本研究の目的の1点目は,地域の寝たきり・準寝たきり等の障害高齢者における座位の自立に着眼した日常生活自立度尺度「座位自立度尺度」を開発し,その信頼性,妥当性,有用性を検討することであり,2点目は,この地域の寝たきり・準寝たきり等の障害高齢者の座位自立度に応じた寝たきり予防のための具体的な地域看護活動のあり方を検討することである.研究対象はI県H市の65歳以上の在宅寝たきり・準寝たきり高齢者94名である.研究方法は質問紙を用いた面接調査であり,調査実施者は研究地域の保健師および看護師である.研究の結果,開発された座位自立度尺度は,1)高齢者がやればできる座位関連能力「できる座位」4項目,2)高齢者が日常行っている座位関連状態「している座位」5項目,3)できる座位およびしている座位からなる「座位自立度」9項目から構成された.尺度の信頼性を示すクロンバックα係数は,「できる座位」0.96,「している座位」0.69,「座位自立度」0.72であった.また,尺度の妥当性を示す外的基準との相関係数は,ADLでは「できる座位」0.78,「している座位」0.73,「座位自立度」0.78,非臥床時間では「できる座位」0.48,「している座位」0.78,「座位自立度」0.58で,これらはすべて有意であり,かつ同一(正)の方向性を示していた.さらにこの座位自立度から寝たきり・準寝たきり等の障害高齢者の日常生活自立度は4パターンに類型化され,これらのパターンに応じた具体的な地域看護活動のあり方(自立低下予防,危険曝露予防,意欲低下予防,廃用症候予防)が提言された.以上より開発された座位自立度尺度は一定の信頼性,妥当性,有用性を兼ね備えた尺度であることが確認された.
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