日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
5 巻, 2 号
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  • 宮崎 紀枝
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 34-42
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,事業開発の過程における保健師のマネジメントの特徴を明らかにすることである.7名の保健師から,10事例の新規事業の開発経緯について,半構成的面接を行った.データは,質的記述的研究方法で内容を分析し,以下のコアカテゴリーにまとめられた.保健師は【解決したいニーズ】を把握し【既存事業の限界】【行政組織の限界】を捉えると,新規事業のために【住民のくらしぶり】【活用できる社会資源】の情報を収集していた.そして,【事業関発のビジョン】をもち,【事業の準備に関する戦略】と【住民の支援に関する戦略】を整えるために,【行政組織の承諾を獲得する戦略】と【社会資源を巻きこむ戦略】を計画していた.保健師はまず【合意の獲得】【協働関係の構築】【動機づけ】を実施したあと,計画した戦略を履行し,その事業開発過程全体を評価し,調整していた.カテゴリーの,各事例における抽出頻度に注目した結果,マネジメントのタイプには,協働型,動機づけ型,組織力活用型,住民強化型があった.これらの特徴から,事業開発の戦略を練り上げる保健師のマネジメントは,限られた資源の効率的な活用,住民の力の向上,地域づくりへ導くと考えられた.
  • 田高 悦子, 金川 克子, 立浦 紀代子, 和田 正美
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 43-50
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的の1点目は,地域の寝たきり・準寝たきり等の障害高齢者における座位の自立に着眼した日常生活自立度尺度「座位自立度尺度」を開発し,その信頼性,妥当性,有用性を検討することであり,2点目は,この地域の寝たきり・準寝たきり等の障害高齢者の座位自立度に応じた寝たきり予防のための具体的な地域看護活動のあり方を検討することである.研究対象はI県H市の65歳以上の在宅寝たきり・準寝たきり高齢者94名である.研究方法は質問紙を用いた面接調査であり,調査実施者は研究地域の保健師および看護師である.研究の結果,開発された座位自立度尺度は,1)高齢者がやればできる座位関連能力「できる座位」4項目,2)高齢者が日常行っている座位関連状態「している座位」5項目,3)できる座位およびしている座位からなる「座位自立度」9項目から構成された.尺度の信頼性を示すクロンバックα係数は,「できる座位」0.96,「している座位」0.69,「座位自立度」0.72であった.また,尺度の妥当性を示す外的基準との相関係数は,ADLでは「できる座位」0.78,「している座位」0.73,「座位自立度」0.78,非臥床時間では「できる座位」0.48,「している座位」0.78,「座位自立度」0.58で,これらはすべて有意であり,かつ同一(正)の方向性を示していた.さらにこの座位自立度から寝たきり・準寝たきり等の障害高齢者の日常生活自立度は4パターンに類型化され,これらのパターンに応じた具体的な地域看護活動のあり方(自立低下予防,危険曝露予防,意欲低下予防,廃用症候予防)が提言された.以上より開発された座位自立度尺度は一定の信頼性,妥当性,有用性を兼ね備えた尺度であることが確認された.
  • 荒木田 美香子, 中野 照代, 藤生 君江, 片桐 雅子, 佐藤 友子, 山名 れい子, 野崎 やよい, 仲村 秀子, 飯田 澄美子
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は育児機能アセスメントツールI(PAFFAT.ver.I)の有用性を検討することである.PAFFAT.ver.Iは幼児の集団健康診査の保健面接で活用され,育児機能を評価するための問診票として開発されたものである.調査時期は2001年7〜10月,対象地区は人口15,000人および20,000人の静岡県の2町村であった.1歳6か月児および3歳児健康診査において,PAFFAT.ver.I使用前後の134件の保健面接を録音し,その内容の変化を検討した.また健康診査対象の保護者が記入した119件のPAFFAT.ver.Iを検討し,以下の結果を得た.1) PAFFAT.ver.I回収率,質問項目の通過率とも高く,対象者が回答可能な項目数,内容であったと考えられる.2) PAFFAT.ver.I全体のα係数は0.84であり,内的整合性が確認された.また,保健面接の内容の変化や健康診査後の保健師のカンファレンスの分析から,保健面接の場面で育児機能アセスメントツールIが活用されていることが確認された.3) さらに項目数を減らし,活用性を高めるため,因子分析を行い,8要因が抽出された.4) 8要因中,3要因は保健師が判断した健診後のフォローの必要性とも有意な関係性が認められた.以上より,PAFFAT.ver.Iは育児機能をアセスメントする質問紙としての信頼性,妥当性があると考えられた.これらの結果を踏まえ,精選を行い35項目からなるPAFFAT.ver.IIを作成した.
