンテーションが実習期間中に行われた10名の実習日誌に記述された内容から,地域看護診断の学習過程について分析した結果,以下のことが明らかになった.1.現地オリエンテーションでは,保健所・市町の組織,保健事業,保健師活動等から地域に必要な保健サービスについて学習している.初回地区踏査では自然環境や交通・人々の集まり等から人々の暮らしぶりを実感している.2.2事例4名の実習日誌の経時的分析から地域看護診断の学習過程は,<地区や人々の実像が見える><テーマに関わる対象が見える><データを関連づけて分析できる><健康課題を抽出し,背景・地域の強みがわかる><計画策定のアウトラインがわかる>の5段階の学習過程を辿っていることがわかった.地域看護診断の過程でデータの分析は,地域を大づかみに把握した後,データを焦点化し,統合化する思考過程が推測された.以上のことから,地域看護診断の展開過程における学生の学習過程が明らかになり,それぞれの段階に応じた支援の必要性が示唆された.
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