目的:大都市部独居高齢者における精神健康増進のためのプログラム開発にむけて,抑うつの割合を把握するとともに,関連要因を明らかにする.方法:東京都A特別区在住の65歳以上独居高齢者250名を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った.調査項目は,抑うつ(Geriatric Depression Scale-15),高次活動能力,ソーシャルネットワーク,保健医療福祉サービス周知度・利用度,社会参加度,外出頻度等である.解析は,抑うつの割合を把握したうえで,抑うつを従属変数,抑うつと有意な単相関関係がみられた各要因を独立変数とする重回帰分析を行った.結果:回答数は206名(回答率:82.4%),有効回答数は172名(有効回答率:68.8%)であった.対象者における,抑うつの割合は43.6%であり,年齢,性別を制御したうえで有意な関連がみられた要因は,独居期間,要介護度,ソーシャルネットワークの3項目であった.すなわち,抑うつが強いことと「独居期間が短いこと」,「要介護度が高いこと」,「ソーシャルネットワークが小さいこと」が各々有意に関連していた.結論:大都市部独居高齢者の抑うつは,他地域,他世帯類型に比して高い可能性が示唆された.今後,独居期間,要介護度,ソーシャルネットワークに着眼した具体的プログラムの検討が必要である.
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