  • 原田 光子, 山岸 春江
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 61-69
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,訪問看護活動を通し高齢療養者と家族のニーズを明らかにすることである.また,ニーズに対応した訪問看護師と他職種との連携活動を分析し,訪問看護師の役割を明確にすることを目的とする.対象は4か所の訪問看護ステーションに勤務する看護師である.そこに,勤務する訪問看護師の中から3年目以上で他職種と連携を行っている10事例を選定してもらった.方法は訪問看護師,療養者・家族に半構造化インタビューを実施,また許可が得られた療養者には,訪問看護師に同行し参加観察を行う.収集した質的データの内容を分析した,その結果,療養者と家族のニーズの分類は,【療養者のニーズ】,【家族のニーズ】,【療養者・家族のニーズ】であった.連携のニーズの特徴は顕在的ニーズ『他職種と家族の関係調整』,潜在的ニーズ『生活の二次的障害の予防』,『療養生活の調整』であった.療養者・家族のニーズに対応する連携パターンは14種類であった。連携活動における訪問看護師の役割は,「病状,症状の判断と適切な職種への連携・指示」「服薬の管理・指導・効果の観察」「精神状態を判断し適切な職種を調整」「家族と連携する重要性」「ヘルパーに対する療養者の健康管理面での指示」「予測的指導と予防」「他職種との連携の構築」が示唆された.
  • 尾ノ井 美由紀, 斯 琴, 早川 和生
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 70-78
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究はH市在住の在日中国人の生活習慣と身体的・精神的健康度の関連を明確にすることである.対象および研究方法:H市の日中友好会会員42名に自記式質問票を配布し30名(回収率71.4%)から,地区日本語学校参加者11名に配布し11名(回収率100%)から回答を得た.男女別状況は男性21名女性20名で,平均年齢は38.6歳(±11.9)(範囲21〜78歳)であった.質問項目は(1)個人的背景-学歴,職業,在日期間等,(2)健康状況-既往歴,現病歴,検診の有無等,(3)生活習慣-健康意識,喫煙,飲酒,BMI値,朝食の有無等,(4)精神的健康面はGHQ(General Health Questionnaire)12項目を使用.(5)食事については栄養素を12分類し,1日目安量で選択してもらった.研究結果:生活習慣では喫煙者が15.9%,飲酒者が34.1%と日本人と比較して良い状態で,BMI値は日本人とほぼ同じ状態であった.年齢の上昇とともに疾病のある者の増加がみられた(p<0.01).健康への意識は在日期間の短い者(p<0.01)と男性(p<0.05)が強かったが,健康的生活習慣行動の実施数とは関連がみられなかった.健康への意識と健康的生活習慣実施数は40歳代の者が最も低かった.GHQ総合得点は日本人や中国人褥婦と比較してとても高く,現病歴のある者が高く(p<0.01),行政の健診を受診している者(p<0,01)と健康的生活習慣行動の実施数の多い者が低かった(p<0.05).健康的生活習慣行動の実施数は学歴の高い者(p<0.05),朝食の摂取している者と飲酒しない者や運動習慣のある者が多く(p<0.01),熟睡感と関連がみられた(p<0.01).結論:身体的健康度と精神的健康度の関連が改めて示唆された.40歳代を中心とする中年期への健康意識の向上と生活習慣病予防教育の重要性が示唆された.また,知識普及と情報提供のためには近隣日本人との交流を図り,地域住民をも巻き込んだ地域作りが必要である.
  • 内田 陽子
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    近年,ノーマライゼーションの理念が高まっている.わが国でははじめて聾者主演の映画がバリアフリー社会の実現をねらいとして1999年に製作され同年上演され,第2弾の映画は2000年製作,2001年に上演された.しかし,これらは主要都市限定の上演であったため,それより1年遅れて筆者らは地方都市において聾者・聴者の自主組織による各上演を行い,その評価を行った.目的:(1)聾者・聴者自主組織による映画会を観客側と組織委員側のアウトカム(効果)で評価する.(2)映画会に対する再鑑賞の要因と継続開催していくための要因を明らかにする.以上からバリアフリー社会に向けての障害者との自主組織の運営活動を促す基礎資料とした.方法:対象は2000年,2002年の映画会で調査に協力を得た観客1,620人および映画会を運営する委員49人である.アウトカム評価項目は映画会に対する満足度,聾者や手話への理解,聾者および他の障害者活動の実践の項目とした.これらの項目と再鑑賞または再活動願望を尋ねる項目で構成される質問紙の記入を対象者に求めた.結果:映画会への観客の満足度を高めれば,聾者や手話への理解,ともに生きることへの社会づくりの理解,聾活動参加意欲が高まるといった効果がみられた.また聾者主演の映画をみて,観客の聾活動の参加意欲が高まれば,実際に聾および他の障害者活動につながる傾向にあった.観客の再鑑賞の願望に影響する因子には,「手話の興味」,「映画会の全体的な満足度」,「映画の内容」,「日時の満足度」,「聾者の理解」,「ともに生きていくことの理解」があった.実行委員の映画会の再活動の継続意思に影響を与える因子には,「聾活動への参加意欲」があり,日頃の聾者・聴者の結びつきが重要となる.
  • 本田 亜起子, 斉藤 恵美子, 金川 克子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,一地域の在宅の一人暮らし高齢者全数を対象に,一人暮らしの前期高齢者と後期高齢者の特性を比較し,さらに一人暮らしの理由により対象者を分類し,理由別の高齢者の特性を比較検討することである.I県T町に居住する65歳以上の在宅の一人暮らし高齢者101人を対象とし,訪問面接調査を実施した.その結果,後期高齢者は前期高齢者と比べて,視力・聴力が低下し,もの忘れのある高齢者が有意に多く,抑うつ傾向にある高齢者の割合が有意に高かった,また,老研式活動能力指標得点が有意に低く,別居子が同じ町内に住んでいる高齢者が有意に多かった.一方,配偶者や家族との死別により一人暮らしになった高齢者は,それ以外の高齢者と比較して,抑うつ傾向にある高齢者が有意に多く,生きがいをもつ高齢者が有意に少なかった.以上より,一人暮らし高齢者に対しては,後期高齢者や,家族との死別により一人暮らしとなった高齢者を中心に,早期に積極的な支援を行う必要があることが示唆された.
  • 麻原 きよみ, 百瀬 由美子
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 90-94
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本調査は,介護保険実施後の介護サービス利用に関する高齢者の意思決定に関わる問題を明らかにすることを目的として,18名の訪問看護師の自由記述回答を分析した.結果は以下のとおりである.1.介護サービス利用に関する高齢者の意思決定に関わる問題として,介護保険制度に関する問題,介護サービス利用の意思決定に対する他者の影響,情報提供不足,サービス量不足,規範の影響,高齢者の能力不足が抽出された.2.介護保険制度に関する問題についての記述が最も多く,自己負担による経済的負担,介護認定による制限,介護サービスの内容や利用方法による制限,制度や手続きの煩雑さなどの内容が含まれた.3.介護サービス利用の意思決定に対する他者の影響には,介護サービスの決定に,当事者である高齢者が不在であること,家族や専門職,および事業者が関与していることを示す記述がみられた.以上から,介護サービス利用に関する高齢者の意思決定に関わる問題について,その背景と対応について考察した.また本調査結果は,介護サービス利用に関する高齢者の意思決定の現状,およびそれに関連する要因についての調査に向けて,調査のための枠組みを提示した.
  • 中野 照代, 荒木田 美香子, 佐藤 友子, 藤生 君江, 片桐 雅子, 山名 れい子, 野崎 やよい, 飯田 澄美子
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:育児不安,子どもへの虐待,子どもの不適応や問題行動など育児をめぐる問題はますます深刻な状況にあり,乳幼児健診は従来の"発達の遅延や疾病の早期発見・早期対応"からその機能を"子どもの心身の健やかな発達の促進""育児支援"に拡大してきている.1歳6か月児および3歳児健診は高い受診率を維持しており,保健師が母親を初めとする保育者や児と関わる活動の場として重要な機会である.しかしほとんどの自治体で行われている集団健診方式においては,時間的制約の中で的確に支援のニーズを発見し,早期に対応することに困難がある.本研究は育児に関する心理・社会面のアセスメントツール開発のための基礎資料を得ることを目的とした.方法:全国300市区町村に1歳6か月児・3歳児健康診査の問診票送付を依頼し,266市区町村から回答を得た(回収率88.7%).回収されたすべての問診票の質問項目を抽出し,健診の目標に沿って項目分類を行った後,項目ごとに出現率を検討した.結果:健診目標1「発達の遅延や疾病の早期発見・早期対応」に関連する精神発達や運動発達などの項目はおおむね90%以上で取り上げられていた.目標2「子どもの心身の健全な育成」に関連すると考えられる『家族機能・家族構造』に関する項目のうち,「健康保持機能」はおおむね50%以上であったが,「経済的,情緒的,教育的機能」では各項目とも30%以下であった.また『家族構造』に関しては「家族内の役割」,「家族成員の状況」に関する質問項目は10%以下であった.健診目標3「安定した育児への支援」に関運する項目では『育児サポート』,『両親の心身の反応』はいずれも30%以下であり,『両親の受けてきた育児』や『教育』については0%であった.結論:1歳6か月児・3歳児健診問診票は育児に関連した心理社会面のアセスメントを行うための項目がきわめて少ない現状が明らかになった.
  • 岡本 玲子, 村上 修子, 市川 桂二, 井上 清美, 鳥居 栄子, 八田 純子, 比名 直代, 村上 政世, 生嶋 真子, 中山 貴美子, ...
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,実践と研究領域(県担当課・難病センター・保健所・大学)の協同により開催した保健所保健師対象の難病地域ケア研修における企画評価および結果評価を行うことである.研究方法は,H県難病研修受講者(保健所難病業務担当保健師)23名を対象とする自己評価表を用いた調査と,彼らの記述内容・発言内容逐語録の分析である.調査は,研修前,前期研修後,後期研修後に行った.調査の結果,研修前に比べ前期研修後は,難病事例のニーズ把握と保健師が関わるべきニーズの明確化等に関する6項目の自己評価得点が上がった.また,研修前に比べ後期研修後は,先の6項目に加え,難病事例のニーズの集約と地域の課題の明確化,課題の優先度判断,および優先度の高い課題についての計画・実施・評価等に関する合計14項目の自己評価得点が上がった.記述・発言内容からは,ニーズに基づいて計画・実施・評価していくことや保健所内外でのコンセンサスを得ることの重要性を認識した,研修で得た知見を実践に活かし保健所内や関係機関とのコンセンサスの形成につながった等の変化が読みとれた.実践と研究領域の協同による研修の最大の効果は,受講者が知識を得ることのみにとどまらず,自らが主体的に計画・実施・評価のプロセスを辿り,活動の良い変化や次年度計画の方向性を,受講者同士で確認することができたことである.
  • 吉岡 京子, 岡本 有子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2003 年 5 巻 2 号 p. 109-117
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本の地方公共団体に働く保健師にとって施策化のもつ意義と,保健師活動の方向性を示唆することであり,1995年1月〜2001年7月までに保健師の施策化に関して発表された日本の文献をレビューした.その結果,以下の知見が得られた.1.保健師の施策化への関心の高まりは,国全体の行政改革や地方分権等の影響を受けていた.2.施策化を推進していく際には,マネジメシト・サイクル・モデル(Plan-Do-See),政策過程モデル,地域づくり型保健活動モデルの,3つのモデルが用いられていた.3.事例の分析により,保健師の施策化には,政策を地域の現状や住民ニーズに適応するような施策に修正し,具体的な事業を提供する「政策に基づく施策化」と,保健師が日常業務の中で把握した住民ニーズに基づいて,新たな事業を起こし,政策や施策へ反映させる「ニーズからの施策化」の2方向あるという知見が得られた.
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